ポケットモンスターS   作:O江原K

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第57話 男のくせに泣いてくれた

レッドが退院し旅を再開してからしばらくはエリカも彼に同行していた。いまだ

全快ではない彼を支えるためであり、半焼したジムの改装が終わるまでは彼の

生活をサポートしたいと明言した。だがポケモンジムの運営ならばひとまず

他の建物の一室を借りて行えば問題はなく、しかも彼女が珍しく業者に一つずつ

細かく指示を出し、金が余計にかかるとしてもあえて工期が長くなりそうな

要求をしていたことで、たいていの人間は二人の仲を察していた。

 

『エリカ様・・・彼はロケット団を追い出しジムの火災からポケモンを救った

 タマムシの英雄なのだからわたくし自らその助けになるのは当然とか

 言ってたけど・・・落ち着いて考えたらそんなことないわよね』

 

『入院のときもずっとそばにいたみたいだし、これはもう決まりかもね。

 今までどんなイケメンに言い寄られてもぜんぜん反応がなかったのに

 まさかあんなどこにでもいそうな男にねぇ・・・わからないわ』

 

まず二人はシオンタウンに向かい、幽霊騒動が起きているポケモンタワーへ

足を運んだ。エリカが用があると言うので一旦別行動となったところでレッドは

同じマサラ出身のライバル、グリーンと偶然出会った。彼はすでにバッジを六個も

つけていて、休養中に差がまた広がってしまったのだとレッドは思った。

ここまでグリーンには勝利できていない。エリカとの修業によってそれが

どう変わったか、確かめてみるいい機会だと感じていた。好戦的なあちらから

勝負を仕掛けてくるだろう。いつでも来いとレッドは構えていた。

 

『・・・なんだお前、こんなところで。お前のポケモン死んだのか?』

 

『いや、そうじゃない。用事は別にある。このシルフスコープで・・・』

 

『ちっ、冷やかしか。気に入らない野郎だ。いいさ、戦闘不能にしてやるぜ!』

 

グリーンの様子にどこか違和感を覚えながらもいつものようにバトルが始まった。

エリカに教えてもらったこと、特訓の中で自ら掴んだものを駆使してグリーン相手に

初勝利してやろうと気合に満ちていたレッド。しかし思わぬ肩透かしを食らった。

 

『クソが・・・!まだ倒れねーのか!たいあたり!たいあたりだ!』

 

『・・・・・・・・・』

 

この日のグリーンはいつもと戦い方が違った。普段ならばレッドを見下して余裕を

持ってバトルを展開する。補助技を絡めてレッドを翻弄し、センスの高さを

見せつけていた。ところがいまはひたすら直接攻撃ばかりで、戦術も何もない。

強くなったレッドを相手に焦っているのかと思われたがそうではなかった。

終始集中力を欠き、心ここにあらずといったグリーン自身に理由がありそうだ。

 

 

『・・・勝った・・・だけど・・・・・・』

 

『ちっ・・・初めて負けちまったな。よかったじゃねぇか、おい』

 

レッドは勝利したが、これならばエリカとの修業などなくても勝てていた。それほど

今日のグリーンは酷かった。更に言えばそのポケモンたちの動きも鈍かった。

相当疲れが溜まっていたのか、皆で体調不良を起こしたか・・・レッドはライバルの

不調の原因をバトルの間から考え続けていたが、ようやくその答えが出た。

 

『グリーン、なぜ・・・きみのほうはなぜここにいた?今日のきみは明らかに

 おかしかった。そこの墓石の新しい花、それはきみが・・・』

 

『・・・フッ、おれが言えた口じゃないが敗者をいじめるもんじゃないぜ。

 じゃ、おれはこいつらをポケモンセンターに連れて行かないと。バイビー』

 

『待ってくれ!グリーン、まさか・・・』

 

レッドの呼びかけに応じることもなくグリーンは去っていった。程なくして

エリカが戻ってきた。知人に会っていたという彼女だったが、通路の真ん中で

立ち尽くしていたレッドの異変に気がつき近づくと、彼の瞳は潤んでいた。

 

