戦姫絶唱シンフォギア〜指輪物語〜   作:温野菜生活

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ひびみく推しの方達ごめんなさい。
嫉妬する未来さんを想像したら……。



プロローグ

 唐突だが、アタシ沢渡(さわたり)(めぐり)は不良と呼ばれている。いや女だからこの場合は”スケ番”というべきか。

 アタシ自身も不良と呼ばれること自体は否定はしていない。事実、街では不良相手に喧嘩をしているからだ。

 

 だが一つだけ言わせてもらうと、別にアタシはしたくて喧嘩をしているわけじゃない。あちらから絡んでくるのでそれを返り討ちにしているだけだ。自分から殴りに行ったことなど……ほんの数回を除けばない。

 そのほんの数回も中学で起きた”あるイジメ”を成敗しただけで、あれをアタシは別に悪いと思ったことはない。むしろそういう陰湿なことをしてた奴らが悪い。

 さらに授業もサボるなんてことはなく、校則だって大体は守っている。破るとしても制服を着崩すくらいの小さなことで、これくらいで不良と呼ばれるのなら今頃、日本の学校は不良にまみれているだろう。

 

 ただ失礼なことに『目つきが悪い』だとか『雰囲気が鋭い』だとか『近寄り難い』だとか、そんなことまでも理由にしてくる奴らもいる。アタシからしてみれば身体的特徴を否定されているのとほぼ同義だ、正直たまったものではない。こちらだって好きで目つきが鋭いわけではない。生まれつきこうなのだ。それに雰囲気が鋭いとか近寄りづらいとかはあちらの感じ方次第なので、こちらからは手の打ちようがない。

 

 とはいえ喧嘩をしているのも校則を破っているのも事実。なので他人が不良だというのなら、アタシは不良なのだろう。

 そんなアタシには当然、友人というものがいるはずもなく、地元から離れた高校へ進学した今でも持ち前の人当たりの悪さが遺憾無く発揮され、その類の関係は皆無といってもいい。

 ようはぼっち、というやつだ。

 

 だがそんなアタシにでも関わろうとしてくる数少ない友人(変人)がいる。

 

「めっぐりちゃ~ん!」

 

 どこからか聞こえてくるアホさが滲み出た声。その声がする方へ振り返れば、手を振りながら駆け寄ってくる一人の女子の姿が。

 薄い橙色をした髪は襟足が広がったボブカットで、左右の揉み上げのこめかみ部分に髪留めをしたその女は、アタシの元へ辿り着くやいなや両腕を広げ

 

「おっはよ~う! 今日もいい天気だね~!」

 

 両脚に力を入れダイブ。標的をアタシに定め飛び込んでくる。喧嘩で動体視力は鍛えられており、避けること自体は簡単なのだがそのせいで怪我をされても困る。

 なるべく勢いを殺しその体を受け止めるが、やはり人一人を受け止めるとなるとそれなりに衝撃が走る。だがそれと同時に彼女の持つ豊満な胸がぶつかり、むにゅん、と形を変えた。やっぱりこいつの胸、いつ見てもでかいな。

 

「元気なのはいいがあんまり勢いつけすぎるな。アタシじゃなかったら受け止められねぇぞ」

「あははー、だって旋ちゃんを見かけちゃっただもん、そりゃ抱きつきもしますとも!」

「犬か、お前は」

 

 いや、犬だな。腕の中で笑顔を浮かべる彼女の頭には犬耳が、そしてそのくびれた腰の下には犬の尻尾が幻視できる。それも高速でフリフリしていやがる。

 この犬っ子の名前は立花(たちばな)(ひびき)。アタシとこうして話そうとしてくる数少ない友人(変人)だ。

 

「ちょっと響、急に走り出さないでよー!」

 

 すると立花に遅れてこちらへ駆け寄ってくるのは、後頭部を白いリボンで結んだ黒髪ショートの女生徒。

 

「……おはよう、沢渡さん」

「ああ……おはよ」

 

 着くやいなや、アタシの腕の中で笑顔を浮かべる立花を見て、むっ、とした表情を浮かべる。だがちゃんと挨拶をするところに人の良さが窺い知れる。

 こいつの名前は小日向(こひなた)未来(みく)。立花とは小学生の頃からの付き合いで所謂”幼馴染”というやつらしい。

 

