ポケットモンスターS   作:O江原K

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第73話 再戦の約束

 

公開処刑を妨害されたフーディンがナツメを睨みつける。だがナツメはそれを

無視し、フーディンに負わされた傷と病の発作に苦しむキクコのもとに歩み寄る。

キクコの服のポケットから落ちた薬を拾い、倒れる彼女の右手に添えようとした。

だがキクコはそれを拒み、薬を払いのけた。そして憤慨して叫んだ。

 

「ふざけるなっ!アタシに生き恥を晒させるためにここまでしたのかい!

 こんなもんいらないよ!アタシは命を捨てる覚悟でこの戦場に立ったんだ。

 どうせ老い先短いこの命、あのまま殺してくれたらよかったんだ!」

 

「・・・・・・・・・」

 

横たわる自分を見下ろすナツメに対し声を荒くする。生かされていることは

これ以上ない屈辱だと顔を真っ赤にして憤る。ポケモンバトルに捧げた

この生涯、フィールドの上で死ねるのならキクコは本望だった。ところが

ナツメは多くの仕掛けを用意してまで彼女をこの場では殺さず、逆らった

人間はこうなるという見せしめのために生かし、やがて失意のうちに

痩せ衰えながら寝床の上で死を迎えるようにするのだろう。考え方によっては

フーディンよりも残酷で悪趣味であると言えるかもしれない。

 

「アタシはあんたたちの憎む・・・いや、実際に殺したのか。この国の頂点に立つ

 ポケモン界の長老たちと同じだよ。フーディンが言ったのはぜんぶその通りさ。

 あいつらが戦争中にした多くのおぞましい所業、戦後の金儲け主義・・・

 わかっていながらアタシは自分の立場を失うのが怖くて黙っていたのさ。

 つまり紛れのない共犯者、ここで殺すべきだろうに・・・・・・」

 

かつて圧倒的に少なかった女性トレーナー。トップクラスの戦いの舞台に立つとあれば

キクコしかいないという時代だった。ただでさえ目立っているのに変な動きをすれば

あっという間に権力者たちに潰されていただろう。このままではいけないとわかって

いながらも何もできない、無力感と罪悪感を押し殺し続けた半生だったと言える。

 

「・・・もうエエんやないか、このへんで・・・フィールド内やから救急車が

 来るのも遅れとるけどそろそろや。あんまり騒がんほうが・・・」

 

審判席にいたアカネも合流していた。フーディンは離れたところから微動だにせず、

他の者たちも自分の持ち場を離れていないため、キクコのすぐそばにはナツメと

アカネしかいない。いや、アカネの三体のポケモンとなぜかついてきたカイロスもいた。

アカネとポケモンたちがキクコを落ち着かせようとしていたが、

 

「・・・・・・」

 

ナツメがアカネたちに下がるように手で合図を出すと、倒れるキクコの眼前に座った。

火に油を注ぐことにならないかとアカネは気が気ではなかった。ただでさえキクコは

弱っている。変に刺激するとショックでぽっくりと・・・とはならないかと。

 

だが、ナツメの顔を見てその不安は消し飛んだ。今の彼女は自分に優しく接するときの、

普段の悪魔のような表情とは違いまるで天使のような慈愛を隠していなかったからだ。

もっとも、その違いがわかるのはアカネだけかもしれないが・・・。

 

 

「フン・・・ようやくその気になったかい?この手でアタシにとどめを・・・」

 

「いや、あなたは殺さない。生きていなければならないからだ。なぜならあなたは

 ほんの少し運命が異なっていたらわたしたちの同志となっていたかもしれないから。

 数十年前あなたにできることはあれが限界だった・・・しかしあなたがポケモンを

 愛し邪悪な者たちを憎み続けたからこそ今日のわたしたちがいる。あなたが

 もっと元気な時にわたしたちが行動を起こしたなら・・・あなたは確実に

 わたしたちの仲間になってくれていたと信じている。共に戦っていたと・・・」

 

