ポケットモンスターS   作:O江原K

18 / 148
第18話 次なる戦いへ!

 

サカキはナツメたちの反乱をポケモンバトルにより鎮圧すると宣言した。とはいえ

彼一人に対し相手は五人。さすがの彼でも一斉撃破とはいかないだろう。

すでにサカキは今後のことをしっかりと考えていた。

 

「今日はもうすでに日も暮れた。しかもお前たちのポケモンは二匹とはいえ

 バトルで傷つき、万全の戦いはできまい。そこで・・・十日後だ。

 わたしはお前たちを倒す四人のトレーナーを連れてくる。再びこの場所で

 会おうではないか。互いに言い訳などできぬベストの状態でな」

 

「十日後?やけに間が空くな。わたしは別に今日でも明日でも・・・」

 

「まあそう言うな。そのぶん最高の対戦相手を用意してやろう。お前たちも

 観客たちも満足するやつらをな。本日同様五対五の対抗戦を行う。その戦いで

 お前たちが勝ち越せばわたしたちはもはや何も口出し、手出ししない。お前たちの

 勝ち残った者同士で好きに頂点を争え。その者にわたしたちも従おう。

 ただしわたしたちが勝ち越せば大人しく野望を捨てるのだ」

 

サカキは一人で話を進める。ナツメたちより先にゴールドやグリーンが待ったをかけた。

 

「ちょっと待ちな、サカキさんよ。何から何まで勝手に決めようとしているが」

 

「ポケモンリーグの本部や会長たちが認めませんよ!?」

 

ところがサカキは彼らの心配事など問題にしない。すぐに本部からの通達が届く。

 

「・・・皆さん!本部がオッケーを出しました!正式に許可しました。すでに

 入場券の販売の準備まで始めているそうです!」

 

金儲けに目がない協会の中核がこのチャンスを逃すはずがないことをサカキは

知っていた。この騒ぎすら彼らにとっては大歓迎のようだ。

 

「フム・・・開催に支障はないようだな。だがお前たちの意見をまだ聞いていなかった。

 今日のように皆の準備が整わないところを奇襲して勝つようなやり方が好みと

 いうのであればわたしの提案など飲めるはずもないか・・・」

 

サカキはふふふ、と笑い始めた。すると最初に反応したのはアカネだった。

 

「あはは!何を言うとるんやオッサン!うちらは大歓迎や、なあナツメ!

 うちはもともと強いやつと戦って勝ちまくる、そして成長するために

 来てるんや!チーム戦かぁ・・・一年に一回やるジョウトとカントーの

 ジムリーダー対抗戦みたいで燃えるやないか、やったるで!」

 

「わたしもその誘いに乗ってやるつもりだった。サカキ、あなたとその仲間たちを

 粉砕しあなたの時代を完全に終わらせる。同時に邪魔でしかないポケモン協会の

 老害どもも除き去り新たな時代を築く・・・そのための踏み台にしてやろう」

 

続いてナツメも挑戦的な言葉と共に十日後の戦いに同意した。もともと逆らう者は

残らず打ち砕くと最初から口にしていたのだ。受けないはずがなかった。

 

「私はそのような物騒な考えはありませんが・・・最強のトレーナー、つまり

 ポケモンマスターと呼ばれるためには強き方々とのバトルは必要ですからね」

 

「ええ。誰を連れてこようが私と悪ポケモンたちの餌食であることを思い知らせる」

 

「どんな展開になろうが最後に笑うのは私なんだから・・・いいわ。あなたたちを

 みんな氷漬けにした後で私の望む世界を実現してやるわ」

 

結局五人とも新たなる戦いのステージに進むことに異論はなく、サカキと彼の選抜した

トレーナーたちとの勝負をむしろ待ち望んでいるかのようだ。

 

「この催しでまたポケモンリーグの老人どもが喜ぶのは癪だが・・・楽しみに

 なってきた。サカキ、ここまで期待を高めておいて十日後になって急に

 ぎっくり腰になったから中止だとかいうのは勘弁してもらいたいものだ」

 

「フン、小娘が言ってくれる。その思い上がりも戦いの当日までだ。

 行くぞスピアー、撤収だ」

 

サカキは再び帽子をかぶると来た道を戻り、彼の後ろを全く同じ速さで

スピアーがついていく。やがてその姿が見えなくなった。

 

