ポケットモンスターS   作:O江原K

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第123話 変化の時

 

その日、少年ゴールドはコガネシティでの初日を終えようとしていた。ポケモンたちは

ポケモンセンターに預け、自分は人間用の部屋にいる。この大都市の華々しさよりも

印象に残ったのは、最初はポスターでその存在を知り、興味を持ち雑誌や書籍を漁り、

さらに出演するテレビとラジオの番組情報まで調べた少女、アカネの存在だった。

 

『キュ————・・・キュワワ?』

 

『い、いや!違うってキヨシ!そういうことじゃないから』

 

ゴールドとオタチのキヨシローは会話ができた。ほとんど傷を負わず治療の必要が

なかったキヨシはゴールドと共にいて、あの娘に惚れたのかとニヤニヤしながら

聞いてきたのだった。ゴールドはすぐに否定するもすでに時遅く、

 

『キャッキャッキャ・・・キュオ———ッ?』

 

『・・・あんなトレーナーになりたいって思っただけだ。おれと同じ、エリートとは

 無縁のところからあんなに強くてポケモンとの絆も深いトレーナーになれたって

 いうんだからな。そう、目標とか憧れっていうのが正しい言い方で・・・』

 

『オッオオ、キャオ?キャオ?』

 

どこを好きになったんだと問い詰められる。顔か、それともあの豊満な胸なのか、

ゴールドが答えるまで解放しないつもりだ。彼が黙っても攻め手を緩めない。

 

『キュ————・・・オオオ?キュワッキュワ・・・』

 

そうか、アカネは胸だけでなく下半身も健康的で魅力たっぷりだった。そっちのほうを

気に入ったのかと笑い始めた。恥ずかしがることはない、俺たちの種族は尻の大きい

メスが人気なんだ。人間だって似たようなものなんだろ、とゴールドをからかった。

 

『・・・・・・ま、まあそれは・・・・・・』

 

ゴールドが折れかけたところで、そろそろ消そうと思っていたテレビにアカネが

登場した。二人は会話をやめて画面をじっと見つめ始めた。

 

 

『・・・そういえばアカネちゃん、アカネちゃんの好きな男の人はどんなタイプ?』

 

『そりゃあうちより強くないとアカン!ヘボトレーナーは名前どころか顔すらすぐに

 忘れてまうからなぁ。その日の朝ジムに挑みに来ても昼間にはもう覚えとらんわ』

 

満面の笑みで傲慢に語る。そんなアカネはゴールドにわかりやすいヒントを与えた。

 

『うちと仲よくなりたいんなら・・・コガネジムでうちと戦って実力を認めさせる、

 それが一番の近道や!挑戦者はいつでも大歓迎、でも明日は休みやから気をつけてや!』

 

もともとすぐに挑戦に向かうつもりはなく、彼女の前に立って恥ずかしくない力を

つけてからとゴールドは決めていた。圧倒的な力を持つオタチのキヨシはいいとして

他のポケモンたちの底上げを終えてから万全を期してアカネとの勝負に挑むと。

 

『コガネシティは広いし、あいつらのパワーアップにつながるものもたくさんあるはずだ。

 確かに一日でも早く実際に会ってみたい。でもここで我慢して訓練を続けるんだ』

 

『オッオッ・・・キュア————ッ』

 

コガネジムは女ばかりって話だからどこかで免疫をつけておかなくちゃな、と

オタチはゴールドの背中を尻尾で軽く叩いた。故郷にクリスという幼馴染は

いるもののそれ以外に女友達はほとんどおらず、しかも異性を意識したのは

これが初めてだ。これまでとは違った難しい戦いになるかもしれないという

警告の意味もあったが、ゴールドを茶化しているだけのようにも聞こえた。

 

『・・・どこかで女の子たちと遊べって?そんなヒマはないんだ。お前は

いつものようにそのへんのメスポケモンを誘えばいいさ。おれはいいよ』

 

 

ゴールドが希望に満ち、これから先の冒険を心から楽しみにしていた日々だった。

しかしそんなに時間が経たずにそれは終わりを迎えた。アカネとのバトルに敗れた

だけでなく、オタチが重傷を負い別れを決断したすぐ後に、その死を知った。

その日からゴールドの旅は全く変わったものになり、やがてチャンピオンの座を

手にするに至ったのだが、そこに真の輝きはないことを彼自身がよく知っていた。

 

 

 

 

 

『これは厳しいか————っ!バクフーン、混乱と痺れの二重苦でまともに動けない!

