ポケットモンスターS   作:O江原K

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第140話 裁き

 

ナツメが突然フィールドに座り込んだかと思うと、その顔は真っ赤になっていた。

奇跡の力で回復したはずの頭部の傷が元に戻ってしまっている。

 

「・・・・・・ナツメ?」

 

アカネがナツメをぐいっと自分に寄せた。するとその瞬間、ナツメが大量に吐血し

アカネの顔をも赤く染めた。そして地面に倒れ、深刻な事態であることがはっきりした。

 

「ナツメ!あんた・・・!どうして・・・・・・」

 

「・・・ふふっ・・・わたしのダメージは致命傷だった。いくらあの特別な力、

 それにわたしの持つ自己再生があっても完璧に治せるわけがない。一時的に塞いで

 いただけでタイムリミットを過ぎてしまっただけのこと・・・・・・」

 

ナツメはこうなるとわかっていたようだ。そしてもう長くは持たないということも。

アカネやゴールドたちに何を聞かれるわけでもなく、力を振り絞って語り始めた。

 

 

「今回のわたしたちの行動はずっと昔からの悲願だった。ポケモンと人間の距離は

 わたしが幼い日よりずっと緊密なものになっている。それなのにポケモンを利用し

 傷つける人間があまりにも多すぎる!だからフーディンとわたしは事を起こすのに

 最高のタイミングを見計らい・・・ポケモン界を変えようとした」

 

「・・・そんなん前も聞いた!それよりいまは休んで・・・・・・」

 

「だがフーディンのやり方はあまりにも厳格すぎる!粛清すべきレベルの範囲が

 広すぎて、これではほとんどの者が裁きを免れられず未来を断たれてしまう」

 

ナツメの言葉を上空にいるフーディンはじっと聞いているだけだった。

 

「アカネ、あなたやゴールドたちでさえ最初は裁きの対象だった。でもわたしは皆の

 成長や可能性に賭けたかった。悪いところよりもよいところに目を向けたかった。

 ほんとうにどうしようもない悪人はこの手で消した。ポケモンと心からポケモンを

 愛する人間の平和のためには中途半端ではいけない。徹底的に滅ぼした」

 

ポケモン協会の長老、ロケット団員でも特にどうしようもなく見込みのない者たち、

さらには大企業や国の要人に至るまで、容赦せず破滅に追い込んだ。

 

「だからこそ救われるべきあなたたちのような人間は助けなくちゃいけない。わたしが

 今回対戦したトレーナーたち・・・みんなわたしよりもずっと才能があって希望に

 満ち溢れていた。確かにそれぞれ問題点や改善するべきものを抱えていた。それでも

 じゅうぶん克服できると期待した。いまは立ち止まっていても再生できると信じた」

 

フーディンが粛清しようとしていたイツキやグリーン、キクコを寸前で救い出した。

また大勢の停滞していたトレーナーたちに道を差し伸べた。失われていたはずの夢や

希望を再び得て立ち上がり、フーディンが考えを改めるようになった者たちもいた。

これなら自分の創造する新たなる世界にふさわしい、そう認めてもよいと。

 

 

「・・・まだ終わっとらん!まだ・・・あんたが救われてないやんか!うちらを

 助けたんはよかった、でも優しいあんたは自分のことを忘れとったわ!あはは、

 案外抜けたトコもあるなぁ。次はあんたが・・・」

 

このまま死んでしまってはナツメが哀れすぎるというのだ。ところがナツメは穏やかに

笑うと、倒れた自分を抱きかかえるアカネの頬に手を当てて言うのだった。

 

「いいえ・・・・・・わたしはもう救われている。それも早い段階、初日ですでに。

 わたしたちがセレモニーを壊したあの日、その最後のあたりであなたに・・・」

 

アカネはそれだけ聞いてもわからずにいた。自分のことなら覚えはある。ハヤトとの

バトルに勝利したが、仲間たちや大勢の観客はその勝利を無価値で偶然の産物だとした。

運任せに過ぎなかったと。だがナツメだけはアカネの勝利を称賛したどころか、ポケモンを

信じ続けた故の結果であり胸を張っていいと褒めた。それに比べたら自分を含めた他四人、

そのバトルなどまるで意味のないものとまで言い切った。

 

