ポケットモンスターS   作:O江原K

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第128話 トノバンの娘

 

これがセレビィの持つ能力か。スタジアムにいる全ての者によく見えるように

白黒の映像のようなものが現れ、ナツメの謎を暴くという。時渡りの力によって

隠され続けてきたナツメの真実を人々の前で露わにし、彼女がゴールドとは違い

ちっぽけな偽物であることを皆が知るようにするのがその目的だ。

 

「ほう、幻の神はこんな手品もできるのか。わたしの過去を追うだと?まるで

 タイムマシンにお願いってところだな、あなたの力は・・・」

 

「強がるのもそこまでです。あなたが封印し誰にも語らなかった過去こそが

 あなたの心の奥底をこれ以上なくはっきりと教えてくれるでしょう」

 

ナツメのポケモンたちはそれが明らかになるといけないとわかっているので

不安そうにナツメのほうを見ていた。しかしこれからセレビィが行うことを

止める方法がわからないので何もできず、ナツメがどう出るかを待つしかなかった。

 

「・・・そう心配するな。やつらが狙っているのはわたしの評判やプライドに

 傷をつけること。どうせ真実ではない適当な内容が上映されるだけだ」

 

「・・・・・・し、しかし・・・いや、我が主がそう言われるのであれば」

 

セレビィがどれほどのものを出せるのか。ついに会場内が完全に白と黒に覆われた。

 

 

 

 

 

はじめに映し出されたのは病院だった。若い夫婦のもとに元気な赤子が

無事に生まれた。まだこの国が敗れた大戦から数年という時代で、ナツメが

五十年ほど生きているというのならこれが誰なのかは容易に想像できた。

 

『透き通るような美しい娘になってほしい・・・『トウメイ』!』

 

だが、父親は我が子をトウメイと呼んだ。名前から生まれた愛称で『ウメちゃん』と

彼女を呼ぶ者もいたが、最初からナツメという名ではなかったということがわかった。

『トノバン』という家名も、やはり彼女がいまは使っていないものだ。

両親にとっては特別な存在だが、どこにでもいる子どもの一人にすぎず、後に

人々から恐怖される超能力や残虐な性質の片鱗はまだ見えなかった。

 

 

『・・・親馬鹿かもしれないがこの子はとても賢いな。この年齢でもう絵本の

 内容を理解している。善人と悪人の違いをはっきりとつけられているぞ!』

 

『それか、頭の出来は普通だけど誰よりも人の気持ちがわかる優しい子なのか。

 私はそっちのほうがうれしいけれど・・・楽しみに待ちましょう』

 

成長の早い段階からとても感情豊かで、将来を期待させた。それでも特に目立った

出来事のないまま年月は流れ、彼女は六歳になった。その日、凡庸ながら幸せなものと

なるはずだった彼女の人生は全く違う道を歩む始まりとなった。

 

 

 

『・・・・・・あれは・・・・・・』

 

トウメイ、つまりナツメは母親と家へ帰る途中だった。公園に数人の同世代の

男の子たちがいて、何かを囲んでいるようだった。ナツメは見に行こうとしたが

母親は掴んでいた手に力を入れてそれを制止し、近づかせようとしなかった。

 

『ほら、寄り道しないで帰りましょう』

 

『・・・・・・・・・』

 

どうして母がそうしたのか、ナツメの目に入ってしまった。母は隠そうとしていた。

少年たちは皆でキャタピーやビードルを虐げて遊んでいた。まだ生まれたばかりで

抵抗できないのをいいことに、蹴り続けてはその反応を楽しんでいたのだ。

 

『よし、あと少しで顔が潰れるぞ!次は体を少しずつちぎってみるか!』

 

『いいねいいね、どんな鳴き声を出すのか聞かせてもらおうぜ!』

 

その光景を見たナツメは、少年たちが幼さから生じる好奇心で力なきポケモンを

いじめているのではなく、筋の入った邪悪な心がそうさせているとわかった。

やめさせようとしたところで彼らは応じないだろうし、ひどい場合は自分と母親に

対しても暴力を振るおうとするだろう。助けたいと思ったが母のためにも我慢し、

 

