戦姫絶唱シンフォギア〜指輪物語〜   作:温野菜生活

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本日の投稿2話目です。



王の再誕

 ノイズの出現を知らせるアラートが鳴り、アタシと小日向はシェルターと呼ばれる避難区域へと向けて全速力で走っていた。

 勢いよく走っているせいで買い物袋の中身がぐちゃぐちゃになったり、時には袋から飛び出してしまうが今は気にしている余裕はない。

 

「小日向、ここから一番近くのシェルターは⁉︎」

「あと3km先!」

「3kmか……ちょっと厳しいな」

 

 3kmの道のりをノイズに出くわすことなく辿り着けるのか……一種の運試しだ。ちなみにアタシの今日の星座占いは12位……いやいや、不安になんてならねぇよ。たかだか星座占いだ、どうせしょっぼいことぐらいしか当てられないだろ。

 と、そんなことを考えて背後を振り返ると……そこにはこちらへと向かってくるノイズの集団が。うん、アタシこれから朝の星座占い信じます。

 

「小日向、ちょっとヤバイことになってきたぞ……奴さんの登場だ」

「うそ、あともう少しだっていうのに……」

 

 このままじゃシェルターに辿り着く前に追いつかれるのは明白。二人まとめて仲良く煤へと早変わりってか……冗談じゃねえ!

 けど、現状どうしようもないっていうのも事実だ……くそっ、何かいい方法は……。

 

 《なにやらお困りのようですね》

「って、テメェ!」

「うわっ、なに⁉︎ いきなり大声出して」

 

 あの指輪を嵌めた日から数日経っても現れなかったにも関わらず、この土壇場で現れたゴエティアに思わず声を上げてしまう。そうだった、こいつの声はアタシにしか聞こえてなかったんだっけか。

 驚く小日向へ「なんでもない」と伝え、アタシは頭の中であいつと話を続ける。

 

(おいっ、ここ数日現れねぇと思ったらなんつータイミングで出てきてんだ!)

 《むしろナイスタイミングと言ってほしいものですね。あなたへ例の魔人のうち一人を連れてきたのですよ?》

(あぁ……あの認めさせるとかどうとか言ってたやつか)

 

 はっきり言って今はそんなことに時間を割いてる余裕はねぇ。てかなんだってこのタイミングで……

 

 《あの下等な小蝿を払えるのですよ? むしろこのタイミング以外のなにがあるのです?》

(は……? お前、今なんて)

 《ですから、あなたを付け狙う下等な小蝿共を始末できると言ったのです》

 

 始末できる? ノイズを?

 ゴエティアの言葉に驚愕するがそれは仕方のないことだ。ノイズには位相差障壁というものがあり、こちら側の物理攻撃が一切通用しない。つまり止めることも倒すことも不可能だということだ。

 しかしこいつはそんなノイズを”倒せる”と言ったのだ、これを驚愕以外のなにで表せばいいのか。いや驚いている時間はねぇ、その魔人と話をつければこの危機を乗り切れるんだ。

 

(おい、さっさとその魔人と話させろ。こちとら一刻一秒を争ってんだ)

 《まったく、悪魔使いの荒いお方だ……では少しお待ちを》

 

 そう言い、ゴエティアの声が聞こえなくなって数秒後

 

 《──汝が我らの次なる王の候補か?》

 

 アタシの頭の中に響いたのは女の声だった。

 

(お前がゴエティアの言う魔人ってやつか)

 《ああ、我が名はアイム。序列23番目にして”炎”の権能を持ちし魔人である》

 

 アイム──そう名乗る魔人はなんというか口調の硬いやつだった。言葉を交わしてすぐにわかった……こいつちょっと苦手だ。

 いやいや、んなこと言ってられる余裕はこっちにはねぇんだ。苦手だろうがなんだろうが、ぱぱっと話をつけてこの危機を乗り越えねぇと。

 

(アイム、つったか? 今かなりピンチでよ、悪いけど力を貸してくれねぇか?)

