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拙い文ですがこれからもよろしくお願いします!
特異災害対策機動部二課、ノイズによる被害に対する対策を担っている政府機関である。旋や響が通うリディアン音楽院高等科、その校舎の地下に設立された本部は現在、慌ただしさの中にあった。
「
「はい! 現在ノイズは進路を北東へと向かっています!」
赤いカッターシャツにピンクのネクタイを巻いた筋骨隆々な男、風鳴弦十郎。二課の司令官を務める彼の言葉にオペレーターの藤尭
弦十郎の視線の先には巨大なモニターが備え付けられており、ノイズと思われる赤い点が北東へと移動している映像が映し出されている。弦十郎はそのノイズの動きに対して視線を鋭くさせ、何か思案するように顎に手を当てる。
ノイズとは意思関係なく人間だけを襲う存在。近くにいる人間を感知しそれぞれがバラバラに襲いかかるはず……なのだが
(なんだこの違和感は……)
何かはわからない、だが確実に感じる違和感に弦十郎は自然と眉間に皺を寄せる。するとノイズはとある工場にたどり着いたところで進行を止め、何事かと弦十郎がモニターを警戒していると
「──っ! 新たな反応パターン検知! それに伴いノイズの数が激減しています!」
「なに⁉︎」
「しかもこの波形パターン、”アウフヴァッヘン波形”でもない全く未知のものです!」
アラートとともに画面の上に映し出される『unknown』の赤文字。弦十郎含め、この場にいるもの全員がその未知の反応パターンに目を奪われていると、ノイズを示している赤い点が一瞬にして全て消え去った。
まさに一瞬、瞬きの間に……。
「出現したノイズ消失! それに伴い、謎の存在の反応もロスト!」
「……いま翼はどこにいる⁉︎」
「あと数分で到着します!」
ノイズを一瞬で葬り去る正体不明の力。敵か味方かすらわからないが、コンタクトを取る価値は十分にある。
できることならば味方であることを願いながら、弦十郎はモニターへ向ける視線を細める。
かつてソロモン王に忠誠を誓ったという72の魔人の内の一体、アイムとの契約を完了したアタシこと沢渡旋。
アイムの力を使い、アタシを狙って襲いかかってきたノイズを一蹴することができたのだが……。その力はアタシの予想を遥かに超えるもので、眼前に広がる業火はノイズはおろか闇夜すらも焼き尽くしそうな勢いで燃え上がっている。
って、んな悠長に見てる場合じゃねぇ! 早くこの火を消さねぇと建物に移っちまう!
「おい、この火どうやったら消せるんだ⁉︎」
《慌てずとも汝が望めば消える》
アイムの言葉に急いで「消えろ」と念じると、言われた通り業火は徐々に勢いをなくしていきついには消え去った。先ほどまでの大火事のような光景がまるで夢物語のように世界が闇に包まれる。
すると急に身体中の力が抜け、へたり込むようにその場に尻をつく。
「なんで……足に力が……」
《初めての力の行使、故に調節が効かなかったのだろう。残された体力を全て炎として放出したのだ》
「あー、そういうことか……どうりで指一本動かすのもだるいわけだ……」
もはや体を起こすのもしんどくなり大の字で仰向けに寝転がる。視界いっぱいに広がる満天の星空を静かに眺めながら、あのビルの中に置いてきた小日向のことを思う。
一応立花との関係上連絡先は交換しているが、スマホの入ったカバンを逃げる際に落としてしまったので無事を伝える手段がない。今もアタシのことを探していなければいいんだが。というか、明日学校行ったら怒られるかな……まぁ、怒られるだろうな。んでもって、立花も一緒になって騒がしくなりそうだ……。
なんて想像をしながらやれやれと溜息を吐いていると、遠くからブゥゥン、というエンジン音が聞こえてきた。力を振り絞り顔をエンジン音のへ向けると、ものすごい速さでこちらへ向かってくる一点の光が。
こんな人気のない工場に誰が……。そう考えている間に光はアタシのすぐ近くまでに迫り、ついには数メートル先で停止する。
どうやら光の正体はバイクらしく、ヘッドライトから放たれた光は私の体を闇夜に照らし出す。……つーかマジで眩しい。