「ヒヒヒ、バカは休み休み言いな。まああんたのことだ、これも嘘っぱちかも

 しれないけどね。確かにあんたたちの理想は大したもんだ。アタシの若いころより

 実現の可能性も高まっている。けれどもやり方が強引すぎる!式典を台無しにして、

 何人も病院送りにして、そこのアカネのような何も知らない純粋なガキを洗脳し

 使い勝手のいい手先として利用する・・・とてもついていけないよ、そんなもの」

 

口ではナツメを非難しその行いを否定したが、キクコの心のなかには迷いがあった。

暴行や殺人はしないとしても、ナツメの言う通りもし若いころそのチャンスがあったと

したら自分はポケモンリーグ側についただろうか?全てを失うリスクを考えず、

正しいと信じる道を進むために立ち上がったのではないか。真にポケモンのため、

またポケモンを心から愛する者のための世を創るための賭けに喜んで乗ったのではないか。

 

「・・・だからどう転ぼうがアタシがあんたの仲間になることなんかないよ。

 どれだけ待っても心変わりを期待するだけ無駄だよ。あんたみたいなやつの

 やることは最後には必ず失敗する。どうしようもないクズの企みは決まって

 悲惨な末路を迎えるんだ。それに関わる頭の悪いバカもいっしょにね・・・」

 

それでも反発を続けたのは、ナツメの言葉に少しでも同意したり心を動かされたり

したところを見せたなら自分の負けだと思っていたからだ。バトルの結果は

完敗に等しい無効試合、情けで命を容赦されようとしているがそれを拒み、

ナツメの思い通りにならないことで誇り高き死を選ぶ。プライドの高いキクコらしかった。

 

「・・・どうだい、ここまで言われちゃあ優柔不断のあんたも・・・」

 

絶対に仲間にならないとわかったのだからやることは決まっているだろう、と

キクコは言おうとした。ところが侮辱の言葉をいくら浴びせたところでナツメは

怒るどころか少しも反応していない。キクコの答えに興味などなかったのか。

 

「・・・あんた・・・聞いているのかい?」

 

「ん?ああ、ちゃんと聞いていた。だけど実は・・・あなたがわたしたちの側に

 つくとか理想を理解してくれるとか・・・そんなことはどうでもいいんだ。

 わたしがあなたを殺したくない理由は実は全く違うところにある」

 

ほんとうに興味がなかったと知り、キクコは今までの憤りもすっかりどこかへ

飛んで行ってしまった。ならばどうしてフーディンと仲違いしてまで自分を

救おうとしたのか、実のところそれはすでにナツメがバトルの間に語っていた。

 

 

「さっきも言ったが・・・あなたがいなければわたしやアカネたちはいまこの場に

 立っていない。あなたがあの時代に一人で戦い続けたからわたしたちがいる。

 トップで活躍する女性はあなただけ、しかも戦時中の中断を経て再開された

 ポケモンリーグも八百長が当たり前のように行われていたり劣悪な環境での

 トレーニングを強いられたり・・・そんな暗黒期であなたは戦い抜いた」

 

「・・・・・・・・・」

 

「雨の日も風の日も、夏の猛暑も冬の寒さにもあなたは負けなかった。そのままの

 意味でも比喩的な意味でも。自分に、そして他者に厳しく鍛錬を怠らなかった。

 ライバルや親友が引退し、また死んだとしてもあなたは前へ進み続けた。

 何より周囲の環境や自身のプレースタイルが変化していってもあなたの核、

 ポケモンへの愛情はそのままだった。老いや病すらそれを妨げられなかった」

 

ナツメの言葉にキクコは目を閉じて己の人生を振り返る。人々の好奇の目など

気にせずゴーストポケモンたちと共に男たちを打ち倒した若き日。多くの命を奪った

戦争や戦後の動乱期、バトルに集中することが難しい日々。オーキドが結婚と

同時にトレーナーを引退して去っていき、カツラたち同年代の好敵手もリーグの

最高峰の勝負から退いた、自分だけが取り残されたように思えた数年のことも。

 