『仮にもジムリーダー、それに四天王ともあろうトレーナーがこの試合の勝因を

 単なる運任せの偶然としか見ることができないなんて、それでは盲人と同じだ。

 それに一時的とはいえ仲間である者の勝利だというのにあの態度は何だ。

 よくやった、の一言すら出ないとは・・・三人とも、恥を知りなさい』

 

仲間たちを叱責し、戒めた。アカネの胸が熱くなった瞬間だった。

 

 

「そ、そりゃあうちはあんたのあの言葉で!でもうちは何も・・・」

 

「・・・ふふふ、案外そんなものかもしれない。でもわたしはよく覚えている。

 わたしが悪い冗談・・・敗者たちをこの世から消したように見せかけたとき、

 広い会場の大観衆、そのなかであなただけが最初からわたしを・・・・・・」

 

『だってあんたはうちのことを慰めて、励まして、しかも褒めてくれた。それだけで

 あんたが優しい、温かい人間だってもうわかったんや。そんなあんたが人殺しなんて

 するわけないやろ』

 

ナツメはそんなことをしない、そう信じて疑わなかったのだ。

 

「この力のせいで誰もがわたしを警戒し恐れた。次第にわたしも諦めるようになり

 ますます皆わたしに心を閉ざすようになった。なのにあなただけは全く違った。

 わたしに近づき共に戦おうとしてくれた・・・あなたにとっては何でもないこと、

 それでもわたしは・・・もし涙を流せるならきっと泣いちゃうくらい嬉しかった」

 

 

次にナツメは、ポケモンセンターから戻ってきたリニア団の正式な仲間、元ロケット団の

女と彼女の相棒ウパー、そのコンビ名ワイルド・ワンズにも感謝の言葉を述べる。

 

「あなたたちも・・・わたしを心から信頼してついてきてくれた。利用されている、

 洗脳されているとは微塵も考えず、胡散臭いこと極まりないわたしから学ぼうと

 してくれた。わたしの親友であってくれた・・・礼を言う」

 

「・・・ナツメさん!」 「うぱ――――っ!」

 

まだ終わっていないという思いは彼女たちも同じだ。しかしナツメはそれを断ち切る。

 

「そこにいるゴールドやシルバー・・・それにレッドとエリカ、それ以外にも名前を

 挙げたらきりのない・・・たくさんのトレーナーたちの輝きを見ることができた。

 それでじゅうぶんわたしは救われた。だから悲しまないでほしい。何よりわたしが

 最もその復活と再生を待ち望んでいた人間のそれを実感できた・・・・・・」

 

そのときナツメはサカキをじっと見つめていて、彼のほうもそうしていた。

 

「・・・ありがとう、そしておめでとう・・・・・・サカキくん」

 

「・・・・・・ナツメ・・・!」

 

幼いころ、たった一度だけ出会った少年への祝福、そして別れの言葉でもあった。

 

 

「さて、このまま終わりがくるのを待ってもいいけれどそれじゃ満足しないでしょ?

 降りてきて、わたしに対して好きなことをしてほしい、フーディン!」

 

ナツメが言い終えるよりも早く、沈黙を守っていたフーディンがフィールドに立っていた。

そして一歩ずつ近づきながら、いま降り立った理由を告げ始めた。

 

「ナツメ、あなたはわたしにこの試合は任せろと言った。このわたしと肩を並べるに

 ふさわしい者であると証明してくれるものだと期待した。だが結果はこれだ」

 

「結果!?居眠りでもしてたんか!?ナツメは立派に・・・・・・」

 

「辛勝、これは問題ではない。あなたが重罪なのはわたしたちの間で定めた掟、

 新しい世界において裁かれるべき人間にあなた自身がなってしまった点だ」

 

何度も深く頷くナツメには、フーディンの言いたいことがすでにわかっていた。

 