 

「・・・チーム戦ねぇ。仮の仲間のはずだったのにほんとうに運命共同体の

 間柄になってしまうなんて。私が勝ったところであなたたちが全敗したら共に

 破滅・・・足だけは引っ張ってほしくないものね」

 

「そうね、その言葉そのままあなたに返すわ、カンナ。それにこの協力は

 あくまでサカキのおじさまとほか四人を倒すまでのもの。ナツメ、私は

 イツキを病院送りにしたあなたを決して許しはしないわ。この戦いが

 終わったら真っ先にあんたとフーディンを完膚なきまでに打ちのめしてやる」

 

やはりそう簡単に溝は埋まらない。結局のところそれぞれが己の目的や欲望を

叶えるためにこのセキエイに導かれただけであり、協力して勝利を得よう

などという考えに至るはずがないのは当然だった。エリカは眠そうにしながら、

 

「ところで・・・本日はもう終わりならばこれで解散ですか?」

 

サカキが去り、ゴールドや多くのトレーナーたちはバトルを仕掛けてこない。

ならば早く帰りたいと言うのだ。それに待ったをかけたのはアカネだった。

 

「いやいや、ちょっと待たんか!いろいろあったけどうちらはこれからチーム

 なんやで!?ここでサヨナラして次会うのは本番って、そりゃないやろ!」

 

「は?」

 

「まずは今日の戦いの祝勝会やろが。それから十日間、絆を深めるために

 合宿とか・・・そういうのはないんか!」

 

どこか勘違いしているようなアカネの言葉にエリカは真顔で黙っているだけだった。

この戦いの重要性をまるで理解していないのだ。ところが、意外な人物がアカネに

同調することで事態は大きく動くことになる。

 

 

「・・・もちろんやるに決まっているだろう。すでに今夜の食事の場、そして

 しばらく強化合宿として過ごす施設はすでに用意してある。アカネだけではない、

 あなたたちにも来てもらう。わたしの秘密の別荘に」

 

ナツメだった。他者との付き合いなどほとんどないはずの彼女が自ら誘った。

 

「・・・・・・誰が行くと思っているの、そんな怪しげな場所に」

 

「そうかぁ?別荘だなんて面白そうやん。うちは行くで」

 

「その女は信用できないわ。何をされるかわかったものじゃないもの」

 

アカネ以外の反応は厳しいものだった。するとナツメは大きく息を吐いてから言った。

 

「まあ詳しい事情は後で話す。それよりまずは・・・後始末をしないと」

 

ナツメが指を鳴らすと、フーディンが電光掲示板に怪しげな光線を浴びせた。

するといまだ各スタジアムに残っていた敗者たちが映し出された。フーディンは

にやりと笑いながら力をこめると、それらがなんとモニターから剥がされるように

引き寄せられていく。彼らにもその影響はあるようで、

 

『な、なんだ!?急に振動が!地震が起きたのか!?』

 

『た・・・立っていられない!』

 

「私の力で作り出された空間で地震などあるはずないじゃないですか~っ!

 愚かですねえ・・・さあ、ナツメさん、どうぞ!」

 

一つのところに集め、丸めてボールのようにしてからナツメにパスした。

そしてナツメはそれを両手でキャッチすると、宙に浮かせて腕を広げた。

 

 

「・・・さあ見ろお前たち!これが腐りきったポケモン協会の飼い犬として

 わたしたちに歯向かった者の悲惨な結末だ――――っ!!」

 

 

両手を叩くように合わせた。パン、と大きな音を立てて割れ、なくなってしまった。

数秒の間静寂に包まれた後、大きな悲鳴が起こった。四人はいなくなったのだ。

 

「あ・・・あああ・・・嘘だろ・・・!?」

 

「そんな・・・ハヤトさんが・・・!ワタルさんたちも・・・・・・」

 

今日は敵同士だったとはいえ、決して仲の悪い相手ではなかったワタルとシバを

無慈悲な形で除き去ったナツメに向かってカリンが詰め寄り、その胸ぐらをつかんだ。

 

「・・・お前~~~!!も、もう許さないわ!今ここで殺してやる!」

 