 《ならば我に汝の”信念”を見せよ。それが我が仕えるに値するならば力を貸そう》

(はぁ⁉︎ こっちはんな悠長なことやってる場合じゃねぇんだよ! いいから、さっさと、力を、貸せ!)

 《ならぬ。我が力を貸すのは我が王と認めた者のみ──さぁ、汝が”信念”を示すがよい》

 

 なにが「信念を示すがよい」だ! んなもん示してる間にこっちは死顔を晒してるっつーの!

 くそ、王として認めさせるってそういうことかよ。てっきり話すだけでいいもんかばかり……。

 

(なぁ頼むよ、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけでいいから! あのノイズを片付けたらすぐに終わるから!)

 《汝を狙うあの有象無象をか。確かに我の力を持ってすれば即座に片がつく……が、それでも力を貸す以上は汝が”信念”を示してもらわねばならぬ》

(融通きっかねぇなおい!……て待てよ、お前今なんて言った? アタシを狙ってる……?)

 《なんだ、気づいておらぬのか。あの有象無象は汝ただ一人を狙っておるのだ、理由まではわからぬがな》

 

 狙いはアタシだと……? なんで……ノイズは意志に関係なく人間を無作為に襲うはずじゃ……。

 

「沢渡さん! 急に黙り込んじゃったけど大丈夫⁉︎」

「あ、あぁ……大丈夫だ」

 

 小日向の声で我に帰るが、それでも頭の中は混乱している。もうわからないことだらけでぐっちゃぐちゃだ。

 だがそんな混乱する思考の中、わずかに冷静を保った部分が一つの答えを導き出す。

 

(……おい、あのノイズがアタシだけを狙ってるってのは本当だな?)

 《ああ、だが見える範囲での人間は殺すようにされているがな……他に聞きたいことはあるか?》

(いや、それが聞ければ十分だ……)

 

 アイムにそう告げると、アタシは並走する小日向へと視線を移し──なにも言わずその腕を掴む。そしてそのままルートを変更、ビルの角を曲がりノイズの視界から身を隠す。

 

「沢渡さん⁉︎ そっちはシェルターとは別方向だよ!」

「いいから、今はアタシについてきてくれ」

 

 そして何度か建物の角を曲がることでノイズから完全に姿を消す。これで逃げ切れはしないが”時間を稼ぐ”ことはできた。アタシは足を止め、ビルにある非常出入り口の扉を開く。

 

「沢渡さん、ここに隠れてもノイズからは……きゃっ⁉︎」

 

 アタシの突飛な行動に目を丸くする小日向を無理やりビルの中へと放り込む。多少手荒になり体勢を崩して倒させてしまうが……命には変えられない。

 まだ小日向は倒れているが今は時間が惜しい。

 

「小日向、アタシを信じてここに隠れていてくれ。絶対に外には出るなよ」

「待って、沢渡さん⁉︎ なにする気⁉︎」

「小日向──また、明日な」

 

 そう言い、アタシは内側のドアノブを蹴り壊し扉を閉める。そして元来た道を全速力で戻った──少しでも早く、アタシの姿をノイズたちに見せつけるために。

 そして1度目のビルの角を曲がった時、もうすでに近くまでノイズたちは迫っていた。いいじゃねぇか、有能有能。

 

「さて、追いかけっこ再開といこうか!」

 

 できるだけ遠く、小日向のいる場所と反対方向へ! 走り出したアタシの後をノイズたちが続き、小日向のいる方へは一体たりとも向かわなかった。

 やはりアイムの言う通り、アタシだけを標的に定めているらしい。……けどこれで作戦は成功だ。後はアタシの体力が持つかどうか、それだけだ。

 

 《なぜ汝はあの少女を逃した? 追いつかれる危険もあったというのに……》

 

 走っているアタシにアイムがそう問いかけてくる。てか逃げてる最中に話しかけてくるんじゃねぇよ、集中力切れちまうだろ。

 

