鬼の体でFate   作:辺境官吏

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デッドオアアライブ


第十八話

──────穂群原学園。

 

ガス漏れ事故の多発や生徒の行方不明…そして近隣で殺人事件が起こったことにより部活動は禁止され、速めの帰宅が促されている。

それは教師も例外ではなく、藤ねえは家で宿題の採点をするといって早々に帰宅していった。

 

 

───夕刻。逢魔が時。

 

 

「───美綴が行方不明?」

 

「えぇ、そうよ。」

 

生徒の気配がしなくなった教室で遠坂と情報交換をする。

残念ながら慎二は学校を休んでいたが、遠坂の方は桜に接触して情報収集に成功。

なんでも最初は話そうとしなかったものの、聖杯が呪いの窯になっていることを伝えたところ、慌ててライダー…メデューサを召喚したことを教えてくれたらしい。

桜自身は聖杯戦争に参加する気はなかったが、祖父の間桐臓硯の命令で召喚させられ、今は慎二にマスター権限を譲ったとのこと。その慎二は今は家に帰っておらずどこに行ったのかも分からないとのこと。

そして───周りに危害を加える前に止めて欲しいとのこと。

 

「…士郎は、綾子と慎二が口論をしていたのは知ってるかしら。」

 

「それなら桜に聞いて知っている。弓道部のトラブルだろ?慎二が1年男子に八つ当たりをして、それを咎めた美綴と喧嘩になったって話だ。」

 

「そうね。そして綾子が最後に目撃された時に一緒にいたのが慎二らしいの。」

 

それは───ほとんど黒だな。わかりやすい。

武力を手にいれて調子に乗った慎二が美綴を害する可能性は…低くはないだろう。癇癪持ちだしな。

問題は慎二が今どこにいるかだが…あいつの交友関係なんか知らないぞ。

 

「───美綴のことは気になるが、闇雲に探しても埒があかない。幸い、行方不明ということで警察も動いているらしいし…まずは出来ることからすべきだ。」

 

美綴は可愛くて男らしくて話しやすくてスタイルも良かったから、かなり好きだったんだが。

もし死んでいるような事があれば慎二を拷問しよう。別に慎二が犯人でなくても構わない。八つ当たりしよう。決めた。

 

「出来ること……結界の基点潰しね。」

 

それも一つのプランだ。

だが俺はもう一つのプランを提案したい。

 

「あるいは───間桐邸に襲撃をかけるか。屋敷が燃えれば出てくるだろう。」

 

「…ずいぶん過激なのね。」

 

戦争にしてはかなり穏やかだと思うんだが。

間桐邸は周囲の家とも距離がある。延焼もしないだろう。

 

「あそこは桜以外腐りきっているからな。ちょうどいい消毒のチャンスだ。今なら言峰神父が誤魔化してくれるしな。それに間桐は令呪を開発した家なんだろ?そんな危ない家は潰しておいた方がいい。」

 

「待って。慎二は確かに嫌な奴だけどそこまで悪質じゃないわ。それに桜の家族を──」

 

「───何を言ってるんだ?慎二は推定殺人犯だし、桜の心臓に寄生している奴なんて消毒した方がいいだろうに。」

 

「────え?」

 

「む。」

 

………ああ、なるほど。遠坂は視えていないのか。だから気づかない。

桜の中にもう一人いることを。腐った魂の人間が寄生していることを。

 

「桜の心臓には間桐の………誰だか知らんが、腐った魂が寄生している。方法は分からないが、どうせ碌な手段で寄生したんじゃないだろう。俺なら燃やせるが、桜の体にダメージが出る可能性がある。遠坂なら治せるか?」

 

「───あの妖怪爺ッッッ!!!」

 

「………。」

 

…急に大声を出さないで欲しい。まあ怒るのも理解できるが。

 

「…遠坂、冷静になれ。こういう時こそ冷静にだ。深呼吸しろ。深呼吸だ。………落ち着いたか?……話しながら思ったんだが、さすがに夕暮れに間桐邸に襲撃をかけると目立ちすぎる。夜に実行するということでいいか?桜の体に寄生している奴は俺が対処するから遠坂がフォローしてくれれば問題解決だ。」

 

「───ふぅ。ありがt『キャーーーーーー!!!』───!!」

 