 あってはならない事態だが・・・ナツメの四連勝が確定的になった———っ!』

 

まさに完勝の流れだ。このまま放っておいても問題はないだろうがナツメは声を出す。

 

「さあとどめだ、かずみ!最後はやはり己の手で決着をつけないとな!」

 

「当たり前じゃない!終わりまで私に任せてくれたあなたに応える、この技で!」

 

モルフォンはエスパーポケモンではないが、最大の必殺技はやはりサイコキネシスだ。

 

 

「ハァ—————!!」 「ガッ・・・!フガァ~・・・・・・」

 

バクフーンが倒れ、地面に頭を打ちつける寸前にゴールドはボールを取り出し、

期待を込めて送り出したエースを戻した。バクフーンまでもが僅かなダメージを

与えることすらできずに戦闘不能となった。同時に、バトルの前に彼が口にした

『四体目までに勝負を終わらせないと』としていたその四体目が終わってしまった。

 

『バクフーン戦闘不能だ————っ!ゴールド大ピンチ———っ!!』

 

「やった———!!」 「うぱ————っ!!」

 

圧勝続きのナツメの快進撃にワイルド・ワンズの二人が飛び跳ねてハイタッチする。

当然アカネもガッツポーズをしながらすでに決着したかのように勝ち誇る。

 

 

「やりぃ————っ!どうやクソガキ!これがホンマの強者の力や!あんたが

 これまで防衛を続けてこれた、それはあんたがラッキーマンなだけやったと

 ハッキリしたなぁ!しょーもない雑魚ばかり相手にしてたんや!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「けどバカヅキも今日で終わりや。エエことばかりはありゃあせん!覚悟しとき!

 バトルは連敗、財布は無一文、あとはせやなあ・・・あんたのことや、ミカンや

 スパッツの姉ちゃんと毎日裸で一晩中遊んどる。ひょっとすると夜どころか丸一日

 かもわからんがうちは興味ない、どっちでもエエわ。ずっと何事もなかった。

 ところがある日電話が来るんや、月光仮面が来ないってなぁ!」

 

ゴールドを野次り、言いたい放題のアカネに対し抗議したのはミカンだった。

 

「ゴールドさんとそんなことはしていません!今はまだ!」

 

口喧嘩に慣れていないせいで、どこかズレた反撃になっていた。

 

「・・・・・・そーいうことじゃないでしょ・・・」

 

本人は大真面目に怒っているのだが、隣のクリスはすっかり自分の怒りは収まり

苦笑いしていた。このまま続けさせてもアカネの餌食になるだけなので、すぐに

ミカンを落ち着かせていったん後方に下がらせた。

 

「今はってことは・・・いずれはそういう関係になりたいってこと?」

 

「・・・!!あ、いや・・・その・・・あう」

 

「まあ・・・あいつの言葉に乗るわけじゃないけど・・・ほどほどにね。

 ゴールドもミカンちゃんも超がつくほどの有名人なんだから人一倍

 そっちのほうは気をつけないと。でもそれはいいとして・・・」

 

あのゴールドがアカネの挑発に全く反応せず黙ったまま、そのことのほうが

いまは重要で、心配するべき問題だ。余裕を失い追い詰められている証で、

心が折れてしまっているのではないかと思わされる後ろ姿だった。

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

「多少の運や偶然も絡んだが、わたしたちの目指す6-0のパーフェクトゲームまで

 あと少し・・・しかもあなたはバクフーンも失った。わたしは別にどちらでも

 よいが、これ以上続けても結果は目に見えている、醜態を晒すよりは潔くここで

 観念するという道もあると教えておいてやろう」

 

