ポケットモンスターS   作:O江原K

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第127話 幻の神

 

『ルギア悶絶———っ!ゴーストのナイトヘッドが炸裂だ!』

 

ゴーストの作り出した恐怖の幻からはルギアであっても逃れられなかった。

 

「ぐ・・・ぐおおおおっ!今すぐこの術を解け、下衆が!」

 

「くくく、目を閉じても無駄だ。直接脳に攻撃を与えているのだから」

 

手っ取り早く攻撃をやめさせるためにはゴーストを倒すほかないが、

突然変異のような高い防御力に加えバリヤードが残した壁の恩恵がある。

サイコキネシスで反撃してもそれ以上のダメージで返されるだけだった。

 

「・・・・・・・・・」

 

「気分が・・・だ、だがこの程度の攻撃で私を倒せるなどと思うな・・・」

 

神と呼ばれるルギアにも恐れを抱かせる何かがあった。それがどのようなもので

あるのかは覗き見ることができないが、ルギアほどの存在を苦しめるほどなのだから

常人であればショックですぐに死んでしまうレベルのナイトヘッドだろう。

 

「気持ちの悪い化物に囲まれるとか死にそうになるとか、私たちも夜に見る悪い夢

 みたいな簡単なものじゃないんですよね、あの技は。その本人が最も苦しむ幻で

 攻撃し続ける・・・絶対に食らいたくないですね」 「う~~っぱ!」

 

「ま、トラウマなんかみんなそれぞれやからなぁ。案外ルギアもずっと昔に

 そのへんに落ちた変なモンを食べて下痢になった思い出を呼び覚まされとる

 だけかもしれんで。うちらからすりゃあとんだ笑い話やで」

 

 

ルギアの体力がどんどん削られていく。戦いをルギアに任せていたゴールドだが、

さすがに黙って見ていられる状況ではなくなった。あまりの強さゆえに直前まで

メンバーに選ぶことを躊躇っていたほどのルギアがこのままでは危ない。

 

「・・・ルギア、一回立て直そう!後ろに下がって・・・」

 

「何を言うか、ゴールド!あのクズどもの処刑は私の役目だ!いま目の前にいる

 愚か者どもだけではない、お前を認めない者や自分はゴールドより上だと考える

 自惚れた阿呆に教えてやらねばならん!こんなところで退けるものか・・・」

 

ゴールドこそ全世界のトレーナーの頂点であるという証明を自ら行うために

ルギアは出てきた。まだ一体も戦闘不能にしていないのに出番が終わりとあれば

これまでに倒された四体と何ら変わらない、醜態を晒しただけになってしまう。

 

「くくく、あなたがどうしてそこまでゴールドを高く買っているのかは知らないが

 トレーナーの適切な指示は素直に聞いたらどうだ。それともこれ以上惨めな姿を

 わたしたちに見せる前にギブアップするか?それなら望み通り攻撃をやめてやろう」

 

「ギブ・・・アップだと?笑わせるな、この私を誰だと・・・ぐううっ・・・!!」

 

意地を張れば張るほどダメージが蓄積されていく。もうあと一押しまできていた。

 

 

「すごい・・・!最初はどうなるかと思ったけれど再び優位に立った!」

 

「あのルギアを負かそうとしている!やっぱりナツメは強かった!」

 

終わってみれば神をも退けての完勝、そんなムードが漂っていたそのときだった。

 

 

 

「お待ちなさい、ルギア!ゴールドの言う通りです。あなたは少し休みなさい。

 ここはこの私が引き受けましょう。あなたの同志である私であれば安心して

 待つことができるのではありませんか?勝利のためにここは下がるのです」

 

 

突然、人間ともポケモンとも異なった、それら以上の存在と思われるような

神々しい声が聞こえてきた。どこから、そして誰がと皆が驚くなかでその正体を

知っているルギアはいち早く反応し、返答した。

 

「まだお前の出番ではない!私がやつらをこの手で倒すという決まりだったはずだ!」

 

