東風谷蒼汰 個性:無個性   作:先詠む人

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ランクにも乗りましたし、高い評価もいただきました。
「これは書かなきゃ男が廃る!!」と書き始めました。


問題に気づきました。原作一冊ももってませんでした。orz


財布見ました。金ないです。o……しrz


てなわけで、原作を中古が安いタイミングを見つけ次第買いながら進めていくので今は1巻分しか書けないです。(辛うじて失効寸前のポイント使って書店で中古の奴を378円にて買えました。)


No.1 東風谷蒼汰:スタートライン

「……っ…」

 

 チリっと四肢に走った痛みで俺は目を覚ます。瞳を開けると視界一杯に広がったのは病的なほどに真っ白な蛍光灯に照らされたこれまた真っ白な天井だった。

 

「……病院……か…」

 

 今ここに居るのはたった一人、近くにはどうせ誰もいない。そう思ってポツリと漏らすと横から特徴的な緑色の頭が覗いてきた。

 

「あ、そうちゃん起きたんだ。よかったぁ…」

 

 覗いてきたそいつはそう安心した表情を浮かべながら再びベッドの横にある椅子に座りなおす。

 

「出久……お前”平和の象徴”がこんな無個性の悪あがきにも失敗したアホの所に居ていいのかよ?」

 

 その見慣れた顔を見て若干あきれながら俺が問うと、出久は

 

「無個性で悪あがきにも失敗したってそんなバカみたいなこと言わないでよ。途中で(すべ)を勝ち取った僕と違って完全に無個性でもヒーローになれるって証明したのはそうちゃん自身じゃないか。」

 

 哀しそうな顔でそう言った。

 確かに俺は出久が言ったそれを証明した。だけども…

 

「と言っても俺は結局あの日何もできなかった。それにライセンスこそ取ったがどこの事務所も俺を拾ってくれなかったから最終的にヒーローにすらなれずに一般の大学に普通に受験して行った。その時点で俺はゲーム盤にすら乗れずに負けてんだがな。」

 

 そう自虐するように言いながら思い出すのはAFOと出久との戦い。あの時俺は無個性だからAFOの”個性”を奪う力を一切恐れずに動こうと思えばいくらでも動けたはずだ。だけど、最終的に俺は何もできなかった。いや、()()()()()()()。俺は、あの日、みんなに背を向けてそのまま戦いを放棄した。

 

 ”ヒーローになる”ことを……放棄したんだ。

 

「だとしても。」

 

 自虐したせいでずーんと心が沈んでしまった俺に、出久は諭すかのように告げた。

 

「だとしても、あの日僕と一緒に一歩踏み出したのはそうちゃん自身の選択だよ。それに、あの日僕らは彼に、オールマイトに認められたじゃないか。」

 

「僕らはヒーローになれるって!!」

 

 俺を説得するかのように言葉を並べる出久。その言葉を聞きながら俺はあの日のことを思い出していた。

 

 あの日……中3に上がって最初に出した進路希望の紙。

 

 出久はいつも二人で帰っているときに言っていた通り雄英のヒーロー科を。そして爆発魔も同じヒーロー科を。そして俺は……

 

 

 ◆◇◆◇

 

「えーお前らも三年ということで!!本格的に将来を考えていく時期だ!!」

 

 当時の家のクラスの担任教師の金髪モヒカンがそんなことを言いながら教卓に積まれた紙の束の一番上の一枚をサッととってそれを教卓に両の手と一緒に叩き付ける。

 

「今から進路希望のプリントを配るが皆!!」

 

 そう何かを決めた表情で言うかのように前置きを置いておきながらも担任は…

 

「大体ヒーロー科志望だよね~」

 

 と教卓の上に置いた紙をほぼぜ~んぶ床にまき散らした。……俺あれ拾わないけないの?嫌やぞ?

 

 周囲の奴らほぼ全員が担任の言葉に持っている”個性”を開放しながら元気に返事するなか、俺はそんなことを考えて頭を抱えた。

 

「うんうんみんないい”個性”だ。でも校内で”個性”の発動は原則禁止な!」

 

 周りの奴らはみんな盛り上がっていくなか、俺の据わってる席から左斜め後ろに態度もかなり悪く座っているあのドアホが声を上げた。

 

「せんせえー「皆」とか一緒くたにすんなよ!」

 

 そのドアホの名前は爆豪克己。俺と今ここに居るもう一人のクラスメイトと幼馴染なんだが……

 

「俺はこんな”没個性”どもと仲良く底辺なんざいかねーよ」

 

「「そりゃねーだろカツキー!!」」

 

 モブがモブらしくうっせー!!!