ナツメの言葉に対する反論の声はどこからも出てこなかった。まだ勝負はわからないと

励ますべき背後の陣営はすっかり黙ったままで、観衆たちもブーイングの気力すら

奪われていた。ゴールドが棄権を選択したとしても誰も驚かないだろう。

 

「フム・・・残念だがサカキ、出番が来てしまったようだな。先ほど愛する息子から

 後を託されたのだろう?ナツメとの決勝を戦う資格はお前にある」

 

「・・・ああ・・・あやつのポケモンはほぼ無傷、休憩は無用だろうしな」

 

キョウに準備をするよう促され、サカキは立ち上がる。だが、このまま簡単に

このバトルが決着するのかという疑念がだんだんと彼のなかで強くなっていった。

誰もが震え、動けなくなるほどの恐ろしい事態が起こるという予感すらあったが、

キョウや他の誰にもそれを言わないままバトルの行方を見ていた。

 

 

「・・・しかし惜しい。王者ゴールド、あなたが自分の間違いにもう少し早く

 気がつき、改めようとしていたならこのような展開にはならなかっただろうに」

 

「おれの・・・間違いだと?さっきも言っていた・・・セキエイに籠り続けたことか?」

 

「それもある。だがそれよりももっと簡単な話だ。王者を降りろとかわたしたちの仲間に

 なれとか、そこまでのことですらない。すぐに現状を変えられるいい方法がある」

 

ゴールドの問題点を見抜き、バトル中でありながらナツメはそれを明快に言い聞かせる。

 

「ゴールド、あなたは恨みを捨てるべきだ!アカネが憎い、だからその仲間である

 ナツメも憎い、あなたはその感情に支配されている。怒りからの復讐心では

 真の力を発揮することは決してない。自らの手で道を塞いでしまっている」

 

「・・・お前はともかく後ろのクズがしてきたことを忘れて許せと?」

 

「強制はしない。自分で変わらなければ意味がない。無理に誓わせたところであなたは

 アカネへの敵意を捨てられるのか。己の意思で変化しなければ無駄なことだ。

 だから明日以降もアカネを憎み続けそれを原動力としたいのなら勝手にしろ。

 その代わりアカネやシルバーが見せたあの力を得ることは永遠に不可能だと思え」

 

アカネが一週間前に、そして今日シルバーが発動させた覚醒の証、人とポケモンの

絆の深さを示す眩しい光が限界以上の力を引き出す。ゴールドより下であるはずの

二人がすでに到達したのに彼はいまだに掴めていない力の話をナツメは始めた。

 

「あなたと同じようにアカネもエリートたちへの反抗心、意地からの怒りをパワーの

 源としていたがそれでは不十分だった。ポケモンたちへの愛や自分が信じる

 理想の未来のために勝つと思い定めたとき、黄金の光が全身を包んだ。あなたの

 友人シルバーもそうだ。後ろ向きな思いを捨てたので彼らは新たな段階に入った」

 

「シルバーが・・・確かにそうだが・・・」

 

「悲嘆や劣等感、復讐・・・いや、逆襲とも呼べるか。それらはどれだけ熱く、

 また強くてもあるところから先には決して導いてくれない。わたしもつい最近だ、

 そのことがはっきりしたのは。負の感情からのパワーには限界があった」

 

 

対戦相手はおろか仲間たちをも怒らせるような言動を続けていたナツメは、自分への

怒り、憎しみ、殺意といった強い思いが、あの謎の力を発動させる鍵になるという

狙いからそうしていた。明確な敵がいることで皆の戦意や闘争心を刺激しようとした。

だが、それは大失敗だったとエリカに指摘された。アカネに時折見せていた優しい顔、

そちらを前面に出したほうがもっと早く望んでいた通りの展開になっただろうと。

 

「わたしが結論を出したというよりは・・・彼女たちに教えてもらったと言うべきか」

 

上空のリザードンの背に乗るレッドとエリカが微笑んだ。レッドが最初に

この力の存在をナツメに気づかせた者であり、どうすれば発動に至るか、正確な

答えに導いたのはエリカだった。この二人が果たした役割は非常に大きかった。

 

