時間がががががが
高校からの帰り道。
炎天下の日差しの中、アスファルトに舗装された道がジリジリと熱される。
汗がジッと出てくる不快さも、もう慣れたとは言えやはり気になる。
だけど、それよりもーーーーー
「…ん?」
僕が見ていることに気付いたのか、隣にいる幼なじみがダルそうな眼差しをこちらに向ける。
坂井深夏。
僕の(一応)幼なじみ。
ふんわりとした髪は保温性が良さそうで、この季節には暑さがたまらない、らしい。とは言え、肩に届く程度に整えられた髪は、同年代の中では短い方らしい。
カッターシャツからちらりと覗く肌には、珠のような汗が浮かんでいる。
それが胸元にツゥ…と落ちて行くのを見ると、さすがにこう、幼なじみとは言えクるものがある。
視線をずらすと、紺のスカートからすらりとした脚が健康的に歩調を変えずに絶え間なく歩く。
ちら、とその横顔を見ると、もう興味を失ったのか、まっすぐ前を向いて歩いている。
ま、それもそうか。
僕は軽く肩をすくめて、その隣を、早すぎないように並んで歩いた。
坂井深夏。
昔は同じ児童福祉施設、いわゆる保育園で、そのまま小、中、高と同じ学校に通っている。
とはいえ、関係があったのなんてそれこそ小さい頃とか小学生の頃くらいで、それも高学年になると微妙な男女間の距離が出来たし、彼女の好きな人はクラスの格好いい男子の一人だったし、中学校ではずっとクラスが違った。
まあ、だからこそ高校で隣のクラスだと知っても、妙な居心地の感じこそあれ、関係が切れなかったんだろう。
もっとも、隣のクラスだし、そもそも高校という新しい環境でわざわざ昔の自分を、それもかなり小さい頃の自分を知っている異性に関わるつもりなんて全くなかった。全くと言っていいほど、ではない。本当に全くなかったんだ。
恐らくそれは、隣にいる彼女も同じだろう。
中学では、誰と誰が付き合ってる、なんて噂は1日でバレたし(当時仲の良かった聖也に小さくて可愛い彼女が出来た時にはちょっと、いやかなり羨ましかったのはナイショだ。本田さん可愛かったし)、彼女にそういう相手は居なかったと思うけど、高校に入って三ヶ月もすれば居たりするかも知れない。
だからこそ、普通であればもう僕たちが交わることはなかったはずだ。そう、普通であれば。
今僕が坂井さんと一緒に帰っているのは、彼女のお母さんが入院したからだ。疾患、らしい。
入院期間は1ヶ月~長くて3ヶ月だそうだ。
旦那さんは長期出張中、祖父母は遠方。とはいえ彼女は一通り家事手伝いをしていて、自分のことは自分でできる、ということだ。
入院の間、一応登下校だけの付き添いを、という話が、彼女のお母さんとうちの母親で出たらしく(いい迷惑)、僕はしぶしぶ付き添いをしている訳だ。
…早く夏休み、入らないかな。