紅いイレギュラーハンターを目指して   作:ハツガツオ

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前回までのあらすじ

少年、ドルド夫妻に引き取られ『レイ』という名前を貰う。


修行日記その1 魔法弾という名のバスター

α月 η日

 

 退院してから数日が経過。怪我は完治して医者からゴーサインが下りたので、自宅近くの空き地にて修行を始める事にした。何でかって? それは俺が純粋な転生者だからだ。

 

 転生と聞くと、不幸な事故に遭ったりとかで神様に「お主を転生してやろう(意訳)」と言われたついでにチート能力と共に転生したりする《神様転生》辺りが一番メジャーだろう。あとは原作知識ありきでの転生とか。

 しかし俺の場合、そういったものは無かった。意識を取り戻してからは記憶を遡ったりしていたんだけど、神様に会った記憶も無ければチート能力や武器の類を所持していない。あるのは前世での記憶ぐらいなもの。

 

力は無い。知識も無い。そんな無い無い尽くしの俺が、魔物やら何やらの脅威が蔓延るこの世界でこれから先生き抜けるだろうか?

 

 答えは否である。現に魔物に襲われてこの様だったのだ。今回は運良く助かったが、また襲われでもすれば今度こそ確実に俺の魂(ボール)あの世(相手のゴール)にシュゥゥゥーッ!! されてしまうだろう。流石に俺も早死にだけは勘弁なので嫌でも強くならなければならない。

 

 さて、そこでだ。前世において異世界創作物の代名詞ともとれる摩訶不思議な術、魔法。医者が俺の治療に使っていたように、この世界では何ら不思議なものではなく当たり前のように存在している。加えて剣や槍を初めとした武器達。これらも異世界においては外せない要素であり、この世界でも普及していると耳にした。

 そして更に俺は前世の記憶を持っている。ゼロは勿論の事、エックスの特殊武器やその他の技etcもゲームをやり込んでいたので網羅済みだ。そちらの知識に関しては全く問題無いと言える。……ここまで来れば最早何が言いたいのか大半の人は予想が付いているだろう。

 

 そう。戦う力が無いのなら強くなればいい。つまりはゼロの技を魔法や剣術で再現・習得し――俺自身がゼロになることだ(能力だけ)。

 

 何か色々おかしいしキャラ的に自分から死にに行くようなもんじゃね? というツッコミはあるだろう。そもそも強くなりたいのなら前世の知識をフル活用してチート魔法生み出せばいいのでは? ボブは訝しんだ。という意見もあるものだと思っている。

 

 だがしかしだ。自分の好きなキャラの知識が十分にあり。再現するための手段がこの世界にはある。一度でいいから現実で見てみたいやってみたいと長年願っていたものが、今世では叶えられるかもしれない――。そんな一生に一度お目にかかれるか否かのチャンスを不意に出来るか? いや、出来るわけがない。だったら厳しい道だろうが何だろうが、己の道(趣味)を突き進むのみだ。誰だってそーする。俺だってそーする。というかそーした。チート魔法云々も、自分の好きなキャラの技が使えたらその時点で十分チートに値する。俺の場合はそれに当てはまるのがゼロだったというだけだ。

 

 そんな趣味と実益を兼ねた鍛錬を今日から始めるわけだが、魔法と剣の当てはすでに付いている。

 まずは魔法だ。これはこの世界の人間なら誰でも使える……と思っていたが、どうやらそういう訳にはいかないらしい。使用にはある程度の素養が求められ、それが一定水準に達していて初めて魔法を行使出来る。マナリアは魔法大国の名の通り魔法使いも多いが、それでも全体の割合としても使えない者の方が占めている。実際、ドルドさんとミナさん夫妻やこの村の人の大半も後者の側だしね。

 

 そして肝心の俺の素養だが、一応はあると判明している。

 入院中ドルドさん達が暇つぶし用に幾つか本を持ってきてくれていたのだが、その中の一冊に『スライムでもよく分かる魔法の基礎(監修:S・M)』という魔導書が混ざっていた。それの最初のページに記されていたテストの様なものを行った結果、それなりの才を有しているであろうことが判明したのだ。