「・・・ふふふ・・・」 「フッ、あいつめ」

 

客席にいるブルーと、変装して隣に座っていたミュウツーもにやりと笑った。

この世への憤りや人間たちへの逆襲を捨てた張本人たちだったからだ。もちろん

ナツメのそばで共に戦うアカネとワイルド・ワンズのコンビもナツメによって

眠っていた力を引き出されたのだから、彼女の言葉の意味をよくわかっていた。

ナツメに教えたという意識はないため最後の一言への違和感はあったが、深く

考えずに誇らしい気分に満たされただけだった。

 

「ゴールド、あなたもわかっているはずだ、逆恨みに近い憎悪は捨て去るべき

 正しくない考えであることは。しかしそれができない理由、やはりあなた自身が

 わたしよりもよく知っているはずだ。まあ・・・大体想像はつくがな」

 

ゴールドが間違った道へ進もうとしても、ポケモン協会の長老たちはそれを止めず、

肯定し続けた。いま彼の後ろにいるミカンやキョウも、ゴールドに意見することなく

見てみぬふりをしていたのではないか。だから若くにして王座を掴んだことも手伝い、

自分でも知らないうちに傲慢になった、ナツメはそう考えた。自分のやること、

考えることはすべて正義であり果たされるべきもの、そう思い込むようになったのだ。

 

協会のトップたちやゴールドと親しい者たち、動機はそれぞれ異なるが誰もがゴールドを

大切に思い、若き王者を支え守ろうとした。だが結果として過保護な接し方が彼の

成長を妨げていた。ゴールドに必要なのはアカネのように何でも包み隠さずに話し、

時には厳しい言葉で衝突を生むとしても終わった後には今まで以上に深い間柄に

なれる、そういう人間だ。ナツメが二人の和解を勧めている理由のうちの一つでもあった。

 

 

「決断は早いほうがいい。いつか取り返しがつかなくなる日が来る前にな・・・」

 

「・・・・・・おれは・・・変わる必要が・・・・・・」

 

ゴールドの心が傾きかけていた。ナツメに言われた通りだったからだ。他人から見れば

何一つ文句のない順風満帆の日々、しかしずっと優等生を演じ続けることへの不満、

それによる自分自身への苛立ちを覚えていた。そして力を維持してはいるがそれ以上が

できない、その理由までも言い当てられてしまった。身動きができなくなる前に

変化しなければならないのはゴールドもわかっていた。猶予は一日一日と迫っている。

ならば今日、この瞬間が自分を変える最後の機会かもしれない。

 

 

「おいおい・・・なんだ~~~っ!?大事な一戦が説教で決着するのか!

 前代未聞だな・・・とはいえすでに大勢は決していたが」

 

「ふふふ、試合を支配し、相手に自ら負けを認めさせる・・・完璧な勝利ですね」

 

空から観戦する者たちもナツメの勝ちを確信した。ところが、突然それは起こった。

 

「フ・・・フリャ・・・ふりゃ——————!!」

 

レッドとエリカのそばにいた男のポケモンが突然怯えたような声を出したかと

思うと、そのまま急降下を始めた。地元ではジムリーダー、その地方のナンバー2で

あるほどの実力者である男ですら制御できなかった。

 

「お、おい!急にどうしたんだよ、敵なんてどこにもいない!落ち着け!」

 

「ギャオ———!!」

 

彼だけではない。レッドのリザードンもそれに続きスタジアムへ接近していく。

恐れを知らない勇敢なリザードンも明らかに動揺し、震えていた。

 

「パーマー・・・パーマー!マック、お前もなのか・・・・・・」

 

リザードンもピカチュウもこれまで一度も見せたことがない恐れの顔だ。

慌てて周囲を見回したレッドたちだったが、ポケモンたちに遅れること数秒、

 

「・・・・・・!!」

 

全身が震えた。レッドとエリカは悪寒に支配される前にモンスターボールを手に取り、

どこからこの恐ろしい何かが襲ってきても迎え撃てるように構えた。だが、すぐに

このプレッシャーがどこからのものであるかを察し、不安と恐怖は更に増した。

 

