意外と時間がかかるんだねデュエル小説って。
「結局カードは買えなかった……」
唯一手に入れたのは店主が慈悲でくれた一枚のモンスターカードのみだった。
「しかも手に入った唯一のカードがこれか……」
マリクは一枚のカードを目の位置まで持ち上げる。そのカードの絵には生きた万力が赤い電気を放出しているような魔物の絵が描かれていた。
――『
顔をしかめるマリクにリシドは『まぁまぁ』となだめる。
「最低限のカードはデッキに入っているみたいですね。一応参加者は必ず一枚レアカードが初期のデッキに入っているようです」
リシドは自分のデッキに入っていたカード、『アポピスの化身』をマリクに見せる。デュエルリンクスの世界ではウルトラレアカード。つまり最高ランクのレアカードだ。
「どれどれ、僕のは……ッッ!」
マリクがデュエルディスクからデッキを取り出す前に何者かに襲われてしまう。
「が、ぐぁ……!!」
「マリク様! ぐぅッッ!?」
マリクに続き、リシドも襲われ気を失ってしまう。マリク達を襲った黒布の男たちは彼らを連れ去って行ってしまった。
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「う、こ、ここは……!?」
『お久しぶりです。マリク様』
声の主の方に顔を向けると、そこにはかつてマリクが結成したレアカード犯罪集団『グールズ』のレアハンターたちがいた。
「お前たちは! レアハンターの……!!」
「えぇ、懐かしいですな。元総帥」
レアハンターの中でもやせぎすの男が前に出てくる。
「元……? グールズはもう……」
「はい。一度は壊滅しました。しかし、新たな総帥の元で再び『グールズ』は蘇ったのです」
やせぎすのレアハンターは両手を広げ、高らかに声をあげる。
「ちなみにここには誰も助けに来てくれませんよ? ここは裏デュエル空間。我々が作った非公式の電脳空間ですからねぇ」
「元の技術さえ盗めばお手の物」
――なるほど……今度は『デュエルリンクス』の中で違法行為を極秘裏に行うつもりか。
「その新たな総帥というのはだれだ?」
「言う必要はありません、なぜなら……」
レアハンターたちは醜悪な笑みを浮かべ、後ろを振り返る。そこには全身を切り裂かれ、重傷を負ったリシドがいた。
「り、リシド……!!」
マリクの目が絶望と底知れぬ怒りに染まる。
「あなたも、
「き……貴様ら……よくも、よくもぉッッ!」
下品な笑い声を上げ、レアハンターたちはデュエルディスクを構える。
――ッッ!?
マリクの怒りが頂点に達した瞬間、彼の頭を鋭い痛みが襲う。
「う……!! ぐぁ……! うぐぁあ……!」
「な、なんだ? こいつ急に様子が……」
レアハンターは急に苦しみだしたマリクに驚き、唖然としている。次の瞬間、マリクの動きがピタリと止まる。ゆっくりとレアハンターたちに視線を戻すマリク。
「……ふふふ」
「……?」
様子がおかしいマリクにレアハンターたちは怯む。
「ふ、フハハハハハッッ!! ついに! ついにやったぜ! 再びこの肉体の主導権は
「!? よ、様子が変だぞ……?」
マリクは満足げに彼の腰につけられていた千年アイテム……千年ロッドを手に取ってまじまじと見つめる。
「ほぅ~、海馬のやつもなかなか粋なマネをするじゃないか。この俺に再び千年ロッドを持たせるとはなぁ」
――だが海馬がこの千年ロッドを作り出し、俺に渡す……ということは、間違いなくこれは偽物のはず。
しかし、マリクは自分が今持っている千年ロッドが偽物だとはとても思えなかった。
「マ、マリク様のひ、額に目の紋様が……!!」
「い、いったい……何が……」
「ん、そうか。貴様らには主人格様に俺の存在を教えてもらってなかったなぁ……くくっふふははっ……」
マリクの闇人格、闇マリクの額にはハッキリとヴィジャド眼の紋様が光を放ち、レアハンターの周りをどす黒い闇が覆っていた。
闇マリクとなった今のマリクの姿は、以前とは完全に別人だ。
「さぁて……復活祝いに誰を闇の生贄にしてやろうか……ふぁははは……ッ!」
髪は逆立ち、その瞳には表の人格にはないほどのすさまじい狂気に満ちていた。闇マリクは喜悦に顔を歪め、ちらりとレアハンターたちを見つめる。
「へ、へっ! 笑わせやがって……クズカードしか入っていないデッキでやれるものならやってみるがいい!!」
やせぎすの男がデュエルディスクを構え、前に出る。闇マリクは『決まりだなぁ』とやせぎすのレアハンターの勝負を受けデッキをディスクにセットする。
『デュエル!!』
互いの新型デュエルディスクから青の閃光が交差する。
「私のターン!」
レアハンター:手札 4枚
――くく、貴様ごとき私の《エグゾディア》デッキで粉砕してくれる……!
