ポケットモンスターS   作:O江原K

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第124話 ナツメの秘密

 

海の神、ルギア。人からもポケモンからも畏れ敬われる存在だが、伝説はあくまで

伝説、実在しないのではないかと疑う者たちが若い世代を中心に増えていた。

それが間違いであることが今日、大観衆の前で証明された。ルギアは確かにいた。

しかし、そのルギアがゴールドのポケモンとしてバトルに参加するというのは

この光景を目にした今でも信じられないことだった。

 

「・・・特にジョウトでは広く受け入れられているという神・・・ルギア!

 これほどまでの威圧感を誇るとは・・・息苦しくなってきたぜ・・・」

 

客席の他の地方からやってきたトレーナーたちの中には、地元で神格化されている

ポケモンを実際に見て、触れ合う経験さえ持つ者もいた。だが、そのポケモンたちと

ルギアは格が違う。まともに比較する気にすらなれないほどの差があった。

 

 

「ちょっと・・・ゴールド!あんた、ルギアをゲットしていただなんて・・・!

 どうしてそんな重大なことをずっと私たちに黙っていたの!?」

 

「黙っていてくれ、と言われたからな・・・ルギア本人に。騒がれたくなかったんだろ。

 おれも公の舞台でこいつを見せ物にする気はなかった。バトルで使うことも・・・」

 

「いやいや、現にこうして出てきてるじゃないの!伝説の神であるポケモンを

 いくら大事なバトルだからって戦わせてもいいの!?いろんな意味でヤバいって!」

 

仲間のクリスから真っ先に異議が唱えられた。確かに問題点は幾つもある。まず一つ目に、

神をバトルの手駒にしても構わないのか。ひどく罰当たりな行為ではないのだろうか。

二つ目に、このルギアに勝てるポケモンなどいるのか。普通のポケモンと真っ向から

戦わせても、実力差がありすぎてバトルにならず、ただの虐殺になるのではないか。

それに関わる三つ目は、ルギアを使って勝ったとしてもそれは当たり前であり、

トレーナーの腕を競うはずのポケモンバトルの目的を逸脱していると言える。

それ以外にも細かい点は多々ある。このまますんなりバトル再開とはいかないだろう。

 

「・・・くくく・・・余計な心配だ。わたしは構わない、ルギアとの戦いは」

 

ところが、誰よりもルギアの参戦を拒否すべき立場であるはずのナツメがそれを

あっさりと、些細なことのように許可し、クリスに対しその理由を語り始めた。

 

 

「伝説のポケモン、ルギアがそいつを認めて彼のポケモンになると決めたのだ。

 だからゴールドの選出メンバーのうちの一体となったからって何の問題もない。

 むしろルギア自身が戦いを望んでいるような口ぶりだった」

 

「・・・・・・まあ、そうなんだけど・・・」

 

「ルギアという大物を使ったとしてもゴールドのトレーナーとしての価値は

 下がらない。それどころか鰻登りだ。これほどのポケモンを手に入れ、しかも

 意思を通わせている・・・まさに神に選ばれるほどの才能がある証となる。

 あなたもそうではないか。神秘的な存在であるスイクンと共にいるのはあなたが

 スイクンに選ばれたからだ。望んでいても叶わなかった凡人の連中とは違う」

 

クリスが旅の途中で偶然遭遇し、幾度もの接触の末に自らのポケモンとした

やはり伝説の存在、スイクン。この美しいポケモンを求めるトレーナーは数多く、

十年以上をそれに費やした者たちもいた。しかし彼らはどれだけ純粋な心を持ち、

レベルの高いトレーナーであっても選ばれなかった。クリスに敗れたのだ。

 

「だから問題はないと言っている。クズの嫉妬など気にせず堂々としていればいい。

 そしていまは互いにやる気に満ちている!わたしのほうは神すら殺すほどの力を

 有していることを全世界に示すチャンスだしルギアのほうもわたしたちを忌み嫌い

 裁きを下すとか言っている。この命を張り合ったバトルにふさわしい展開だ!」

 

両者が合意した。バトルが始まるものと思われたが、それを阻止する者が間に入った。

第一試合が始まってからずっと動かなかったフーディンがここで舞台に降り立った。

 

 