「・・・エリカ!これは・・・スタジアムからだ!それも・・・」

 

「客席ではありません。バトルを繰り広げるフィールドに・・・!」

 

 

このとき観客のポケモンたちもボールの中でかたかたと震えていた。しかし

王者ゴールドが棄権するかもしれないという場面であるため誰もがそちらに

意識を取られ気がつかなかった。もともと外に出ているのなら話は違った。

 

「・・・これは・・・とてつもない災厄が訪れるぞ!」 「ミュウツー・・・」

 

「う・・・うぱ・・・・・・」 「ウパっち!すごい汗じゃない、どうしたの・・・」

 

そしてとうとう互いの陣営、つまりゴールドと近い距離にいる者たちもそれを

感じ取った。ゴールドが負けてしまう、というショックも消し飛ぶほどのものだ。

 

「あ・・・あああ・・・」 「このオーラ・・・フーディンか!?いや・・・」

 

サカキはスピアーと共に上空にいるフーディンに目をやった。しかしフーディンは

バトルの始めから微動だにしていない。何かを仕掛けているようにも見えない。

それどころかフーディンも表情が険しくなり、事態が急変したことが明らかになった。

これを一足早く察知していたナツメが、オーラの源がゴールドであると知った。

 

 

「なるほど・・・そうか!わたしの悪い予感は残念ながら当たってしまったか。

 しかしどれほどのポケモンだというのか・・・そちらは見当もつかない」

 

「・・・・・・おそらく・・・ナツメ、お前が最初に予想したおれのメンバーは

 六体全て的中していたんだろう。バクフーンをラストにするつもりでいたさ、

 このおれもな。けれどこいつがどうしてもと言うものだから連れてきた。

 こいつを使いたくないから四体目までで勝負を決めたかったし、このまま

 バトルを終えたほうがいいと思った。ところがおれの意思に反して・・・」

 

ゴールドの腰に残った、まだ手をつけていない二つのボール。そのうちの一つが

激しく振動して、跳ね上がって地面に転がった。ボールそのものが光を放っていた。

 

 

 

「ほう、あなたがゴールドの五番目の・・・」

 

「黙れ・・・お前のような下衆がこの私と対等に会話できると思うな!お前の

 背後に座る者どもや大勢の無能な人間どもを惑わすのはまだ見過ごそう。

 だがこの世の王となるべき男、ゴールドを操ろうとしているのは許されぬ大罪!

 よってこの私が直々に裁く!己の無力感に絶望しながら死んでいくといい」

 

そのポケモンがついに姿を現した。巨大な体には異形の翼や鋭い多くのヒレがあった。

神々しい白銀の全身が支配者の証であると、どれだけ鈍い人間でもすぐ理解し認める。

ポケモンと呼ぶべきなのかわからない存在が、自ら自己紹介を始めた。

 

 

「・・・我が名はルギア!人間たちの間で『海の神』と崇められている者だ。

 この世に不要な存在である、汚らわしい愚者どもを拭い去るためにやってきた!」

 

 

伝説のポケモン、ルギア。ポケモンはその気配を感じ取っただけで恐れおののき、

人間界でも神として知られる超大物の登場に、スタジアムは驚愕と混乱に包まれた。

トレーナーたちは自分も戸惑っているなかでポケモンをなだめなければならなかった。

 

「え、えらいことになってもうた・・・ありえんやろ、こんなん・・・」

 

「伝説の神がまさか私たちの敵として現れるなんて・・・」 「うぱ・・・」

 

勝利は確実と思われたところから急転した展開にアカネたちはショックが大きい。

絶頂から突き落とされたのだからそれも当然だが、それでも会場にいる各地方の

エキスパートトレーナーたちでもパニックに陥っているなかで比較的落ち着きを

保っていられたのは、彼女たちのリーダーがこれまで通りしっかりと立っていたからだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

神が相手であろうとナツメは変わらなかった。堂々とルギアの目を見て対峙していた。


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