 

『・・・その足がもう二度と動かなくなるように』

 

ぽつりと言った。ナツメの目は赤く光っていたが、彼女自身も気づかなかった。

すると公園から悲鳴が聞こえた。ポケモンではなく、少年たちのものだった。

 

『うああ————っ!あ、足が————っ!!』

 

『痛いっ、痛いっ!!だ、誰か~~~っ』

 

骨が粉々になっていたり筋が完全に断裂していたりと症状は様々だった。だが、

彼らは一人残らず足が元通りになることはなかった。数十年経った今でも障害が

残り、杖に頼る者、足を引きずりながら歩く者、ひどい場合は足を切断して

質の悪い義足を着けている者もいた。誰にやられたのかを説明できた者はなく、

神や天使による天罰ではないかという噂が広がっていまだに言い伝えられている。

 

 

『・・・・・・・・・』

 

『・・・どうしたの?お母さん?』

 

ナツメの母だけは娘の異変を目撃していた。まだナツメが超能力者であるとは

この一回では確信できなかったが、次第にそれがはっきりとした形で現れていった。

 

 

『・・・・・・・・・』

 

『信用できない非現実の話としては聞いていた。まさかウメが・・・』

 

父も母も超能力とは無縁だった。だから娘がエスパー少女だとわかったとき、

どう対処したらいいか非常に困った。ナツメの力は日に日に強くなった。

正義感に溢れすぎて悪を見逃せず、本人も無意識のうちに力を発動していることが

多々あった。今のところはナツメがやったとは誰にも知られていないがそのうち

誰かが真相にたどり着くかもしれず、それよりもいけないこととして、能力が

これ以上強くなるといよいよ殺人を犯すのではないかという不安が増していった。

 

『力を制御できない・・・と考えるべきだろう』

 

『もう少し大人にならないとだめかもしれないわ。心も体も・・・』

 

両親は事態が好転するまでは娘を家の外に出さないと決めた。ナツメも自分に

与えられた力の厄介ぶりはわかっていたのでこれも仕方ないと思い、大人しく

従って不自由な生活を受け入れた。まだ白黒テレビも高価で手に入らない時代だった。

 

 

 

 

 

「どうですか、思い出しましたか?あなたの誕生から初めて人間に危害を加えた日や

 その後も暴走を続けたこと・・・多くの罪をどうご覧になりますか?」

 

「さあ?遠い昔のことだからな、全く忘れてしまったよ。そもそもあれがわたしで

 あるのかどうかも疑わしい。トウメイだのウメちゃんだの・・・別の名で呼ばれて

 いたではないか。適当な他人の人生が紛れ込んでいるぞ?もしくはあなたが

 短い時間で創作したフィクションに過ぎないのか・・・」

 

「・・・反省どころか自分であることすら認めようとしないのですか」

 

セレビィは呆れた、と言わんばかりに語るがやはり感情は出していない。ナツメもまた

自らの過去が晒されているというのに一切動揺を見せずに笑いながらセレビィと語り合う。

 

「だがこれはいい教訓を与えるものとなった。たとえ幼い少年だとしても悪意に満ちた

 卑劣な行為は決して許されるべきではない、必ず報いを受けるという戒めだ。

 もちろん過失や事故、自分が何をしているのか理解せずに罪を犯した場合などは

 酌量されるべきだが、ポケモンへの故意の虐待・・・そこに少年も老人もない。

 わたしとフーディンがこれから行う粛清のときも同じようになるだろう」

 

「お前たちのような悪党にそんな判断ができるわけないだろ。面倒だからみんな

 殺してしまえ・・・結局はそういう思考になる。だからおれたちは止めに来た!