─────女性の悲鳴。距離はそう遠くない、学園の敷地内。

既に遠坂は悲鳴の元に向かって走り出している。反応に優れている。俺も走れば追いつけるが………罠だろうな。

仮に俺が一般人を襲う場合、悲鳴を出す猶予は与えない。それは他のマスターやサーヴァントも同じはず。つまり、意図的に悲鳴をあげさせたということ。…何のために?決まっている。マスターを引き寄せるため。…これは釣りだ。

 

「…とはいえ放置すると同盟関係に罅が入る、か。」

 

アーチャーも監視しているはずだから遠坂が今すぐ危険というわけではないだろうが…。

遮蔽物の多い場所に逃げ込まれたらアーチャーの援護が間に合わない可能性もある。

 

「覚悟を決めろ俺。…行くぞ。」

 

踏み込み───加速。

リノリウムの床を踏み砕き───一瞬後には、倒れ伏す女生徒を介抱する遠坂にたどり着く。

 

「───死ぬのか?」

 

ごっそり生命力が削られている。このまま放置すれば間違いなく死ぬだろう。

 

「…そんなことさせないわよ。大丈夫、この程度なら手持ちの宝石で何とかなるわ」

 

「そうか。宝石魔術は万能だな。それなら俺は───むッ!」

 

 

 

───左方向から飛来物。でかい釘状の金属物。鎖がついている。脅威は全く感じない。

 

 

釘を回避した場合…遠坂の顔面コース。つまり回避不可。

焼却…可能。だが逃走される可能性は高い。

被弾…可能。だがこの体に釘が刺さるとは思えない。

迎撃…可能。後の先を取る。───決定。

 

既に覚悟は決めてきた───瞬殺を狙う。

 

 

 

「──────顕現開始」

 

 

其れは世界を侵す魔力。肉体を新生させる異次元の強化。

体内に吹き荒れる炎の嵐。それを一切漏れることなく内に留める。

無様に熱を漏らしていた幼い頃とは次元が違う。

周囲を巻き込まない───これが俺の成長。

 

 

───飛来する釘を掴み取り、全力で投げ返す───。

───一瞬後──足元の魔力を爆発させ───突撃する。

 

 

「───死ね。」

 

 

─────────着弾。

 

ドォオォオオオオオオン───!!

 

逃げ場のない運動エネルギーが炸裂する。爆発する森林。遅れて届く衝撃破で周囲の木々が抉れ飛ばされていく中──猛烈な勢いで血をまき散らしながら吹き飛ばされる紫のボディコン女を視認。

 

 

「───逃がしはしない。」

 

 

───追撃する。

 

───狙うは脳みそ。一撃で殺す。

 

右手に極限まで魔力を集中させ─────掌握。

 

全身の筋肉は膨張と収縮を繰り返しつつ肥大化し、髪の色は赤から金へ、健康的だった体色は肌色から赤色へ変貌する。

 

足元に魔力放出し、未だ吹き飛ばされているボディコン女へ飛翔───さながらミサイルのように炎を撒き散らしながら高速接近。

 

左腕を前方へ伸ばし、右手を握りしめ腰のあたりに構え───。

 

力をためて──ためて───ためて───顔面を殴りつけるッッッ───!!!

 

猛烈な勢いで振りぬかれた右腕は女の顔面に吸い込まれ───。

 

 

───ボッ!!

 

 

───一切の抵抗を許さず、振りぬかれる───!!

 

上半身は跡形もなく消滅し、下半身は血をまき散らしながら吹き飛び───。

 

 

「───追加だ!」

 

 

空中で左手指から5本のガンドを放つ。荒れ狂う魔力と炎が下半身に命中ッ!!

 

───大爆発を起こし───下半身の消滅を確認。

 

遅れて届く衝撃波の中、地面に着地し───周囲を警戒。

 

 

「─────。」

 

 

───引き続き周囲を警戒。索敵。魂魄探知。

 

 

「────。」

 

 

────敵の反応なし。周囲に気配なし。

 

 

「────。」

 

 

────違和感なし。…もう大丈夫だろう。

 

 

────顕現中止。

 

隆起していた肉体が音を立てて、元に戻っていく。

 

周囲は木々がなぎ倒されて発火しているが、校舎はちょっと炙られた程度で───無事だ。

 

遠坂は───敵の第二陣を警戒してか、必死な顔で魔力壁を張っている。

 

だがもう問題ない。

 

問題は───騒ぎを聞きつけて集まる人間だ。

 

 

「───とりあえず逃げよう。」

 

 

遠坂は回収していくべきだろうか。

 

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