「だからわたしも死のうとしている。自らの私利私欲のためにポケモンを傷つける、

 勝利のためにポケモンを限界以上に酷使して命の危険に晒す、その罪を犯した。

 カエラの二本の足はこの先一生義足になるかもしれないし他のポケモンたちの傷も

 後遺症が残る可能性が高い・・・わたしは生きているべきじゃない」

 

「わかっているようだな。では・・・・・・すぐに裁きを執り行う」

 

ついにすぐそばまで迫ってきたというところで、アカネが立ちはだかった。

 

「何をしている。あなたに用はない、さっさと失せろ」

 

「い~や!ここは絶対に通さん!うちの目が黒いうちは・・・」

 

 

シルバーとのバトルで出番がなかったピクシーやミルタンクたちも主人とナツメを

守るため壁となる。すると、フーディンとアカネたちの間に更に何者かが割って

入ってきた。一人ではなく、三人の女性トレーナーたちだった。

 

 

「あ・・・あんたたち!」

 

「アカネ、あなたはナツメを連れて逃げなさい!ここは私たちが!」

 

一人目はクリス、好戦的な彼女がフーディンの暴挙を見過ごすわけがなかった。

 

 

「すでに強力なバリアーが張られて外部からの助けは期待できません。戦えるのは

 私たちだけ、ゴールドさんたちの避難はもう終わっています」

 

二人目はミカン。リザードンに乗るレッドたちはいなくなっているが、すぐに病院で

治療を受けるべきであるゴールドとシルバーを連れて行ったようだ。レッドのピカチュウ、ゴールドのオタチという強力な助っ人がいないのは惜しいが仕方がなかった。

 

 

「そのナツメに生きていてほしい理由はわたしにもある!バトルをすると約束した。

 こんな素晴らしいトレーナーとのバトルの機会、絶対に逃したくはない!」

 

「・・・あ、あなたまで・・・・・・」

 

三人目は国際警察隊の一人、顔の整った少年にも見える中性的な姿をした若者だった。

ナツメをしてジムリーダーや四天王以上の実力者だろうと雰囲気だけで認めさせたほどの

トレーナーだ。名前すら知らないが、フーディンに対しても好勝負ができるだろう。

 

 

「・・・・・・お、おおきに!この恩は必ず返すで!」

 

アカネとワイルド・ワンズがナツメを抱えて退く。フーディンは見るからに憤っている。

 

「どけ、塵芥に過ぎない者ども。わたしの邪魔をするな」

 

「フン、ゴミクズはどっちかしらね!スイクン!いきなり全力でやっちゃっていいわ!」

 

クリスは自分のポケモンで最も力があるスイクンを繰り出した。伝説の存在である

スイクンであれば規格外の怪物相手にも太刀打ちできると思っていた。

 

「クオオォ―――――――ッ!!」

 

スイクンもフーディンを敵にしたなら最初から全開で戦わなければ勝てないと察し、

本気の必殺技、ハイドロポンプを直撃させた。弱いポケモンや人間がそれを受けたら

粉々になって死体も残らないほどの威力だ。それをフーディンの全身に命中させた。

 

「やった・・・・・・はっ!」 「!!」

 

最高の手応えだった。ところがフーディンは目立ったダメージもなく、ただ体が

濡れているだけ、まるで雨に降られたかのような状態に過ぎなかった。

 

 

「この程度でわたしを止められると思っているのか――――――っ!!」

 

怒りのサイケこうせんが炸裂する。うめき声を出すこともできずにスイクンはわずか

二秒でフェンスまで吹き飛ばされ、全身の骨を砕かれ血を流しながら痙攣していた。

 

「スイク――――ン!」

 

「次は私が!ハガネール!あなたなら対格差でフーディンを抑えられる!」

 

すぐにミカンがエースであるハガネールを出し、高さは9メートル、重さは400キロを

超える鉄の蛇がフーディンに絡みつき、完全に動きを封じた。

 

「よし、そのまましめつけて・・・・・・」

 

