お久しぶりです
学園祭。それは、生徒たちがいろいろな出し物をして訪れた人たちに精一杯楽しんでもらうため、そしてこの学園がどんなに素晴らしいかをわかってもらい、新入生をなるべく多くするという学園の目論見もある行事である。
「織斑君!オムライス追加!」
「わかった!」
「姫柊君!ケーキも追加!」
「了解!」
「王様!王様特製クッキーも追加お願い!」
「うむ!」
龍輝のクラスメイトの女子たちが忙しなく動き、オーダーを言ってくる。それに答えながらクラスで仮設置した調理場で龍輝、一夏、ディアーチェ(人間サイズ)がどんどん調理していく。
「ディアーチェ」
「うむ。このペースなら問題なかろう」
「うし。一夏、先に休憩行ってこいよ」
「え?いいのかよ?」
「このままならディアーチェと俺で問題ない。休憩できる時にしといた方がいいからな」
「わかった。じゃあお言葉に甘えるとするわ」
「おう」
「王様も頼んだぜ」
「任せろ」
一夏はエプロンを外し、執事服のまま教室から出ようと歩き出す。
「あ、待った。一夏」
「っと。なんだ?龍輝」
龍輝に声をかけられ、ブレーキをかけて振り向く一夏。龍輝は調理場からヒョコッと顔を出している状態という光景。これをクラスの女子が見たらどんな反応をするのか。
「シュテルから念話で報告されたんだが、どうやら新聞記者のような女性が来てるみたいなんだ」
「記者ねぇ。それがどうした?」
「忘れてないか?俺らは貴重な存在だってことを」
「あ」
「そういうことだ。変にデータ取られたり、しくじることはないだろうけど自分のISを奪われたりとかなるかもしれないから極力一人では行動するなよ」
「わかった」
「ということだ。シャル、頼んだ」
「なっ!?」
「えっ!?」
「わかった。それじゃあ一夏、僕と回ろうか」
「おう。頼んだぜ、シャルロット」
「任せて」
執事服のままの一夏に着けているリボンを少し緩めて楽にするメイド服のシャル。二人が教室から出ていく時に教室にお客として来ている生徒たちが顔を赤くしながらボーっと見つめている。教室から出た一瞬、シャルがチラッと龍輝にアイコンタクトをしてきたのを見て、龍輝は小さく頷き、料理を再開していく。
「師匠」
「どうした?ラウラ」
「なぜシャルロットなのだ?私と回っても良かったのではないか?」
「あぁ、それはーーー」
「そうですわ龍輝さん!!一夏さんと回るのはわたくしでも良かったはずです!!」
「同意見だ!!なぜ私ではないのだ!!」
「落ち着けバカ共」
「あぅっ!?」
「きゃっ!?」
ラウラの質問に答えようとした瞬間に騒ぎながら入ってきた箒とセシリアを黙らせるために料理に使っていないお玉を二人の頭に叩き込む龍輝。
「はぁ……。師匠の言う通りだ。少しは落ち着け、二人とも。ここは普段の教室ではなく、喫茶店なのだからな」
「う……。すまない……」
「申し訳ありませんわ……」
ため息をしながらラウラに正論を言われ、叩かれた箇所を押さえながらしゅんとなる二人。
「わかればいい。それで師匠、理由とはなんだ?」
「これは護衛みたいなものだ。お前らだとそれを忘れて学園祭を利用して一夏を振り向かせようと企むだろうと思ってな。シャルならそんな事しないでちゃんと護衛をしてくれるから頼んだだけだ。まあ、どっちにしろユーリとレヴィが合流する手筈になってるから二人っきりになんてならないが」
「なるほど、さすが師匠だ。確かに師匠の言う通り、私だったらそっちのけで嫁を振り向かせようとしてしまっただろうな。そこの二人もそうだろう?」
「…………していただろうな」
「…………わたくしもです」
「わかったなら接客に戻れ。お客さんはたくさんいるんだからな」
「……わかった」
「……わかりましたわ」
「あの二人はまだ納得してないか……。では師匠、私も持ち場に戻る」
「あぁ。ラウラ」
「なんだ?」
「俺が言うのもなんだが、なぜそこまで落ち着いてるんだ?想い人が他の女と一緒なんだぞ。二人のような反応をしてもおかしくないだろうに」
料理場から出ていこうとしたラウラに気になっていたことを聞く龍輝。確かにラウラはずっと落ち着いていた。そして龍輝の理由にも素直に納得していた。なぜ落ち着いていられるのか疑問にもなる。
「その事か。シャルロットが嫁を狙っていないのは知っているからな。だからだろうな。それに、嫁は唐変木だからシャルロットを好きになることはまずないだろうし、ユーリ殿とレヴィ殿がいればそんな気にもならない。これが私が落ち着いていた理由だ」
「納得したよ。ありがとな」
「いや、礼を言われることはない。それじゃ私は戻るぞ」
「おう」
今度こそ、ラウラが調理場から出ていく。それを見送った龍輝は調理を再開していく。
「さすがはわが主だ。対処が完璧であったよ」
「褒めるなよディアーチェ。二人は渋々納得したって感じだから褒められるようなことじゃない」