「・・・ヒ・・・ヒヒヒ。昔からひねくれ者なんだよ、アタシは。女の入る世界じゃ

 ない?そんなもん誰が決めたんだと反骨心の塊だった。周りがどうなろうが自分は

 関係ない、老害と罵られようが居座り続ける決意でいたさ。最近ポケモンをペットの

 ように過保護に扱うやつらが増えて、ポケモン図鑑なんてもんを作ろうとする

 軟弱者までいる時代・・・それでもポケモンたちはバトルを求めている!心を合わせ

 いっしょに戦うことこそ正しいと信じて誰の意見にも耳を傾けなかった・・・」

 

失ったものは多く、後悔や未練も全くないとは言い切れない。それでもナツメによって

自分の生涯が走馬灯のように駆け抜けたとき、自然と穏やかな笑みが浮かんだ。

このまま安やかに死ねるのならいい締めくくり方だ、そう思った。だが、

 

 

「だからこそあなたは素晴らしいトレーナーだ。あなたの活躍を見てトレーナーに

 なろうと決めた人間も多いはずだ。何を隠そう、このわたしもその一人だ」

 

「あ、あんたが・・・?」

 

「そのあなたと大舞台で戦える・・・わたしは興奮を抑えられなかった。ずっと

 戦ってみたいと思っていたあなたとの一戦・・・確かに楽しいものだった。

 ところがフーディンの乱入のせいでそれは中断、最後は少々残念だった」

 

バトルの途中で見せた、純粋にキクコを敬いどちらに勝敗が転ぶかわからない

痺れる戦いを求めるナツメこそが本物であり、敵を踏みにじる一方的な虐殺を

好むナツメのほうが偽物だったとキクコも気がついた。アカネに次いで二人目だ。

いまナツメは心にあるものをそのまま口にしている、それは疑いようがなかった。

 

「あなたと真の決着をつけたい!だからわたしの勝ちでも引き分けでもなく

 無効試合とした!いや、何回でも戦いたい!このような世界の行く末を決める

 戦いのような余計な考え事が必要ではないときに改めて、それもあなたの体調が

 回復したときに。そのためには何としても生きていてもらわなくてはな」

 

「ナツメ・・・・・・」

 

白い歯を出して笑うナツメの顔はキクコにはまるで天使のように見えた。けれども

この天使は神によって選ばれた人間を天に連れていくことで幸福を与えようとは

せず、生きているからこそ喜びがあると語りかけてくるようだった。キクコの

体が、持病の発作や傷の痛みとは関係のないものによって小さく震え始めていた。

 

 

「せやなぁ。あんた、簡単にくたばりそうにないやん。しぶとくて図々しいツラや。

 今度はうちとも戦ってもらおうか。ノーマル対ゴースト・・・トレーナーの

 腕と頭のキレ、何よりポケモンたちとの友情と絆が試される面白そうなバトルに

 なるに決まっとる。エエか、うちの挑戦から逃げんなや、クソババア!」

 

「・・・ア、アカネ・・・あんたまで・・・」

 

ナツメに続いたのはアカネだけではなかった。続くどころかそれに割り込まんばかりの

勢いでキクコの若き日からのライバルたちが彼女のもとにやって来た。

 

「うおお———す!ちょっと待て————っ!そういう話ならわしらのほうが先に

 資格がある!再戦を願う気持ちは君たちよりずっと上だ————っ!」

 

カツラが、それに救急隊を連れたオーキドが現れ、キクコの体を支える。

 

「キクコ、さっきお前はわしのことをトレーナーではないと言ったな。だがいま

 こっそりバトル用のポケモンを育てている。研究所を他の者に譲る算段が

 ついたのでな、もう一度やってみたくなったんだ。そのわしの復帰戦は・・・

 ぜひお前が相手になってほしいのだが・・・・・・どうかな?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「だから死なせろなどと言うな!まだ早いぞ、わしらがその役割を終えるのは」

 

「ゲーン・・・ゲ———ン!」

 