『・・・レ、レッドさん!?どうされたのですか!』

 

『・・・・・・・・・』

 

休憩用のベンチに座りレッドから一部始終を聞いたエリカはレッドを慰めた。

 

『グリーンさんに勝つのは悲願だったのでしょう?よかったではありませんか』

 

『・・・いや、あれは勝ちじゃない。僕はバトルを受けるべきじゃなかった。

 グリーンは自分の親友と別れたんだ。あいつもあいつのポケモンたちも

 全くキレがなかった。お墓を確かめてみたら・・・あいつが特に気に入っていた

 ポケモンのラッタだった。もっと早く気がついてやればよかった』

 

『いいえ、バトルが始まってしまえばそんな背景は関係ありませんよ。誰しも

 何かしらを抱えて戦っているのですから、あなたの勝利の価値は揺らぎません。

 あまり考えすぎてしまうと思わぬ失敗を犯すことも・・・』

 

レッドはとうとう涙を流していた。グリーンのため、ラッタのための涙だった。

静かに泣くレッドをエリカは優しく抱き寄せ、自らの胸に埋もれさせた。

 

『・・・・・・ごめん。情けない男で。せっかく励ましてくれたのに・・・。

 男のくせに自分のことでもないのに女の人の前で・・・・・・』

 

『・・・レッドさん、いまわたくしはあなたをますます好きになりました。

 あなたは熱い人です。その優しさ、義の心はいつかグリーンさんにも届きます。

 男なのに泣いてくれた、わたくしだったらそう思いますから・・・』

 

このときエリカの目からも涙が零れていた。実はエリカの言う知人とは、幼いころ

事故で亡くした自分のポケモンだった。これまではその墓の前に立っても感情が

揺さぶられることなどなかったが、レッドと出会い彼という太陽に照らされて

エリカも変わっていた。十年以上経った今になってそのポケモンの死を、自分は

レッドのようにポケモンに愛情を注いでいなかったことを思い泣いていた。

それを話すとレッドはやはりエリカのためにも泣いてくれたのだった。

涙が乾くまで二人は人の目も気にせず抱き合ったままだった。

 

そして落ち着きを取り戻した二人は溢れる感情をロケット団への怒りという形にし、

ポケモンを殺害し笑う彼らを徹底的に痛めつけた。激しいバトルのせいでタワーの

最上階は崩壊し、幽霊騒動も重なってポケモンタワーの閉鎖に繋がることとなったが

人々はレッドたちを責めずに感謝していた。ここに眠るポケモンたちもきっと

レッドたちの活躍を喜んでいるだろうと笑顔だった。

 

 

 

やがてタマムシジムの復活に伴い二人は別れ、エリカの勧めに従ってレッドは

まずセキチクシティへ向かい、ジムで公認バッジを獲得しサファリゾーンで多くの

ポケモンと秘伝マシンを手に入れた。それから厳重な警備で封鎖されている

ヤマブキシティに到着したが、街中がロケット団によって占拠されていた。

タマムシから撤退した彼らが新たな拠点として選んだのがこの街だったのだ。

何か情報を得られないかとエリカに電話したところ、彼女の動きは早かった。

 

『・・・すぐにそちらへ向かいます。それまではポケモンセンターにいてください。

 何もしてはなりません。わたくしが到着してから事を始めましょう』

 

『何も・・・?この街のジムリーダーに協力をお願いすることもだめかな?』

 

『・・・それだけはいけません。以前も少し触れましたがヤマブキのジムリーダー、

 その者は畜生であり極力遠ざかっていなければならないからです。街の占拠が

 あまりにも手際よく進んだことからロケット団と手を組んでいる可能性が

 高いでしょう。あれはレッドさんとは正反対、正義や愛情とは無縁の人間です』

 

『エリカがそこまで言うのなら・・・。おっと、会話が聞かれそうだ、切るよ』

 