レアハンター:手札 4枚→3枚
「私はモンスターをセットし! ターンエンド!」
レアハンターのフィールドに裏守備表示のモンスターが浮かび上がる。『それだけかぁ?』と闇マリクは笑い声をあげデッキに手を伸ばす。
「俺のターン! カードドロー」
闇マリク:手札 4枚→5枚
――デュエルリンクスのルールでは、デッキは最低20枚。モンスター、魔法、罠はフィールド魔法を除き3枚まで……ふふふ。貴様の戦術がモノを言わせる環境じゃないか。
闇マリクはピンッと自分の持つカードを指ではじく。
闇マリク:手札 5枚→4枚
「行くぞ!! 『
《
ATK/1200 DEF/1400
闇マリクのフィールドに仮面を被った三つ首の怪物が姿を現す。『けけけ』と不気味な声をあげている。今にもレアハンターに飛びかかっていきそうだ。
「は、はは! たった攻撃力1200のモンスターに何ができるというんだ!」
「さぁて……何ができるかねぇ……。バトルだ! 『
マリクのモンスターは『ギャギャギャ!』と叫び声をあげレアハンターのセットモンスターに飛びかかる。
自分のモンスターが攻撃されるというのに、レアハンターは余裕の笑みを浮かべている。
「くく……私のセットしたモンスターは……『幻影の壁』!! 守備力1850だ!」
レアハンターのセットモンスターが《
「『幻影の壁』と戦闘したモンスターは持ち主の手札に戻る! ふふふ、これでお前のフィールドはガラ空きだ!!」
――さぁ、焦れ。私のモンスターのダイレクトアタックがくる、来てしまう、と!
「ふ、フハハハハ……。なかなか味な真似をしてくれるじゃないか……フへへへァ……」
――ッッ!? な、なんで……なぜ笑う?
闇マリクはなんてことないと言った風に不気味に笑う。戦闘に負けたことでマリクのライフが減っていく。
闇マリク LP:4000→3350
圧倒的に不利な状況で不気味な笑みを浮かべるマリクに動揺するレアハンター。まるで先程までフィールドにいた『
――少なくても私の知るマリク様はこんな気持ちの悪い笑みを浮かべなかったぞ……!?