そしてキクコが生き続けるのを誰にも勝って願うのは彼女のポケモンたちだった。

瀕死になりながらも身を案じて寄り添ってくれる相棒のゲンガー、ボールの中から

同じ思いを持って見つめてくる五体のポケモン。これらを目にしたときキクコは、

自分の人生が正しく、よいものであったと実感できた。さらにいま、そのために

キクコが得る機会を逸した人間の家族、それすらも手にしたような感覚があった。

ポケモンバトルを通して、兄弟や娘、それに孫を得た、その瞬間だった。

 

 

「・・・どうだキクコ、『もう満足』か?あなたなら違うはずだ。『まだこれから』、

 そう感じているだろう?あなたがどうしたいか・・・聞かせてくれないか」

 

ナツメがキクコの手を取って尋ねてくる。その温かさにキクコはついに大粒の涙を流し、

 

「あ・・・アタシはまだ生きたい!あんたたちと・・・勝負を楽しみたい!」

 

ようやくフィールド内に救急車が到着した。ナツメは最後にその手を強く握った。

 

「ああ・・・約束だ。必ずまた戦おう!」

 

バトルが終わったとき、命の奪い合いをしていた二人は友になっていた。

 

 

オーキドとカツラに付き添われてキクコは救急車によって去っていった。スタジアムは

キクコに対する拍手の音で満ちていたが、やがてナツメへの激しいブーイングへと

変わっていた。客席には彼女たちの会話は聞こえていないため、人々からすれば

あの鬼のキクコが泣いてしまうほど辛辣な言葉を浴びせたところでオーキドたちが

助けに入ったように見えていた。ナツメへ向けての怒りは最高潮に達していた。

 

「・・・・・・」

 

それに対しナツメは何も反応せず、沈黙を続けた。しかし別の脅威が迫っていた。

 

「・・・やってくれたな、ナツメ。わたしに逆らって成功した例がこれまであったか?

 なぜ愚かな道を歩みわたしをがっかりさせたのか・・・説明してもらおう」

 

数万人の観客たちが束になって憎しみをむき出しにするよりも、このフーディン一人が

敵意を向けてくるほうが遥かに恐ろしい。質問の答えを間違えたら死ぬ。それでも

ナツメは無表情のまま、自分の思いをそのまま口にして返答した。

 

「逆らったつもりはない。道を違えたとも考えていない。わたしたちの最終目標、

 ポケモンのための新たな世界に関しては同じだ。ただ、そこに至るまでの

 細かい移動手段や速度に多少のズレがあるだけで、些細な問題に過ぎない」

 

「・・・ほう」

 

「例えば・・・ヤマブキからコガネまで行くとしよう。車で行ってもいいし

 もっと早くというのならリニアという乗り物もあるな。のんびり旅を楽しみ

 たいのなら自転車でゆっくりと、さすがに鳥ポケモンにそらをとぶを使わせる

 には距離があるが・・・コガネに到着するという結果に変わりはない」

 

ナツメの隣にいるアカネは間の抜けた声で『なるほど~』と声を出したが

フーディンには通じなかった。聞き苦しい屁理屈にしか聞こえなかった。

その憤怒は収まらず、むしろ火に油を注いでしまったようだった。

 

 

「それは大きな問題だ!わたしがすぐに目的地に向かおうとしているのにあなたは

 寄り道に寄り道を重ね、いつやって来るのかわからない状態になっている!

 よって見過ごせない重大な事案だ。再教育を施してやらねばなるまい」

 

「・・・ならば仕方ない。ポケモンバトルで決着をつけるか。それがわたしたちの

 選んだ改革の手段だ。問題が起きたならバトルによって解決するという道だ」

 

ナツメは残る二つのモンスターボールを同時に放った。キクコ戦で直前に出番を

奪われたオスのフーディン、それに本来は休みのはずのモルフォンが飛び出す。

後方の控室からは大役を終えたスリーパーも戻り、三体のポケモンが揃った。

 

「遅かれ早かれこうなるとしてもまさか今日とは・・・とはいえ準備はできていますよ」

 

「同じフーディンとしてその強さには憧れていた。だが傲慢で独善的な態度、

 一切の情のない残忍なやり方は嫌いだった。決着は望むところだ」

 