 

 見ての通り、騒ぐクラスメイトに目を見開いてとんでもないことを言う野郎である。そこにモヒカンが一石でも投げ込むかのように告げた。

 

「あー確か爆豪は……『雄英高』志望だったな。」

 

 その言葉を聞いたとたん、クラスメイト達は全員ざわざわと騒ぎ出す。その一方で俺は

 

『まじかよ……』

 

 と、内心一人頭を抱えた。

 

 雄英高というのは国立の高校の中で一番倍率が高いヒーローになるための学科。ヒーロー科がある高校だ。毎年ヒーローになるためにその門戸を叩く中学生は多く。倍率は常に高い。今年の偏差値は確か79、倍率は300近くいくだろうという話だったはずだ。

 

 そんな俺の様子など気にもせずに、爆豪は机の上に立ち上がり

 

「そのざわざわがモブたる所以だ!模試じゃA判定!中学(うち)唯一の雄英圏内!」

 

 そしてその危険物である両手を天井へとむけ、満足げな笑顔で

 

「あのオールマイトを超えて俺はトップヒーローと成り!!必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!!!」

 

「あ」

 

 と、ここまでご満悦な様子だった爆豪だったが、その言葉に差し込むかのように告げられたモヒカンの言葉で一気に機嫌を悪くした。

 

「そういや緑谷と東風谷も雄英志望だったな。」

 

 モヒカンがそう言った瞬間、俺は

 

「あのクソボケ担任今このタイミングでそれいうなや…」

 

 と呟いて抱えた頭をそのまま机の天板にぶつけ、顔を伏せ、ポケットに手を突っ込み最近あのアホの言動があまりにもひどすぎるために入れていたそれを起動させる。その瞬間周囲は笑い声(それも嘲笑の部類の方だ)に包まれた。

 

「はぁあ!?緑谷!?東風谷!?無理でしょ!?wwww」

 

「勉強だけじゃヒーローになんかなれねーよ!wwwww」

 

「ヒーローおたくの緑谷ならともかく何のとりえもない東風谷なんか特に無理だろ!!www」

 

「お前ら存在そのものがこの世から認められてないじゃねーか”無個性”なんだからwww」

 

『ワンアウト…』

 

「お前ら生きてる意味あんの?さっさと首つって来世に期待でもしたらwww」

 

『ツーアウト…』

 

「というか、私たちの個性の実験台にしても文句言われないでしょwwwどうせ無個性には人権無いんだしwww」

 

「スリーアウト。」

 

 俺はそうポツリと言ってポケットに入れて起動させ続けていたそれを出しながら立とうとした……その時だった。

 

「そっ……そんな規定もうないよ!前例がないだけで…

 

 そう言いながら出久が立ち上がった。しばらく静観しとくか?そう思いながらそちらの方を見ていると爆豪がその言葉にすぐに噛みついた。

 

 こらデク!!!

 

 BOOOM!!

 

「どわ!?」

 

 まるで借金の取り立てのやーさんのように怒鳴りつけながら爆轟は”個性”を発動して出久の机の天板に焼け焦げた跡を創り出す。その”個性”によって生まれた爆風に吹き飛ばされ、出久は後ろの方に吹き飛ばされた。

 俺の方に先に来なかったのは大方出久の席の方が俺の席よりも近かったからだろう。それにアイツとかその取り巻き連中俺には中2の時の一件以降苦手意識もってるっぽいし。

 

”没個性”どころか”無個性”のてめェがあ~なんで俺と同じ土俵に立てるんだ!!?

 

 今からお前を殺しますとでも言いたそうな顔で出久に近寄るドアホ。それにおびえた表情をしながら出久はしっかりと爆豪の顔を見て返した。

 

「待っ……違う。待ってかっちゃん」

 

 じりじりと後ずさって後ろの壁の方に行きながら手を前に出し、最近見たジュラシックワールドで4頭のラプトルを抑えていたあの人のようにしながらも出久は言葉をつづけた。

 

「別に…張り合おうとかそんなの全然!本当だよ。」

 

 出久は後ろの壁までたどり着いてしまった。もう逃げ場はない。

 

「ただ…小さい頃からの目標なんだ。それにその……」

 

 そこまで言ってから出久は頭を下に向けた。

 

「やってみないとわかんないし……」

 

 そんな出久の言葉を聞いて俺は『だよなー』と思ったが、他の奴らは違ったらしい。さらに嘲笑がひどくなった。耳が痛い。

 

 なァにがやってみないとだ!!!記念受験か!!!

 

 爆豪が勝ち誇ったかのように告げた。

 

 てめェが何をやれるんだ!!

 

 出久はそれで何も言い返すことはできず、黙り込んでしまった。そんな様子を見て自分の勝ちを確信し、いい気分にでもなったのか爆豪はこちらを向いた。

 

てめェもだ東風谷!!