「・・・フーディン!このバトルはあなたの力を借りないという約束だったはず!」

 

「ああ、そうだ。チャンピオンを相手にナツメ、あなたがどれだけやれるかを試す

 機会だった。わたしのトレーナーに相応しいかどうかを知るためのテストだった。

 しかし事情が変わった。海の神ルギアが現れた以上、通常のポケモンでは太刀打ち

 できない。わたしが相手しなければならない。すでにあなたの力はよくわかった。

 だから下がっていろ。こいつと戦うのはわたしの役目だ」

 

そしてフーディンはルギアに対し、憤りを隠さずに語りかける。

 

「これで納得がいった。このバトルフィールドはポケモンと人間が痛みを共有する

 仕組みになっている。ポケモンへの愛があればそのダメージが多少軽減される

 ようになっているとはいえ・・・その者がほとんど無傷でいるのは異常だった」

 

ナツメのワンサイドゲームにばかり意識が集中していた人々はようやく気がついた。

あれだけポケモンたちが攻撃を受けたのにゴールドは傷を負っていない。第一試合の

シルバーとアカネの様子から考えれば、とっくに試合続行が不可能なほどゴールドは

流血し、脳や内臓に衝撃を受け、死んでしまってもおかしくないダメージがあったはずだ。

 

「・・・神の力を使って守っていたということか。わたしの支配する領域から」

 

「ゴールドほど私が高く評価する人間は他にいない。このようなくだらない戦いで

 死なせるわけにはいかないだろう。ゴールドには言わずに密かにそうした。

 誠実な男だからな、事前に提案しても拒否するのは目に見えていた」

 

「あ————っ、言われてみりゃあ!インチキしとったんか、あんたら!」

 

憤り、身を乗り出そうとしたアカネをフーディンが手で制した。自分の力を

破られた借りは自ら返すしかない。神の代わりにポケモン界を管理し裁きを行うと

宣言したフーディンだ。ルギアの命を奪えるチャンスを逃そうとしなかった。

 

「神をこの手で葬れる・・・素晴らしい!新たな世界の幕開けにふさわしい!」

 

「世界は変わらん!お前たちのような者はいつの時代もどこからか湧いてきた。

 そのたびに我らがその野望ごと無に帰した。魂が僅かに残ることも許さんぞ!」

 

 

ルギアとしてもフーディンを倒したい。この世にいてはならない存在だったからだ。

超大物同士の殺し合いが幕を開ける、その寸前で再びナツメが前に出てきた。

 

「待て、フーディン。やはりここはわたしがやる。任せてもらえないだろうか」

 

「・・・何を言っている。あれは並のポケモンではどうにもならない敵だ」

 

「だからこそ、だ。不可能に思えることも人間とポケモンの信頼や絆が生む力、

 それによって成し遂げられると証明したい。それにフーディン、戦うべき相手と

 いう話なら、あなたが戦うのはルギアではない。あのスピアーだ!」

 

「・・・・・・・・・」

 

サカキのスピアーとの勝負が待っている。余計な戦いによる消耗は致命的だ。

フーディンもそれはわかっている。ルギアは無傷で倒せる相手ではない。

 

「簡単な戦いではないのはわかっている。それでもいまは下がってほしい」

 

「・・・・・・そこまで言うのならいいだろう。しかしわたしは公正を愛する。

 あなたが受けるダメージを軽減したり無効化したりはしない。一度わたしを

 退けたのだからもう手助けはしない。それでも構わないのか?」

 

「ああ。頼みを受け入れてもらって感謝する。これはわたしの戦いだ」

 

再びフーディンは上空に戻った。ルギアとフーディンの激突はひとまずお預けとなった。

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

ナツメのポケモンたちも主人と同じく、強かった。スタジアムにいる大勢のポケモンとは

違い、ルギアを睨みつけて敵意を隠さない。叩き潰すことに罪悪感は一切ない。

ルギアはその不敬な態度に激怒する素振りは見せず、余裕たっぷりに問いかけた。

 

「ほう・・・さすがはゴールドに歯向かう愚か者どもだ。どうやら私を神だと認めて

 いないようだ。それとも神を憎んでいるか、もともと神を信じてすらいないのか?」

 

ルギアがどれだけプレッシャーを放っても、ナツメは気にせず笑いながら返答する。

 

「くくく・・・そう思えるか?実のところわたしは人よりも神を信じているぞ?