ヤマブキのジムリーダー、つまりナツメの評判が悪かったのは当時からであり、

ナツメはロケット団のボスの正体を掴んだのをいいことに彼らの拠点とした

シルフカンパニー本社に自由に出入りし、多くの門外不出であるはずの実験データ、

稀少なポケモンや非合法な品物の取引の情報が収められた資料を手にしていた。

よってエリカの言葉は正しかったのだが、この時点で確たる証拠などなく、実は

エリカ本人ももしかしたらあるかもしれない、程度にしか思っていなかった。

要はレッドとナツメを近づけさせなければ理由は適当でよかったのだ。

 

 

『・・・・・・万が一、ということもありえますからね・・・』

 

ナツメに危害を加えられることはそれほど警戒していなかった。そんな真似は

余程の事態にならない限りしてこないだろう。それよりもエリカが恐れたのは、

レッドとナツメが接触し、二人が親密な間柄になってしまうことだった。

 

『カスミさんはおそらくレッドさんは好みとは違うでしょう。ですがあの者は

 わかりません。わたくしと同じくこれまでの生涯、恋愛とは無縁でしょうしね。

 血も涙もない鬼畜がレッドさんという太陽に魅せられてすっかり女にされて

 しまうことはありえます!わたくしも似たようなものでしたからね・・・・・・』

 

結局エリカの不安は杞憂に終わった。後にナツメがレッドのトレーナーとしての資質を

評価するようなところを見せたとき、わざわざ店を貸し切り他に誰もいないところで

遠回しに確認してみたがそれ以上のことはなかった。自分だけのファイアレッド

なのだと穏やかな気持ちに満たされた。その優しいひと時がつかの間のものであり、

突然に去ってしまうことをエリカはまだ知らなかった。

 

 

 

 

レッドはリザードンを繰り出した。エリカの求める、フシギバナ同士でのバトルを

拒否し、勝利を優先した選択。絶対的に有利な相性であり、レッドの勝利はこれで

決まったと言える。エリカはしばらく立ち尽くしてしまい、指示も出さずにいたが

レッドのほうもリザードンを待機させていた。エリカのフシギバナのほうが明らかに

早いタイミングでモンスターボールから飛び出しており、先に動く権利はそちらに

あるという紳士的行為だった。ようやくエリカはレッドに向かって絞り出すように言う。

 

「・・・なるほど・・・そうですか。それがレッドさんの答えですか。かつてあなたは

 わたくしとのバトルであえてそのパーマーさんを使わずに戦ってみせました。

 それなのにいまここで・・・もはやわたくしはあなたにとってどこにでもいる

 名もなきトレーナーの一人でしかないということですか」

 

「・・・・・・」

 

レッドは答えなかった。代わりに後ろからナツメの声が飛んだ。

 

「だから最初からそうだっただろうが!やっと理解したのか。そいつはもはや

 お前なんか眼中にない。迷惑がられているのがまだわからないか」

 

「・・・このっ・・・!」

 

嘲るような言葉にエリカは思わずナツメを睨みつけたが言い返せない。悔しいが

この愛を知らない鬼畜の言うことが正しいからだ。どうにかレッドの心に

訴えようと試合時間を伸ばしてその顔をじっと見つめ、ピカチュウと親密だった

モンジャラを使い、最後には彼の主力であるフシギバナを自分も出してみせた。

それでもレッドの様子は変わらない。帽子を深く被り、ただバトルに勝つことを

目指す最強のトレーナーがここにいる。これが今のレッドなのだ。

 

「滑稽だな。ずっと待ち焦がれていた男には愛想を尽かされ、それに気づかずに

 くだらぬ戦い方をした挙句敗北しようとしている。喜劇以外の何物でもない!

 なあアカネ、あいつはわたしたちを笑わせるためにここにいるのか?」

 

ナツメの罵りはなおも続き、敵であるサカキまでも溜め息をつき、エリカに

同情した。つくづくどうしようもない女が相手であり、これならば一切の

手心は無用だ。バトルとなれば遠慮なく叩き潰せるとスピアーと視線を合わせた。

 

「ナ、ナツメ・・・あんまり刺激せんほうがエエで。あんま怒らせると

 この後が恐ろしいで。こんなモンで打ち止めにしとこうや、な?」

 

「だがこの場所は劇場ではなくポケモンバトルのためのものだ。もういいだろう、

 レッドが待ってくれているんだ。とっとと指示を出せ、そして負けろ!

