冷やしワカメ始めました。   作:ブラッ黒

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気が付いたら、ひと月経っていた……
打ち切りも考えましたが……

まぁ、とりあえず


重複する恐怖

僕の名前は間桐(まとう) 慎二(しんじ)

まぁ、自分でも言うのは何だけど、容姿端麗、頭脳明晰、おまけに魔術師の血まで引いている生粋の『選ばれし存在』なのさ。

普通なら、僕と話すことさえ憚られる馬鹿どもに対しても、にこやかに過ごす僕……

ああ、なんて僕は慈悲深いんだろう?なんて僕は完璧なんだろう……

思わずうっとりしてしまう……

さてと、この物語は僕の華麗にして、優雅な日々を綴ったものだ。

庶民の君たちは、感涙に目を濡らしながら読むといいよ!

 

 

 

 

 

カリ……カリ……カリカリ……

 

慎二が自室の机の上で何かをしている。

常に余裕を持つ彼には似つかわしくないほどの真摯な、あるいは鬼気迫る表情だった。

 

カッ、カッ、カッ!

 

「ん?」

扉をひっかく様な音に気が付き、慎二が一時的に手を止める。

そして、その音のする扉の方を見ると同時にドアノブが捻られ茶色の毛が姿を現す。

 

「わふぅ!わっふ!」

その毛の正体は、慎二のサーヴァントのライカだった。

何かを求める様に尻尾を振り、甘えてくる。

 

「ライカ……そうか、散歩の時間か」

そう言えば失念していた、と慎二が時計を見て気が付く。

 

「わふ!わふん!!はっは!!はっは!!」

『散歩』の単語を聞いて、ライカがますます興奮気味に尻尾を振る。

嬉しそうにその場でくるりと回る。

だが――

 

「ごめんな、どうしてもやらなくちゃいけない事が有るんだ……

散歩はまた今度にしてくれないか?」

申し訳なさそうに、慎二がライカの頭を撫でる。

 

「くぅ~ん……」

慎二の言葉を聞いたライカが、悲しそうに尻尾を丸める。

 

「な、いや……これは僕の都合だ、サーヴァントは主人の考えに従うものだ!」

慎二はそうはいう物の、結局は自身の都合、その都合にライカを巻き込んだ事に罪悪感を感じる。

その時――

 

「兄さん。お茶を持ってきましたよ。

すこし休憩にしましょうよ」

 

「ひぃえ!?」

そこに桜が恨めしそうな顔をしてこっちを睨んでいる。

その手にはティーカップを乗せたトレイを持ってくる。

 

「あ、ああ……そうだな……」

一瞬だが、凄まじ殺気を感じた慎二は疲れた様子でうなづいた。

 

 

 

 

 

遡る事、数時間……

 

「それじゃ、今日はここまで!みんな解さーん!」

教卓の上で、藤村先生がボードを掲げて皆に伝える。

その言葉に反応して、クラスの生徒たちが続々と解散していく。

帰りに何処かへ遊びに行く、帰りにコンビニに立ち読みに行く、部活動に行く……

様々な会話をしながら、教室を出ていく。

 

「ふっ、さて僕はどうするかな……」

慎二は久しぶりに来た学校の、雰囲気に少し疲れていた。

ライカを召喚し、額に出た令呪。

その令呪を隠すために、髪が伸びるのを待ったせいで、ブランクが出来てしまった。

今は伸びた髪と、ファンデーションで令呪を誤魔化している状態だ。

 

「兄さん……」

 

「ひぃえ?!」

突如聞こえてくる聞き覚えのある声に、慎二の背筋がビクリと震えた。

 

「桜……突然来るなよ……」

慎二が驚くのも無理はない。

ここは桜のクラスとは当然違う。

当たり前だが距離もある。

距離も時間も飛び越えて、ほぼ瞬間移動的に桜がここに現れたとなると、このリアクションも無理はない。

 

「ど、どうやってこの時間でここまで来たんだ!?」

 

「ガンバりました」

 

「そ、そうか……」

何でもないと言いたげな桜の言葉を聞いて、慎二が静かに汗を流した。

 

「兄さん、久しぶりの学校ですから疲れたでしょう?

一緒に帰りましょうよ。

今日は部活もお休みするつもりですから」

 

「そ、そうだな……」

桜が慎二にプレッシャーをかけてるく。

慎二はそのプレッシャーに屈するしかなかった。

 

「あ、間桐君ちょっと待って!」

その時、慎二が藤村先生に声を掛けられる。

 

「あ、藤村先生。こんにちは」

 

「あら、桜ちゃん、こんにちは。

ちょっと待ってね、連絡事項を手早く済ませちゃうから」

 

「連絡事項?」

慎二の疑問にうなづき、藤村先生は一枚の紙を取り出し慎二の前で読み上げる。

 

「えーと、間桐 慎二君。君は無断欠勤諸々に、それに追従する形でも提出物の未提出、更にテストを一回丸々サボった結果、現在全教科0点扱いです。

素行不良に成績不振で、このままだと――」

 