 神々は苦労して人間を創った・・・猿より多少えらい程度の出来だったがな。

 ポケモン界の神についてもよく知っている。もちろんあなたもだ、ルギア」

 

「なるほど。それなのに実際に私を目にしてもまだ悔い改めないというのか。

 私が世界の王になるべき男と認めたゴールドに敵対することを続けるのか」

 

ルギアの目つきが鋭くなる。それでもナツメは変わらなかった。

 

「くっくっく、この目で見なければ考えを改めたかもな。だがこうしてあなたを

 見たことで・・・ますます従う気はなくなった。この程度の神など崇拝する

 価値はない。よく恥ずかしげもなく神と名乗れるものだと感心している」

 

神が相手でもこれまでのように挑発的な言葉を語り、嘲笑を見せた。

 

「この下等な人間が~~~っ・・・己の罪をどこまで重ねるつもりだ!」

 

「さあな、これ以上積むのは難しいくらい罪を犯してきたからわからんな」

 

 

このままナツメのペースになるかと思われた。しかしルギアはすぐに怒りを鎮め、

主導権は自分にあるということを改めて人々の前で明らかにした。

 

「なるほど、自らが大罪人であるという自覚はあるのか。まあ当然か。お前は

 殺人者だ。人間の定めた法律で裁かれたら死は免れない屑と言えるだろう」

 

「殺人・・・ポケモン協会の長老たちのことか?それなら・・・」

 

「私を誰だと思っている。全てを知っているのだぞ?その者たちはお前が自分の手で

 殺めたわけではない。お前が己の手で奪った命があるだろう。人間を、そして

 ポケモンをお前はその手で殺した・・・しかも罪なき者たちを幾人も」

 

「・・・・・・!!」

 

先日フーディンが闇に葬り去った長老たちとは別に、ナツメがその手を汚して

殺人を犯した、ルギアは新たな事実を暴露した。詳細を語らずともナツメには

思い当たるところがあるようで、明らかに顔色が変わった。

 

「・・・・・・自ら神だと誇るだけはある。この世でそれを知るのはわたしと

 フーディンくらいなものだ。すでに時効になったほど昔のことで、真相を追う者も

 いないというのに昨日のことのように語るとは・・・やるじゃないか」

 

彼女がその罪を認め、場内は異様な空気に包まれた。黒い噂の絶えないナツメだから

ありえない話ではなかったが、時効が成立するほど過去、その言葉に誰もが驚いた。

ナツメの年齢を考えれば、それだけ昔となると・・・。

 

「じゅ、十歳になったかならないかで・・・人殺しを?」 「うぱ・・・」

 

普通の人生を歩んでいたらこのような人物にはなれないとわかっていながらも、

やはり受け入れがたい。その齢で幾人も、またポケモンすらも殺してしまったと

いうのは理解が追いつかなかった。ところがルギアは、ナツメに関するさらに

衝撃的な情報を持っていた。間を入れずに畳みかけるようにして続けた。

 

 

「フフ・・・普通に考えたらそうなるだろうな。だがこの女はもう一つ人々を欺き

 自分しか知らないと思っている秘密がある。愚かなことだ、この私には何も

 隠せないというのに」

 

「・・・・・・」

 

「声を大にして全ての者に教えてやろう!この女は自らの姿を偽っている!二十歳か

 そのあたりの若い娘を装ってはいるが若作りもいいところだ。すでに人生の盛りは

 過ぎた・・・五十年は生きているというのにまるで魔女だ、なぁ!」

 

 

 

見た目よりずっと齢を重ねていたという真実。神ルギアの語っていることなのだから

信憑性はあるが、誰もすぐに受け入れることはできなかった。とはいえ思い起こせば

その伏線とも呼べる出来事は少なからずあった。

 

「・・・や、やけにオトンやオカンと話が合うなと思っとったけど・・・」

 

アカネがナツメを実家に招いたとき、彼女の両親とナツメの会話は弾んでいた。

一世代前の音楽をよく知っていたのも今なら納得がいく。音楽だけではない。

 

