マンティコアとの戦いを終えたオーウェンは、乱れていた息を整える。
属性力の強化は魔法剣の威力を底上げできるものの、当然ながら魔力を通常より多く消費する。より堅いものを斬ろうとするなら尚更だ。
加えて強化魔法による身体強化。これ自体は魔力をそこまで使うものでは無いにせよ、強化する度合いに比例して使用魔力は増加し、身体への負担も大きくなる。
この二つを同時に行使したことから、彼の身体には疲労が現れていたのだった。
敵を完全に倒したことを確認した後、剣を納めようと鞘に手を掛ける。これで学内の安全は守られたのだ、と。
そう思った時――地面に何かの影が映る。
細長い棒状の様な物を映した影法師。だがオーウェンはこれを視界に納めた瞬間、本能的に横へと身を投げ出して回避行動を取った。
彼が横へ飛び退いた直後、相当な太さをもつ大きな何かが叩きつけられる。その威力は途轍もなく、地面を凹ませる程であった。
オーウェンは攻撃の正体を確認するために目を向ける。そこに立っていたのは燃えさかる火山。溶岩が変質し、硬度を高めた赤黒い甲殻に身を包んだ炎の竜――フレイムドレイクだった。そしてたった今さっき振り下ろされたのは、フレイムドレイクの巨大な尻尾であったのだ。
まだ術式が作動していたのか……! そう呟きながらフレイムドレイクへと立ち向かう。
構えたオーウェンに対し、再び尻尾が上空より振り抜かれた。一撃目よりも鋭く振られたそれは、またも地面を抉る。
横へと跳ぶことで逃れていた彼は、フレイムドレイクを中心に円を描くようにして走る。
いくら尾による攻撃が強力でも、真正面へと回り込んでしまえばそれも封じられる。尾を使うには、小回りの利かない巨体を反転させなければならない為に、隙が生まれるだろう。そこを叩けば上手くいくはずだ、と。
彼の読みは上手くいったと言える。正面に回り込むことは成功し、相手はこちらの動きに追いつけていない。その時間を利用して剣に魔力を集中させ、強化魔法の準備をする。魔法剣と強化魔法、その二つを掛け合わせることで編み出した極技。これをぶつければ奴を両断出来るはずだと踏んで。
だがその目論見は崩された。いざ強化魔法を発動しようとした時、突如としていくつもの鋭い岩が、フレイムドレイクの背後よりオーウェンへと襲いかかってきたのだ。
不意の出来事によるものだったので一瞬対応に遅れが生じるも、咄嗟に後ろに下がったことで負傷は免れた。しかし今の攻撃のせいで、強化魔法は発動出来なかった。
チャンスを潰されたことに内心歯噛みしていると、フレイムドレイクの背後より一つの影が浮かび上がる。
影の正体は宙を彷徨う岩石。いくつもの岩を配下のように従わせている、土霊エフセイだった。――先ほどの妨害は此奴の仕業である。
「三体目か……!!」
フレイムドレイクに土霊エフセイ、二体の大型魔物が同時に襲いかかってくるこの状況。只でさえ骨が折れるというのに、そこへマンティコア戦の消耗まで加わるときた。
――端的に言って、不味い。
しかも今のエフセイによる妨害のせいで、オーウェンが逆にフレイムドレイクへと隙を与えてしまった。
彼がエフセイに気を取られていた間。炎の竜は自身の熱器官を活性化、甲殻から炎を噴き上げて体温を上昇させていたのである。
そして生成した炎を口元に集中させ、視界を埋め尽くす程のブレスを一気に放出した。
オーウェンはすかさず防御魔法を発動する。左手を前に突き出すことで術式を展開、魔法文字の刻まれた円形の障壁が炎の前に立ち塞がる。
フレイムドレイクは尚も業火を吐き続ける。障壁は炎の奔流を防いではいるものの、この間オーウェンは身動きが全くとれないでいる。絶好の的ともいえるこの状態、当然もう一方が逃すはずも無かった。
エフセイはオーウェンに狙いを定めて空に岩を配置していた。それも先ほどのような小さい代物では無いサイズのものを。
そしてエフセイはオーウェン目掛けて岩石を射出する。
直後にフレイムドレイクの攻撃が終わりを告げたものの、あまりにもタイミングが悪すぎた。ブレスを防いでいた間の硬直状態。視界が晴れたとはいっても、それと同時に把握した攻撃に対する反応など到底不可能。障壁もブレスでガタがきている。――防ぐことも躱すことも叶わない。
岩石がオーウェンへと迫る――
――刹那、二発の魔法弾とそれらに追随する風の刃が彼の背後より飛来する。
突如として撃ち込まれた連撃はオーウェンの頭上を通り過ぎる。そしてエフセイが発射した岩へと命中し、相殺するように粉砕した。