(なぜもなにも、どっちかが確実に生き残れる選択をしただけだ)

 《その選択は汝が死ぬことになると同義。なぜ迷うことなくその道を選ぶ》

(どうもこうもねーよ。ただアタシら二人の内、死んで悲しむ奴がいるのが小日向だっただけだ)

 

 あいつが死ねば、間違いなく立花は悲しむ。小日向は支えるだけだと言っていたが……アタシと出会うまでの間、立花があの地獄を生きてこれたのは小日向がいたからだ。あいつにとって小日向は間違いなくなくてはならない存在だ。

 

 《それがあの少女を逃した理由か?》

(……半分はな。後の半分はただ単純に腹がたつからだ)

 《腹が立つ……?》

(ノイズに、あんなわけもわからねぇ奴らに二度も立花が大切なものを奪われたらって考えたら……腹が立つんだよ!)

 

 立花はもう十分苦しんだ。ノイズに襲われたせいで人間が作った地獄と闇に嫌という程飲まれてきた。そのうえ大切な居場所(親友)まで失うなどあってたまるものか。

 

(アタシの嫌だと思ったことは何が何でもぶち壊す! たとえ死ぬ目に会おうがそれは変わらねぇ!)

 《まるで子供のような言い様だな……いや、成長している分より質が悪いか》

(そりゃアタシは自己中だからな……文句あるか?)

 《いや文句はない……ふふっ》

 

 何やら笑い声が聞こえてくるが……まぁいい。とりあえず今は走ることに集中しよう。だんだんと追いつかれてきてはいるが、この分ならまだ逃げられる。

 

 

 

 

 そしてノイズから逃げ回っている内に日は沈み、月は浮かび星々が煌きだした。

 

 アタシはどこかわからない工場のような場所へと逃げ込むが、もう体力は殆ど残っておらず壁に背を座り込む。そしてすぐに追いついたノイズたちが周囲を囲み、まるで殺すのを焦らすかのようにその場に静止した。

 

 《逃げ場はない……もはやこれまでか》

 

 アイムがなんか言ってやがるが、疲弊した今は返す気力も湧いてこない。だがアタシは近くに転がっていた鉄パイプを手にし、残されたわずかな体力を使って立ち上がる。

 

 《ほぅ……この絶望的状況の中でまだ立ち上がるか》

「うっせぇ黙ってろ……」

 《しかしそれが現実だ。いくら足掻こうが先に待つのは死……その未来だけは変えられぬ》

「だから、黙ってろって言ってんだろ……!」

 

 先に待つのが死だとか、ふざけたことぬかしてんじゃねぇよ……。自分の未来は自分で決める……誰にもアタシの先を決めさせるかよ!

 そしてノイズの群れのうちの中の一体が形状を槍のようなものへと変え襲いかかる。かろうじて避けることができたものの、足がふらつきバランスを崩す。

 体に力が入らず足が震える……けど、まだ動ける!

 

「かかって来いよノイズども──アタシはまだ、生きてるぞっ!」

 

 自分でもどれだけの声で叫んだのかわかった。もはや叫びというよりも咆哮と呼ぶべきそれはノイズたちの半分が襲いかかる合図となり、私の視界は一面襲い来るノイズで埋め尽くされた。

 そんなノイズに後退するどころかむしろ足を前へと進め迎え撃つ。ただじゃ死なねえ、テメェらの内何体か一緒に地獄に送ってやらぁ!