カンナは衝撃のあまりナツメに怒る気も失い、その場に座り込んでしまった。

ところが、この大混乱のなか一番騒ぎそうなアカネが緊張感のかけらもない顔で

近づいてきた。そのままカリンとナツメの間に割って入り、二人を離してから、

 

「・・・なんか大騒ぎやなぁ。それにしてもナツメ、あんたも人が悪いで・・・」

 

「何をのんびりした顔で・・・!邪魔しないで!そいつを今から・・・」

 

「あっはっは!ナツメ、そろそろ言わんとまずいで。こういうのはタイミングが

 大事なんや。試合前もやっとったが、うちが鍛えてやったほうがエエな、こりゃ」

 

何の話をしているんだ、と誰もが戸惑っていたなか、ナツメは無表情のまま言った。

 

 

「・・・まあ・・・その通り。ちょっとした冗談だ。四人は生きているさ」

 

その言葉にこの会場のすべての人間の力が抜けていった。ナツメへの呆れ、

奪われたはずの四人の命が無事だったことへの安堵と感謝、それらの感情が

まとめて一気にこみ上げてきたうえに、それを誰に、どのようにぶつけたら

いいのかわからずに脱力し、腰砕けの形になってしまう者も多かった。

 

「あ、あんたねぇ・・・・・・悪いジョークはやめなさいよ・・・」

 

カリンもナツメへの怒りが収まったわけではないが、殴りかかる気も萎んで

へたり込んだ。ひとまずはよかった、という気持ちのほうが強かったのだ。

 

「で・・・あの方々はどうなったのですか?結局」

 

「それぞれの地元に飛ばしたさ。だが人によっては死んだほうがましだと思える

 刑に処した。やつらはもはや公の場ではポケモンをバトルでは使えない呪いを

 その身に受けたのだ。バトル前からの約束ではあったがいざとなったら反故にする、

 そんな真似を許すわけがないだろう。彼らもやはりイツキのようにわたしたちに

 愚かにも逆らったことを生き証人として人々に広める道具なのだ」

 

「・・・バ、バトルができなくなる!それは確かに厳しいわね・・・」

 

もし自分がポケモンバトルを没収されてしまったら生きていくことなどできないと

トレーナーたち、特にいまフィールドにいる上級者たちほど戦慄した。

彼らの生活はそれを中心に回っており、生きがい、人生そのものだと断言する

者たちも多い。また、幼い時から旅に出てポケモンの捕獲と育成、そして勝負に

全てを費やしてきたのにそれを奪われたなら生計の手段を失ったも同然だ。

まさに二重の意味で生きていけなくなる、考えただけで震えあがった。

 

 

「いえいえ、ナツメさんは慈悲深いお方ですよ。彼らにもまだ機会を残して

 おられるのですから。そんなにポケモンがお好きならバトルはできなくとも

 例えば農夫や漁師としてポケモンの食事に貢献してくださればいい!または

 排泄物の後始末や寝床を整えること・・・それくらいならば誰でもできるでしょう!」

 

「・・・・・・」

 

「そんなに睨みつけないでくださいよ皆さん!確かにこの呪いは永続的です!

 ですがチャンスはあります。考えを改め、今後は新たな支配者であるわたしたちに

 忠誠を尽くすと誓い、その言葉に偽りがないと認められた者は呪いから解かれます!」

 

どの道ろくなものではない。残酷極まりないフーディンに忠誠を誓ったところで

何一つ保証されない。都合のいい時に使い捨てられるだけだ。それならば

ナツメが口にする、次の条件を満たすほうが遥かにいいに決まっていた。

 

「もしくはわたしたちを倒すか!そうすれば力を失った者たちの呪いは終わる」

 

この場にいる人間は皆ポケモントレーナーだ。ならば解決策はポケモン勝負で

勝つ以外にない。例えば毒殺や拳銃などによる襲撃で事態を収束させたとしても、

彼らはもうポケモントレーナーではなくなるだろう。

 

 

「・・・しかし今日はもう誰もわたしたちに勝負を挑んだりはしてこないようですね。

 先ほどの五人は無謀とはいえ勇気はありました。ところがあなた方はわたしたちに

 敵対するというのに敗北を恐れ日和見・・・情けないことこの上ありません!