「さぁて……『デュエルリンクス』ではバトルフェイズの後のメインフェイズ2はない。これで俺はターン! エンドだ! さあ! 貴様のターンだ!!」
「くっ……わ、私のターン」
レアハンター:手札 3枚→4枚
やせぎすのレアハンターは苛立ち気味にデッキからカードをドローする。手札には《エグゾディア》のパーツカードが1枚。
――な、なに。ビビることはない。ヤツのデッキに入っているのは所詮、雑魚モンスター。それに……
やせぎすのレアハンターは自分の目につけた特殊コンタクトレンズでデッキのカードを見つめる。
彼はデッキの上から何番目に《エグゾディア》のパーツカードがあるかがわかるのだ。
――私の手札にあるのは『封印されし者の左腕』! 残りの《エグゾディア》パーツはあと7ターンで揃う! それまで耐え忍べば私の勝ちだ。
自身に満ちた目でマリクを見つめるも、逆に嘲るようにマリクはレアハンターを鼻で笑う。
「貴様のデッキなんぞ、すでに見破っているよ……フフフ……」
――くっ……だが貴様のデッキに私の壁モンスターを突破できるほどのモンスターなんていないはずだ。だが……
レアハンターは冷や汗を額に浮かべ、手札のモンスターカードに手を伸ばす。
――相手は腐っても元グールズ総帥。油断するわけにはいかない。
「マリク様! あなたは7ターン後! 後悔することになりますよ!!」
レアハンター:手札 4枚→2枚
「モンスターを裏守備表示!」
レアハンターのフィールドに守備表示のカードが浮かび上がる。まだカードの真の姿は見えない。
しかし、レアハンターのターンはこれだけでは終わらない。
「さらに魔法カード! 『強欲なカケラ』を発動!」
レアハンターは『くくく』と笑いながらもう一枚のカードをディスクに表側表示でセットする。
「2ターン後の自分のターン、私は通常のドローに加え! このカードを墓地に送ることでもう2枚カードをドローできる!! 私のターンは終了だ!」
――なるほどねぇ。早めに《エグゾディア》を手札に加えるつもり、と。
闇マリクは主人格の記憶を通し、すでに目の前の相手の戦術を見破っていた。ちらりとマリクは自分の持つ手札に視線を移す。
彼の持つ手札
――だが貴様はもう終わっているんだよ。俺の手札にこのカードがある時点でなぁ……。
「俺のターン!!」
闇マリク:手札 4枚→5枚
マリクはカードをドローし、ニンマリと笑う。
「喜べよぉ……これで貴様の闇行きは確定した。しかも、わりとえげつない方法でなぁ……」
「な、バカな!! 貴様のデッキにはロクな攻撃力のモンスターは入っていないはず!! 私の壁モンスターを突破できるわけがない!!」
「……確かに。今の俺のデッキでは貴様のフィールドにいる『幻影の壁』。守備力1850を超えるモンスターを、
追い詰められているというのに『フフフ』と笑い、レアハンターのモンスターに指をさすマリク。
「それにそのリバースモンスターもそれなりの守備力を持っているんだろう?」
マリクがデュエルディスクにセットしたのは……主人格の初期デッキに入っていた、たった一枚のウルトラレアカード。
「な……? わ、私のモンスターが……!」
レアハンターのフィールドにいた『幻影の壁』と、伏せたはずの『ビッグシールドガードナー』が、突然溶岩に飲み込まれ溶けていく。
「な、なにをした!?」
「そう焦るなよ。ただ『生贄』にしただけだ……!」
レアハンターが怪訝そうな顏をした瞬間。溶岩に飲み込まれた彼のモンスターと同じように彼の全身が燃え、足が溶岩に溶けていく。
「う、うぁぁぁあああああああああッッ!!! い。いやだぁ!! た、助けてくれぇ!!」
「ハハハハハハッッ!! ――ッッ、いいねぇ! 心地いいよ! もっと苦痛の叫びをあげろぉ!! フハハハハハッッ!」
悶え苦しむレアハンターを見て爆笑する闇マリク。なんと猟奇的で残酷なのだろうか。試合を観戦しているレアハンター達もつい目を背けてしまう。
――これは闇のゲーム。幻想が実態となり、モンスターの苦痛はプレイヤーにも襲い掛かる。まさに『死のゲーム』。
「が、あぐぁッッ! 殺す……殺してやるこのガキィ……!!」
「いいね……その表情。そそるぜぇ」
憎しみに満ちた目でレアハンターはマリクをにらみつける。だがマリクは怯えるどころか、彼の反応を嬉々として嗤う。
「もっとだ! もっと憎しみを抱け! それが極上のスパイスになる!!」
そして突如レアハンターのフィールドに出現し、彼のモンスターを飲み込んでいった溶岩が隆起し生き物のようにうごめく。
「さぁ! よく見な!!」
レアハンターは驚愕に目を見開き、目の前に現れた巨大な溶岩の魔神を見上げる。
「な、なんだ……?」
「こいつは貴様のモンスター2体を生贄にして、貴様のしもべとなるのさ!!」
――うぼぁぁぁあぁぁあああああ…………ッッ!!!
