紅いイレギュラーハンターを目指して   作:ハツガツオ

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何事も設定と出だしが大事(ガチな戒め)。

ロクな設定も考えず勢いとノリで書いたり最初をギャグに偏らせ過ぎた結果、二年分の投稿全て書き直しとなりました。執筆前にある程度設定や終盤までのストーリーをざっくりでもいいから考えるべきだと痛感した次第です。書いている最中にいい内容が思いついても盛り込めないですしね。

そんな訳で全編再投稿及び旧話は移動となりましたが、第一章終了まではノンストップでいいきます。

それではどうぞ。



プロローグ
プロローグ 前世の記憶が蘇った


 何がどうしてこうなった。

 

 今の彼の心境を現すのならこの言葉が一番適切だろう。

 目が覚めた時には白い天井。身体には薬品臭のキツい幾重もの包帯。しかも怪我は重いのか鋭く鈍い痛みが常駐しているオマケ付き。血も少し滲んでいるときた。普通ならこれだけでも情報量の多さに混乱しそうだ。

 しかしそれだけだったのならまだ良いと言えた。客観的には相当な不幸に見舞われている状況だが、当の本人である彼の中ではそれ以上の出来事があった。

 

(……何も……思い出せない)

 

 彼には過去の記憶が無かったのだ。自分が今の状態に至った経緯は疎か、自身の生まれ故郷の風景を、自らを育ててくれた両親の顔を、親しい関係にあったであろう友人達の名――その全てを。何もかもが忘却の彼方になっていた。

 しかしそれを嘆く間もなく激しい頭痛が彼に襲いかかった。脳裏に映し出されるのは遠い記憶。こことは明らかに違う風景、朧気に映る自身の姿、そして()()()()()の軌跡を。

 それらを知覚するや否や、彼は全身に走る痛みなど無視して洗面台へと向かっていた。まさかコレは……。いや、流石にそんなバカなことが…………。あまりにも高等無滑稽な想像に動揺しながらも真実を確かめるために鏡を見たのだ。

 やはりというべきか想像は当たっていた。先ほどから鏡に映る人物を何度見直そうが紛う事なき現実。

 項垂れそうになりながらも今一度鏡を覗き込む。そこに映し出されていたのは――。

 

(…………うっそだろ。転生とか本当にあんのかよ)

 

 ()()()()()とは似ても似つかない容姿の少年。

 

 そう。つまるところ彼は――――転生者だったのだ。

 

 

〇月 ×日

 

 意識を取り戻してから早数日。相変わらず包帯でグルグル巻きだが痛みは少しマシになったので記録がてら日記をつけることにした。紙の裏という簡易的なものだけど何もしないよりかはいい。

 

 しかしビックリしたわマジで。目が覚めたら知らない天井な上に包帯グルグル巻きのミイラ状態とか、一体何があったんだっていう話だ。思い出そうとしても過去の記憶が一切無いという二重苦だし。しかもそこへなんだ? 前世の記憶が代わりと言わんばかりに激しく主張してきやがるという。まるで意味が分からんぞ!

 とりあえずここまでの経緯を医者か誰かに聞くしかないかぁ……。何の手がかりも無いわけだし。 

 

 あ、書いてたら丁度それらしき人が来た。内容がバレるとマズいから急いで隠さねえと。

 

 

〇月 φ日

 

 とりあえず医者だの見舞いに来た人だのに聞いて現状を把握した。

 まず俺の現在地について。ここはマナリア王国という国であり、魔法が発展した所謂『魔法大国』という通り名で有名らしい。そのマナリアの王都から一際大きな山を挟んで少し離れたところに位置するのが今居るココス村とのこと。

 次に俺の怪我。どうやら俺は王都とこの村の境にあるチョポタ山の麓付近にて血まみれで発見されたらしい。傷跡からしてどうも魔物か何かに負わされたもので危篤状態だったとのこと。治療してくれた医師曰く「ここまで回復したのは奇跡」だってさ。あっぶねえなオイ。で、俺を発見及び運んでくれたのが偶々山に訪れていたドルドさんとミナさん夫婦。この二人は俺が意識を取り戻した後もちょくちょく見舞いに来てくれた。

 

 しかし問題なのは、この世界における記憶が一切無いことだ。あれから何度か思い返したものの、綺麗サッパリ忘れているのか何一つ思い出すことが出来なかった。医者の見立てによると、恐らく怪我と出血多量から生じたショックによる影響だろうというものだった。生まれ育った場所や今生の両親の顔を一切覚えてないのは些かツラいものがあり、自分が誰なのか分からない錯覚に陥る。情けないが少し泣きそうになった。

 

 では逆に何を覚えているのか――。前世における一般常識、この世界には明らかに無いと断言出来るアニメやゲーム関連のネタや用語、中でもド嵌まりしていたのはロックマンXとロックマンゼロという作品シリーズ。そして一番好きなキャラクターが、ゼロだったということだ。