 内容はとても簡単。目を閉じて身体に意識を集中させる、たったこれだけ。この時に内側から何かが全身に巡っているのを感じ取れれば魔法行使に必要な最低限の魔法力が備わっているとのこと。この何かが魔力であり、さらに素養が高い人は魔力の流れが事細かにハッキリと把握出来るとか。……何かビミョーに胡散臭く感じるけど信じるしかないだろう。ファータ・グランデ空域でも最高峰と称されるこの国の魔法学校が出版元だし。

 

 後は剣だけど、こっちは退院祝いにドルドさん達が太刀を買ってくれた。まあ、要望を聞かれた時に武器が欲しいと伝えた時は、危ないことには首を突っ込んで欲しくないって物凄い渋られたが。仕方無く護身用ですとかこれが俺に出来ることなんだ(キリッみたいな感じで説得したらどうにか首を振ってくれた。

 それと太刀を選んだのは値段も手頃で初心者でも扱いやすいからだ。剣も捨てがたいと思ったが、重さや振った感覚からしてこっちの方がしっくりときた。属性の方も全種あったので風属性のものに。……そこ、絶対緑色の刀がX4~X5のゼットセイバーに似てるのが大部分だろとか言わない。実際それも含まれてるんだから。

 

 さて、当初の目標だが俺が最初に再現したいと思っているのは【ダブルチャージウェーブ】だ。

 

 一先ず何故これが最初なのかを説明しよう。この技が初めて登場したのはロックマンX2のゼロ戦。ゼロのパーツを全て集めずに最終ステージに向かった場合、ラスボス戦前の敵として登場するゼロが使ってくる。チャージバスター二発+ビームサーベルによるソニックブームという三段攻撃なのだが、なんとゼロはこれをノンチャージ及びノンストップで繰り出してくる。開幕と同時に放ってくる上、エックスのようなチャージ動作も無しに只管ポンポン撃ってくるからプレイした時は度肝を抜かれた。

 さらにこの技はX2だけに留まらず、後作のX3からX6、外伝作品であるゼロ3やZXのボスであるオリジナルゼロまで使ってくるという、いわば基本と言っていい技だ。【滅閃光】などの派生元になったとされる【アースクラッシュ】のような豪快な技も魅力的だが、一ゼロファンとしては【ダブルチャージウェーブ】を最初に身につけるべき――というより俺がそうしたいんです、はい。

 

 だってカッコいいじゃないか! 溜め動作無しでチャージバスターをバンバン撃つだけじゃなくて斬撃まで飛ばしてくるとか男のロマンを刺激しすぎだろ! ZXでもモデルOでそればっか使ってたしな!! あ、モデルOで思い出したけどメシアさんごっこは目茶苦茶楽しかった――――。

 

 閑話休題(そんな事は置いておいて)

 

 【ダブルチャージウェーブ】を習得したら順次他の技に取りかかるつもりだ。先ほど述べた、地面を殴りつけて衝撃波で吹き飛ばす【アースクラッシュ】、その応用でエネルギー弾を飛ばす【滅閃光】、炎を纏わせた刃で上空へと跳びながら切り裂く【龍炎刃】等々。これらを自分が使えるようになったらと想像するだけでワクワクしてくる。

 

 良し! やる気は十分だ。手始めに魔法弾もといバスターの習得と行こう。これは攻撃魔法の基礎に当たる魔法で、これが使えるようになれば【ダブルチャージウェーブ】の半分は覚えたようなものだ。

 飛ぶ斬撃(以降X5より電刃零と呼称)はは……とりあえず素振りを限界までやってそれから考える! あとは身体能力を上げるためにベタだけど村の周囲を倒れるまで全力疾走!

 

 目指すは赤いイレギュラーハンターゼロだ!! 

 

……それにしても、刀って地味に重いなー……。

 

 

β月 Ω日

 

 いきなりだが問題発生。隊長! バスターが撃てません!!

 

 とりあえず魔法っぽいものは使えたのでこの魔導書への疑惑は晴れてはいる。が、魔法弾が一向に成功しないのだ。

 魔法発動の手順としては"魔力を練り上げる""術式を使って魔力を魔法に変換する""呪文を唱える事で発動する"の3ステップが一連の流れだ。一部の魔法は詠唱もしくは術式を介さず魔力のコントロールだけで済むものもあるけど、基本はこの流れに沿うらしい。