 

「うっぜ…」

 

 俺はこっちに向いた視線をカットするかのように上着の中に着こんでいたフードを被り、椅子から立ち上がった。

 

「おまえこそ何ができるんだよ。なんも考えずにいたずらに被害をまき散らすどっちかというと(ヴィラン)よりのてめェがよぉ。」

 

 フード被って自分の目線を気づかれないようにしつつそう告げながら、ポケットから先ほど取り出しかけてやめたそれを俺は取り出した。

 

「それに安藤、俵屋、切裂。お前ら全員ゲームオーバーだ。こんな思想抱えてヒーロー科受験できると思うな。」

 

 ニヤリと笑って再生するのは()()()()()()先ほどの会話。

 

「こんな差別主義の奴にヒーローが務まると思うか?それに切裂。お前は完全にヒーローになったところでそんな考えしてる時点で即ライセンスはく奪だクソボケが。ハッ」

 

 先ほどまでずっと浴びせられていた嘲笑を逆に返してやる。名指しで示された3人は顔色を真っ青にして俺から証拠となるそれを奪おうとしてきた……が

 

「おせぇ!!」

 

 俺はこちらに3人が来る前に机の上に乗り、それから3人の肩を踏み台のようにしつつ空を舞う。着地したのは足を一歩踏み出すかのように座り込んだままの出久の前。踏み台にされた3人はそのまま踏み台にしたときに後ろの方へ蹴り飛ばしながら跳んだせいかそのまま机に突っ込んで大きな音を立てて転んだ。

 

「そうちゃん……」

 

 最後に空中で蛍光灯に当たらないように回転したせいかフードが外れて中にしまっていた髪が出てしまう。最初に中国で光る赤ん坊が生まれたという形で”個性”が見つかって以降珍しくなってしまった黒曜石のように少し透き通った真っ黒な髪の毛が。

 

「爆発魔。お前なんで俺がお前のことそう呼ぶようになったのか忘れたとか言わせねーぞ。」

 

 出久と爆豪の間に立つようにして指をさしながら俺は告げた。

 

「チッ…」

 

 流石にそこを突かれると弱いのか、爆豪はそのまま舌打ちを残して自分の席へと戻ってまた足を机に乗せて座った。

 

「はぁ…くっだんね。」

 

 爆豪のそんな態度を見てそう呟いてから教卓の方を見る。いつの間にか担任のモヒカンはいなくなっていた。大方職務放棄かつ責任放棄ってとこか。

 

「出久立てるか?」

 

 そう言って未だに座り込んだままの出久の方に手を伸ばす。

 

「うん……」

 

 出久は俺の手を取り、立ち上がった。

 

「俺、ちょっと職員室行ってくるから一緒に帰れねーけど……出久はお前どーするよ?」

 

「僕は……このまま帰るよ。」

 

「そか。なら、またあとで。」

 

「後でね。」

 

 俺たちはそうして別れた。俺は職員室の方へ、出久は自分の席の方へ。

 

 帰るタイミングがここで微妙に違っていたら俺たちの未来は色々と変わっていたのかもしれない。だが、ここでの選択が出久にチャンスを与えたのは事実だ。

 

 職員室に入る。担任のモヒカンは保身に走って何もかももみつぶすのは前に音声記録を持って行ったときにわかってたからそのまま生徒指導の熱気(あつき)先生の所に俺は行った。

 

「熱気先生。」

 

「おー、東風谷君じゃないか。どうした?」

 

 赤いジャージを着た熱気先生は、暑苦しいオーラを可視化させる”個性”を発動しながら俺の呼びかけに答えた。

 

「先生って確か内申書を書かれる担当でしたよね?」

 

 と、俺が問うと熱気先生は大仰にうなずいて

 

「そうだぞ?それがどうかしたか?」

 

 と問い返してきた。俺は無言でポケットからボイスレコーダー機能をつけたままのスマホを取り出し、件の会話を再生した。

 

「安藤、俵屋、切裂の3名が差別的言動を発しました。過去にもこの3名は同様の発言を繰り返しており、特に切裂は”無個性”相手ならなにをしてもいいとかんがえているみたいですのでヒーロー科になんか到底入れてはならない人間かと思いまして。あ、今流したのが今日の奴で、これが3日前の、そしてこれが2日前のです。」

 

「なんだと?そんなことは一切こちらに上がってきてはないのだが…」

 

「家の担任自分さえよければそれでいい主義の男ですからね。2年の3学期に一度音声記録と一緒に提出しましたけど録音していたメモリごともみ消されたので今回は直接こちらに持ってきました。」

 

 そんな会話をしてから保存している会話の記録を全て先生に提出し、俺はそのまま職員室を後にした。

 

「さて、急いで帰りますか。」

 

 鞄を取りに行くため一旦教室に戻ろうとすると、取り巻きを二人引きつれた爆豪とすれ違った。

 

「”無個性”の糞ナードが雄英を受けるな。」

 

 ガンでもくれあうかのように顔を至近距離に近づけながら俺もアイツも一切引かない。

 

「おまえに指図される筋はねぇ。」

 

「一線級のヒーローは皆学生時代に何かしらの逸話を残してる。俺はこの平凡な私立中学から初めて!」

 