あの怪物は窒息死、もしくは圧死させるつもりで技をかけなければ止まらない。

温厚なミカンが容赦なくフーディンを仕留めるように命じたが、実行不可能な命令が

果たされることはなかった。ダイヤモンドよりも固いハガネールのボディが本来

曲がらないはずの方向にへし曲げられ、そこからフーディンが脱出していた。

 

「グ・・・グァオォ・・・・・・」

 

「こちらの番といこう!あなたの得意技、たたきつける攻撃をくらうがいい!」

 

ハガネールの巨体を片手で軽々と持ち上げた。エスパーパワーによる力で、

そのまま何度もハガネールを地面にたたきつけ、そのたびに自慢の鋼鉄が砕ける。

放っておけば全身が粉々になって命を絶たれてしまう。ミカンは急いでボールを

出し、ハガネールを戻して負けを認める以外選択肢はなかった。

 

 

「・・・・・・そ、そんな・・・・・・」

 

「化け物め・・・・・・でもここで食い止めてみせる!いけっ!」

 

最後の砦となった国際警察の若者が繰り出したポケモン、その姿に場内は騒然とした。

 

「あれは・・・エンテイ!スイクンと並ぶ伝説の・・・!」

 

ジョウト地方に伝わる伝説のポケモンの一体、エンテイ。神と呼ばれるポケモン、

ホウオウが特別に愛したという逸話もあり、スイクン、またライコウより格上とする

見方もあった。そのエンテイがだいもんじを放つと、フーディンがまさに大炎上した。

 

「凄い!あの炎!グリーンのブースターはもちろんレッドのリザードンよりも上だ!」

 

「エンテイ!灰も残らないほどに燃やしつくしてしまえ!」

 

どんな犯罪者が相手でも生きたまま捕らえるのが常だが、今回は違う。生け捕りなど

最初から諦め、倒すことだけが狙いだった。フーディンに挑んだ三組のなかでは最も

優れていた彼女たちの全力攻撃だったが、それでも魔王には通じなかった。

 

 

「・・・・・・ば、ばかな!そんなことが!エンテイ!逃げ・・・・・・」

 

「もう遅い!最初から逃走の指示を与えなかったのが失敗だ!中途半端に力を持ったが

 ために自信過剰になったお前たちを処罰するためにわたしは動いたのだ!」

 

フーディンもまた力を込める。エンテイの体の自由が奪われ、ボールに戻すことすら

できなくなった。そして上空高くからフーディンの指先一つで地に落とされる。

 

「サイコキネシス――――――ッ!!」

 

「ガゴォ~~~~~~・・・・・・」

 

エンテイを包んでいた聖なる炎が失われ、ぴくりとも動かなくなった。首の骨が

折れていて、すぐにポケモンセンターに搬送しなければ命はない。

 

 

「あ・・・あああ・・・・・・」

 

「さて、害虫どもの駆除は終わった。誰もわたしを阻むことはできぬ」

 

フーディンの姿が消えた。人々が騒然としたのも束の間、一瞬のうちにアカネたちの

眼前に立っていた。そして彼女たちが抵抗しようとする間も与えずナツメを奪うと

距離をとり、今度こそ横槍が入らないように新たにバリアーを張って遮断した。

 

「・・・!?え!?ナ、ナツメさん!」

 

「ナツメ―――――っ!」

 

アカネが力任せにバリアを殴るが壊れるわけもなく、やがて手が悲鳴を上げた。

 

「この~っ・・・まだまだ――――っ!」

 

手の甲が砕け、激痛が走る。それでも決してやめない。ポケモンたちもいっしょになって

バリアーをどうにか破壊するためにひたすらパンチを繰り返した。

 

 

「フン・・・無駄な努力だ。あのスピアーですらこの壁は破れないというのに」

 

「ふふっ・・・でもそこがアカネのいいところ。いつか不可能を可能にしてくれる、

 わたしの大切な親友なんだ。そしてフーディン、あなたとは最後ぎくしゃくしたけれど

 あなたも親友であることに変わりはない。それだけはわかってほしい」

 