「ええ・・・ですからその未来に変わりはありません。ひとまずこの場をいったん

 私に任せてもらいたいだけです。私たちの愛するゴールドの名が汚されることの

 ないために、あのゴーストの処理は私がやりましょう」

 

 

するとルギアは黙って頷き、自らゴールドの隣まで戻り交代を受け入れた。

そしてゴールドの六番目、最後のボールが輝きを放った。まだ空が暗くなっては

いないのに、その眩しさのせいで皆が両眼を一瞬閉ざした。

 

「う・・・うわっ!!この光・・・」

 

だが、再び目が開けた瞬間、それ以上の衝撃が人々を襲った。

 

「やっと見えるように・・・・・・あ、ああっ・・・あれは———っ!?」

 

「ポケモンだ、ポケモンがいるぞ!でも・・・あんなポケモンは知らない!」

 

 

ルギアのような威圧感はない。何せこのポケモンは非常に小さかった。50センチを

少しだけ上回る程度の大きさ、体重も軽そうだ。それなのにルギアを諭すほどの

迫力があり、やがてその姿を見た誰もがこのポケモンの正体についてあれこれと

論じ合うのをやめてしまった。大きな声であろうがひそひそ話だろうが、それは不敬な

行為であると思ったからだ。本人が語るまでは黙って待つべきだと。

 

そんななか、ナツメだけは違った反応を示した。謎のポケモンの名を口にしたのだ。

 

「・・・・・・セレビィ・・・・・・・・・」

 

セレビィ、とつぶやいた瞬間、敵味方関係なく大きな動揺が生じた。姿については

ほとんどの者が知らなかったが、名前だけは語り継がれていたからだ。ルギアが

伝説の神ならセレビィは幻の神と呼ばれ、広く信仰の対象になっていた。平和な世、

豊かな自然、穏やかな未来を求めて人々はこの神に祈りを捧げるのだ。

 

「・・・セレビィ!?嘘でしょ!ルギアだけでも信じられなかったのにそれ以上の

 ポケモンが・・・ナツメ、まさかでたらめじゃないでしょうね!?」

 

「あ、ああ!いくらゴールドくんとはいえセレビィを自分のものにするなんて・・・」

 

なぜナツメがセレビィの姿を知っているのか、そしてそんな幻の神が一人の少年に

従うなどということがありえるのか。ゴールド側の陣営にいるクリスとキョウが

後方からナツメに聞く。だが、ルギア登場の際にも冷静さを失っていなかったナツメも

セレビィが目の前に敵として現れたことに少なからず心を乱されているようだ。

 

「・・・古い歴史の書で見ただけだ。遥か古代、セレビィを見たという人間たちが

 記録に残したという。森の精霊と記されていて透明な美しい羽根のようなものが

 描かれていた。しかし全身が薄い緑色だというのは誤りだったのか?セレビィの

 体は赤・・・いや、ピンクに近いか。時と共に間違った情報が広まったか?」

 

平和や草木の象徴でありながら赤い体色のセレビィ。伝承とは異なるが、それ以外は

書かれている通りだったのでこれはセレビィだとナツメは疑わなかった。そして

幻の神のほうも己を偽らず、人々に自己紹介を始めた。

 

 

「それは私ではないセレビィでしょう。この私は生まれたときからずっとこの姿で、

 いま世界にいる唯一のセレビィです。長らく平和とは程遠い時代が続いているため

 姿を現すことができませんでしたがついにこの時が来たというわけです。世界を救う

 希望となるゴールドの手によりあなたを含めた全ての害悪は滅び去ります」

 

「・・・・・・」

 

「全世界のあらゆる地方でこれから悪を行おうとしている者たちは当然のこと、彼らを

 制圧するために立ち上がろうとする者、すでに成し遂げた者・・・それら全部が

 ゴールドに比べれば塵芥も同然です。これからは全ての正義をゴールドと私たちが

 果たしますし、悪は一人残らず私たちの前に倒れるのですからいずれの者たちも

 余計な動きはせずただゴールドに任せていればよいのです」

 