世にもおぞましい雄たけびをあげ、魔神の姿が露わになる。溶岩で出来た胴体には蠢く骸骨に、ゆらゆらと揺れる鉄檻。くさびをいくつも撃ち込まれた、その巨大な姿は見るだけでも嫌悪感を沸かせる。
「『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』!!」
《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》悪魔族/効果モンスター
ATK/3000 DEF/2500
「こ、攻撃力3000……? こ、こ、こんなバカな」
「おっと! 勘違いするなよ。それは貴様のしもべだって言っただろう? 喜べよォ、攻撃力3000のモンスターを操れるんだぞ?」
――私が、操る……?
レアハンターは手札にある他のモンスターを見つめる。
――こいつの攻撃力はたった500だが……。マリクのライフは3350。これでダイレクトアタックが通れば……!!
「《ラヴァ・ゴーレム》を召喚するこのターン、俺は他のモンスターを召喚できない」
マリクは一枚リバースカードを伏せ、ターンを終了させた。
「……!! 私の、ターン!」
レアハンターは手札にきた『封印されしエグゾディア』を見てニヤリと笑う。『強欲のカケラ』の発動は次のターン。そうなればどの道あと4ターンで《エグゾディア》は揃い、レアハンターの勝利は確定する。
「ラヴァ・ゴーレムの効果で、貴様は自分のスタンバイフェイズに1000ポイントのライフを削られ――」
「構わん!! これでどの道、貴様は終わりだぁ!!」
レアハンターは攻撃力500のモンスターを召喚し、バトルフェイズに移る。
レアハンター:LP 4000→3000
「死ねぇ!! 『ラヴァ・ゴーレム』でダイレクトアタック!! ゴーレム・ヴォルケイノォ!!」
『ラヴァ・ゴーレム』は両手から火球を生み出し、マリクに一斉投擲。トドメに口から溶岩ブレスを放ち、レアハンターが召喚したモンスターもマリクに攻撃を仕掛ける。
マリクは苦痛に顔を歪め、『ラヴァ・ゴーレム』の攻撃のせいで全身から煙があがっている。
「ハハハッ!! バカめ!! なぜ私にモンスターを渡したのか知らんが、負けたのはお前の方だったな、クソガキ!!」
口から煙を吹くマリクに対して唾を飛ばし、レアハンターは高笑いをあげる。試合を観戦していた他のレアハンターも『驚かせやがって』と安堵の表情を見せる。
「どうだ!? あぁ? 何か言ってみろよ元総帥よぉ! ハハハハハ!!」
「……ぃい」
「あ?」
伏せられていたマリクの顔が徐々に持ち上がっていく。
「気持ちいいぜぇ!! デュエルが思い通りに進むのはなぁッッ!!!!」
歪み切ったマリクの顔はこの場にいる全員に恐怖を与えた。
「……は?」
「俺のターン!!!」
――ど、どうして……もうマリクのライフはゼ――
闇マリク:LP 3350→2850
「随分と焦っていて気づかなかったようだからなぁ……説明してやるよ。俺は貴様のメインフェイズ終了前にこいつを発動していたのさ」
マリクは自分のフィールドにわずかに残った、燃える黒蛇の肉片に指をさす。それは……リシドが持っていたウルトラレアカード、罠モンスター『アポピスの化身』。
「『アポピスの化身』は相手か自分のメインフェイズに発動できる
「な、じゃ、じゃあ……」
やせぎすのレアハンターはわなわなとふるえる指で自分のフィールドにいる攻撃力500のモンスターをさす。
「そう、俺が受けたのは……攻撃力500のモンスターのダイレクトアタックのみ」
よって、デュエルは続行。
バトルフェイズにできることが何もなくなったレアハンターはターンエンド。
――リシドからカードをくすねておいて正解だったぜ。
「……ぁああ」
「ほぅ、どうやらバカではないらしいなぁ」
――ようやく気づいたか。貴様のデッキ構築ミスに。
「貴様は、《エグゾディア》に頼りすぎたんだよ。『デュエルモンスターズ』には優れた守備力をもつレベル4以下のモンスターは、貧弱な攻撃力しかもたない」