「ちょっと響、いつまで抱きついてるの! 沢渡さんが困ってるでしょ!」

「うわわっ、引っ張らないで~!」

 

 小日向は立花を後ろから羽交い締めにし、強引にアタシから引き剥がす。アタシとしては抱きつかれていても別に困りはしないが、引き剥がしてくれるのならそれはそれでよいので特に引留めはしない。

 しかしながら小日向、引き剥がすのはいいとして少し羽交い締めが長すぎじゃないか? あとなんかちょっと自慢げなのはなんでだ?

 小日向は普段は常識人なのだが、時々こうして不思議な行動をとることがある。まぁアタシとしては、人間誰しでも一つや二つ何か隠し事があるもんだと思うし、小日向もそうなんだろうと思っている。

 

 と、そんなことを考えている間に予鈴が鳴ってしまった。このままここでおしゃべりというのもいいが、それではこの二人も説教に巻き込まれてしまう。

 

「抱き合うのもいいが急げよ。じゃねぇと遅刻しちまうぞ」

 

 アタシの一言に小日向は顔を赤くさせ立花から離れる。本当に、たいへん仲がよろしいことで。

 

 

 さて、今日も退屈な1日が始まるのだが

 

「あーっ、旋ちゃんが先に行っちゃう! 未来、早く追いかけるよ!」

「ちょっと、また急に走って……響!」

 

 ……どうやら退屈(それ)がアタシの前に現れるのはまだまだ先らしい。

 

 

 

 退屈な授業も終わり、ようやく学校から解放されたアタシは足早に教室をあとにする。いつもならここで立花が帰らせまいと立ちはだかるのだが、生憎とやつは今授業で居眠りを決めていた罰で反省文を書かされている。さすがにこれではアタシに構う余裕などないだろう。

 

「あぁ旋ちゃんが帰っちゃうよー!」

「ほら、余所見してたら終わんないよ。ちゃんと集中して」

「うぅ……未来の鬼ぃ」

「響の自業自得でしょ」

 

 そんな立花に付き合う小日向には毎度感服させられる。面倒見が良いと言っても限度があるだろう。これも幼馴染という関係がなさせる技なのだろうか。

 

「あんまり小日向に迷惑かけるなよ……じゃあな」

「旋ちゃん、また明日~!」

「……また明日」

 

 さて、帰りに夜食でも買って帰るか。

 

 

 

 

 

 

「はい、こちら目的地周辺。あと30分後にそちらへ到着します」

 

 町のなかを移動する黒い車。その中は黒いスーツに身を包みサングラスをかけた屈強な男たちが占拠し、その内一人が通信機器で誰かと会話をしている。そんな男の元には厳重に保管されたスーツケースが。

 

「はい……では例の場所で」

 

 そう言い男は通信を終える。しかし彼らは目的地へと到着することはなかった。

 なぜなら彼らの向かうその途中には”災害”が待ち構えていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 帰宅途中、夜食を買うためにコンビニに立ち寄ったアタシだったが

 

「ごめんねお嬢ちゃん。荷物を運んでもらって」

「たまたまだ、たまたま見かけただけ……礼なんていいよ」

「こんなものしかなくて悪いけど、帰りながら食べな」

 

 途中で見かけた荷物を運ぶのに苦労している婆さんに手を貸し、現在はその婆さんの家の前にいる。別れ際お礼に饅頭を手渡され、自宅である寮への帰り道にそれを頬張る。

 しかしだいぶ道を外れてしまったが、まぁ仕方ないことだ。それにこうしてお礼に饅頭ももらえたことだし十分だろう。

 柄ではないとわかっているが、アタシだっていいことをすると気分がよくなるんだ。悪いか。

 

「とはいえ……これはちょっと困ったな」

 

 右へ左へと、しばらく歩きまわったところである異変に気付く。それはいつもの帰り道にたどり着かないということだ。つまり、言いたくはないが……道に迷った。

 婆さんと話していて道を覚えなかったのが災いしたか、周りの建物はどれも見慣れないものばかり。仕方なし、スマホを開き地図アプリを起動。寮の住所を入れ検索すると……やはりいつもの帰り道からかなり外れていた。