「うっとうしいから黙れよ。お前去年家庭科の実習でホットケーキ作るときに粉自分でまき散らしておきながら逆ギレしてその爆発の個性使って大惨事を起こしかけたところを一番嫌う”無個性”にドロップキック喰らって犯罪者の汚名を被らずに助かりましたぐらいで逸話なんざ十分だろ。何みみっちいことにこだわってんだよ。」

 

「グググ…」

 

「グゥの音しか出ないってか?なら俺は忙しいからじゃあの。」

 

 掌をひらひらと振りながら俺は爆豪を背にしてそのまま立ち去ろうとするが、後ろから”風”を感じてそのまま勢いよく後ろ回し蹴りをした。

 

「ガッ…」

 

 足の裏に当たったのは爆発魔の金髪とんがり(ヘッド)。蹴りの衝撃でアイツはそのまま床に倒れ伏した。

 

「気にくわないから闇討ちとかお前それただの(ヴィラン)だぞ?」

 

 そんな爆発魔の様子に呆れながら俺は言う。

 

「大方出久にも似たような脅し噛ましたんだろうけど、俺もアイツもそんなことで折れねぇよ。」

 

 そう言い残して俺は教室に戻った。教室にはすでに出久はおらず、自分の鞄をもって入口の方へと行くと入り口をふさぐように2つの影が、そして俺の前に病的なまでに白い女子が立ちふさがるように立った。

 

「なんだよ切裂。」

 

 邪魔くせーと思いながら俺が尋ねると

 

「あんた、あれ本当に提出したの?」

 

 と、切裂は聴いてきた。

 

「出したに決まってるだろ。何か問題でもあるか?仮に問題があるとしたらそれはお前らの方にあるんだぞ?」

 

 俺がそう告げると目の前に居る切裂、扉を塞ぐように立つ安藤、俵屋の3人は全員顔色をさらに悪くし、切裂に至っては

 

「あんたを殺せば問題ないわよね。だって”無個性”に人権なんてないんだもの。」

 

「は?」

 

 真っ青で追いつめられたような顔で頭の悪すぎることを言いだしたので俺が呆れていると

 

「飛び降りて人生やり直して個性でも手に入れてきなさいよ!!」

 

 と言って窓際の方に俺を追い詰めるかのようにその持っている”個性”:切裂き(リッパー)を使用した。反射的に腕を振り上げたのを見てから躱した俺がついさっきまでいたその場所の教室の床にナニカでえぐられたかのような2対の痕跡が残る。

 

「「切裂!?」」

 

 後ろの2人が驚いたように切裂にそう言って駆け寄ろうとするが切裂が

 

「あんたたちも手伝いなさいよ!コイツ殺さなきゃ私たち全員人生破滅よ!?」

 

 とか言った(どのみち、そうしたところで人生もっと破滅するだけなのに気付いていないのか?)せいで残りの2人まで”個性”を使い始めた。

 

 逃げ道となる三方全てを塞ぐようにこちらに跳んでくる個性で作られた矢と、高圧水流、そして見えない爪。俺はやむを得ず後ろに跳んだ。そう、バク転するように窓枠を超えながら。

 

「ほっ…と!!」

 

 窓枠を超えてそのまま体を回転させながら窓枠の下にあるコンクリートの部分を必死で掴もうとする。正直一瞬でもタイミングをミスれば死のダイブにしかならなかったが、俺は生を勝ち取ったらしい。

 コンクリートの部分に一瞬だけ引っかかったせいか落下するスピードが少しだけ落ち、おれはそのまま下の階の窓についている手すりを大きな音を立てながら掴むことに成功した。

 下の階の生徒が驚きの表情でこちらを見る中、俺は情けないながらもこう頼んだ。

 

「ごめん、大急ぎで引き上げてくんない?ちょっと今殺されかけて逃げてきたんだけど、腕ヤバくて……」

 

 そう言った瞬間だった。俺の後ろをあいつらの”個性”によって破壊された校舎の壁の一部だった巨大なコンクリートの破片が落ちて行った。

 

「……ごめんマジで引き上げてお願い!!!」

 

 その必死のお願いに下級生たちは慌てて力を、各々がもつ”個性”も組み合わせて必死に俺を引き上げ始めた。

 

 

 

 

「いや、本当にありがとう。」

 

 引き上げてくれた下級生たちにそう言って笑いかける。

 

「いえいえ、それにしても先輩?ですよね。多分上から落ちてきましたし。一体何があったんですか?」

 

 俺が言った礼に助けてくれた下級生の一人が疑問を唱える。それに対して俺は一切隠さずに事情を簡単に説明した。

 

「んーとね。単純に言うと『”個性”至上主義』とかいう前時代的な倒錯した考えで凝り固まったやつらが”無個性”の俺に逆ギレして”個性”使って殺しにかかってきたってとこかな。」

 

