鬼の体でFate   作:辺境官吏

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例えば、ヒグマを倒すには。


第三話

「士郎の強さを把握したい。」

 

切嗣とともに生活をはじめて一週間。

 

特に問題は起きていない。無事、小学校への編入手続きも終わり、来月からは通学する予定である。

 

外見年齢が8歳ぐらいなので、小学校2年生に編入する予定だ。

 

死にたい。

 

「この一週間色々やってきたが、士郎の底が全く見えない。そこでだ、山に行こう。」

 

そうなのだ。

 

体が資本という指導のもと、走り込みや、腕立て伏せをしてきたが、この体………自重トレーニングや持久走程度ではまったく疲れないのだ。

 

本気を出せば、一晩中でも自動車並みの速度で走り続けることが出来るし、試しに切嗣に全力で殴ってもらったが痛くも痒くもない。

 

切嗣曰く、肉に包まれた鉄の塊を殴ったような感触とのこと。もう二度と殴りたくはない、とも。

 

もうこれ無敵じゃない?と思った自分は悪くあるまい。

 

一般人相手ならたぶん、一万人いても負けることはないだろう。

 

切嗣に確認してもらったところ、自分の魔術属性は火と地。起源は鬼だそうだ。

 

これ絶対、閻魔大王の仕業だよな。体を頑強にするために地獄の鬼をベースにしている気がする。絶対そうだ。

 

知らず知らずのうちに鬼になってたとか笑えない。

 

「士郎。これは真剣な話だからよく聞いて欲しい。見たところ大丈夫なようだが、混血…鬼には反転衝動があるといわれている。これは好いたものを壊してでも手に入れようとする衝動のことで、要するに本能のまま暴れるようになってしまうというものだ。いつ鬼の力が覚醒してもいいように、士郎はこの力をコントロールしなければいけない。」

 

これはたぶん、大丈夫な気がする。何というか、そういう衝動が全くないのだ。そもそも先祖返りじゃないし。

 

「そこで山だ。人目のない山なら、僕も遠慮なく士郎をしごけるし、戦争のノウハウを教えることもできる。」

 

8歳児を虐待をする鬼がいた。

 

「勘違いしているようだから言わせてもらうが、士郎は肉体的には強いが、それだけだ。倒すことは難しいが、訓練を積んだ者なら逃げるぐらいは出来るだろう。それに、現役時代の僕なら簡単に殺れた。今もまぁ、不可能ってわけじゃない。」

 

「殴ってもダメージは0だけど?」

 

「殴るだけが戦いじゃないさ。むしろ魔術師同士の戦いに真正面同士の戦いなんて無いに等しい。そのほとんどが絡め手で、気づいた時には詰んでいるって寸法さ。例えば、僕の切り札に起源弾というのがある。これは切って嗣なぐ僕の起源を利用した弾で、命中した相手の魔術回路をバラバラに繋ぎ合わせて体の中から破壊する効果がある。」

 

なんてエグイ攻撃なんだろうか。体中から血が噴き出して死ぬ様子を幻視する。

 

「士郎の体に拳銃が効くかどうかは未検証だけど、他にも毒物や筋弛緩剤なんて手もある。罠も効くだろうし、僕には使えないけど、四肢を操るという手もある。」

 

なるほど。確かにその通りだ。自分の体に毒が効くかどうかはともかく、肉体的に強いなら肉体以外を攻撃すればいいだけの話だ。………これは盲点だったな。自分が強すぎる体を持っているせいで、知らないうちに傲慢になっていたようだ。切嗣には感謝しないと。

 

「そこいらも山で試そう。」

 

「えっ」

 

「ん?」

 

「試すって?」

 

「さすがに街中で発砲は出来ないからね。結界を張りなおせば別だけど、山に行くのが手っ取り早い。」

 

8歳児を撃つ鬼畜外道がここにいた。

 

自分から頼んだとはいえ、スパルタすぎやしないだろうか。

 

「さすがに僕も普通の8歳児にこんなことしないよ。ただ、士郎は普通じゃないだろう?」

 

確かに普通じゃないが、もともと一般人なんですが…。

 

「それに自分の力をコントロールするんだろう?今の士郎を一人にして死ぬわけにはいかないからね。申し訳ないけど、スパルタにさせてもらうよ。」

 

「…気づいていたのか。死期が近いこと。」

 

「もちろん、自分の体だからね。だからまあ、心残りは無くしておきたい…できるだけ、ね。」

 

そういう理屈なら仕方ない。

 

すべて自分のためにやってもらっていることだ。ここで抵抗するのは男じゃないだろう。

 

そろそろ覚悟を決める時だ。

 

「分かった。自分を一人前の戦士にして欲しい。」

 

「任せてくれ。なんせ素材がいいからね。あとは知識と経験を補うだけで飛躍的に強くなれるさ。僕のすべてを士郎に託すよ。」

 

 

 

 

***

 

 

 

山での訓練は苛烈を極めた。

 

銃で撃つ、マシンガンで撃つ、手りゅう弾を至近距離で爆破される、スタングレネードを耳元で爆破する、ナイフで切りつけられる、体に悪そうな薬を飲まされる、寝ている間に埋められる、崖から落とされる、改造スタンガンで攻撃される…などなど。