 

「このままいつもの道で行くと時間がかかるな……ならこっちの道から行くか」

 

 多少入り組んだ道を行くことになるが、ここからいつもの道に戻るよりも断然早く着ける。そうと決まれば話は早い、アタシはスマホの指示に従いながら未知なる道へと足を進めた。

 

 ──この先に、地獄の痕が残っているとも知らずに。

 

 

 

「えーと、どれどれ……次はこの通路を左っと」

 

 入り組んだ路地裏の角をいくつも曲がりながら進むこと10分。地図によればこの角を曲がれば広い道へ出ることができるらしい。

 そうして角を曲がると、地図通り広い大通りへとたどり着く。ここからしばらく道なりに進めばいつもの帰り道に合流できるので、スマホを閉じポケットへしまう。

 そして再度 通りへと目を向けたあと、アタシはこの大通りにある違和感を覚えた。

 

「……人が少ない」

 

 いや、人はおろか車も通っていない。これだけの大通りだ、全くの無人というのは些か怪しすぎる。

 目の前の光景に疑問を浮かべていると突如、通りの向こう側で爆発が起きた。何事かと思い向かうと、そこには炎に包まれた何かが黒煙を上げていた。

 さらには周囲の建物も破損しており、道路には亀裂が走っている。それはまるで何かしらの災害が起こった痕のようで……。

 

「なん、だ……これ」

 

 目の前で起こる現実に目を奪われ、呆然と言葉を漏らす。そして道に残ったあるものを見つけて、この大惨事をもたらしたものが何なのかを理解する。

 通りの所々にあったもの……それは”煤”。爆発で出来上がったにしては量の多いそれは、ある”災害”が起こった形跡とぴたり一致する。

 

「……ノイズ」

 

 ”認定特異災害ノイズ”……それがこの惨劇を生み出した正体だ。アタシも実際に目にしたことはないが、ノイズは触れた人間を炭素と変え最終的には”煤”として散らせる”人を殺す災害”。

 2年前、とある歌手のライブ会場で多くの命を奪った事件は記憶に新しい。そしてその事件がアタシとあいつが関わる切っ掛けにもなった。

 

 と、昔の話を思い返すのは今することではない。見ればノイズの襲撃は終わったと見ていいだろうが、万が一のことがある。足早にこの場を離れるのが得策だろう。

 そしてアタシがこの場を離れようとした時、後ろから何台もの車がやってくるのが見えた。恐らくは警察か何かだろうが、面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。すぐに通りの影へと身を隠す。

 

 どうやら予想は的中。ゾロゾロとやってきた車からはいかにもな格好をした連中が姿を現し周辺の捜査を始めだした。

 ……そのうちここにも捜査の手が回る。その前にさっさとここから離れるか。

 そして一歩、足を後ろに動かすと何かブロックのようなものにぶつかる。目を向けるとそこには黒色のスーツケースのようなものが転がっていた。ケースは壊れており所々にヒビが入り、アタシが軽く触れると

 

「……やっべ」

 

 いとも簡単にバラバラに壊れてしまった。まさか触れただけで壊れるとは思ってもおらずどうしようか考えていると、ケースの残骸の中に一点、金色に光るものがあった。

 手に取るとそれは小さな金色の指輪で、表面には何やら文字のようなものが書かれてるが……だめだ、まったくわからない。

 

「……では私はこちらを調べてきます」

「っと、誰かきやがった……さっさと逃げるか」

 

 するとこの場所にも連中の手が回り、アタシは見つかる前にその場を後にする。

 

 

 この時、逃げるのに夢中で指輪を持っていたことを忘れていたわけだが、これがまさかあんな事態を招くことになるとは……この時のアタシは思ってもいなかった。

 まさかこの指輪が”聖遺物”と呼ばれるもので、それがアタシをある戦いの渦中に巻き込むなどとは……。

 

 

 





最近シンフォギアを見直して書いてみたくなった。
設定に何か不備があれば遠慮なく言ってください。
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