鬼の体でFate   作:辺境官吏

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よかれと思ってやりすぎる。


第九話

ヤノマミ集落。

 

ブラジルのサンパウロから車を走らせること24時間。アマゾン川流域の辺鄙な集落。

 

崖を背に、三方を原生林に囲まれてた小さな集落だ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

───周囲を警戒しつつ、車を降りて崖下を見下ろす。

 

手にはハンドガン。(切嗣から牽制用に貰った。)

 

かつては貧しいながらも逞しい住民達が生活していただろう集落は、黒煙渦巻く地獄と化していた。住民達が生活していたであろう家々は燃えあがり、瓦礫の上には夥しい血の跡とバラバラになった肉片が散らばっている。

 

 

「───遅かったか。」

 

「…悪かったな。」

 

疲れない体をいいことに、自動車を24時間ぶっ続けで運転させた人間の目の前で吐いていい台詞ではないと思う。

 

そもそも8歳児に運転させようとする発想がおかしい。

 

足が届かないから木の枝でアクセルを踏みつけるハメになった。

 

事故ったらどうするつもりなんだろうか。

 

…それと、毎回思うが、この男はどこから情報を得ているんだ?若い頃は世界の紛争地域を飛び回っていたと言っていたから、独自のパイプでもあるんだろうか。(嫌なパイプだ。絶対にいらない。)

 

 

「───士郎。道中でも伝えたが、まずは観察することが大事だ。今がどういう状況なのか、敵はどういう状態なのか、敵の目的は、味方はいるのか、障害はあるのか、コンディションはどうか…自分を含む環境を観察し、理解するんだ。その上で自分の出来ることを最大効率で行う。これが魔術師や化け物狩りの基本だ。」

 

「ああ。わかっている。…今、俺たちは集落を見渡せる崖の上にいて、敵は恐らく車の音を聞いて隠れている。敵の正体、目的、数は不明。味方は俺と切嗣の二人だけ。現時点で障害は認められないが、長引けば代行者が現れる可能性も極小だが存在する。一番近い集落まで車で1時間の距離だが既に皆殺しの後で、村人が逃げ延びた形跡もない。コンディションは…俺は問題ないが、切嗣は最悪。山火事になる可能性があるため火の魔術はなるべく使用しない。こんなところか?」

 

「…及第点だ。付け加えるなら、敵は恐らく単独。そしてこちらを狙っているといったところか。…アドバイスはするが、ここは士郎の戦場だ。うまく凌いでみろ。」

 

いきなりハードルが高い気もするが、切嗣なりのOJTというやつか。それなら全力で学ばせてもらおう。

 

 

───考える。切嗣が敵を単独と判断した理由…不明。では、こちらを狙っていると判断した理由………そうか、音か。自動車のエンジン音。そして、このような殺しが出来る存在であれば通常の人間では勝てない。となると、車に乗ってきた者を確認しようとする…という判断か。

 

「なぜ単独だと?」

 

「殺し方が同じだ。それにどうやら奴はグルメだ。」

 

「………子供の死体だけ血だまりがない?」

 

「その通り。恐らく死徒か…なんにせよ吸血種だろう。」

 

…子供が積極的に狙われる、か。

 

なんにせよ好都合だ。

 

「ところで切嗣、釣りは好きか?」

 

「───フッ。得意中の得意だ。」

 

「………。(とはいえ、先に切嗣が狙われると危ないか?まだまだ教えてもらう事は多いんだが。)」

 

「…心配してくれるのは嬉しいが、大丈夫。確かに著しく弱体化はしているが…10秒ぐらいならもつだろう。そして10秒あれば駆けつけてくれるだろう?」

 

見殺しにするつもりはないが…想定外に強そうな相手だった場合、普通に逃げたいんだが。

 

「…もちろん、勝てなさそうだと思ったら逃走するんだ。士郎の力をここで終わらせるには惜しいからね。まあ、たぶん大丈夫だと思うよ。道中教えた強化の魔術も駆使すれば、それこそサーヴァントか一部の上位死徒ぐらいしか相手にならないだろう。」

 

「………。」

 

信用が痛い。

 

だが、ここまで言われて引いたら臆病者ではなく、卑怯者だ。

 

正々堂々卑怯な手段を使うのはいいが、情けない理由で卑怯者になるのは嫌だ。

 

「…こうして呑気にお喋りしているのも油断を誘うにはちょうどいい。士郎はよほど注意深く見ないと魔術師だと分からないからね。…幸い僕も魔術回路がボロボロだし、さぞ弱そうに見えることだろう。案外簡単に釣れるんじゃないか?…いいかい、士郎。初の実戦だ。全力でやるんだ。」

 

「わかった。切嗣、お喋りはここまでにしよう。安心して欲しい、おかげで覚悟も出来た。───では、二手に別れよう。状況を開始する。」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

───発見。

 

さすがは切嗣。こういう相手を狩り続けていただけのことはある。

 

崖下およそ700m。木と木の間からこちらを伺っている人物を発見。付近1㎞に人影無し。

身長約180㎝。男性。金髪白人、若干の猫背。白を基調としたスーツを着ていることもあってか紳士然とした印象を受ける…が、余程の実力者でなければただのバカだ。目立ちすぎる。(侮っているのか?)…魂が汚染されているため、噂に聞く死徒だと仮定。

 

何らかの魔術や異能を用いる可能性がある以上、先手必勝。死徒を殺しつくすには生中な攻撃ではなく一撃必殺。手加減なしの大打撃。

 

様子見をしている今がチャンス。

 

 

 

「──────顕現開始。」

 

 

 

其れは世界を侵す魔力。

 

無意識化でかけていた制限を解き放ち、肉体を新生させる異次元の強化。

 

魔術回路なぞ不要。肉体全てが神秘を行使する触媒と化す。

 

体内に渦巻く莫大な魔力の塊を全身の隅々まで浸透させ、外に漏れだそうと暴れる炎を意志力のみで押さえつける。

 

 

 

────キィィィィィンィィ───!!

 

 

 

全身が白熱し、ただそこに在るというだけで膨大な熱量が放たれる。

 

崖は埒外の高熱により融解。森林は燃え上り、アマゾン川が蒸発していく。

 

崖からの自由落下のなか、体中の熱を供物として地獄の炎を召喚する。

 

 

 

「───出し惜しみは無しだ。地獄に堕ちろ。叫喚地獄、雨炎火石処ッ!!!」

 

 

 

───顕現する異界常識。

 

空は赤く燃え上り、膨大な数の赤熱する石の塊が降り注ぎ、敵を打ち砕き、魂を燃やし尽くす───!!

 

 

一撃ッ、二撃ッ、三撃ッ!……百撃ッッ!!………千撃ッッッ───!!!

 

 

…一撃が巡航ミサイルに匹敵する破壊力を持った、亜光速で落下する石の塊を千撃!

 

視界は光と炎で埋め尽くされ、直撃の衝撃が地表を破壊。生み出されたクレーターの持つ極大の熱量がプラズマを生成。

 

発生する上昇気流が炎を吸い込み、火災旋風となって既に落下の衝撃波と熱波で灰となっている森林を再度蹂躙。

 

強烈な気圧変化が雷を生成し、破壊の矛先を求めて無差別に落雷。

 

死徒は跡形もなく消滅し、木々も、集落も、死体も、動物も、全て等しく炎で融かす。

 

これぞ叫喚地獄、雨炎火石処!!

 

俺が唯一使える遠距離攻撃!

 

 

 

 

「みたか化け物め、人間の力をなめるなよ!」

 

 

 

 




ハンドガンは溶けました。
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