 俺が何ともないような顔でそう言うと下級生たちは「うげぇ…」とでも言いたそうな、苦虫でもかみつぶしたかのような顔をした。

 実際、過去に確かに存在した『”個性”至上主義』者たちは”無個性”に人権はないと言い張った。昔のヒーローたちの中にもいたのはいたそうだが今ではそう言った思想を持つものはヒーローとして不適正であり、”無個性”でも”個性”を持っている人と変わらないということになっている。”無個性”(マイノリティ)だとしても人権は確かにあると国は認めているのだ。

 

「さて、ここまで大事になっちまったんだ。まーた職員室に行かなきゃならんかねぇ…」

 

 俺は後頭部を掻きながら下級生たちの前でそう呟いてため息を隠さずについた。

 

 

 

 

 

「やっと聴取終わったよ……。つーか、この記事の変異系の”個性”持ちによる銀行強盗で犯人は未だに逃走中って近所が物騒だなおい…」

 

 警察が来るほどの騒ぎになってしまった今回の一件でさらに職員室に閉じ込められて色々と聴取された俺はげんなりとした表情を隠せずに出久と大体待ち合わせている公園に向かっていた。

 歩きスマホをしながらニュースサイトを見ていると近所で起きた銀行強盗の犯人が未だに捕まっていないことが記されており、近所が物騒だと一人嘆く。

 

 BOOOM!!

 

 そんな風に一人ぼやいたりしつつ歩いているとちょっと離れた商店街の方から耳慣れた爆発音が聞こえた。

 

「いや……まさか…な?」

 

 嫌な予感と”風”をビンビンに感じつつそちらの方へ歩いていくとそこには人だかりができていた。人の壁の向こうからは怒声と叫び声、そして聞きなれたドアホの必死な声が聞こえてくる。

 

「おいおい何やってんだよあの爆発魔!?」

 

 人の壁をすり抜けて最前列に飛び出した俺の視界に見えたのは

 

おおおおお

 

 必死に何かに抵抗するかのようにヘドロまみれになりながら大暴れしながら()()()()()()()()()こちらを見る爆発魔と、ヒーローたちが手をこまねいている様子だった。

 

「!!」

 

 周りは誰も見てるだけで動かなかった。動こうとしなかった。俺には全員が全員自分に責任が来ないようにしようとしているようにしか見えなかった。

 

 「あぁああああああああああああああああああ!!!」

 

「」

 

 考えるよりも早く、頭よりも先に体が動いた。人の壁から飛び出すように、勢いよく()()()は飛び出した。

 

『!?』

 

 周囲から驚いたような気配が流れ込む。

 

 「バカヤロー!!止まれ!!止まれぇぇええええ!!」

 

 俺たちを止めようと人の壁際に居たヒーローが声を張り上げるが、そんなの無視だ。

 今すぐ横にも誰かが飛び出しているような気がしてチラッと横を見る。出久が目の前しか見えてないような様子で、必死な形相で俺と同じようにあの爆発魔の方に向かっていた。

 

「爆死だ」

 

 そう言いながらヘドロの方が爆発魔の体を操作するように動いてこちらに掌を向けようとする。

 それを見て、直感的にヘドロを吹き飛ばせばいいような気がした。

 

「シッ!!」

 

 両方の手のひらを合わし、さらに一歩踏み出しながらあることを考える。

 

 掌で…()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

 それは、”個性”黎明期に連載されていたあるマンガに乗っていたセリフ。出久がオールマイトにあこがれて”無個性”でもヒーローを目指したように、俺はそのマンガにあこがれて”空”を目指した。

 

「うぉおおおおおお!!

 

 出久が鞄をヘドロに包まれた爆発魔のものとは違う顔のパーツらしき物体がある場所にたたきつけるのと同時に俺もずっと鍛え続けて最近ようやく不完全ながらも再現できかけていたそれを出久に向けて突き付けられようとしていた左手に叩き付ける。

 

 風を掴んで纏め。壁を作り。それでできて見えない壁を叩き付ける。

 

 言葉にするのは誰でも簡単にできる。だが、実際風なんか掴めないって言うのがみんなが考えていたことだ。

 俺も散々笑われた。笑わなかったのは出久だけだった。

 

 俺だって爆発魔は嫌いだ。だけど、助けを求めるその顔に感情論で優先順位(トリアージ)なんかつけられねぇっての!

 

 両手で持った見えない壁を下に向かって叩き付けたことでヘドロが操って上がっていた爆発魔の右手が下にたたきつけるかのように下がった。

 たったそれだけ。俺にできたのはホントそれだけだった。

 ほとんどぶっつけ本番のようにやった風の壁は俺の背中の筋肉を傷めつけた。ブチブチブチと嫌な音が背中中から聞こえてくる。

 その激痛で俺は顔をしかめ、立ち続けることすらできずにその場に倒れこんだが、確かに俺がしたことの意味はあった。

 

 「かっちゃん!!」

 

 俺が作り出したその一瞬で出久は無事に爆発魔の顔のすぐそばのヘドロを握りしめて引きはがし始めていた。

 

「なんで!!てめェらが!!」

 

 必死にヘドロをはがしながら爆発魔の問いに出久はこう答えた。

 

「足が勝手に!!何でって……わかんないけど!!」

 

 出久はそこでいったん言葉を区切り、素直な表情で告げた。

 

「君が助けを求める顔してた」

 

「」

 

 その出久の言葉にどこかで誰かが息をのむ声がした。

 

「もう少しなんだから邪魔するなァ!!」

 

 抵抗に出久も加わったことで焦りでもしたのか、ヘドロがそう言って出久にどろどろとした腕を叩き付けようとする。

 

「出久!!」

 

 背中中に激痛を感じながら俺は…

 

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

 

 

ブチッ!!