「今のは……」
「――おい、そこのアンタ! 大丈夫か!?」
即座に後ろを振り向くと、十数メートル離れた先に赤いジャージ姿の人物がこちらへと走ってきていた。――しかしその人物を視界に納めた瞬間、オーウェンは目を見開くことになった。
灰色に近い頭髪、鋭さを感じる緑色の双眸。そして左手に構えているのは――風を纏って翡翠に光る刀。七年の歳月が経過し、風貌も変わってはいるが……知っている。この青年を。魔法剣を刀でやろうという無茶を成した友人は、彼しかいない――
「レイ……何故ここに……」
どうして彼が。オーウェンの胸中では混乱や驚愕などが渦巻いており、最早目の前にいる魔物のことなど忘れ去っていた。
しかしそれは目の前にいる彼――レイも同じようだった。
「……お前はオーウェンなのか? 何でまた魔法学校なんかに……」
「それは私の台詞ですよ! 一体いつ入学されたのですか!? 手紙の一つでも送って頂ければ……」
「いつも何も今年、というより今日来たばかりだ。だから手紙を送るには――避けろ!!」
二人の会話を魔物の攻撃が遮る。回避したレイとオーウェンが目を向けると、まるで自分たちのことを忘れるなとでも言いたいかのように、エフセイとフレイムドレイクが見下ろしていた。
「挨拶より奴らを片付ける方が先決だな……」
「レイ、この二体は――」
「事を起こした生徒から話は聞いている。奴らは召喚魔法で呼び寄せられたんだろう? なら、倒すだけだ」
「無論です……って、待ってください。レイ、魔物に対しての恐怖症は……」
確か彼はトラウマを抱えていたはず。もしや今も無理をしているのでは――。そう考えたのだが、レイは「ああ、そのことか」と何でもないかのように言った。
「それなら何とかなっている。俺よりお前の方こそどうなんだ? 相当疲れているかのように見えるが」
「この程度問題ありません! 私は十分に戦えますとも!!」
「相変わらずと言ったところか……」
レイは静かな笑みを浮かべた後、オーウェンの横に並び立つ。
「オーウェン、あのデカい岩の方は俺が相手をしておく。さっさと終わらせるぞ!!」
「はい!!」
オーウェンはフレイムドレイクへと疾駆する。それを妨げるかのように、エフセイがオーウェン目掛けて岩を降らせる。
「悪いがそうはさせん」
その行動に即座にレイが反応した。右手を降り注ぐ岩へと向けて魔力を集中、魔法弾を連続で撃ちだして撃墜する。
さらに左手に構えた刀。刀身を風で覆い翡翠に光る自身の得物をエフセイに向けて縦に振り下ろす。空を切ると同時に生じた風の斬撃が、エフセイ目掛けて飛んでいく。流石に空中では分があるのか、エフセイには空中を滑るかのように躱されたものの、レイに意識を向けさせるには十分だった。
レイがエフセイの妨害を防いだことにより、オーウェンは問題なくフレイムドレイクへと接近する。フレイムドレイクは尾で叩き潰そうとするも、オーウェンはそれを難なく避けて懐へと潜り込む。そしてがら空きの胴へと一太刀入れた。
「グウウウッ!? ――ガアアアッ!!」
「くっ……!!」
怒る炎の竜が叫びと共に身体から火炎を放出させたことで、オーウェンは後ずさる。この隙を利用して、フレイムドレイクは再び火炎を口へと溜め込もうとする。
「またあの攻撃か……!!」
先ほどは凌げたが次も同じようにいくかは怪しい。魔力にも限りがあるし、これを発動してしまえばそれこそ継戦能力に問題が生じる。
だからといって防御魔法を張らなければ、自分は愚かレイもやられてしまう。
オーウェンが迷っていると、丁度エフセイと交戦していたレイも目にしたらしく、大声で叫んできた。
「防御魔法は張るな! お前はそのまま攻撃に集中していればいい!!」
「え、な、何をする気ですか!?」
「アレを止めさせるだけだ」
言い終わると同時に、レイは左手の刀を逆手に持ち替える。そして刀を持った手を肩の上へと構え、大きく振りかぶった。
「――食らえっ!!」
左手が薄く光った後。身体を捻りながら反転させ、槍投げの要領で風を帯びた刀を全力投擲した。
投げられた刀は想像もつかない速度で一直線に突き進み――フレイムドレイクの頭部を貫いた。これには炎の竜も堪らず絶叫し、炎の強さが不安定となって掻き消える。
「今だ、やれ!!」
「は、はい!!」
レイの言葉と同時にオーウェンは自身に魔法による強化を施す。そして突っ切ると共に剣に魔力を集中させ、間合いに入ったと同時に一気に解放する――!!