 で、この手順に習って魔法弾をやっているわけなんだが、いくら発動してもそれっぽいナニカとなってしまうのだ。練り上げた魔力の量にムラが多かったりするが、それ以外は特に問題は無いはず。だというのに、魔法陣から放たれた緑色の弾丸はモヤッとした……何というか物凄く歪であやふやなのだ。おかげで的代わりの大岩に当たる前に消失することはざら。上手くいっても形のせいであらぬ方向に飛んでいく上に威力もイマイチ。更には魔法陣の展開する位置もズレたりする。いやまあ、いきなり成功するとは思ってなかったけど流石にヒドすぎやしねぇか。

 

 あれか、まだ魔法を知ってから日が浅いからとかか? 前世ではそういうのは非ぃ科学的な類いだったわけだし。……とにかく数をこなして慣れるしかないか。それこそ魔力をギリギリのラインまで攻める感じで。

 

 それはそれとして素振りの方は何とか様にはなってきている。三段切りは128セットが限界だけど、回数は順調に増えてきている。毎日毎日限界までやってるから腕が痛いし震えも止まらないけどネ!! 

 そこへさらに走りこみも追加してるからオデノカラダハボドボドダ!

 

 

γ月 μ日

 

 肉体と魔力を追い込んで修行しているわけだが未だに魔法弾が習得出来ていない。形の方はマシにはなってきてはいるものの、やはり形が安定しないせいで変な方向に飛んでいく。威力も相変わらず酷いものだが草を吹き飛ばす程度はあるので、人三人分位の大きさの岩の周囲だけ草が生えていないという状況である。イレハンのゼロの台詞を借りるなら、

 

「チッ……95%もミスっちまったか」 

 

 という感じである。うん、ダメだろ。目も当てられねえよこの惨状は。岩の周りだけ限定的な芝刈りやっただけじゃねえか。イレギュラー化する前のシグマ隊長でさえ匙投げるレベルだろコレは。

 こんな基礎の段階で躓くとか完全に予想外だわ! だって魔法弾は攻撃魔法の初歩だよ!? なのに出来ないって……二次創作とかだと割とあっさり魔法使ってる描写しかなかったから「基礎とか秒でマスター出来るだろwww」とか思ってました! 魔法舐めてて本っ当にスミマセンでしたァッ!!

 

 あ、そろそろヒッフッハ……じゃない、素振りと走り込みをやらないと……。

 

 

=月 β日 

 

 術式を展開して発射、術式を展開して発射、術式を展開して発射……。

 

 テイハットウ、テイハットウ、テイハットウ、テイハットウ、テイハットウ、テイハットウ……。

 

 かちとりたい、ものもない、むよくなばかには、なれない、それできみは……いいんだよ……。 

 

 

|月 $日

 

 ままままほうだだだだんんんんぅぅぅ。

 

 かゆ……うま。

 

 

Σ月 +日

 

 ハーハハハッ! ついに魔法弾を習得したぞ!! この冷静な俺があまりの事におかしくなってしまいそうだ!! ……いけない。これからなんだ。

 今までこの俺の魔法弾をかすりもしなかった奴ら(的)を……。そう、この世の動かない木製の的達全てを! 俺の魔法弾で撃ちぬく為に!!

 出来る、出来るぞ! 魔法弾の習得による次の目標……チャージによる魔法弾の強化が!!

 

 

Σ月 -日

 

 あまりの嬉しさにゲイト笑いのテンションで魔法弾乱射してたら、いつの間にかぶっ倒れてたらしい。おかげで両親に滅茶苦茶心配されました。そりゃそうだ。際限なく撃ちまくってたら普通に魔力が枯渇して死ぬわ。今度から少しは冷静になった方が身のためか。

 

 ついでに友達を作ったりはしないのかと聞かれた。年の近い子達との会話もなく、いつも一人でいるのが気になっていたらしい。あ、うん……ごめんなさい無理です。前世の記憶が無かったらまだしも、今は中身こんなんですから。話が全然噛み合いませんよ。いやね、何回かは話しかけられたのよ。けどさ、いきなり「一緒にお話ししようよ!」とか「森まで競争しようぜー!」なんて言われてもどう反応したらいいのかメッチャ困ったよ。……いや、それはまだいいか。元凶はアレだ。アレが悪い。

 

 実は最近気づいたんだが、――口が重い。比喩とかじゃなくて文字通りの意味で。言葉を発そうとすると変な呪いにでもかかってんのか上手く喋れない。相手が話しかけてきても終始無言。話せたとしても物凄く簡素で素っ気ない感じになる。