 観客の皆様!皆様もそう思われるのではありませんか―――っ?」

 

フーディンが人々を煽る。それにまんまと乗せられた群衆が一斉に騒ぎたてた。

 

「そいつの言う通りだ―――っ!!お前らそれでもエキスパートか―――っ!?」

 

「何がジムリーダー!何がチャンピオンだ!とっとと返上しろ――――っ!!」

 

ブーイングや怒号、それはこの日一番のものとなった。あまりにうるさいため、

そばにいる者との会話すら声を大きくし、しっかりと聞き取らねば成立しないほどだ。

ゴールドたちはこの屈辱をどうにか堪えた。必ずポケモンたちの調整と訓練を

今日これからすぐに開始し、必ずナツメたちを打ち負かすと心で誓った。

 

 

「ではわたしは果たすべき用事がありますのでお先に失礼しますよ。ナツメさん、

 あなたたちもあと五分以内にこの場から去るべきでしょう」

 

「む、わかった。ではそうしよう。今日はご苦労だった。そして・・・

 あなたたちも聞いただろう。予定通りわたしの別荘に飛ぶぞ!」

 

フーディンの姿が消えた。そして彼女の忠告の意味を理解しているナツメもまた

テレポートの準備を始めようとする。そのもとに近づかなければ共に行くことは

できないのだが、アカネ以外の三人はいまだ警戒心に満ち、なかなかそばに来ない。

それでも最終的には力づくで連れて行こうと考えていたナツメは、その前に

アカネに対して一つ尋ねた。とても気になっていたことがあったからだ。

 

「ところでアカネ、あなたはどうしてさっきわたしがあのパフォーマンスをしたとき

 この数万の人間の中でただ一人、四人の命を奪っていないとすぐに見破れた?

 あなたはどう見ても超能力者ではない。知るすべなどなかったはずだが・・・」

 

するとアカネはにこりと笑ってみせた。そしてこう答えた。

 

「だってあんたはうちのことを慰めて、励まして、しかも褒めてくれた。それだけで

 あんたが優しい、温かい人間だってもうわかったんや。そんなあんたが人殺しなんて

 するわけないやろ。他の誰が何と言おうがうちには隠せんで!あんたはきっと

 今回のうちの目的には欠かせない人や。だから連れてってくれや!あんたの家、

 いや、うちの夢へと続く道へ!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「そうですね。カスミさんたちにトレーナーとして復活する機会を残している、

 加えてそれだけでなくいまも限定的にバトルをすることを許していますね?

 公の場では、とあなたは言いましたから。ふふふ、いいでしょう。この子

 ほどではありませんが私もあなたをちょっぴり信じてあげましょう」

 

エリカが微笑みながら寄ってきた。ナツメにとってそれは意外なことだった。

だが、この流れはこれで終わらず、さらに続いた。

 

「・・・まあ確かに・・・冷静になって考えてみればあんたはイツキのことを

 なんだかんだ言いながら助けてくれたんだものね。あのフーディンは殺す気

 満々だったのに、あんたがそれを止めた・・・とも言えるわね。感謝するわ。

 ま、それでも私はあんたが嫌いだし真っ先に倒してやりたい相手だっていう

 気持ちは変わらない。そこは勘違いしないでちょうだい」

 

つい直前までは殺気を抱いて迫っていたカリンまでもが決まりが悪そうに

近づいてくると、共にテレポートに加わる位置にまで近づいた。最後にカンナも、

 

「どうせ私たちはいまそれぞれの家にもジムやリーグ本部にも帰れない身。

 だったらあんたの別荘に行ってあげてもいいかしらね。あんたが優しいとかいう

 アカネの言葉は意味不明だけど、もうすぐにここから去らなくてはならない理由、

 それは私にもわかるわ。行きましょう、私たちはしばらくはチームなんでしょう?」

 

とうとう全員が、自らの意思でナツメのもとに集った。ナツメはすっかり驚いたが、

深く目を閉じ、少ししてから再び開け、テレポートのための力を整えた。

 

「・・・・・・あなたたちには迷惑をかけた。だがそれもすぐに終わる。サカキにも

 ポケモン協会のクズ共にもこれ以上は好きにはさせない。ほんの僅かの辛抱だ。

 さあ、やつらと話すことももうないだろう、行くぞ!