「我が極技、お見せしよう!」
斜めからの振り下ろし、横への一閃。続く斬撃にフレイムドレイクは悲鳴を上げる。
だが、これでは終わりではない。この程度ではこの魔物は倒れない。現に、今にも反撃しようと身体を踏みとどまらせているのだ。
しかし終わりでないのはオーウェンも同じ事。剣を纏う魔力を最大限に解放。刀身を覆う流水もそれに応じて形状を変化させる。
そして脇に構え、天へと振り上げた。
「――ミラージュブレイドッ!!」
『逃げ水』の名を冠するかの如き変幻自在の攻撃。水面から立ち上る水柱の様に、地を這う衝撃波が火を操る魔物へと襲いかかる。
フレイムドレイクはオーウェンの一撃を防ごうとするが、それよりも速く攻撃が到達すした。巨体は真っ二つに両断されて、地面へと崩れ落ちようとする。
だが、魔物はもう一体残っている。エフセイはフレイムドレイクが倒されたことを知ると、演習場の外へ逃げようとした。
そんな中、崩れ落ちる亡骸に迫る影が一つ――レイだ。
彼はフレイムドレイクの身体へと飛び移って駆け上がると、頭部に突き刺さっていた刀を回収し、逃亡するエフセイに狙いを定める。
「逃がすか!!」
骸を蹴って逃亡者へと跳躍。さらに風魔法を追い風のように発生させて自身を加速させる。さらにエフセイへと真っ直ぐに差し迫りながら、刀に風を集約してさらに切れ味を高めておく。そして上半身を弓を射るかのように、左手を後ろにやりながら反らした。
そしてその背中に追いた瞬間、引き絞った左手を矢と化し上半身のバネと加速を利用した渾身の突きを放った。
「――旋牙突!!」
エフセイの背中を風の矢が刺し穿ち、岩石の鎧を貫通する。さらに体内に存在する、エフセイの核にあたる部分も貫いたことで、土霊は完全に沈黙した。
塊となっていた岩はボロボロと崩れ落ち、下へと落下して地面と衝突していく。
エフセイを仕留めたレイも重力に従って落ちていくが、地面とは激突せずに両足で着地する。
しかしまだ残っている作業がある。二人は召喚魔法の陣へと近づいていき、これを破棄。他に魔物がいないことを確認して両者はホッと息をついた後――。
「さて、挨拶が大分遅れましたが……七年振りですね、レイ」
「ああ、久しぶりだな。オーウェン」
言葉を交わし、互いの手を握り合った。
◇ ◇ ◇
あのー、行方不明になった覚えは無いんですが……。
それはともかくとして、皆さんお久しぶり。ゼロを目指して約十年、ようやく見習いレベルに至ったかもしれないレイです。
いやー、本当に何が起こるか分からないね~。隣人不在なこと然り、入学式前の魔物パーティー(ギリギリ未遂)然り、オーウェン君と再会したこと然りとねー。あ、因みに演習所の事件がどうなったか伝えておくと、あの三人は先生に結構絞られてました。名前は……ハインライン先生だったっけ? 表情が怖いというより、威圧感が凄まじかった。効果音的には「ドドドドド」みたいな。あの人には凄みしかなかったわ。
で、事後処理その他諸々が終わった為に現在寮へと帰宅中。尚、オーウェン君は一緒である。
「レイ、先ほどは有り難うございました」
「礼はいらん。今回の件は、俺が助けた相手が偶々お前だっただけだからな」
ぶっきらぼうに返すと、「そうですか……」と苦笑された。こんな言い方しか出来なくて本当にすみません。
「それよりも、だ。何でお前が魔法学院にいるんだ? 騎士を目指していたんじゃなかったのか?」
「いえ、騎士にはなっています。数ヶ月前に騎士団に入団し、初任務としてこの学院に入学したのです」
「そういうことか……」
「レイの方こそ、学院に合格したのですね。私としても自分のことのように嬉しく思います」
「それは俺も同じだ。……まあ、お互い連絡に出来なかったのはどうしようもないが」
「そうですね。……レイ。私の記憶違いで無ければ、以前よりも口数が多くなっていませんか?」
「……少し、な」
オーウェン君もだろうけど、俺もこの七年間色々あったからねー。
約束を交わしたあの日以降、鍛錬と平行して魔法学院に入る為に座学もやってた。というのも、入学試験には一般的な教養と魔法知識を確かめる筆記試験と、自身の習得している魔法を試験官の目の前で行う実技試験の二つがあることを後日知ったからだ。