 そんな訳で話が弾むはずもなく必然的に友達/zero。結果、一人で修行を送る毎日となっている。べ、別に寂しくなんてないんだからね! 少しは友達が欲しいとか仲間の輪に入りたいとか微塵も思ってないんだから!! ……うえぇぇ、気持ち悪い。これ以上は吐き気が催してくるから止めよう。何か悲しくなってくるし。

 

 まあ、正直言って鍛錬の方に集中出来るからあんまり気にしてないんだけどね。そっちに時間割かなくて済むわけだし。ただ自由に話せないのがネックだけど。

 

 ともかく今日は一日大人しくしているとしよう。本音を言えば今すぐ鍛錬を再開したいところではあるが、心配されている以上は流石に控えるべきだろう。下手こいて修行を禁止にでもされたらそれこそ本末転倒というものだ。

 

 

*月 ×日

 

 どうにかやり過ごしたので今日から修行再開だ。

 

 

 何とか病院送りは免れたので今日から修行再開だ。色々あったが無事魔法弾が習得出来てよかった。習得に何ヶ月もかかるとは夢にも思ってなかったがな!!

 

 根本的な原因としては自分の中のイメージだったらしい。魔法の行程は理解していたものの、何処か漠然としていた。前世の記憶というものがあるせいか馴染みのないものといいう先入観が強かったのだ。

 

 しかし魔導書の最初の方で記されていた"魔法は術式だけでなく、呪文を唱える際の精神状態や()()()()も影響する"という部分。そこをもう一度振り返ってから、なら自分がハッキリと思い描きやすいものに置き換えてみたらどうかと考えた。――そう、今まで散々目にしてきたエックスやゼロのバスターへと。

 拳を握った右腕を銃身に見立て、左手を添えながら岩に構えて狙いを定める。心臓という動力炉から魔力という名のエネルギーが送り込まれて右腕にチャージされていくのを思い浮かべる。そして魔法陣を拳に密着させる形で展開し、呪文を唱えた。すると魔法陣の前に、風を纏い球状を模した翠緑の弾丸が形成され、高速で放たれる。速度十分に発射された弾丸は吸い込まれるように岩へと命中し、飛礫を撒き散らして表面を大きく削り取った。

 

 まさかのこれで上手くいくとは驚いたが、同時に納得も出来た。ただ単に術式を構築して呪文を唱えれば良いというわけではなく、"術式と呪文はあくまで骨組みの形成に過ぎず、()()()()()()()()()()()と共に発動することで概念の補強が成され、魔法として成立する"ということなのだろう。……これで成功するのも何だかなぁって感じだけど。

 

 まあ、とりあえず覚えたことに変わりは無いから俺らしい結果ということで良しとしておいた。

 さて、次は威力と精度の問題だ。まず威力についてはやはり大岩ぐらいは貫通出来るようにまで持っていきたいというのが理想だ。ゲームしかり漫画版しかり、レプリロイドの鋼鉄の身体にバスター一発で風穴を開けているのだから、それ以下の強度である大岩程度を撃ち抜けなければお話にならないだろう。

 そして精度。本来なら威力だけで済むはずだったんだけど、手に接地するように魔法陣を展開しているからか発射後の反動がかなり凄い。今のところは左手を添えているからブレはそこまで酷くないものの、それを無くした状態では命中率は安定しないだろう。これをどうにかしない限りは本家の様な精密射撃はおろか、チャージショットやダブルチャージなど夢のまた夢で終わる。まあ、身体がまだ出来上がってないのもあるんだけどね? 

 これらの対策としては、前者は練り込む魔力量の調整、後者は連続発射による反動への慣れと筋トレによる対策、と言ったところか。

 

 次は電刃零の習得だが……その前に刀から属性を引き出す練習をしないと。ここのところ魔法弾に掛かりきりだったから、そっちは一切手付かずなんだよな。

 今度は刀の属性解放から取りかかるとしよう。そういうわけで素振りと走りこみじゃぁッ!!




補足説明

本来太刀は水属性の刀ですが、この作品では『入門用の刀で全属性が揃っている』という解釈でお願いします。風属性の低ランクの刀が無かったんや……。いきなり初期武装がSRなのもどうかと思うし。

刀を振る時のテイハットウはX4及びX5の三段斬りのボイスより拝借。

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