「・・・・・・・・・」

 

「わたしはあなたほどのポケモンのトレーナーにはふさわしくなかった。でも親友だった。

 同じ夢を持ち同じ信念に向かって歩んだ・・・心を許せる親友だ」

 

自らの命を奪おうとするフーディンを目の前にしてもナツメは全く怯えていない。

穏やかに、安らかに友との最期の時間を過ごそうとするだけだった。

 

「あなたにも謝らなきゃいけない。約束を破ったことを。あなたからもらった不死の命を

 自ら絶とうとしたうえに、わたしたちの悲願が叶う瞬間に喜びを分かち合うことも

 できなくなった。こうして後始末まで任せてしまうのも・・・」

 

「気にすることはない。後のことはすべてわたしに任せなさい。あなたはわたしの当初の

 期待以上に働いてくれた。未練はないようだな。では・・・・・・」

 

フーディンがナツメの心臓を貫くために腕を伸ばす。するとナツメはそれを手で制止する。

 

 

「どうした・・・この期に及んで惜しくなったのか?」

 

「いいえ、言い残したことがあったのを思い出したの。わたしはあなたの正体を知っている」

 

それを聞きフーディンの腕が止まる。顔色も変わった。

 

「あなたに賛同して集まったわたしたちはアカネ以外の皆が嘘をついていた。それは

 フーディン、あなたも同じだった。あなたの転生前の生涯、わたしは調べた。

 全てを知ったとき、あなたがポケモンたちのための世の中を創ろうとする理由に

 心から納得した・・・わたしもできる限りのことをしたいと思った」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・フーディン、いや・・・『クリフジ』というのが真の名だ・・・あなたの

 生涯に比べたらわたしのできたことなんて小さなもの。それでもわたしを少しでも

 覚えていてくれるなら彼女たちをどうか優しく扱ってほしい。あなたが一番初めに

 目指していたものはまさにそれだったはずなのだから・・・・・・」

 

 

ナツメの言葉にフーディンの手が止まった瞬間、何かが砕け散る音がした。

 

「・・・・・・!!」 「馬鹿な!」

 

絶対に破壊されないはずのフーディンのバリアーが突破されていた。ピクシーや

ミルタンクは力を使い果たしたのかその場に座り込み、黄金のオーラを身に纏った

アカネだけがただ一人全速力で駆けてフーディンとナツメのもとに迫った。

 

「・・・アカネ!」

 

「へへ・・・うちに不可能はない!あんな壁、屁でもないわ!」

 

アカネの左右の手の指は全てあらぬ方向に曲がっている。よく見ると骨が突き出している

生々しい傷もある。それでも痛みを全く感じさせない勢いのある声としぐさで足を止めず、

ナツメの胸を貫こうとするフーディンの腕をつかんだ。

 

 

「フーディン!あんたもわかっとるはずや!ナツメを制裁する理由なんかあらへん!

 いまのあんたは意地になっとるだけの話や!もういっぺん冷静に考えるんや!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「それにナツメ!うちはもちろん、たくさんのトレーナーがあんたと約束をした!

 約束破りは許さん!力ずくで病院に連れてったるから大人しく・・・・・・」

 

いまだに自らの死を望むナツメの意志などお構いなしだ。バリアーが破壊されたことで

サカキたち他のトレーナーも一分としないうちに援軍にやってくるだろう。一度は

アカネの起こした奇跡に驚かされたフーディンだがその後の対処は速かった。

 

「どけっ!わたしの裁きは誰にも妨げられない!」

 

「うあっ・・・・・・」

 

掴まれた片腕だけでアカネを投げ、背中から地面に叩きつけた。そして再び構える。

これまでフーディンがトレーナーやポケモンの命を奪おうとしてきたとき、間一髪で

彼らを救ってきたのがナツメだった。しかしいま、彼女自身が処刑の対象となっている。

もはや誰もフーディンを止めることはできなかった。

 

 

「やめろ―――――――っ!!」

 

 

フーディンの腕がアカネの目の前でナツメの胸を貫通した。

 


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