いくら俺が転生者とは言っても、チート頭脳なんぞ持ち合わせてはいない。それにこの世界の一般常識を多少知っているとはいえ、あくまで年相応レベル。前世の常識は当てにならない可能性が――というか、島が浮いてるという時点で絶対当てにならない。
さらに記憶喪失の影響か転生者であることを思い出した弊害なのか、この国――マナリア王国の歴史や全空史といった歴史関係全般が頭に無い。それはもう、笑ってしまうレベルで。いや全然笑えねえけど。
これらの事情から、本屋に勤めている父さんに歴史関係を教わったり、駐屯所の騎士の皆さんにお世話になったりしていた。
もちろん魔法関係もキチンと勉強した。……え? お前魔導書とかどうしたんだって? あー、それね。結果だけ言えば何とかなった。
俺としてもこれが一番の問題だと思ってた。俺が持っていた魔導書はあくまでスライム専用の超初心者向け。当然ながらこれは使えない。
しかも住んでいる場所の関係から、魔導書は手に入りにくい。とは言え王都に向かうには山を越えなければならない。加えて当時の俺は十歳の子供。一人で行くにも障害が多すぎる。かと言って、魔法の勉強が出来ないのは非常に不味い。魔法の知識が乏しい状態で受けたら間違いなく落ちるし。
一体どうしようかと無い頭で必死に考えていたところ、例のあの人――ハクランさんがあっさり言ったのである。
『魔導書だぁ? 俺が以前使ってたもんでいいならやるぜ?』
これには俺もビックリした。思わず「何だと! それは本当か!?」と叫んでしまう程に。
因みに何故持っていたのかを聞いたら、騎士団に入る前に魔法関係も勉強していたのだが、ずっと捨てるのを忘れていたとのこと。本当にファインプレーである。
で、ハクランさんからお古の魔導書――年数が経っていたからか、埃を被って少々痛んでいたりはしたものの十分使えた――を譲ってもらえた後、魔法の勉強もしていたのだ。
他にも色々とやったりした。
まず、魔物との戦闘。あのゴーレムとの戦いで何とか勝利したとはいえ、偶然による産物でしかない。それに初戦闘による恐怖心があったとはいえ、一度は彼を見捨てて逃げだそうということを考えてしまったのだ。
で、それが嫌で嫌でしょうがなかった為にハクランさんに相談した結果……見事に克服しました。――最高にクレイジーな方法でな!!
いや、あのさ、確かに恐怖心を何とかしたいとは思ったよ? でもやり方ってものがあると思うんですよ。伝えたらいきなり『よし、俺にいい考えがある!!』って言って、他の島に連れ出されるって誰が予想できるよ? しかも当時の俺は魔導書の件で株がだだ上がりしていたせいで「おおっ! 流石はハクランさん! 何かいい案があるに違いない!!」って考えてたから、総司令官ばりの死亡フラグに気づかなかったんだわ。そんで他の島に向かったら、万屋で討伐対象になってる魔物の巣に武器と身一つで放り込まれたしさぁ……。本当にあの人の頭の中どうなってんの? やっぱケルトだろあの人。というか、槍ニキ本人が転生したんじゃねえの? それを何回もやる羽目になったし。
方法はともかくとして、特訓のおかげで魔物との戦闘は問題なく行えるようになりました。色々なことを吹っ切れたし。それでも時々チキンなのは変わって無いが。なお、学院へと向かう際にお礼としてある人に手紙を送っておいたのはここだけの話である。
あとはラーニング技の修行とか、以前よりも内容が濃くなった修行とか……あ、そうそう。一番の問題児――黙り癖etcを忘れてた。
俺の中身がこんなせいで身についてしまったこの癖。感情が薄い(笑)だの何だのと勘違いされてしまった諸々の元凶、こいつをどうにかするために俺は努力を続けた。具体的に言えば、鏡の前で笑顔の練習とか自分の部屋で会話の練習の為に一人で話し続けたりとか。正直頭が可笑しくなるかと思った。
だがしかし! 努力の甲斐あってか、大幅に改善されたのだ!! ……それでも言葉が足りなかったりするし、口調だけは直らなかったけどな!!