悪人たちだけでなく今後英雄になる見込みのある者たちすらもセレビィは価値が薄いと

断言した。どこで誰がどんな野望を追い求めようが結局ゴールドに打ち破られ失敗する。

だから悪も正義も不要だとセレビィは語ったが、プライドの高い実力者たちはその立場や

秘めた野心に関わらず怒った。ところが、心と体が全く逆の行動を始めた。

 

 

「・・・な、なぜだ!?ワタクシの頭が・・・勝手に~~~っ!」

 

「お、おれは何をしているんだ!この構えは・・・ポケモンたちまで!」

 

 

ルギアが現れたとき、ポケモンたちのほとんどは敬意を表した。セレビィに対しては

それ以上のことが起きた。ポケモンだけでなく人間までもがセレビィを崇拝しているか

そうではないかに関係なく自然と身を低くして、神を崇め賛美する姿勢になっていた。

 

「これが・・・神の中の神!こんなポケモンは・・・僕でも初めてだ!」

 

離れた上空にいるレッドたちすらもそれから逃れることはできなかった。だが、

 

「・・・・・・・・・」

 

ナツメは堂々と真っすぐ立ち、セレビィを倒すべき敵としか見ていない。それに

アカネとワイルド・ワンズのコンビもセレビィを敬う行為に加わっていなかった。

だが簡単にできることではない。全力で抵抗し神の圧力を退ける必要があった。

 

「う・・・うちらだけは負けるわけにゃいかん!ナツメを一人にさせんために!」

 

「・・・ウパっち・・・頑張ろう!気持ちを強く!」 「うぱぁ~~~~っ!」

 

そしてセレビィの隣に立つゴールドを除けばもう一人、サカキもこれまで通りの

体勢を崩さずに、スピアーと共にこの状況をじっと見つめていた。

 

(あれがセレビィ・・・もしロケット団の首領だったころの私が見つけていたならば

 金もうけのために捕まえようとしていただろう。ただ見せ物にするとかその力を

 用いて暴力で人々を従わせるとか・・・そのような単純な次元の存在ではない)

 

戦闘能力以外のセレビィの秘めた力、それを利用すれば世界の頂点に立てるだろう。

悪用など微塵も考えていないゴールドであっても今やそれを成す見込みがあるからだ。

 

 

「うずまき島の奥深くにいたルギアもそうですが、この私と出会い、そして共に

 来るようになどと言えるのは世界中を探してもゴールドしかいないでしょう。

 私たちがそれに応じるほどの資格を有しているのもゴールドだけです」

 

カントー地方の伝説の三鳥、ジョウトのスイクンと他二体の伝説と呼ばれるポケモンに

憧れ、ぜひ自分のものにしたいと願うトレーナーは大勢いた。そのための実際的な

作戦や計画を練り、生活の中心とする者たちが後を絶たなかった。

 

しかしルギアやセレビィは、かつてのサカキほどの野望に満ちた人間でなければ

捕まえようなどと思うことすらしなかった。彼らであっても、実在していると

認めつつも捕獲のチャンスがあるとは考えなかった。生涯の間に出会うことすら

まず不可能で、万が一お目にかかれたとしても神が人間に従うはずがない。

ところが、少年ゴールドはそれを現実にした。人々の混乱と動揺は当然だった。

 

 

「ほう、ずいぶんとゴールドを評価しているようだな。もしそいつではなく

 別の誰かが偶然あなたたちと出会っていたらどうしていたんだ?」

 

「フフ・・・そんなことは起こりえませんよ。うずまき島にいたルギアはまだしも

 この私を見つけ出すのは無理です。百年以上の年月の間、私はあなたたちの

 すぐそばに確かにいました。ですがどんどん汚れと争いに満ちていく世を

 変えるほどの優れた素質と清い心を持つ人間が現れなかっただけの話です」

 

「・・・なるほど、探索の末にルギアを見つけ、そのせいで命を失った冒険家も

 確かにいるだろう。しかしあなたの場合はそもそも認識できなかったというわけか」

 

ナツメとセレビィの会話が続くと思われたが、後方に下がりナイトヘッドの脅威から

逃れたルギアが身を乗り出してゴールドを称賛するセレビィに加わった。

 

「クズのくせになかなか賢いではないか———っ!お前の推察は当たっている!