 他の誰でもいいがお前たちだけにはやらせちゃいけないんだよ!」

 

今度はゴールドがナツメを非難する。しかしナツメはすぐに彼の意見を否定した。

 

「だったらあなたはどうなんだ。ロケット団のアジトを壊滅させる際、どうしても

 命令に逆らえなかった者も喜んで悪事に励んでいた者も見境なく痛めつけただろう。

 見た目ではわからないのだから仕方がないが、だったら心を読むことができる

 わたしたちのほうがふさわしく善と悪を区別できるのではないか?」

 

「・・・ぐっ・・・」

 

「それに、わたしがやらなかったとしても正しい裁きは下される。数か月前の

 ニュースを覚えているだろう。あなたの地元のそばだったはずだが・・・」

 

ゴールドはすぐにナツメが言おうとしていた出来事を思い起こした。幾人かの

子どもたちが群れからはぐれたヒメグマを棒や金属で攻撃していたところ、

我が子を探しにきたリングマに切り裂かれ、惨殺されているのが見つかった。

彼らは日ごろから怪我をしているポケモンや体の弱い友人相手に同じことを

しているという証言が寄せられたので、自業自得だったと人々は結論した。

 

「まあそんな話はいいとして・・・セレビィ、あなたのショーはもう終わりか?」

 

「ふふふ・・・まさか。これからが核心に迫る大事なところです。ナツメ、

 あなたが言い逃れできない罪を公にします。命を奪うという重大な罪を」

 

「・・・・・・・・・」

 

ゴールドを相手にしていたときの余裕が、ナツメからなくなった。命を奪う、

それは彼女の記憶のなかでも最も忌まわしいものだったからだ。

 

 

 

 

 

学校にも遊びにも行けずに退屈な毎日を過ごしていたナツメ。しばらく力の発動も

なく落ち着いてきたのかもしれないと思った両親は、たまにはいいだろうという

考えと今後のテストの意味合いを兼ねて、娘をポケモンバトルのスタジアムに

連れて行った。現在よりも声援や野次が荒く、バトルも相性や補助技など無視した

互いに得意の攻撃技で殴り合うばかりだった。だが、観客の熱狂は今以上だった。

 

『あっ、女の人が出てきた!珍しい・・・』

 

『ああ、あれはキクコだよ。男ばかりの世界であんなに勝てるんだから凄いよな。

 ウメは自分でバトルはしたくないと言っていたけれど見るのは楽しいだろう?』

 

『うん!特にあのキクコさんはすてきだね。ポケモンと親友みたいだもの!』

 

当時も金や名声のために戦うトレーナーたちは多かったが、キクコは彼らとは

異なっていた。それをナツメはすぐに確信し、トレーナーになる気はないが

いずれポケモンと暮らすとしたらキクコのようになりたいと願った。いや、

彼女のようにうまくやれるのならトレーナーになってもいいと思った。

 

『む、アタシは・・・いや・・・ほら、渡しな。書いてやるよ』

 

この時代はファンサービスなどするトレーナーは稀で、特にキクコは昔も今も

機嫌の良し悪しに関わらずサインは書かなかった。皆それを知っていたのだが、

今日が初めてのスタジアム観戦、ポケモンバトルを見るのも初というナツメには

それらの常識や先入観は通用しなかった。あまりにも純粋で輝きに満ちた目で

下から眺められてはキクコも負けた。おもちゃのモンスターボールに自らの名を

丁寧に書き、少女の頭を軽く撫でながら手渡した。

 

『ヒッヒッヒ!アンタが成長してアタシの前に対戦相手として現れるのを

 楽しみにしているよ!そのときアンタの名前を聞こうじゃないか!』

 

『・・・はい!ありがとうございます!』

 

 

二人の対戦が叶ったのは数十年後、キクコが年老いて第一線を退いた後であり、

まさかナツメがあの少女だとはわかるはずもなかったが、二人ともその日のことは

覚えていた。ナツメはキクコの全盛期を知っている数少ない人間で、実際にその目で

見ていたのだ。だから策略家同士のバトルではなく、最高の威力を誇る攻撃技で

ぶつかり合う勝負をナツメは望み、鬼攻めのキクコを復活させたのだった。

 

 

 