これ、口調は何なのだろうか。いくら黙り癖云々があったとは言っても、ここだけ直らないってさぁ……。そもそも幼少期からずっとそうだったし。いくらゼロに憧れてるとは言っても、流石にそこまでは真似ようとは思ってないんだけど。おかげで、幾つか言えるようになったネタの数々がとんでもないギャップしか生み出していないという始末である。まあ、村の人達と話すのに支障は無いからいいんだけどさ。
それと勘違い、これに関しては放置である。理由としては、過去に起こっているそれらはどうやっても修正のしようがないし、これといった対策が思いつかないから。現状で出来る対策法としては、気をつけること。それだけ。
ここまで長々と述べたが、この七年間で結構変わりすぎである。自分で言うのもなんだけど。
自分の命が優先とかもあったけど、それよりも友達を目の前で失いそうになってからは考えが変化した。何が言いたいかって? つまりはオーウェン君のおかげで変われたということさ!! 勘違いのことも気づかされたしな! 忘れないうちにお礼言わないとね。
「……ありがとう」
「い、いきなりどうされたのですか?」
あ、ヤベッ。主語とか諸々すっ飛ばしてた。そのせいで彼が滅茶苦茶困惑してるよ。急いで説明しねえと。
「お前に出会ったおかげで俺は変わることが出来た。その礼をずっと伝えたくてな」
「私のおかげといっても、特に大したことはしてないと思うのですが……」
「お前からすれば大したことじゃないかもしれない。でも、俺にとっては間違いなく大きなことなんだ」
「……成る程。それならば私も貴方にお礼を言う必要がありますね」
え、何かあったっけ。特に何かやった覚えはないんですけど。
「貴方が友人になってくれたおかげで、私にも騎士を目指すこととは別の目標が出来たのですよ」
「別の目標……?」
「ええ。……内容は話せませんが」
「……もしやお互い様ということか?」
「そういうことでお願いします」
そうフッと笑って言ってきた。やだ、何この子。相変わらずめっさええ子なんですけど。あの頃だって普通に接してくれたし。七年経っても変わってないとかそんなのあるんだ。他の人からは生真面目すぎるとか言われるかもしれないけど。
そんなことを考えていると、オーウェン君が「それはともかくとしてですが」と話を切り出してきた。
「そちらが宜しければ私の部屋で話をしませんか? 積もる話もありますでしょうし」
「いいのか?」
「ええ、勿論です」
「……なら、そうさせてもらおう」
この七年間のことを聞きたいしね。そう思いながら、俺達二人はオーウェン君の部屋へと向かったのだった。
「……先ほど変わったと言っておられましたが、もしや刀を投擲するという手段も私が原因だったりするのでしょうか……」
「いや、あの時はアレが一番の最適解だと判断しただけだ」
ごめん、やっぱりちょっと生真面目すぎかもしれないわ。あと、それは特訓のせいで常識が吹っ切れただけです。
オマケ
「そういえば、レイの部屋は何処なのですか?」
「俺の部屋もこの階だ。あそこの一番左端なんだが……」
「……丁度私の隣ですね」
「え」
「先ほど挨拶に向かったと言っていましたが……」
「……入れ違いというやつか」
「みたいですね」
この後滅茶苦茶語り合った。
Q.何か色々変えすぎじゃない? というか時間かかりすぎだろ。
A.旧一話を見返すと(個人的に)不自然な部分が多く目に付く→投稿から一ヶ月近く経ってしまったけど、とりあえず書き直そう→レポートに加えて中間考査とかマジでワロえない→少しずつ進める→パソコン逝く。ついでに書きかけだった第二話と、一緒に開いていた新一話も吹っ飛ぶ→オワタ\(^o^)/→パソコン買い直しや後日にずれたりした中間考査、今期最後のレポートに手間取る(作者がアホやらかしたせいで計十七枚を作成、しかも手書き。書き直しを含めると書いた枚数は二十を超えている)→修正に再度着手→色々考え直したら結局ほぼ全て書き直しになって別物になるという結果に ←今ココ!