 

 激痛を意思で無理やり抑え込んで出久とヘドロの間に飛び込んで再び風を掴んでから壁を広げた。壁が何かを受け止めた瞬間、背中で何か致命的なものが切れた音がした。

 

「無駄死にだ!自殺志願かよ!!」

 

 そんな声が聞こえた気がした。けど、死ぬ予感は一切しなかった。なぜなら

 

「「「!!?」」」

 

 ガシッと立派な腕が俺たち三人の腕をつかんだからだ。

 

「君を諭しておいて…己が実践しないなんて!!!」

 

 俺たちのすぐそばで力を溜める彼は

 

「プロはいつだって命がけ!!!!!!!!!」

 

 血を何故か吐きながら拳を振り上げて叩き付けた。

 

 「DETROIT SMASH!!」

 

 振り抜かれた拳によってヘドロは全て空へと細切れにされながら飛び散っていく。

 そして俺の背中にうっすらと垂れていた何かも空へと背中を駆け抜ける風に連れられて吹き飛ばされていった。

 

 空へと翔け上がった空気は上昇気流となり、ぽつりぽつりと雨を降らした。

 すぐ横で気絶している爆発魔と出久と違って、俺は背中中から感じる激痛のせいで気絶することすら許されずに背中からあふれてくる生暖かい液体でできた水たまりに浸かっていた。

 

「!!」

 

 周りの一切動こうとしていなかった人たちが盛り上がっている。何か叫び声をあげて盛り上がっている。だけど、激痛のせいでまともに意識を保つことすらできない俺はノイズ塗れの視界の中で悶絶していた。

 

「少年!!少年!!大丈夫か!?」

 

 気絶すら許されない痛みが原因で悶絶する中、ただ平和の象徴が俺を心配して腕を掴んでいることだけが五感全てを使って最後に感じ取れたすべてだった。

 

 意識が混濁している状態である上に、背中側から大量に謎の出血をしていることもあってこの場所から動かすのも危険だということで俺はその場で治癒系の”個性”持ちのヒーロー?、医者?に治療されたらしい。らしいって言うのは、俺がその時まともに意識を保っておらず、獣のように唸り声をあげて悶え続けていたせいか記憶があいまいではっきりしないからだ。

 

「ってぇ……」

 

 俺の意識がちゃんと正常に戻ったのは、あのヘドロが全部回収され、出久がすぐそばでヒーローたちに無駄なことをなぜしたのだ。黙って見ていればよかったのだと滅茶苦茶怒られ、爆発魔が少し離れたところでそのタフネスを理由にべた褒めされている所だった。

 

「そいつはちっとおかしいんじゃないですかね?」

 

 そんな状況にあまりにも我慢ならんかった俺はまだ少し痛む背中のことを無視して出久を庇う様に立った。

 

「君もだ!!なぜあの場で飛び出した!!我々ヒーローにすべて任せて君たちは見ているだけでよかったのに!」

 

「それがおかしいっていう話ですよ。俺たちが飛び込んだタイミングであのヘドロは『あと少し』と言っていた。てことは、あとちょっとであの爆発魔が完全にヘドロに取り込まれてたか何かが起きてたってわけで。そんなだっていうのにアンタら何もしてなかったじゃないか。中坊とは言え人命かかってんだぞ!!何かミスってスポンサーとの信用問題にでもならないように自己保身か!?最後に至っては爆発魔の爆発収まってたし消火もある程度済んでたんだからそこの消防士っぽいヒーロー。そう、あんただ。アンタが高圧水流ぶっ放せば事態解決は無理でも時間稼ぎぐらいできただろ!!」

 

 最後に至ってはガキの理屈を自分勝手に並べているのはわかっていた。でも、俺らが一方的に責められるのはおかしいと思っていたから俺は声を荒げながら抵抗した。

 

「誰かを助けるために理由もなく動くのがヒーローだろ!!スポンサーについてもらって金稼いでなんかのランキングとかに名を遺すためとは違うだろうが!!」

 

 これはずっと俺が思ってきたことだ。なまじ爆発魔というその典型例が身近にいたことが俺がそう考えたことの裏付けになっていた。

 

「はぁ……はぁ…」

 

 声を張り上げたせいで肩で息をする。

 