「キクコさんとの戦いで・・・昔のバトルの傾向や作法をよく知っていたのは!」

 

キクコの全盛期、後代に遺すための記録や映像がまだ乏しかった時代の出来事に

ナツメは非常に詳しかった。まるでキクコのファンだったかのような発言もあり、

それは本心からのものだったのではないか・・・人々はだんだんそう思うようになった。

 

 

「膨大な知識、老獪な策略、そして褒められたやり方ではないにせよ、若きトレーナーの

 力を引き出し行くべき道を示す経験豊かな指導者。あの若さでどうやって、と

 疑問を抱いていたが・・・ほんとうの年齢を聞けば逆に納得がいく」

 

「サカキ・・・だが、それでは・・・!」

 

「ああ、五十歳前後ということは・・・わたしたちとほぼ同じではないか———っ!」

 

珍しくキョウが取り乱しているのも無理はない。サカキもいつもの冷静さを欠いた

状態だったが、彼の場合はその理由はキョウとは違い単純なものではなかった。

 

 

(・・・わたしは・・・決定的な思い違いをしているのでは・・・!?)

 

幼かったころ、トキワの森で出会った少女。昨晩スピアーによって夢のなかで

もう一度深く思うようになった初恋の娘。ナツメと大きな関わりがあるのではと

結論できる材料が幾つもあり、同じような思想を抱いているところからもしや

彼女はナツメの師匠にあたる人間だったのか、それとも奇跡的な確率を考慮に

入れたならば、ナツメの母親なのではないか・・・サカキはそう考えた。

 

(・・・・・・ま、まさか・・・・・・!いや、そんなはずは・・・・・・!)

 

それ以上にありえないはずの正体、そこに至ることをサカキは必死に拒んだ。

 

 

「どうだ、この大観衆・・・いや、世界中に己の秘密を公開されて言葉も出ないか?」

 

ルギアが嘲笑う。ところがその期待に反し、ナツメにダメージは全くなかった。

 

「・・・くくく、あなたの言葉は事実だ。だがわたしがいつ嘘をついた?自分の年齢を

 明言したことは一度もないし過去の出来事についても詳しく聞かれなかったので

 話していないだけのこと。明るみになったところで何ら問題はない。そこにいる

 国際警察でももはや調べようがない古い事件、それ以上に些細なわたしの年齢。

 そんなものを公にしたくらいで勝ち誇るとは案外小物のようだな、ルギア」

 

「な、なに~~~~っ!?」

 

ルギアが辺りを見回す。スタジアムの様子が変わった。この話をしたことでますます

ゴールドと自分を支持する者たちが増えるという目論見だったが、そうはならず、

 

「・・・あ、あれで五十歳!?秘訣があるのなら教えてほしいわ!」

 

「不自然な化粧もしわ伸ばしもない!あれも超能力なのかしら・・・」

 

女性たちを中心にナツメへの興味が高まり、もっと彼女を知りたいと願う者たちが

逆に増えてしまった。ナツメからさらに多くを学ぶためにはここで死なれては困る。

ぜひともゴールドを、その先のサカキをも倒し勝ち残ってもらわなくてはならない。

これまでナツメを敬遠していた人々に関心を抱かせ、一度はその話を聞いてみようと

心を動かしたのは他でもないルギアだった。神らしからぬ失態だった。

 

 

「ぐぐぐ・・・人間という生物は私の思っていた以上に愚劣なのか!お前とゴールド、

 どちらに付くべきか、それすらもわからないとは・・・なんと悲しいことだ!」

 

「そうだな、あなたの言う通りだ。そしてこの試合が終われば誰が正しかったか

 はっきりとするだろう!いけ、ズズ!この場に降りた以上やつはもう神ではない、

 どこにでもいるポケモンだ。遠慮せずに倒してしまって構わない!」

 

ナツメの声に反応し、モルフォンがフライング気味に始動した。すでにいつでも

バトルを開始してよい状態だったので、反則ではない。敵の油断を突いただけだ。

 

「そのつもりよ!くらえ、ちょうおんぱ————っ!」

 

混乱を誘う音波を放った。相手の意識がまだこちらに集中していないうちに

技を決められた。これは確実に決まった、モルフォンは確かな手ごたえを感じたが、

 