『・・・う~む・・・どれがいいのかさっぱりわからん』

 

ナツメの父は一人ポケモンを探していた。娘にプレゼントするためであり、ずっと

家にいて友人もできない娘の友となれるのはポケモンだけだと判断した。裕福な

家庭ではなく、ポケモンに関する知識もゼロに等しかったが当時はそれが

当たり前だった。環境を整え事前に学習しておくというのはずっと後の話だ。

 

トレーナー資格を得るためのスクールも飼育用のポケモンショップもない。

とりあえず普段はボールに入れておいて適当に運動させ、食事は人間の残飯を

食べさせておけばいいというのが一般の人々の考えで、それでも十分ポケモンは

生きていけた。バトルをさせないペットのポケモンにも快適な生活環境を与え

専用の高価なポケモンフードをあげるなど当時の人々からすれば信じられないだろう。

 

『よし、こいつでいいか・・・襲われる心配もなさそうだしな』

 

父親が選んだのはすでに年齢を重ねたコイキングだった。バトルの経験がないので

戦闘レベルは低いまま、よって幼い我が子やポケモンの扱いに不慣れな自分たちでも

安全に飼えるという考えからそうした。唯一の問題は寿命が目前だという点だが、

 

『このコイキングの死でトウメイが命の重さを学んでくれたら超能力の暴走を完全に

 抑え込めるかもしれない。そうすればトウメイも普通の生活を送れるだろう』

 

エスパーの力で殺人を犯すかもしれないという不安が娘を外に出さないと決めた

一番の理由だった。タダ同然で手に入れた老いたコイキングへの期待は大きかった。

 

スタジアムでバトルを見てからナツメはすっかりポケモンが好きになり、もし

コイキングが死んだ後もまたポケモンを飼いたいというのなら本格的に勉強させて

みるのもいいだろうと父は考えていた。激しい戦争は人とポケモンの絆を壊したが、

復興が進むにつれやがて元通りに、またそれ以上になったときはポケモン関係の

仕事も多種多様となり、多くの労働力が求められるだろう。今から家で触れ合うのは

将来への財産となる。コイキングを連れて帰ることは利点だらけのように思えた。

 

 

『おさむ~。やっぱり水のなかのほうが気持ちいいんだね?』

 

『ビチビチビチ・・・・・・』

 

オスのコイキングにおさむという名前がつけられ、立派な家族の一員となっていた。

ナツメは一日中ほぼつきっきりで世話をし、特殊な道具や技術を使っていないのに

コイキングの目つきや体のつやは見違えるようによくなっていた。まだまだ若く

これからギャラドスになれる見込みがあると言ったら騙される人間もたくさん

出てくるほどの状態にまで仕上がった。全てナツメの手による結果だった。

 

『あの死にかけで覇気がなかった老いぼれのコイキングが・・・すごいな。

 おれたちの娘はポケモン飼育の天才なのかもしれないな!』

 

『いいえ、愛情をこめて育てているからじゃないのかしら。トウメイはやっぱり

 とても優しい娘なのよ。こんな話・・・確か生まれてすぐの時もしたっけ』

 

コイキングと遊ぶ愛娘を眺め、両親は幸せを噛みしめていた。これならコイキングが

天寿を全うするときには超能力の暴走は心配しなくてもよくなっているだろう。

その力を使うことすらなくなってきているので、このまま消滅するかもしれない。

 

『スプーンを曲げたりするくらいなら構わないが人体を簡単に破壊できるのだから

 危険な力だ。だがうまくコントロールできるのなら大きな支障はない・・・』

 

『ポケモンという夢中になれることが見つかったのだからいつの間にか超能力の

 使い方を忘れている、期待しすぎかもしれないけどそうなればいいわね』

 

まるで天使の微笑みようだと思えるほどの愛くるしい笑顔を見せる少女に

地獄の使者のような恐ろしいパワーは似合わない。年齢を重ねるごとに力を

増し加えていく者もいるが、成長するのと反比例して能力を失っていく例もあると

資料には書かれていた。後者であることを父も母もただ願った。

 