「”無個性”の俺にだってできる簡単なことが何でプロとしてやってるアンタたちにできねぇんだよ……」

 

 そう掠れそうな声で呟いてから俺はその場に頭を抱えながらふらふらと座り込んだ。さっきまで血を流していたのが、激高したことで一気に貧血という形で表面化した影響だった。

 

「”無個性”?あんなことをして?」

 

 俺のつぶやきに俺を責めていたヒーローの一人が反応した。

 

「君は嘘を言っているね。君が”無個性”ならあんな芸当できるわけがない。」

 

 そう言いながら勝手に俺をウソつき認定してそのヒーローはその場で振り返ってどこかへと行ってしまった。

 

「そうちゃん大丈夫?」

 

 出久が俺を心配して声をかけてくる。

 

「大丈夫だたぁ思うが……ま、レバーでも帰りに買って食うわ。」

 

 俺は出久を心配させないようにそう力を絞り出して答えた。

 

 

 

 夜は更け、電灯がぽつぽつと一部で点き出した位に俺たちはようやく解放された。

 

「イテテテ…」

 

「そうちゃん本当に大丈夫なの!?」

 

 そんな会話をしながら家路を進む俺たちに後ろから声がかけられた。

 

「クソナーズ!!」

 

「あ゛?誰がクソじゃ!」

 

「!」

 

 俺は苛立ちを覚えながら振り返る。そこには今にも噴火しそうな顔をした爆発魔が立っていた。

 

「てめェらに救けを求めてなんざねぇぞ………!」

 

「救けられてもねェ!!あ!?なあ!?一人でやれたんだ!!」

 

「無個性の出来損ないどもが見下すんじゃねえぞ」

 

「恩売ろうってか!?見下すなよ俺を!!」

 

「「……」」

 

 デクはポカーンと、俺は呆れながらそれを見ていると

 

「クソナーズが!!」

 

 と、行って爆発魔は勢いよく反転してそのままぶつぶつと言いながら逆方向へと去って行った。

 

「負け犬の遠吠えか、有意性が崩壊したと無意識に感じたか。どっちかねぇ…」

 

「?そうちゃんそれどういう意味?」

 

「さぁてね。帰ろうぜ、出久。」

 

「そうだね。帰ろっか…帰ったらオールマイトに謝んないとなぁ……

 

「?」

 

 出久が何をオールマイトに謝るのか少し気になったが、深く突っ込まずに俺はそのまま歩き出そうとした……その時だった。

 

 「私が来た!!」

 

「わ!?」

 

「んなっ!?」

 

 オールマイトが目の前の十字路を左側からすごい勢いで走って現れた。

 

「オールマイト!?なんでここに…」

 

「さっきまで取材陣に囲まれてたじゃないですか!?」

 

 俺と出久が驚いて固まっているとオールマイトは

 

「抜けるなんてわけないさ!!」

 

なぜなら私はオールマゲボォッ!!!

 

「わー!?」

 

「なっ!?」

 

 オールマイトは俺たちの前で大量に吐血しながら一気に煙を放ち、その煙の中から出てきたのはガリッガリに痩せこけた男性だった。

 

「え?オールマイト……え?」

 

 俺が目の前で起きた現象に困惑していると、オールマイト?は

 

「あ、そう言えば君には見せてなかったね…」

 

 と、やらかしてしまったかのような顔をした。

 

「!?!?」

 

 平和の象徴のまさかの姿に驚いた俺がオールマイトにあこがれていたはずの出久の方を見ると出久はどこか達観したかのような表情でこちらを見て、カクカクと力なくうなずいた。

 

「ま……マジかぁ…」

 

 そんな出久の様子から今目の前に居るのはオールマイト本人だと確信した俺は、そのまま口の端をひきつらせたのだった。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「そんなわけで、このことはネットなどに書き込まないでくれ。」

 

「分かりました。……というか、”平和の象徴”にそんな深手を負わせる(ヴィラン)がいるなんて……」

 

 混乱したままの俺がオールマイトから受けた説明は主に4つ。

 

 その1

 5年前、とある(ヴィラン)(毒々チェーンソーとは違うらしい)との戦いでオールマイトは呼吸器官半壊と胃全摘出しなくてはならないほどの重傷を負っていたということ。

 その2

 今現在はあの姿を保つためにプールで腹筋を鍛えているように見せるように力んで変身している状態だということ。

 その3

 現在、彼がヒーローとして活動できるのは日に3時間が限界だということ。ただ、今日はあの爆発魔や俺たちを助けるためにそれを無視したらしい。一応、活動自体は可能だが3時間以上の長時間の持続は不可能のようだ。

 その4

 これらの事実は世間にはオールマイト自身の意思でごく一部を除いて伏せられているということ。

 

「そう言えば、少年。君はバリア系の”個性”の持ち主なのかい?彼から聞いていた話だと”無個性”ということだったが、先ほどはバリアのようなものを貼っているように見えた。それはどういうことなんだい?」