どんなモンスターにもメリット・デメリットが存在する。それを構築で補い合うのが強きデュエリストだ。
「つまり、俺のデッキにある雑魚モンスターでも貴様の攻撃は防ぎきれるわけさ。元々、貴様のデッキは、相手のライフをゼロにするデッキじゃないだろうぉ?」
――トラップが少なすぎる。魔法も最低限、ドローに必要な物しか入っていない。デッキの枚数が30枚まであるとはいえど、余計なカードは入れられない。
「肝心のエグゾディアが来なくなっちまうからなぁ、フハハハハハッッ!!」
「うぁぁぁ……」
マリクはモンスターをセットし、絶望しきり泣き崩れるレアハンターをニヤニヤと見つめる。
「さぁ! 貴様に残されたのはあと3ターン!! どうにかして《エグゾディア》をそろえてみろよォ!! フハハハハハッッ!!」
――まぁ無理だろうな。『強欲の欠片』を引く前に『あと7ターン』と貴様は言った。見えているんだろう? 貴様のデッキのどこにエグゾディアがあるのかを。
「ターンエンド!」
「わ、わたしの……私のた、-ん」
『ラヴァ・ゴーレム』の身体から落ちた溶岩がレアハンターを襲う。激痛と共に訪れるのは死へのカウントダウン。
レアハンター:LP 3000→2000
レアハンターは恐る恐るデッキからカードを引いた。『強欲のカケラ』を使っても、引いたのは《エグゾディア》のパーツと攻撃力500未満のモンスターカードのみ。
「さ、サレンダー……」
「認めねぇよ。最後までデュエルをしなぁ」
無常にもマリクは戦意を失ったレアハンターに言い放つ。
マリクは『どうなるのか、わかっているのか』と千年ロッドを構える。
――降参なんぞで逃がしはしない。じわじわと迫る死の恐怖に怯えて、あと一枚の《エグゾディア》パーツを目の前にして! 貴様は敗北するんだよ。
「俺はサレンダーが大嫌いでねぇ、悪いなぁ。フハハハハハッッ!!」
「ら、ラヴァ・ゴーレムで、攻撃」
その後、レアハンターはカードを引き、攻撃はするも決定的な一撃は与えられなかった。
レアハンター:LP 1000
マリクがターンエンドを宣言する前にレアハンターは勝負を放棄して、マリクに泣きつこうとする。試合を観戦していたレアハンターも懇願する。
「も、もう許してくれ!! 俺達は命令されただけなんだ!!」
「たのむ、エンド宣言だけはしないでくれぇ!!」
「マリク様ぁ!!」
「……ぁ」
マリクとデュエルをしているレアハンターはすでに廃人一歩手前だった。服はほぼ焼け落ち、下着以外燃えカスだ。目も虚ろになり、焦点が定まっていない。
「おぉおぉ、気持ちいいね。生を求め懇願する。さすが主人格様が作った『グールズ』だけあるなぁ!! フハハハハハッッ!!」
「で、では……!」
闇マリクは機嫌が良さそうに高笑いをあげる。彼の機嫌の良さそうな姿を見て、一時でもレアハンター達は希望をもってしまう。
「ターンエンド」
そして、『ラヴァ・ゴーレム』は邪悪な笑みを浮かべ、レアハンターにとどめの溶岩を垂らした。
レアハンター:LP 1000→0
勝者、闇マリク。
「さぁて。俺は今、すこぶる機嫌がいい。闇への生贄はこいつだけで勘弁してやる」
「た、たすけ、て……マリク様……!」
試合が始まる前の余裕たっぷりの姿は、もうやせぎすのレアハンターには見られなかった。今あるのは生殺与奪の権利を持つマリクに
やせぎすのレアハンターは他のレアハンターに助けを求めるも、誰も彼を見ようとはしない。ただ自分たちが助かったことに安堵するのみだ。
「さぁ……! 覚悟はいいかぁ?」
「で、できてないです!! お願いします! 助けて!!」
マリクは千年ロッドを構え、ニンマリと笑った。
「罰ゲーム!!」
今まで散々弱きものからカードを強奪してきたレアハンターは、悲鳴をあげ、『エグゾディア』と同じように闇から現れた鎖によって四肢を繋がれ『永遠の封印』と苦しみを味わった。