 

 そしてアタシの体がノイズたちに貫かれ煤と化す──その未来を阻んだのは、眼前に壁として広がる”業火”だった。突如現れた業火にノイズたちは焼かれ、炭化し、煤と化していく。

 ノイズすらも焼き尽くす炎に目を奪われていると、その炎を生み出した張本人はアタシへ言葉をかける。

 

 《汝が”信念”見せてもらった》

「は……?」

 

 アイムの言葉に私が返せるのはその一言だけ。アタシはいったいどこで”信念”を見せたと言うのだろうか。

 アタシがしたのはただの自分がやりたいことをやっただけで、”信念”を見せたところなど一度も……

 

 《その行為こそが”信念”。己という存在を作り上げる”礎”は危機に瀕した時に如実に現れる……そしてそこに人間は”信念”を見せるのだ》

「……えーと、つまり?」

 《察しが悪い女だな……つまり汝を王として認めると言ったのだ》

 

 直後、指輪が輝き円陣……というよりも紋章か? まぁ何かわからんが紋章のようなものが映像を投影するかのように現れる。

 

 《我の紋章だ……さぁ指輪をかざせ》

「お、おう……」

 

 言われた通り紋章へ指輪をかざす。すると紋章は指輪へと吸い込まれ、ドクン、と指輪が胎動する。

 

 《これで契約は完了した。あとは我が力を顕現するための呪文を授けよう》

「呪文って、もしかして長い?」

 《そこそこの長さはある。だがソロモン王はその呪文で我々を呼び寄せ、力を行使した》

「……あのさ、呪文って短くできないの? アタシ、いちいち長ったるいの唱えたくないんだけど」

 《しかし王が我々の力を行使するには呪文が不可欠で……》

 

 先ほどまでのお堅い態度から一転、どこか困ったような反応を見せるアイム。どうやら本当に呪文はなくてはならないものらしい。

 でも呪文唱えてる間にやられたら元も子もないよな……。

 

「ていうか、だったらなんで呪文唱えてないのにこの炎出せてるわけ?」

 《それはまだ契約が不十分だったからだ。契約した以上は汝の許可、つまりは呪文無くして力は発揮できぬ》

「えーめんどくさい……だったら契約しなかったほうが良かったんじゃ……」

 《しなくても良いが、その場合は規模もなにも制御できず……最悪の場合 汝が死ぬまでこの炎を出し続けることになるが?》

 

 うん、契約して良かった。よしそれじゃあ呪文の件に戻ろうか。

 

「もうさ、アタシが一言何か言うからそれで力を貸してくれない?」

 《一言、まぁやれるのならやってみよう》

「よし、決まりだな」

 

 話を終えると同時に、目の前の業火の壁が消滅する。どうやらこれで完全に契約がなされたみたいだ。消えた壁の向こうには未だノイズの姿があり、壁が消えたことで第二波を仕掛けようとしている。

 アタシはノイズへ向けまっすぐに、拳を握った右手を突き出す。そして大きく息を吸い

 

我に従え(きやがれ)! 23番目の魔人──アイム!」

 

 そう一言、アタシが命じた直後──先ほどの比にならない業火がノイズたちを焼き尽くす。その様はまるで太陽が生まれたかのように明るく、闇であるのに昼間であるのかと疑うほどに強力だった。

 そんな予想外の光景に、アタシは呆然と立ち尽くし

 

「アタシが、やったのか……?」

 

 自分がやったのだとわかっていたにも関わらず、思わずそう言葉を漏らしてしまった。

 だってさすがにここまで強力なものが出るとは思っていなかったし、出るとしてもさっきの炎の壁くらいかと思っていたからさ。

 

「熱……っ⁉︎」

 

 そして不意に右手に感じた熱に視線を落とすと、そこには金の装飾が施された一振りの短刀が握られていた。

 ついさっきまではなかったはずのそれを観察するように眺めていると

 

 《おめでとう、沢渡旋!》

 

 突如ゴエティアが歓喜の叫びと共に現れる。なぜに上機嫌かはわからないが、いいことがあったんだろうと軽く流しておく。

 

 《今この瞬間、貴女は次なる王となった!》

 

 そんなこんなでアタシは正式に”ソロモンの指輪”の継承者に、そして次なる王とやらになった。

 

 

 

 

 





まぁあれですよね、マギの影響ですね。
魔人についてはいろいろと自己解釈をして登場させます。
気に入らなかった場合は申し訳ありません。

ちなみに72体全部出すかは未定です。

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