「謙遜するな主よ。普通ならあそこまでできん。主にしかできないことだと我は思うぞ」
「ディアーチェがそう言ってくれるだけで満足だよ」
「うむ」
…………こんな風に会話してるが二人の手は一切止まっておらず、次々に料理を作っていく。やっぱりこの二人は最強のタッグだろう。料理に関しては。
「そういえば主よ」
「なんだ?」
「姉上はどうしてるのだ?まさか部屋にずっといるわけではあるまい?」
「琴音なら今は簪のクラスに行ってるはずだ。一人は危ないからやめとけよって言ったら簪のクラスにずっといるつもりだから大丈夫って言われてな。簪も任せてって言って張り切ってたから任せた」
「なるほどな」
「マスター」
「お?シュテル、どうした?」
ディアーチェと話していたら調理場にシュテルが入ってきた。シュテルもシャルと同じようにメイド服を着ており、接客などの仕事を担当している。
「調理中、すみません。マスターにお会いしたいお客様がいます」
「客?しかも俺に会いたいだと?さっき念話で言っていた新聞記者か?いや、それだとシュテルが通すとは思えないしな……」
「時間切れだ、龍輝」
「は?……なんだ、お前かよ」
一人でうんうん唸っていると時間切れと言いながら調理場に入ってきた人物を見てめっちゃ考えていた自分がバカらしくなって落胆する龍輝。
入ってきた人物は、公表されていない第三の男性操縦者、龍輝の幼馴染、黒葉蒼だった。灰色の袴というなぜか和服を着ているが。
「なんだってことないだろう」
「悪い悪い。それで?なんで蒼が来たんだ?それにその格好は」
「順に説明するよ。まずこの格好についてだが俺のクラスは和風喫茶だからだ。だからこの格好なんだよ。で、休憩を貰えたから龍輝を見にここに来た」
「理解した。和風喫茶なんてなんか、渋いな」
「お前らのクラスがご奉仕喫茶をやるってことをどうやって聞いたのか知らんがわかってな。クラスの女子が対抗するために同じにするってなったが被せるのは違うってなって美森と友奈と先生が俺が和服とか凄い似合うって言ったらこれになった」
「お疲れさん」
蒼の説明で苦労したのを感じたので労う龍輝。
「で、ソレは本物か?」
「そんなわけないだろう。ちゃんと偽物だが、先端は尖ってるから突けば大変なことになるな」
「物騒だな」
「俺はクラスメイトにこれを絶対持っててって言われて持ってるだけだが」
蒼の腰に黒い棒、良く見るとそれは鍔がない刀、忍者刀のような直刀だった。龍輝に言われて鞘から抜いて刀身を見せてから先端を龍輝に向ける。対して龍輝はさっき箒とセシリアを叩いたお玉を持って構えている。
刀相手にお玉という謎空間がここにできている。
「主とアオイも愚かなことをしていないで料理をせんか」
「すまん、ディアーチェ」
「悪い、王」
ディアーチェの静かな一喝で龍輝はお玉を置いて料理を再開する。蒼も鞘に閉まってシュテルが余ってる椅子を持ってきてくれたので椅子を受け取って邪魔にならないところに座る。
「クラスに戻らないのかよ」
「言ったろ?休憩中だって」
「そりゃ言ってたけどよ。俺はまだ休憩にはならないぞ?」
「お前の料理してる姿なんてこんな近くで見たことないから見てるだけだ」
「楽しいか?それ」
「案外楽しい」
「さいですか」
「それに、一人で回っていたらいろいろ面倒なことが起こるからな。ここにいれば安全だし」
「避難所じゃねぇんだぞ」
「男子にとっては避難所のようなもんだ」
「あっそ」
「どうぞ」
「ありがとう、シュテル」
シュテルがここに居続けると判断して飲み物を蒼に差し出している。
「蒼、なんか食うか?」
「いいのか?」
「おう」
「なら……王様特製クッキーで」
「俺が作る料理を頼まないんだなお前は」
「冗談だ。ケーキ頼む」
「あいよ」
この二人、本当に仲良しだとディアーチェとシュテルは思ったのだった。
学園祭はまだまだ始まったばかり。さあ、一体どんな学園祭になるだろうか。
「兄さんに、会いたい……会って、いろいろ話したい……」
…………どんな出会いが起こるのだろうか。
お読みいただきありがとうございました。
ネタが浮かんだので書いてたらいい感じに纏まったから投稿です。チマチマ書きながらアサリリを書いてたもんでこっちはほとんど進まないんですがね。スタァライト?…………はて、なんの事やら……。
シュテル「はぐらかしても無駄です」ガンッ!
いっだい!?ルシフェリオンで殴らないで!
シュテル「正直に言わないからです」
う……。スタァライトは前回も言った通り、全く書いてないです……。スタァライトが完結してるわけじゃないですからね!?まだ続きますからね!?
シュテル「なら早く」
はい……。頑張ります。
忘れてました。蒼が着ていた和服なんですが、蒼のイメージキャラはNARUTOのサスケなので、サスケが着ていた忍装束と考えていただければ。
それでは以上、レリでした。