 

 

その日は曇り空だった。当初の予想よりはずっと後になったが、とうとうそのときが

きてしまった。元気を失いつつあったコイキングのおさむが静かに死を待っている。

最後は水中がいいだろうと他に誰もいないのを確認して近所の池に連れてきていた。

 

『・・・・・・・・・』

 

ナツメも数日前から覚悟していた。だが幼い彼女には残酷な瞬間だった。別れの

言葉を口にすることもできず、弱っていくコイキングをただ黙って見守っていた。

 

『ウメ、お前はほんとうに大切におさむを世話した。もともとあと少ししか

 生きられないポケモンだったんだ。お前のせいじゃない』

 

『ええ。だからいまのうちに何か言ってあげたらどうかしら』

 

今までありがとう、と言えばいいのか。ほんとうに楽しく幸せだったのかな、そう

聞けばよいのか。これまでに問いかけた時も返事はしてくれたが、人間にはポケモンの

言葉がわからない。だから彼女は立ち上がった。そして両手を大きく広げて叫んだ。

 

 

『・・・おいで、おさむ!わたしはあなたを愛している!だから・・・』

 

『ビ・・・ビチチ————ッ!』

 

その瞬間、ナツメの全身から不気味なオーラが放たれると、池の水が沸騰して

いるかのように盛り上がり始めた。その有り余ったエネルギーはコイキングにも

伝染し、死にかけとは思えない輝きに満たされ大きく跳ね上がった。

 

『な・・・なんだこれは!こんな動き、健康で元気なときでもなかったぞ!』

 

『街のテレビで見た『はねろ、コイキング』大会で優勝したものよりも凄いわ!』

 

 

よく世話し共に遊んだといっても、実際にコイキングに触れるのはほんの少しだった。

尖ったヒレで怪我をしたり、もしかしたら何かのきっかけで怒らせて攻撃を食らう

かもしれなかったりと、万が一の事故を考えてのことだった。しかしいま、ナツメは

コイキングのおさむを迎える体勢だった。どうかこの胸に飛び込んできてほしいと。

 

『ビッシ————ッ!ビシャアァ————!!』

 

愛情に応えようとコイキングの身震いが激しくなっていく。そしてこれまで一度も

使えなかった攻撃のための技、たいあたりとじたばたを一つに併せたような

躍動感溢れる動きで池を飛び越え、腕を広げて待っていたナツメのもとに着地した。

 

 

『ピチッ!ピチチ————ッ!』

 

コイキングにとってもこれは悲願の瞬間だった。叶わないと思われていた主人との

抱擁が死のうとしているその日に果たされ、その目は潤んでいるように見えた。

 

『ああっ!おさむ・・・!よく頑張ったね、ほんとうに・・・』

 

ヒレや体のそれ以外の硬い部分が腕や肩などの肌に食い込み、深々と突き刺さって

血が流れても少女はちっとも痛みを感じていなかった。彼女が涙を流しているのは

大切な親友と抱き合うことで、これまでも、そしていまも心と心が通いあっていると

確信できたからだ。完璧に意思の疎通が出来なくても、この愛は確かに本物だった。

 

 

しかし、本人の意に反し、内に秘めたる力が自己防衛のために働いた。肉体を

傷つけるコイキングを危害を加えてくる敵とみなし、脅威を除き去ろうとしたのだ。

 

『——————————っ!!』

 

エスパーパワーが放たれると、コイキングが突然泡を吹きながら痙攣した。

そして苦しむ間もなく動きが止まり、そのままナツメに抱かれながら息を引き取った。

 

『・・・・・・え・・・・・・』

 

 

両親は何が起きたのかわからないまま負傷している娘のもとに駆けよった。だが彼女は

これが自分の力によって行われたことだとはっきり認識していた。自らの手で親友を

殺害し、その生涯を終わらせてしまったのだ。感動の涙は哀しみの涙へと変わった。

 

ナツメのポケモン殺しの歴史の始めであり、悲劇はさらに続いていくことになる。


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