 やつだってもううんざりしているだろう。お前の顔などこれ以上・・・」

 

かつてのレッドであればエリカに関するほんの小さな悪い噂さえも許さなかった。

公然と悪口を言う者など許すはずがない。やはりあのレッドはもういないのか。

エリカは暗闇にいるような気持ちだった。自分のために泣いてくれるレッドは、

自分だけの太陽であるレッドはもうどこにも・・・そう諦めかけたそのときだった。

 

 

「・・・違う!ナツメさん、きみの言うことは間違っている!」

 

レッドがはっきりとした声でナツメに反論した。無口で静かな少年として

有名だったが、正しいことのためには決して黙さず立ち上がるレッドがついに

口を開いた。これ以上ナツメの暴言を聞くのも、己の真意を隠しているのも

限界だったからだ。ナツメの威圧感に自身の燃え上がる熱で対抗した。

 

「わたしが間違っている・・・?聞きたいな、その理由を」

 

「僕がうんざりしているとか迷惑しているとか・・・エリカさんから逃げるために

 山に登ったとか言っていたが全く違う。僕は今日、エリカさんに会うために

 快適なシロガネ山から下りてきた!もしサカキさんから渡された新聞に

 エリカさんの顔が載っていなかったなら僕は誘いを断っていただろう。

 ナツメさん、それに横の・・・・・・お前なんかもどうでもよかった!」

 

面識がなくサカキからも気にする必要は一切ないと言われていたアカネの名前が出ず

一瞬言葉が止まったが、それでも最後まで言い切った。エリカが目的でセキエイに

帰ってきたのだと。騒動の主役であるナツメ、ついでにアカネなど興味もないと。

ナツメは気にしていないようだが、憤慨したアカネはレッドを指さして叫んだ。

 

「おもろい冗談やないか!ならいま教えたるわ!うちこそはあんたの代わりに

 真のチャンピオンになるコガネが生んだスーパースター!あのゴールドのクソガキ

 なんかとは別モンの、誰もがあんた以上の王者やと認めるようになる・・・」

 

「それは後でいいだろう。なるほど、我々に関心はなかったと。それはわかった。

 しかしあなたはバトルの前にエリカに告げたではないか、もうあの頃のようには

 戻れないと。やはりすでに好意を失った相手にそれをしっかり伝えるために

 来たということならばわたしの言葉もそれほど間違っていないのでは?」

 

自己紹介を遮られたことでアカネが不機嫌な顔をしてナツメに無言の抗議をしたが

誰もそれに構わず、レッドの答えを待った。すると彼は会話の相手であるナツメ

ではなく、エリカの顔を見て彼女に話しかけるようにその問いに返答した。

 

 

「・・・それも違う。なぜならエリカさん、僕だってあなたのことをいまでも

 あのころと同じく誰よりも大切に思っているんだから。僕は人と話すのが

 苦手で顔を隠してばかりだ。チャンピオンになっても女の人にはちっとも

 モテなかった。エリカさんだけだ、僕が好きになったのは」

 

エリカの目に輝きが戻った。彼本人から確かにそれが聞けたのだから。

 

「・・・・・・レッドさん!なら・・・・・・」

 

ところが、その希望の光は僅かに顔を覗かせただけで再び雲に隠れてしまった。

レッドの続く言葉はエリカから望みを奪うものだったからだ。

 

「でもエリカさん、だからこそあなたに言いたい。僕のことはきれいに忘れてほしい。

 皆が『沈黙の日曜日』と言う僕がいなくなったあの日、僕たちの関係も終わったんだ。

 エリカさんには僕なんかよりも将来何十年と生きていくにふさわしい男の人は

 たくさんいる!いまの僕は収入もないただの山男だ。新たな出会いを大事にしてほしい」

 

