鬼の体でFate   作:辺境官吏

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慣れない事をすると、だいたい失敗する。


第十二話

「───失敗した。」

 

夕方、休学を告げるために穂群原学園に登校した俺は早速後悔していた。

 

「結界が張られている…。」

 

それも相当性質の悪い結界が。詳しい効果のほどは不明だが、おそらく結界が発動すれば生徒たちは無事ではすむまい。…誰が仕掛けたのかは不明だが、バカな真似をするものだ。こんな目立つことをすれば遠坂さんに喧嘩を売っていると思われても仕方ないだろうに…。

 

「まあ、俺には効かないだろうが。」

 

体感でわかる。この程度の結界では俺を害することはできない。

結界の基点も何となく分かるから燃やして無効化することもできるが、攻撃とみなされて反撃されるのもバカらしい。

ここは冬木の管理者に任せるのが得策だ。

 

「さっさと職員室に行こう。」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「…話が長い。」

 

職員室で学年主任と話しているとすっかり夜になってしまった。

まさか身の上話をするだけで泣かれるとは思わなかったのだ。普段から先生方には丁寧に接していたから、まさか話の腰を折ることも出来ず、(雑な対応をしたせいで、藤ねえに苦言がいくのは申し訳ないし。)ひたすら熱く励ましてくる先生に答え続けた2時間だった。

世間一般の感覚では同情される身の上なのは自覚しているが…桜や藤ねえみたいな美人が家にきてくれるので、全く忘れていた。

 

「俺は幸せだったんだけどな。」

 

さて、そんな学年主任は用事を思い出したらしく、休学の件は明日電話で連絡すると言って急いで帰っていった。

取り残された俺一人。

扱い雑すぎないか。

 

「………。一応、みてみるか。」

 

念のため、結界の基点をみてみよう。

複数個所にあるため、時間はかかるだろうが…どうせ明日には休学する身だ。俺のために泣いてくれた先生と、藤ねえと桜のために働くとしよう。

 

 

 

***

 

 

 

「───やめときゃよかった。まさか聖杯戦争が始まっているとは。」

 

運動場では赤い服をきた白髪の男と、青いタイツを着た獣のような男が戦っている。

青がランサーなのは見てわかるが、赤は短刀2刀で凌いでいる。セイバーか?

青が優勢なように見えるが…どうも本気を出しているように見えない。小手調べだろうか。

対して、赤も全力を出しているようには見えない。遠坂さんがいるところを見ると、赤は遠坂さんのサーヴァントだろうか。

 

「というか、律儀な奴だな。俺ならサクっと遠坂さん殺して終わるのに。」

 

いわゆる騎士タイプというやつか。

だとすればもし俺が見つかっても、騎士道精神の名のもとに逃がしてくれるだろうか──『誰だッ!!』──ッ!

 

 

「やばい…!!」

 

 

視線を集中しただけでランサーに気づかれた。なんだあの化け物…!!

 

………落ち着け。ここから走って逃げることは出来るが、ダメだ。相手は最速と名高いランサー。逃げても追いつかれる可能性は高い。それに相手も元人間だ。話が出来るし、一般人は襲わないかもしれない。考えるんだ俺。生存確率をあげるには…敵の敵を味方につけるのが最善。だとすれば───ここはむしろ打ってでるべき場面。

 

俺はドアをあけて運動場に歩いていく。

 

戦闘は中断し、こちらを追いかけようとしていたランサーはどこか面白そうな顔でこちらを見ている。

遠坂さんもこちらを見て目を見開いている。赤は仏頂面だ。(今のうちにランサー攻撃しろよ。)

 

「…初めまして。俺は衛宮士郎。凄い音がしたから気になってみていただけだ。アンタら校庭で何してるんだ?…遠坂さん、これはどういうことなんだ?この人たちは?」

 

挨拶してから気づいたが、手の甲に令呪があるのを忘れていた。うまく見えない角度を調整しないと…!!

 

「………。」

 

「胆のすわった坊主だぜ」

 

うるさい黙ってろ。

 

「えーと…遠坂さん?」

 

遠坂さんは俺の話を無視して、ランサーに話しかける。

 

「ランサー、話があるわ。目撃者は私たちで処理する。だからここはひとまず解散といかないかしら。」

 

処置って何だろう。記憶消去とかできるんだろうか。

 

「俺としちゃあ、このままやってもいいんだが…まあいいさ。興がそがれちまった。」

 

───勝った。

 

「ありがとう。」

 

「ああ、なに。いいってことよ。それより坊主」

 

「なんですk────ッ!!」

 

唐突にランサーから打ち込まれる高速突き。恐らく寸止めであったであろうそれに、思わず反応してしまう。──見てから、避けてしまう。

 

「───。」

 

続いてランサーの腕から放たれる連続突き、払い、打ち込み。

その全てを回避する。───この程度なら大丈夫。何の問題もない。

 

次第に速度をあげる高速突き。初めは点だった攻撃も、線となり、面となる。

まさに槍の結界。この惨殺空間に巻き込まれたものは一瞬後には死体となるだろう──。

 

だが生憎、こちとら10年も鍛えている。仮想敵は黄金のサーヴァント。面攻撃は想定内。

 

───全てを回避することは不可能。魔力を腕に籠め、硬度をあげた素手でいなしていく。

 

結局のところ面制圧といっても同時攻撃ではないのだ。…仮に同時攻撃だったとしても、同時に見えるほど早く動けば問題ない。それにこれはじゃれ合いだ。どう見ても本気じゃない。

 

………時間の無駄だな。

 

ひとまず足に魔力を集中し、わざと暴発させて距離を取る。当然俺にもランサーにもダメージはない。

 

「───やっぱりな。てめぇ魔術師だろう。」

 

ランサーが好戦的な笑顔で断言する。だが的外れだ。

 

「それは訂正する。魔術は使えるが、鍛えているだけだ。男子の嗜みだろう。」

 

「ほう、それならその令呪はどう説明するんだ?」

 

さっき攻撃を回避した時にバレたのか。

…なんかもう面倒くさいな。さっさと殺して家に帰りたい。

遠坂さんが協力してくれたら勝てると思うんだが。…放心状態か。使えないな。

 

「………。」

 

「───なんてな。うちの主も二対一は避けたいのか、さっきから帰ってこいってうるせぇ。今日は見逃してやるよ。───ああ、そうそう。逃げようなんて考えるなよ。なんせ俺の主は世界を破壊する予定だからな。せいぜい頑張って止めてくれや。」

 

 

そう言い捨てて、ランサーは去っていった。

追撃しようと魔力を練っていたが、ついぞ隙を見つけることが出来なかった。

 

…これが聖杯戦争。

 

なんか強制的に参加が決められた感があるが、まず一つ解決しないといけない問題が出てしまった。

 

凄い笑顔で笑いかけてくる遠坂さんをどうしよう…。

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