 このゴールドは人間として、そしてトレーナーとして誰よりも優秀で将来有望な

 男なのだ!勝利を目指すがそのためには何でもするお前たちとは違う。王座を

 賭けた戦いであっても出会ったときに交わした私との誓いを果たした。私の力を

 借りずバトルに勝ってみせると。今日も直前までゴールドは悩んでいたのだ」

 

「私たちが無理を言って万が一の場合に備えて控えていたのです。ゴールドは

 あなたたちをあまりにも強大な力で殺してしまうのを避けるため普段の試合と

 変わらぬ準備をしていました。野望を果たすためなら手段を問わない野蛮な

 あなたたちと異なり、ゴールドがいかに高潔で王にふさわしい人物か・・・」

 

神々によるゴールドへの誉め言葉、それを遮ったのはそのゴールドの憎む仇敵だった。

 

 

「アホか————っ!!結局あんたらを使っとるやないかそこの小僧は————っ!!

 ナツメに手も足も出んせいでションベンちびったのをごまかすためにあんたらを

 繰り出したんや!な~にが王や、救世主や!笑わせんなや、ボケが!」

 

「アカネ・・・あなた・・・」

 

「ナツメ!こいつらが何を言おうがうちらはわかっとるで!あんただけが腐った

 世界を変える希望、足元を照らす光や!よくよく見りゃあセレビィなんて

 うちのパンチ一発で吹っ飛んでいきそうな貧相な体やんけ!後ろのデブと

 まとめて追い返したれ、もういっぺん誰もいない暗闇になぁ———っ!!」

 

「アカネさん・・・!」 「うぱ・・・・・・」

 

いつものように敵を大声で挑発する。だが、その足元は震えていた。野次る相手が

神なのだから恐怖はあった。それでもナツメを力づけるため、会場のすべての者が

ゴールドと彼のポケモンたちを支持し腰を低くするとしても自分だけは最後まで

ナツメの側にいると伝えるために、勇気を奮い起こして神々を敵に回したのだ。

 

 

「・・・虫ケラごときがほざくな!この戦いが終われば次はお前の番だ!

 惨たらしく息の根を止めた後に全身を切り刻んでやるぞ、覚悟しておけ!」

 

アカネの言葉に激怒し、処刑するとルギアは宣言した。一方セレビィはアカネが

何を言おうが穏やかなまま、というよりまだ一度も感情の動きを見せていない。

ゴールドを褒めるときもそれ以外の者たちを蔑むときも、感情の揺れがなかった。

 

(・・・・・・やはりこいつはルギアよりも厄介か・・・)

 

精神攻撃がセレビィには一切通用しない。自滅も期待できないとなると、

実力だけで勝つしかないのだ。無害な見た目に騙されるのは危険だ。ルギアと

同等の戦闘力があると考えて挑むべきだと誰もが思うことだろう。

 

 

「さて、あなたたちのゴールド自慢はそろそろいいか?歴史に名を残すかもしれない

 凄いトレーナーだというのはすでにわたしもわかっている。それともう一つ、

 ゴールドについてわからなかった点もあなたたちのおかげで理解できた」

 

「・・・・・・それは?」

 

「ゴールドが自分ではアカネへの恨みを捨てて過去に縛られるのをやめるべきだと

 わかっているのにそうできない原因をわたしは後ろにいる者たちのような人間の

 せいだと思っていた。まだ若い王者を持ち上げすぎて誇り高ぶらせたのだと」

 

ゴールドを愛するミカンやセキエイ高原で共にトレーニングに励むキョウたち四天王、

更にはゴールドをうまく使おうとする協会の幹部たちは彼を称賛し続け、やがて

本人も知らないうちに傲慢な心が育っていた、ナツメも一度はそう結論した。

 