 

 ここで知らない人の為(と言いつつ自分が忘れない為の記録だけど)にも『ロックマンX』『ロックマンゼロ』について少し簡潔に説明しよう。

 

 まずはロックマンXについて。舞台は21XX年、人間と人間に近い思考回路を与えられたロボット『レプリロイド』が共存する世界。この世界には、人間で言う犯罪者に相当する『イレギュラー』を取り締まる『イレギュラーハンター』なる組織が存在している。

 主人公エックスはイレギュラーハンターではあるものの、心優しい性格から例え相手がイレギュラーであっても情けを捨てることが出来ないことから常にB級ハンターで止まっていた。それを他のハンターに嘲笑されたり、先輩かつ親友である特A級ハンターのゼロに度々たしなめられたりはしていたが、イレギュラーの対処に追われる日々を過ごしていた。

 しかしある日。エックスとゼロ、二人の上司であるシグマが人間に対して突如反乱を起こす。人類を排除し、優れた存在であるレプリロイドが支配する世界を理想としたのだ。しかも最悪なことにイレギュラーハンター隊員の一部もシグマの側についてしまう。

 残されたハンターであるエックスとゼロは、暴走するシグマの野望阻止へと動く。そしてこの戦いを引き金として、二人とシグマの長き戦いが始まったのだった。

 

……というのが大体の内容だ。途中から熱が入って説明口調になったのは気にしないでネ。

 この作品で重要なのは、エックスが"悩みながら戦う"という点だ。本来レプリロイドは人間に近い思考回路を持つとはいえ、あくまで"近い"だけであってそういった機能は本来持ち合わせていない。しかしこのエックスはその苦悩する機能が組み込まれており、非常に人間に近しい存在と言えた。生来の性格も相まって戦いに苦痛を覚えるエックス。彼は戦いの中で悩み、傷つき、そして成長していくのがXシリーズにおけるコンセプトだ。特にこの部分は通称岩本Xと呼ばれる漫画版において強く取り上げられており、呼んでいる側も色々考えさせられるものとなっている。

 この他にも作品中には色々な謎と設定が隠されている。実はエックスはレプリロイドの始祖に当たる存在だとか、エックスとゼロには戦わなければならない宿命があったりだとか……まあ、そこら辺は自分の目で確かめた方が早いと思う。書くとキリがないし終わらせられないから。

 

 そしてもう一方であるロックマンゼロ、こちらはエックスの相方であるゼロを主人公とした外伝作品だ。

 シグマウイルスが発端となり世界最大規模の戦禍となったイレギュラー戦争。永遠に続くかに思われたこの厄災は青き英雄エックスの活躍によって終結に導かれた。戦禍の後、人々は理想郷『ネオ・アルカディア』を築き世界は平和を取り戻していった。しかしその実態は、かつてのイレギュラー戦争再来を恐れた人間達による無実のレプリロイド大量処分によって成り立っているまやかしにすぎなかった。レプリロイド達は何時イレギュラーの烙印を押されるかの恐怖の中で生を送っていた。

 そして時は過ぎ去り100年後、年月の経過で風化し誰からも忘れ去られた研究所に一つ組織の姿があった。

 その組織の名は『レジスタンス』。イレギュラーの汚名を着せられたレプリロイド達によって結成された、ネオアルカディアの対抗組織。彼らは自分たちを弾圧するネオ・アルカディアと戦ってはいたものの、圧倒的な戦力差から追い込まれている状況だった。そこでメンバーの一人である科学者シエルは、遙か昔に封印されたと伝えられる『赤き英雄ゼロ』の眠っている遺跡へと仲間達と共に訪れていたのだ。

 だがそうはさせまいとネオ・アルカディアの兵士達が彼女達を追い詰める。次々と殺されていく仲間達。シエルにもその手が及ぶ寸前、ゼロが封印から解き放たれる。記憶喪失となりながらも自分の助けを求めた彼女達を守るため、ゼロはネオ・アルカディアとの戦いへ身を投じていくのである。

 

 Xシリーズに対してこちらは"悩まない"のが主軸となっている。主人公のゼロが記憶喪失というのもそうだが、ゼロシリーズのゼロは一貫して悩まない。自分の信じる者、そして自分を信じてくれる者のために戦う――ただそれだけを胸に秘めて。そしてそれは敵も変わらないと言える。ネオ・アルカディア側のレプリロイド達も口や考え方に差異はあれど、誰もが自分の信念を持って戦っている。

 そしてやはりこちらにも様々な謎がある。エックスは何故この所業を止めないのか、何故ゼロは長い眠りについていたのか、イレギュラーの定義等々、Xとはまた違う設定があって面白い。……ただ、ハードがGBAという子供向けというのがクセモノ。内容は面白いんだけども、少なくとも小学生が簡単に手を出せるものではないと思う。他のゲームより難易度も高い上にストーリーもかなり重いし。