《ふむ、これは……》
何やら考え込むような声を出すゴエティア。だが今のアタシにはこいつにかまっている暇はなく、バイクの持ち主は靴音を鳴らしながらアタシの元へと歩み寄ってきた。
そしてライトによって照らし出された、バイクの持ち主を見て驚愕する。
「風鳴、先輩……?」
「ええ……先ほどぶりね」
剣のように鋭くしかし、蒼天のように澄んだ瞳。美しくも気丈な歌姫、風鳴翼の姿がそこにはあった。
「アンタ、何でこんなとこに……」
「そのことについてはまた後で。それよりも立てる?」
「いや無理っすね。今まったく体に力が入らないんで」
「そう……」
アタシの返答に静かにつぶやくと、風鳴先輩は後方、ノイズたちの残骸である煤溜まりへと視線を落とす。
なんか色々吟味されてる感が半端ないな……。てか本当にこの人なんでここにいんの? 学院の有名人でトップアーティストだろ、なにこんな場所に一人で来てんだよ……。
そんなことを考えていると、風鳴先輩がこっちへ顔を向ける。
やっぱアーティストなだけあって綺麗な顔立ちしてんな……生で見ると大違いだわ。
「これはあなたがやったのね?」
「やったって……なにを?」
「別に誤魔化さなくていいわ。あなたがこのノイズ達を始末したんでしょう?」
薄々勘付いてはいたが、この人やっぱりなんかあるな。だとすると、放課後アタシに話しかけてきたのも……。
「風鳴先輩、アンタなにを知ってるんすか?」
「それについてはもっと落ち着いた場所で話しましょう」
すると遠くから何台もの車がやってきてアタシと風鳴先輩の周りを取り囲む。何か見覚えがある車ばかりだなと思い思考を巡らせていると、あの日ノイズの襲撃後の現場に現れた車とぴたり一致する。
風鳴先輩は車の到着を確認すると、アタシの体を起こし肩で支えるようにして持ち上げる。未だ足には力が入らないのでほぼ完全に先輩へ体重を預ける形になるが、それでも風鳴先輩は表情一つ変えずにアタシの体を支える。
「本当に力が入らないみたいね……なら拘束の必要はないわね」
「は……拘束って?」
「あなたにはこのまま特異災害対策機動部二課へ同行してもらうわ」
拘束だったり同行だったりと、なにやら不穏な言葉を口にする風鳴先輩。てか今言った”特異災害対策機動部”って、確か政府の機関じゃなかったか? なんでアタシがんなところに……。
そんな疑問は口に出ることなく、アタシは風鳴先輩に車でどこかわからぬ場所へと向かって連れて行かれたのだった。
先輩に車で連れられてやってきたのは、意外にもアタシの通う高校である”私立リディアン音楽院高等科”の校舎だった。そして教師達のいる中央棟、そこに設けられた特別製のエレベーターに乗せられ下ること数分。
「ようこそ、特異災害対策機動部二課へ!」
アタシを待っていたのは薄暗い刑務所じみた場所でもおどろおどろしい拷問部屋でもなく、まるでパーティー会場のように飾り付けられた妙に明るい雰囲気の部屋だった。
中にいる人たちも皆クラッカーを片手に笑顔を浮かべ、とてもじゃないがいち政府機関だとはとても思えない。
「初めまして沢渡旋くん。俺はここの指令を務めている風鳴弦十郎だ、よろしく!」
「は、はぁ……」
「そして私がここの研究者をしている
赤のカッターシャツにピンクのネクタイをしたやけにガタイのいいおっさんと、白衣にサングラスという格好をしたグラマラスな女の人が代表をして挨拶をしてくる。
かなりフレンドリーな二人に面食らうが、とりあえずこちらも挨拶を返したほうがいいだろうと自己紹介をする。
「あー……沢渡旋です、よろしくお願いします」
「うむ。こちらも君も色々聞きたいことがあるだろうし、とりあえず楽にしてくれ」
「あ、はい……」
今は肩を借りずとも立てるようにはなったが、正直に言うとかなりダルかったので言葉に甘えて近くのソファーに腰をかける。そして対面におっさんと白衣の女性の二人が腰をかけ、風鳴先輩はソファーには座らず二人の後ろに立つ。
「さて、まず初めに聞いたいのは……あのノイズを倒したのは君で間違いはないな?」
「……そうっすね」