「だが・・・いまはっきりした。あなたたち二人の神がゴールドを増長させた。

 我々が認めるお前のやることに失敗などない、思い定めた道を突き進めと背を押し

 ゴールドの間違いを指摘しなかった。せっかく彼自身が新たな段階に入ろうと

 しているのにあなたたちがそれを妨げている・・・誤った愛情のせいでな」

 

今までの自分は間違っていたと気がつき、じっくり時間を取ってそのことを深く

考えようとしても、あなたはそのままで大丈夫、あなたの正義がすべて正しく、

それを果たそうとすれば必ず成功する、と誰かに強く言われたらどうなるだろうか。

ましてその声の主が伝説や幻と呼ばれる神々であったなら、どうだろうか。

 

 

「・・・・・・ハハハ・・・セレビィの心を乱せないと思ったら矛先は再び

 おれなのか?お前の策もそろそろ尽きてきたんじゃないか?おれは自分を

 変えないと言ったはずだ。おれの唯一無二の親友キヨシが死ぬきっかけを作った

 アカネへの憎しみと恨みがおれをチャンピオンの座まで運んでくれたんだ」

 

「それではそこが限界だ。アカネやシルバーが到達した地点にあなたは届かない」

 

「あの謎の力のことか!だったらそんなもの、おれには必要ない!あんな力が

 なくたっておれはアカネにもシルバーにも勝てる!おれだけの方法で世界一の

 トレーナーとなり真の覇王と呼ばれる男になる、それを証明してやる!」

 

ゴールドの叫びにセレビィは頷き、回転しながらスタジアムを飛行し始めた。

 

 

「そうです、よくぞ言いましたゴールド!本物の強さにあのような力は不要です。

 その場限りの激しい感情に任せた不安定な力などを頼りにする者は愚かであり、

 新たな時代を築く王者となることは決してないからです!」

 

そしてセレビィの全身が光り始めた。その色は赤から緑に、緑から青、その後も

黄色や紫などに変化を続け、最後には白と黒だけになった。

 

「・・・ナツメ、あなたの言う通りゴールドのことは誰もがよく知っています。

 ですがあなたのことはこの場にいるほとんどの者が全く知らないではありませんか。

 あなたと共に騒動を起こした、空にいるフーディン以外はあなたの仲間でさえも」

 

「それがどうした。これから行う勝負に関係あるのか?」

 

「大いにありますよ。ゴールドと比べあなたが実にちっぽけで無価値な存在で

 あるかを人々は知らなければなりません。あなたがいかに『偽物』か、

 これまで隠し通してきたその過去を露わにすることが最も良い方法です」

 

ナツメの表情が歪む。これから起きることは明らかに自らにとって災厄だからだ。

 

「ルギアはあなたが実は五十年近く生きてきたことと善良な人間やポケモンたちを

 殺したことを暴きました。ですが私はそれ以上、その詳細をこの場の全ての

 生物に鮮明な形で現し示すことができるのです。私について知識のあるあなたで

 あれば、私がどのような能力を持っているかわかっているのでは?」

 

「・・・・・・・・・」

 

ナツメが何も答えないのでセレビィは自ら明らかにした。

 

 

「私は『時渡りポケモン』!その名の通り時を渡り歩くことができます。未来から

 過去へ向かい悪を未然に消し去る行為も可能です。そして時の流れを・・・そう、

 こうしてシネマのようにして見せるのも容易いのです————っ!」

 

「・・・セ、セレビィ!まさか・・・あれをやるのか!?あのときは確か

 おれのことを・・・初めて会ったやつ相手でもいけるのか!?」

 

「ええゴールド、時を渡り歩くことに関して私は時代を自由に選べません。ですが

 この再現能力であれば選べる対象は無限!あなたに敵対し危害をもたらそうとする

 ナツメという人間の罪深き人生を、あなたとは異なり天運と才に見放された存在かを

 晒した上で敗北させる、それが私たちの望む完全勝利なのですから————っ!」

 

 

セレビィによる裁きの幕が上がった。謎に包まれていたナツメのこれまでを

大観衆の前で明らかにするという。その言葉に嘘はなく、人々の視界が

いまのセレビィと同じ白と黒に包まれ、まさに映画が始まろうとしていた。


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