旧一話を見返して思ったのが、『オーウェンがもの凄く弱く見えないか?』という点。
いくらレイが窮地に参上するとはいえ、横から獲物かっさらわれた感じが凄かったし、全然強くなった様に感じられなかったので……。それに折角二人でいるんだから、多少なりとも協力シーンは入れないとダメじゃね? とも。まあ作者の文章力諸々のせいで、そこまで変わってねえよと言われるかもしれませんが。
補足説明
・オーウェン
基本の性格等はグラブル準拠、任務の為に入学した生真面目な騎士。しかし、レイが関わったせいなのか将又任務の傍らで彼と共に過ごせる事が嬉しいのか定かでは無いが、時折はっちゃけることがある。
武器に関しては覚醒時の立ち絵から解放武器を採用。強化魔法云々もアビリティなどがそれ関係だったことから。防御魔法はアニメか何かで使っている描写が存在したため、そこから採用。
ちなみに中の人は『ロックマンゼクスアドベント』にてシャルナクを演じていたりする。
・ジャージ
今回においてレイとオーウェンが着用していた服。
マナリアの制服がリアルのそれとあまり変わらないこと、『蒼空の向こう側』でパー様が着ていたことから採用。グラブル世界における服装の基準は曖昧な為、あっても不思議ではない。
・マンティコア、フレイムドレイク、土霊エフセイ
前者二体はグラブルの属性試練の最終ウェーブにて待ち受けるボス。後者はルーマシー群島に出現するレアモンスター。特にエフセイは十天衆の設備拡充で何度も通った人が多いはず。
マンティコアはゲームの都合上、尻尾による攻撃と魔法しか使わない。おい、爪とか仕えよ。勿体ないので肉弾戦も出来る仕様に。それならフレイムドレイクとエフセイももう少し何とかしろ? すみません、作者の想像力では無理でした。生息地はごちゃ混ぜだが、溶岩地帯とか山岳地帯とかを想像していただければと。
因みに作者は最初、敵をこの二体では無く演習場を埋め尽くすほどの大量の魔物にしようと考えていたらしいが、一話目からそんな世紀末でインフレ状態になると収拾がつかないと気づいたため、急遽変更したらしい。
・ダブルチャージウェーブ
初出はロックマンX2より。前作にて大破したものの、ビームサーベル(X2とX3ではこの名称。X4よりゼットセイバーと呼称される)と敵の洗脳を引っ提げて来た状態でラスボス前の敵として出現するゼロが使用。攻撃方法としては、チャージショット二発を撃った後にビームサーベルの斬撃を放つというロマン溢れる技。しかもチャージ時間が必要なエックスとは違って、ノーチャージでポンポン撃ってくるという離れ業をやってくる。ちなみにX3で操作できるゼロも、ビームサーベルは飛ばないが使用可能である。
この技は後の作品でも登場しており、X5の敵ゼロやX6のゼロナイトメアに続きいてパラレルワールド扱いのロックマンゼロ3でもラスボスが使用してくるという愛されっぷり。絶対公式も気に入ってんだろ。
・旋牙突
ロックマンゼロ2において、ランクA以上でクワガスト・アンカトゥスが使用してくる技【スピニングブレード】をキャプチャーする事で習得するEXスキル(EXスキルとは、ミッション終了後に確定するゼロのランクがAかSの時にボスを倒すと獲得する事の出来る特殊な技。簡単に言えば、Xシリーズのラーニング技とほぼ同じ)。
走りながらセイバーによる突きを繰り出すことで、突進の加速力の加わった強力な一撃となる。レイの場合、技の出し方や風魔法を追い風に使用するなどの部分が異なっている。
余談だが、次作に当たるゼロ3にも同じ様な技である【烈風撃】が存在する。が、その実態は旋牙突には無かった連続ヒット性能を付与という魔改造が施された、最早別物と言える技である。
これと他のEX技【天裂刃】と【落砕牙】、ラスボスのノックバックを活かした通称飯屋いじめというものが一時期流行った。(ちなみに他の技や三段斬りでもいじめは可能)
このいじめは成功すると、一回のコンボだけでゲージを一つ削るというとんでもないものである。(知らない人の為に説明すると、ロックマンゼロでは敵の体力がゲージとして表され、一本あたり32メモリ、それが大概のボスは二本ある。参考として、セイバー一振りで4ダメージ、三段切りで12ダメージ、チャージセイバーで8メモリ削れる。しかしこの
某明治剣客浪漫譚のとある人物の使用技と攻撃方法や名前が一部似ているものの、それが元ネタなのかは定かでは無い。所謂公式のみぞ知るというやつである。レイの【旋牙突】の出し方はこちらに近い。