「・・・・・・・・・どうした、何かしたか?」

 

『お———っと!効いていないぞ!バクフーンすらも完璧に封じ込めたモルフォンの

 ちょうおんぱだが、ルギアには全く通じていない!涼しい顔をしている!』

 

もう一回やれば次は、とは思えない。まるで通用しなかったのだ。

 

 

「う・・・!」

 

「フン、あえて先手を譲ってやったがこんなものか。次は私の番だな、

 神の力を思い知るがいい、かぜおこし—————っ!」

 

「かぜおこし・・・?そんな攻撃・・・・・・」

 

飛行ポケモンのほとんどがレベルの低いうちから使用でき、モルフォン自身も

覚えていた、威力の弱い基本技。ルギアは慢心していると思ったがその考えが

失敗で、相手を侮っていたのはモルフォンのほうだった。貧弱な技でも使い手の

能力が圧倒的であれば一撃必殺の殺人技となる。神の力を軽視していた。

 

「こ・・・これは!ああ—————っ!!」

 

まるで暴風と呼べる強烈な風のエネルギーが襲いかかってきた。避ける術はない。

 

「あぐっ!!」

 

被弾し、ナツメたちがいる後方まで吹き飛ばされた。片方の羽根がボロボロになり、

深刻なダメージだった。そしてポケモンが攻撃を受けたらトレーナーにもダメージが

入る今回のバトル、ナツメも全身に激痛が走ったがどうにか堪えてモルフォンに

駆け寄った。このまま戦わせることはできない。ひとまず下げるしかなかったのだが、

 

「ズズ・・・かずみ!しっかりしろ、陣営に戻ってしばらく休め!次は・・・」

 

「フハハ!絶好のチャンスが来た!この戦いはトレーナーへの直接攻撃が許されて

 いると聞いている!警戒を緩めたな・・・観念しろ、大堕落者よ!」

 

ルギアがすぐそばまで迫っていた。そしてかぜおこしでナツメの全身を切り刻む

構えに入った。絶体絶命の危機、早くも決着かと思われたが惨劇の寸前で、

 

「グウ~~~~っ・・・・・・」

 

「・・・ムム!カットされたか・・・私の動きから目を逸らしていなかったか!」

 

スリーパーが攻撃を受けてナツメを守った。モンスターボールに戻らずトレーナーの

そばで待機しているポケモンたちはバトルに乱入すればルール違反で失格だが、

このようにトレーナーを狙ってくる攻撃から主人を守るための行動が許されている。

咄嗟に出した左腕が折れてしまったがルギアの勢いは止めた。スリーパーもナツメ同様

痛みで蹲ることはせず、傷の浅い右足でルギアの腹部を蹴り上げた。

 

「ヌガァ—————!!メガトンキック—————ッ!!」

 

「ぐおっ・・・!フフフ、そう簡単には仕留められないか・・・」

 

メガトンキックをまともに食らったルギアはゴールドの眼前まで後退した。つまり

所定の位置まで追い返された。脅威が去ったことを確認してからスリーパーは片膝を

つき、左腕をかばいながらその場に倒れた。

 

「うぐっ・・・すまない。あなたのおかげで助かった・・・ありがとう」

 

「もったいないお言葉です。それよりも早く次なる手を!やつはすぐに戻ってきます!」

 

 

ルギアの力は本物だった。精鋭揃いのナツメのポケモンが二体、一瞬のうちに重い

ダメージを受けた。伝説のポケモンと呼ぶにふさわしい実力を見せつけた。

 

「ナツメ・・・!」 「ナツメさん!」

 

「心配しなくていい・・・やつのパワーは凄まじいが最後の攻撃、わたしの命を奪う

 つもりだったのに失敗した。やつも完璧ではないという証拠になった。つまり

 じゅうぶん対処できる相手だということ・・・こいつの頑張り次第で!」

 

伝説殺しのための鍵となるのはこのポケモンだという大きな期待を受けてボールから

飛び出したのはナツメの五番目のポケモン、バリヤードだ。通常の個体より目つきが

鋭く、頬や腹の肉が引き締まっている。モンスターボール内からでもルギアの強さを

見ることはできたはずだが、怖気づいている様子は一切なくフィールドに登場した。

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