 

 

ナツメを中心とした五人の体が少しずつ浮き始めた。するとゴールドが叫び始めた。

 

「待てっ、お前ら!覚悟するのはお前たちのほうだ!特にそこの女、お前だけは

 絶対に許さない!ぼくがハヤトさんの仇をとってやる!」

 

以前から憎しみの的としていたアカネに向かっての宣戦布告だ。するとアカネは

もはや数メートルは上昇したころ、彼に対して返した。

 

「やれるもんならやってみろや、この玉無しのクソガキが!うちをジムリーダーに

 ふさわしくないから追い出すとかほざいてたらしいな。ならうちはあんたを

 チャンピオンの座から蹴落としてコガネの地下街の便所に突き落としたるわ!」

 

そして信じられないことに、彼に対し中指を立てた。それはテレビ中継で運よく

映されていなかったため幸いであったと言える、最大級の侮辱行為だった。

 

「~~~~っ!!降りて来い!降りてきやがれ!くそが――――っ!!」

 

ゴールドが人前で我を忘れるほど激しく憤るのは初めてだ。慌ててグリーン、

また解説を終えたタケシたちも加わり彼をどうにかして落ち着かせようとする。

その様子をへらへらと笑いながら上から見ていたアカネだったが、

 

「・・・さすがに下品すぎるわ。反省しなさい」

 

背後から三発のゲンコツをくらい、テレポートのための見えない壁に鼻を強打した。

ナツメ以外の三人がこの日二度目の鉄拳制裁を与えたのだった。

 

「あっ・・・あっ・・・と、とうとうやりおったな!さっきは一人だけだったのに!

 とうとう三人ともグーで殴りよったなぁ!うわ――ん、痛いよ~~っ・・・」

 

鼻血を出しながら泣き始めた。頭を抱える三人をよそに、ナツメはゴールドと同じか、

もしくはそれ以上の迫力をもって下にいる者たちに対し声を張り上げた。

 

 

「いいかお前たち――――っ!わたしはこのアカネが言うような優しい女などでは

 ないぞ―――っ!十日後になってもまだわたしとフーディンに抵抗する者と

 そのポケモンには今日以上の地獄を見せてやろう!再びの対抗戦に向けて都合よく

 手駒どもも手に入った!命とトレーナーとしての地位が惜しくないのであればぜひ

 戦おう!ではひとまずのお別れだ、愚かでか弱きトレーナーどもよ―――――っ!!」

 

それと同時に数十人の警官が突入してきた。ポケモントレーナーではない、

つまり物事の解決にポケモン勝負を用いない者たちによってナツメたちを

制圧するために彼らは遣わされたのだが、間一髪間に合わなかった。

 

「ちょっと!待ちなさい!『手駒』っていうのは・・・・・・!」

 

「少しでも心を許したのが馬鹿だったわ!やっぱり利用するつもりだったのね!」

 

彼女たちの間でも問題は山積みのようだが、そのままテレポートで消えていった。

思えば登場するときも五人は何もない空間から突如姿を現していたのだ。

 

 

「・・・で・・・我々が連行すべき女たちというのは・・・どこへ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

警官隊を放置してグリーンはやや落ち着きを取り戻したゴールドに近づいた。

 

「お前があんなになるなんてたまげたよ。あのアカネといったいどんな因縁が・・・」

 

「・・・まあいろいろと。むこうは全くそんな気はなさそうでしたけどね。

 でも十日後、対戦相手が選べるのなら・・・やつを選んで必ず打ちのめします。

 そのためにすぐにでもトレーニングを始めないと・・・失礼します!」

 

「あっ・・・ゴールドさん!あたしもお手伝いします!」

 

ミカンが慌ててゴールドの後を追っていく。式典にメインで関わっていた者としては

たった一人残されたグリーン。この事態をどうすればいいんだと自分より大人の

エキスパートトレーナーや役員たちが大慌てしている中で辺りを見回し、

 

 

「・・・・・・逃げるか・・・・・・そうだよ、おれも十日後に向けて備えなくちゃ

 いけねぇしなっ!もっとも、おれの前にトキワジムのリーダーだったとかいう

 あの男がおれをメンバーの一人として選べばの話だが・・・」

 

目立つことや、華々しい舞台を好む彼であったが、誰にも気がつかれないうちに

セキエイのスタジアムを後にした。こうして激動の一日は終わった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。