主人であるナツメを守るべく闘志に満たされている二体のポケモン。格上の相手で

あってもナツメ同様怯む素振りはなかった。残るモルフォンはというと、

 

「う~~っ、大変なことになったっす。こんなことなら大事にとっておいた

 高級ジュース!さっさと開けて飲むべきだったかもしれないっす・・・」

 

フーディンとの戦いを前に震えながら死の危機に恐怖していた。スリーパーたちの

背に隠れ、勝つことよりもどうしたら生き残れるかを考え始めた。勝負の前から

すでに終わっている状態だったが、いまモルフォンを引っ込める余裕はない。

 

 

「ほう、このわたしにバトルで勝つというのか。ナメられたものだ。その三体では

 わたし相手に善戦も難しい。わたしを倒すには全く警戒していないところからの

 奇襲か数千数万といった数の暴力で押し切るのでなければほんの僅かな可能性も

 生まれないだろう。それがわからないというはずはあるまい」

 

「そんなことをしたらいよいよ弁論の余地もないただの殺人者、テロリストと

 変わらない。つい今さっき言った通り、バトルで語り合い問題を終わらせる。

 そしてこのルールはわたしが思いついたものではない。フーディン、あなたが

 わたしと出会ってすぐ教えてくれたものだ—————っ!」

 

フーディンが両手に力を溜めながら迫ると、ナツメはスリーパーを前に出し、

他の二体を後方に下げた。三対一の戦いにするのではなく、あくまでも

正式なポケモンバトルの形を守って戦う気でいた。

 

「面白い!やってみろ——————っ!」

 

視線が合いバトルを仕掛けられたら応じるのが掟だ。フーディンは処刑人としての

笑みを浮かべていた。ナツメを懲らしめるためには彼女のポケモンたちを酷く

痛めつけてやるのが最も効果的だとわかっていたからだ。

 

 

「あ、ああ・・・」 「ピ~~ッ」 「アワワロス・・・」

 

突然のバトル開始にアカネはどうすることもできなかった。ピッピたちもただ

怯えているだけだ。もちろん帰るタイミングを完全に失ったカイロスも。この戦いを

止めなくてはならないとわかってはいたが、ナツメとフーディンを説得しなだめるのは

無理だろうし、力づくで止めに入るのはもっと不可能だ。命が危ない。だが、

フーディンと並ぶ規格外の強さを持つポケモン、ナツメに劣らぬ怖いもの知らずの

強い心臓を持つトレーナーであればそれは可能だった。

 

 

「うおおおっ!?」 「ムムム!」

 

今にもぶつかり合おうとしていたフーディンとスリーパーの間に轟音と共に何かが

落下してきた。二体とも被弾することはなかったが、もし命中していたらただでは

すまなかっただろう。人間やレベルの低いポケモンであれば一発で即死間違いなしの

鋭利な刃物のようなものが五本も地面に突き刺さっていた。

 

「・・・これは・・・ミサイルばり!それも並のポケモンが放つ貧弱な針ではない。

 なるほど・・・お前か?この機に乗じてわたしを葬ろうとしたのは・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

見るまでもなく攻撃の主はわかっていたが、あえてそちらを向いたフーディンの

視線の先にはやはりそのポケモンが敵意を露わにして飛行していた。この日の

開幕試合で並外れた攻撃力と瞬発力を見せつけ勝利したスピアーだった。

スピアーが出てきたということは、当然その主人もフィールドに立った。

 

「お前たちが仲間割れを始めるのは勝手だが後にしてもらおうか。お前たちは

 わたしたちを、わたしたちはお前たちを打ち倒して敗北させるのが互いに

 この戦い最大の目的だったはずだ。なあナツメ、それにフーディンよ!」

 

一歩ずつ、ゆっくりとサカキがナツメたちのもとに近づく。サカキとスピアーの

思いは一致していた。倒すべき敵が同士討ちでダメージを負うのはよくない。

一切の言い訳ができない、万全な状態で戦い打ち砕かなければ意味がないのだ。


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