 

「すごいね。ここまでやってダメージがほとんど無いなんて。」

 

「この鬼め。加減はないのか。」

 

「どこまで耐えられるかを先に調べないと、その先の鍛錬が非合理になるからね。必要なことだよ。」

 

こういう時の切嗣は少し怖い。いつもこちらを気遣って優しい対応を心掛けているように見えるが、これが本来の素なのだろうか。

 

「これは推論になるけど、おおよそ個人が所有できる兵器では士郎を傷つけることは出来ないだろう。毒にも高い耐性を有しているようだし、ひとまず安心だね。とはいえ、アヴァロンでぶん殴った時に痛がっていたように、強い神秘を持つものであればダメージは通るようだ。本来であれば、回復性能も調べたかったんだが、まあそれは次回以降に持ち越しかな。今のままの装備だと傷つけることも難しい。」

 

「つまり事実上、無敵だと?」

 

「一般人に対してはね。試すわけにはいかないが、おそらく電車に轢かれても大丈夫なんだと思う。ただ、魔術師相手だとそうもいかない。聖杯戦争だと敵の全員が神秘を帯びた装備を持っているし、そもそもサーヴァントは神秘の塊だ。」

 

そうだ、何を勘違いしていたんだ。仮想敵は一般的じゃなく、常識外の化け物だった。

 

「士郎が60年後、聖杯戦争に参加するとは思えないが、備えをしておくのは悪くない。以前にも話したが、世の中には力だけならサーヴァントを上回る真祖や使徒だっているんだからね。士郎が並大抵の使徒に負けるとも思えないが、死徒二十七祖は別格と言われているし、闇に潜む魔は多い。一般的に強い力には、厄介事が集まると言われているしね。」

 

「………。」

 

「まあ、そのあたりは追々対策していけばいい。幸い、強大な力を持っているわりに目を凝らさなければ士郎の力は分からない。いま知り合いに魔力封じのお守りを発注してるんだが、ひとまずそれで凌げるはずだ。」

 

「………。」

 

「士郎。聞いているかい?」

 

「もちろん聞いている。切嗣の方針が正しいと思うし、文句なんてない。ただ…切嗣には起源弾という技があって、サーヴァントには宝具なんてチートがあるという。自分にも何か作れないかと思って。」

 

「………既にその肉体が宝具といえば宝具だと思うんだけど。そう思うのも無理はない。幸い、魔力も豊富にあるんだし、今後はそちらも伸ばすようにしよう。何かピンと頭に思い浮かぶものはあるかい?こういうのでは、案外そうした発想もバカにできないんだ。」

 

「特に思い浮かばない…。」

 

前前世でみた漫画を参考にしようにも、もうほとんど覚えていないしなぁ。

 

「そんなすぐに思い浮かぶようなもんでもないさ。こういうのは自分の特性と合わせた方がいいし、今はまだ基礎を伸ばした方がいい。」

 

自分の特性って何だろうな。

 

鬼というのが自分の起源だが、鬼、鬼、鬼ねえ。金棒持ってるとか、大酒のみとか、人間を喰うとか。有名なのは酒呑童子とかか。うーん、うろ覚えだな。

 

前世で一般人であった自分に戦いに見合った特性があるとも思えない。

 

火と土というのもなあ。すぐ思い浮かぶのは溶岩だけど、溶岩でどうやって攻撃するんだろう。

 

あとは…ああ、そういえば蛇も自分の特性に入るのかな。

 

ずっと蛇の寿命で生きてきたわけだし、友人にはよく爬虫類顔(別に不細工ではない。念のため。)と言われてたし、生まれつきスプリットタンのせいで揶揄されたこともあったか。

 

どうでもいいことだから忘れていたけど、いま思えばどうみても蛇の寿命が影響してるじゃねぇか。

 

この体にも影響しねぇだろうな。。。

 

蛇と鬼ねぇ。共通しているのは酒好きなのと、その酒によって命を落とすことか。

 

・・・この線で考えてみるか。

 

「士郎。僕は一度、装備を新調するために山を降りるけど、どうする?」

 

想像以上にこの体は野生を苦にしない。特に山での生活に不都合がないが、さて・・・。

 

「んーーー。残ることにするよ。ちょっと試したいこともあるし。」

 

「わかった。一応言っておくけど、過度に危険なことはしないようにね。」

 

「わかってるよ。行ってらっしゃい。あ、一応携帯電話は置いていってくれる?連絡とれなくなったら困るから。」

 

「そのつもりだったよ。僕の連絡先は電話帳にいれてるからあとで確認してくれ。使い方は・・・わかるよね?」

 

「いまどき携帯の使い方がわからない奴なんていないよ。」

 

どんなマヌケだそれは。小学生でもわかるぞ。

 

 

 

さて、手には携帯。あたりには人の気配はない。

 

やること?

 

一つしかないだろう。幸い切嗣は金持ちだ。従量課金制?フ、我が父の財力をなめるなよ。

 

 

 

 

………Xビデオまだ無かったよ。

 

 

 

 




昔ですからね。
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