おっさん──弦十郎さんの問いにアタシは正直に返す。面倒ごとは嫌だが、ここまで来てしまっては隠し事などしても無意味だろう。それにたぶんだがこの人たち、大体のことを知っている気がする。
「
アタシが指輪を見えるように右手を軽くあげると、視線が指輪へと集中する。てか皆視線が怖いって……。もうちょっと穏やかな目で見れないのか……いやアタシが言えたことではないんだけど。
「”ソロモンの指輪”……翼の報告通り、君が持っていたのか。……して、君はいったいそれをどこで?」
「たまたまノイズの襲撃後の現場に通りかかって、そこに落ちてたケースから貰っていきました」
「あはは、堂々としたものいいね……逆に清々しいわ」
「いやまぁ、事実ですし」
白衣の女性──櫻井さんは苦笑いを浮かべるが、アタシとしては色々と詮索されるのが面倒なので素直に答えているだけだ。これで法に触れて処分を受けるんだったらその時はその時だ。
「でもそうだとして、それにしてはおかしな話ね。聖遺物である以上”アウフヴァッヘン波形”が生じるはずなんだけど……」
「あうふ……なんですかそれ?」
「”アウフヴァッヘン波形”、聖遺物が起動する際に発せられるエネルギーの特殊パターンよ。あなたの持つ”ソロモンの指輪”も聖遺物だから例に漏れずこの波形を放つはずなんだけど……どういうわけかあなたから感じ取ったのはそれとは別のエネルギーだったのよねぇ……」
よくわからないが、アタシは何かおかしなことをやらかしてしまったらしい。アタシなりに心当たりがあるとすれば……やはり思い浮かぶのは
ことを悪化させてしまうかもしれないが、とりあえずアタシは魔人のことを話す。確実にアタシ以上に理解がある人たちだし、色々と知らなかったことが聞けるチャンスでもある。
「72の魔人……。それは本当か?」
「はい、現に倒したのはその内の一体に力を借りたからですし」
アタシの話を聞いた弦十郎さんは口元に手を当て、真剣な顔で思考を巡らせる。まぁそりゃそうか、”魔人”だなんて架空の存在、アタシだって言われても信じないだろう。
「了子くん、どう思う……?」
「え、えぇ……にわかには信じられないけれど、確かに伝承にはソロモン王は神から与えられた指輪を用いて天使や悪魔を使役したとあるわ。そしてソロモン王が使役した悪魔は72人……旋ちゃんの言う魔人の数も72、ぴたり一致するわね」
「これだけ材料が揃ってしまうと信じないわけにはいかないな……。それにしても魔人が本当に実在していたとは」
弦十郎さんも櫻井さんも真剣な表情で、そして深刻そうな声音で語る。どうやらアタシの話を信じてくれたようだ。
「情報の提供ありがとう。それと聞くが、体の方には異常はないのか?」
「確か体力と精神力を削るって言われましたね。現にさっきまで指一本動かすのもしんどかったですし」
「……なるほど、今のところ以上は無しと。……ああ、こちらばっかり聞いて申し訳ない。旋くんは何か聞きたいことはないか?」
そう言い、弦十郎さんは視線をこちらへ合わせる。聞きたいこと、そう言われてもまずあちらがなにかという事を知らない以上は質問のしようがない。
そして何より、早く帰って寝たい。体力が戻ってきたとはいえ、疲労が抜けきっているわけではない。先ほどから睡魔が襲ってきて眠くて眠くて仕方がないのだ。
「アタシからはないですね……そろそろ帰って寝たいんですけど、まだ話続きます?」
「いや今日はここまでにしておこうか。また後日、翼を迎えに寄越すからその時に続きをしよう」
あーまたここに来ないといけないわけか……。まぁ帰れるんならそれでいいや……今は少しでも早くベッドに横になりたい。
なんとか眠気と戦っていると、櫻井さんがアタシの横まで移動し頬に右手を添えてくる。
「それじゃあちょ〜っと服、脱いでもらいましょうか♪」
「え゛……」
やけに瞳を煌めかせる櫻井さん。
どうやらアタシはまだ、この場から帰してもらえないみたいだ……。
ソロモンの指輪についての見識が深い方はこんな感じの説明で納得していただければ幸いです。
あと、魔人について「これが出してほしい!」などのアンケートを近々取るかも?
まぁ期待せずにお待ちください。