 

 俺が告げられた事実を噛み砕きながら理解しているとオールマイトは少し不思議そうな顔で俺に尋ねてきた。

 

「俺はどこまで行っても”無個性”ですよ。ただ、マンガで見た技を再現しようと無茶やってたまたま成功しただけです。」

 

「マンガで見た技を!?それは一体どういうことだい?」

 

 どうせ笑われるそんなことを思いながら俺がありのままのことを告げるとオールマイトはそのくぼんだ眼を見開いて顔を近づけて聞いてきた。

 

「最初に中国で光る赤ん坊が見つかったころ、講談社の週刊誌で『エア・ギア』ってマンガが連載されていたんです。うちは親父がその頃のマンガが好きで集めていたので沢山あって。その中にそれが混ざっていたんです。」

 

「『エア・ギア』…聞いたことのない名前だ。少なくともかなりマイナーな部類のマンガということかい?」

 

 俺はオールマイトの問いにうなずいて

 

「当時はかなり人気作だったらしいんですけど、個性でその作品に出てくる技がある程度再現できたせいか技だけ有名になってマンガの存在は忘れ去られてしまったらしいんです。」

 

 少し残念に思いながら告げ、続けた。

 

「俺は出久と一緒で4歳のころに医者に『足の小指に関節が2つあるから確実に”個性”は発言しない。』と断言されました。そしてずっと笑われ者に、ひどいときは”個性”持ちたちの”個性”の実験台にされてきた。だけど、俺は幼いころからなぜかずっと”空”にあこがれていて、ヒーローとして”空”を掴みたかった。その関係で親父の書斎のマンガに逃げた結果俺はその作品にはまり、最終的にその作品に出てくる”風の道”を再現しようと思ったんです。」

 

 未だに少し痛む背中を少し揺らしてから俺は続けた。

 

「一昨日位にずっと家でやってた作中に出てきた風を掴むための訓練の効果らしきものが出てきてたので、あの時はほとんどぶっつけ本番状態で”風の道”の技を再現したんです。風を掴んで固め、それを面で相手にたたきつける。ただ言葉にするのは簡単ですが、実際やったらそのたった二回で背中中血まみれになってしまったですけどね…」

 

「そうか……」

 

 自嘲するかのように告げた俺の言葉にオールマイトは少し考え込むようなそぶりを見せてから俺と出久、両方を視界にとらえたうえでつづけた。

 

「聞きたかったことはそれだけだ。それじゃあ本題に入ろう。私は君たちに礼と訂正…そして提案をしに来た。」

 

「へ?」

 

「礼…?そんな礼なんか言われるようなことを俺たちしたっけ?」

 

「出久少年、君が居なければ……君の身の上を聞いていなければ口先だけのニセ筋になるところだった!!ありがとう!!」

 

「ニセ筋て……」

 

「ニセ筋…」

 

「そんな…いやそもそも僕が悪いです!仕事の邪魔して…”無個性”のくせに生意気なこと言って…」

 

 落ち込んだ表情を浮かべながら出久は言う。その顔を俺は見たくなくて

 

「いや、出久が悪いなら俺もっと悪いだろ。」

 

 と口を挟もうとしたら

 

「そうさ!!」

 

 オールマイトは力強く言い切った。

 

「あの場の誰でもない。小心者で”無個性”の君や、出久君から同じ”無個性”だと聞いていた蒼汰君。君たちだったからこそ私は動かされた!!」

 

「トップヒーローたちは学生時から逸話を残している……彼らの多くが話をこう結ぶ!!」

 

 ドクン…

 

 オールマイトの口から紡がれるその言葉を聞いて、体の奥の方で何かが動き出した音がした。

 

『考えるより先に体が動いていた』と!!」

 

 身体の奥から熱がこみあげてくる。それは俺のなかで嵐を巻き起こし感情の制御がまったくできなくなる。

 

 「君たちもそうだったんだろう!?」

 

 「ん……」

 

 「………うん…」

 

 溢れだした感情が零れ落ちないように両手を握りしめ、歯を食いしばりながら上を向いた顔の横を辿る様に熱い流れが両ほほに一筋ずつのラインを描き出す。

 

 「君たちはヒーローになれる!!」

 

 その日、俺は真っ暗闇の中で照らされた夢を掴むためのスタートラインをやっと見つけ出した。

 これは無個性でもヒーローを、”空”を目指した俺の熱い高校時代の物語。

 

架空(ゆめ)」は「現実」になるのだと、それを俺たちが証明しようとした物語だ。




 多分、こんな感じで現在⇒過去⇒現在ってループしながら話を進めていくと思います。

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 あと、途中に出てきた”個性”至上主義って言うのはオリジナルの設定ですが、あの世界の感じだと絶対表に出てないだけでいると思ったから書きました。
 それとヒーローたちへ蒼汰が吐いた毒舌は、俺自身が原作を読んでいるときに思ったことを代弁してもらっています。
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