「・・・・・・・・・何ですかそれは。そのような言葉で・・・わたくしが納得

 するとでも思っているのですか?あなたより素晴らしい方などどこを探しても

 いませんよ!その勇気と正義に満ちた熱い心、ポケモンへの愛情とトレーナーと

 しての資質、あなたみたいに生きようとした人間は多く、似たような事柄を

 成し遂げた者もいました。ですが結局あなたには及びません!」

 

このときエリカは暗にレッドの再来、もしかしたら彼よりも上を行くかもしれないという

ゴールドのことを言っていた。ゴールドもロケット団を蹴散らし、稀に見る若さで

ポケモンリーグの頂点に立った。しかしエリカはゴールドを含めた全ての男を

とてもレッドの代わりになどならないと言い切った。

 

「作り物の造花のような人生だったわたくしに暖かい光を・・・いや、命を与えて

 くれるなどあなたにしかできません。ですから理由を聞かせてほしいと何度も

 お願いしているではありませんか!あなたは嘘をつくような方ではありません、

 いまだにわたくしのことを大切に思ってくださっているのならなぜ・・・!」

 

「・・・・・・・・・」

 

嘘は口にしない。しかし語りたくないことに関しては頑なに黙秘を貫く。完全に

拒絶され、忌み嫌われたのであれば諦めもつくが、これではエリカは引き下がらない。

 

「これ以上何を聞いても無駄だというのがわからないのか。もう諦めたらどうだ。

 レッドの言う通りではないか、お前のようなまさに完璧な人物であればいくらでも

 望みを満たしてくれる男など候補はいるだろうに・・・」

 

「うーん、うちが男じゃなかったのが残念やなぁ。レッド以上の正義感とポケモンへの

 愛に満ちた、あんたも納得の相手やった。とんでもない逆玉になってたわ!」

 

エリカの表情がこれまでにないほど怒りに溢れ、後ろの二人を叱りつけた。

 

 

「お黙りなさい!あなたたちのような低俗な者どもに何がわかるというのですか!

 真の愛も正義も知らない恥ずべき愚鈍な人間は口を閉ざしていなさい!」

 

「・・・・・・!」

 

「わかりました・・・いいでしょう!レッドさん、あなたがどうしてもわたくしや

 人の世を捨ててシロガネ山でポケモンの世界に引き籠って生きたいというのなら

 全力で阻止し再教育して差し上げましょう!あのころのように、タマムシのジムで

 もう一度最初から全てを!フシギバナ――――っ!」

 

「フシュア――――――――ッ!」

 

エリカの合図と共についにフシギバナが動いた。どんな技が飛び出すのか注目されたが、

まともに戦えばまず負けるリザードンが相手では、有効な選択肢は数少ない。

そのうちの一つをエリカは的確にフシギバナに指示していた。背中の巨大な花から

不気味な粉が撒かれ、リザードンをあっという間に包み込んだ。

 

「・・・・・・グッ・・・・・・」

 

「パーマー!この粉は・・・ねむりごな!」

 

「弱点が多く、攻撃も非力と言われている草ポケモンです。ポケモンバトルで勝てない

 くらいならいいですが、何の工夫もなければとても自然では生きていけません。

 それでもこの子たちが繁栄している理由をレッドさん、あなたにも教えたはずです。

 敵の自由を奪い、動きを止め・・・それからじっくりと仕留めるのだと」

 

 

リザードンは完全に眠ってしまった。草タイプのポケモンの力を引き出すのは

カントーで一番のエリカ、このフシギバナのねむりごなは特に強力だった。

しばらくリザードンは起きてこないだろう。この間に『仕込み』ができる。

 

「フシギバナ!いまのうちです、せいちょう――――っ!」

 

全身を一気に生長させた。草を用いた攻撃の威力がこれで跳ね上がった。

最大の鬼門であるリザードンさえ倒せたならレッドの残りの二体、ピカチュウと

カビゴンは共に疲弊している。狭き門ではあるが、勝利の目が確かにあった。


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