 

 しかしストーリーの面白さだけが両作品の特徴ではない。これらを代表するのは、極めて爽快なアクションだ。バスターによる敵の撃破、ダッシュによる高速移動、ジャンプや壁蹴りによる変速機動、ボスの撃破で得られる数々の特殊武器。当時のアクションゲームの中でも一際異質とも捉えられかなりの人気を博した。

 それに加えてキャラの多さ。各ステージに待ち受けるボスがいることから、必然的に登場するキャラの数も相当なものだ。動物や空想上の生き物をモチーフにしたデザインとした外的要素だけでなく、武人肌だったり熱血漢、果てには守銭奴な性格といったユニークなレプリロイドもいるので見ているだけでも楽しい。

 

 そんな多くのキャラクターが登場するこれらの作品の中で一番好きだったのはゼロだ。バスターによって敵を撃ち抜くという従来のロックマンシリーズから受け継がれたエックスのそれとは一風変わり、機動力とセイバーによる接近戦を主体としたアクションは中々に気持ちが良かった。しかもこのゼロはラーニングシステムという機能により、倒したボスから新たな技を習得するという特性を有しているので、作品によって使える技が変化するというのも面白さの一つだ。

 そしてアクションもさることながら内面もまた良い。クールさの中に熱さを秘めた性格というのが外見共々マッチしていたし、"自分の存在について悩む"という"戦う意味について悩む"エックスとはまた違う意味で人間らしさを感じたのも一つだ。他にもX4のイレギュラーゼロさんに怯えたり、アイリスのシーンで泣いたり、X5のエックスとの対決で燃えたりしたのも心に強く残っている。

 

 以上と他の知識etcを含めたものが俺の覚えている内容となっている。当たり前だけどこれらは誰にも口外できないものだ。俺自身でさえ転生とか創作物の中だけど思ってたぐらいなんだ、あまつさえ他の人に明かしたところで真面に信じて貰えるわけがない。良くて変人、悪けりゃ狂人扱いだろう。そういった事もあってか治療魔法を受けたり他の種族(エルーンとかドラフとか色々いるとのこと)を見かけたりする度に「この世界はマジでファンタジーだなあ」とつくづく思っている。

 

 あ、そうだ。大事な事を忘れてた。俺自身についてだ。

 出身地は不明! 種族は恐らくヒューマン族! 推定十歳前後! その名は……無しッ!! ――あ、止めて! 石は投げないで下さいお願いしますから!! 

 いや、ふざけてるかもしれないけど本当にそれしか分からなかったんだよ。ドルドさん達や医者に聞いたんだけど、この村では見かけない顔だし他のところでも聞いたことないって。その上俺自身が着の身着のままだったせいで情報の無さに拍車をかけているのだとか。…………あれ? 普通に考えたら俺これ詰みじゃね? もしかしなくても詰み確定じゃねこの状況? 

 

 やっべえ、怪我直った後どうしよう……。

 

 

〇月 α日

 

 今日見舞いに来たドルドさんとミナさんから家に来ないかという話があった。俺達は結婚してるが子供はいない。だから子供が一人や二人増えたとしても全然大丈夫だ。行く当てが無いのなら俺達のところに来ればいい、と。

 それを聞いていたら、いつの間にか涙が零れた。何だかんだ言って自分でも思っていた以上にキツかったらしい。何処の誰とも分からないのにこの人達がそう言ってくれたのが物凄く有り難かった。俺は二人に首を縦に振った。

 

 

α月 〇日

 

 怪我が治ったので退院じゃあっ! この前とテンションが違いすぎる? 湿っぽいのは嫌いなんだ、大目に見てくれ。やっと病院から解放されたというのもあるし。ベッドの上で大人しくしてるのは違う意味でツラかった。

 しかし、今更だけど本当に良かったんだろうか。こちとら身体は子供でも精神はそれ以上に年食ってる年齢詐称みたいなもんだから、子供らしい振る舞いが難しい。そんな奴が若い夫婦のところにお邪魔っていうのも…………止めだ。これ以上考えるのはよそう。折角の好意なんだから。

 

 それと俺の名前は今日から『レイ』となった。数字の"0(ゼロ)"の東国での読み方"0(れい)"から持ってきて『0から人として少しずつ成長していけるように』という願いを込めたとか。

 

 ただ、名前を聞いた瞬間「あれ。なんかゼロっぽくね?」と思った。見た目と中身は全然違うしロボットじゃないけどね。




9/2 山の記述が一部抜けてたので訂正
10/15 クロスオーバー元のロックマンXとロックマンゼロがざっくりと分かるように説明を書き足しました
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