「は?」

慎二は我が耳を疑った。

テスト全教科0点扱い、おまけに不良のレッテルまで張られている。

そして極め付けには――

 

「このままじゃ、留年です」

 

「りゅ、りゅうねぇん!?」

慎二がまさかの自体の頭を抱えた。

 

 

 

 

 

そして、再び現時間へ……

 

「ふぅ……落ち着け落ち着け、間桐慎二……

僕は成績優秀者だ……これ位、常人に対しては(てい)の良いハンデの様な物だ……

第一、まだ留年と決まった訳じゃない!」

 

「そうですよね、溜まっている課題を全部クリアして、明日のテストの補習でキチンと点を取れば問題ないんですよね」

 

「ああ、そうだ!その通りだ!

僕なら、どっちも余裕に決まってる!!」

そう言って慎二は、先生から出された救済措置をクリアするべく、今まで溜まっていた課題の山に踊りかかった。

 

「あうん……」

慎二の必死な様子を見て、ライカは自体を察したのか黙って部屋を出ていった。

 

「兄さん、その、頑張って下さいね?」

 

「お前に言われなくても、分かってるんだよぉ!!

勉強の邪魔だ!!出てけ!!」

桜の応援も今の慎二には火に油を注ぐ結果にしかならない。

持ってきた紅茶とお菓子を置くと、慎二に背を向けた。

ここからは慎二だけの戦いだ。

桜は自分に出来る事が無い事を理解していた。

自身の兄の健闘を祈り、桜が静かに部屋を後にした。

 

 

 

 

 

「ああ、可愛そうな兄さん……まさか、こんな事態になるなんて……」

自室に、戻った桜が口に手を当て心を痛めた。

傍らには、サーヴァントのライダーがライカを抱いている。

密室に二人きりにさせたら、このケダモノは何をするか分からないので、桜が連れて来た。

 

「いえ、すっかり忘れる本人が愚かなのでは?

それに――――」

ここは敢えてライダーの名誉の為に言っておく。

ライダーは決して悪意や他人を陥れようとした訳でない、と明言しておく。

ただ、つい、ついうっかり口をついて、『その言葉』を言ってしまっただけなのだ。

 

「ワカメが留年すれば、もう一年一緒に通えるのでは?」

 

「はっ!?」

瞬時に桜の動きが止まる。

 

「………………………………兄さんに、そんな事させれる訳ないじゃない!!」

 

「非常に長い間、考えましたね。

そりゃあもう、長い間……」

 

「わ、私が自分の欲望を優先させて、兄さんを不幸にさせる訳ないじゃない!!」

 

「世界一信頼できない言葉ですね」

ライダーが何とも言えないような口調で話す。

 

「兄さんを応援してあげたい……

けど、こればっかりは私は何もしてあげられない……

ああ、なんて私は無力なのかしら……

けど、兄さんなら大丈夫よね!

何だかんだ言って、兄さんは頭が良いし、その上スポーツも出来るし、家もお金持ちだし、ルックスもびっくりするほどのイケメンだし!

欠点なんて万に一つもないのよね」

うっとりと言わんばかりに桜が語る。

 

「…………実は、ツンデレ爺に洗脳とかされていません?

こう、蟲の調教と同時に……」

 

「される訳ないじゃない!!

お爺様は言っていたわ……『蟲たちとの強固な絆こそが間桐の真の魔術じゃ』って!

そんなお爺様が洗脳なんて卑劣な手段を使う訳無いじゃない!!」

珍しく桜が怒りの感情を見せた。

 

「あの妖怪ジジイそんなマンガの主人公っぽいこと言ってたのですか!?」

到底イメージが出来ない、不似合いなセリフを思い浮かべながらライダーが驚く。

桜はそんなライダーを一瞬不満そうに見たが、すぐに無視して言葉を続ける。

 

「確かに初めて会った時も、兄さんとはうまくいかなかったわ……

間桐の魔術の継承関係で、兄さんに恨みを買ったこともあったし……

けど、それでも兄さんはなんだかんだ言って優しいのよ!?

もうね、もうね?私が、まだ9歳の頃――」

 

(あ、コレ長くなる奴だ……)

ライダーが直感A的な感覚で、この後起こりうる桜の思いで物語ラッシュに覚悟をした。

 

30分後……

 

「それでね?その時、兄さんはね?一見こっちを気の毒そうに見ているだけなんだけど、私には分かるわ!

兄さんの心の中では、きっと、いいえ、必ず私を思いやる心があったのよ!

けど、ここは敢えて心を修羅にして私を見放したのよ!

その時は私も絶望しかけたわ……けど、兄さんの真意を私なりに考えて分かったのよ!

兄さんは――――」

 

更に1時間後……

ライカが耐えられなくなり、ライダーの手から逃げ出した。

 

「それでね?それでね!!兄さんのすごい所は――」

 

(帰りたい……)

だが、桜はライダーに話している。

勝手に主人を置いて何処かへ行く訳には行かないのだ。

 

更に1時間後……

 

「もうね?何度も心の中で呼びかけるの!

兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんにいさんニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンニイサンって――」

 

「あぁああああああああ!!!発狂するわぁあああああああ!!!!」

ライダーが精神に対する明確な汚染を、認識してその場は危険だと判断して素早く窓を開け屋敷を飛び出した!!

 

「あ、ライダーが!

……どうしたのかしら?

きっと兄さんと云う存在の尊さに耐えられなくなったのね!

ライダー、強く生きて……!」

桜は確かなライダーとの絆を感じて、拳を握った。

義妹は常に一人、義兄を思い、部屋の中で心を打つ。

 

「あ、けど、兄さんは渡さないんだから!」

 

「もうやだ、この家」

後ろから聞こえる言葉に密かにライダーが涙した。

 

 

 

 

その時慎二の部屋にて――

 

パッリーン!!ゴロゴロ、ゴロ!!

 

「な、ななな、なんだ!?」

勉強する慎二の部屋に窓を突き破り、突如燃え盛る謎の物体が転がり込んでくる!!

そして、ソレは床で火を大まかに消すと立ち上がった。

 

「やぁ、間桐の少年よ、元気か?」

 

「あ、あわわわわ……」

突如窓を突き破り、姿を見せた男に慎二が驚く。

所々に漂う焦げ臭いにおいに、首から掛けたロザリオ。

言峰教会の元神父、言峰 綺礼その人だった。

 

「と、突然どうしたんだよ!」

 

「うむ、夕飯の買い出しを頼まれ、その金で食事を済まそうとした所、怪しげな優雅な男に突然火を付けられてな。

慌てて地面を転がり、逃げて来たのだ」

確かに綺礼の服は所々燃え、髪の毛が焦げている。

 

「へ、へぇ……」

少し前に凛が追っていた優雅仮面の事を思い出し、慎二がため息をついた。

まさかまさかの、よりによって一番忙しいタイミングで一番会いたくない相手との遭遇。

 

「む、紅茶か。すまないが頂くよ?」

 

「あ、この――!」

慎二の返事を聞く前に、言峰神父は紅茶をポッドごと受け取ると自身の頭から掛けた。

 

「ふぅ、消火完了だ……」

 

「…………」

自身に紅茶をかけて消火という離れ業を見せられ、慎二が何とも言えない気分に成る。

 

「いやー、助かった。この恩は忘れないぞ?」

 

「僕はお前が中華料理屋でしようとしたことを忘れないよ」

 

「さて、何の事かな?

それよりも……学業か?何やら忙しそうにしていたが……」

言峰神父が慎二が手にペンを持っているのに気が付く。

 

「別に何でもないよ!邪魔だから出てってくれ!」

そう、明日までに出す課題とテストが有るのだ。

この厄介者に構ってはいられない。

 

「そういうな、少年。どれ、私が多少手ほどきしてやろう。

なに、高校生程度の学問など簡単に――かんたん……に……む?

な、なんだ?体が……」

突如言峰神父がふらつきだした。

そして見る見るうちに目がトロンとしてくる。

更にそのまま、慎二を押し倒す様に倒れこんだ。

 

「な、何が起きてるんだよ!?

僕にそんな趣味は無いぞ!?」

言峰の襲来、混濁と次から次へと襲い来る状況に慎二が半場パニックを起こす。

 

「兄さん大丈夫ですか!?そ、そんな……!」

その時、遂に桜が姿を見せる。

 

「さ、桜ぁ!」

 

「兄さん!!何をしているんですか!?

私という物がありながら!!

いいえ、兄さんが誰を侍らそうと勝手ですが、人の道に外れるのは認めませんからね!!」

慎二の手を取り、桜が何や柔らかい物に触らせる。

 

「ね?柔らかいでしょ?ごつごつした男の胸筋とは違うでしょ?

大丈夫です、お爺様からはOKはもらってますから!!

好きなだけ欲望をぶつけてくださいね」

 

「おい!?どこを触らせ――」

 

「こんなの、こんなの兄さんには要らないですよね!!

私が、私がポイしちゃいますね!!」

狂気的な笑みを浮かべ、桜が気を失った言峰神父の足を掴む。

そして――――

 

「ひえ……」

桜が足を掴んだまま横に振り回し始めた。

俗にいうジャイアントスイングという技で――

 

「お帰り――ください!!」

そして、叩き割って来た窓の外に神父を捨てた。

数瞬の後ゴシャっという嫌な音が聞こえた。

 

「こ、ころし――」

 

「あの神父はこれ位じゃ死にませんよ」

桜がたった今、場合によっては殺人犯に成りかねない行為をしたというのに、全く気にした様子の無い爽やかな笑みを浮かべた。

 

「じゃ、兄さんお勉強頑張ってくださいね」

そのまま桜は部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

「あの神父の紅茶の匂い……

兄さんの分を飲んだんですね?

失敗しちゃったなぁ……」

服の内ポケットにある、睡眠薬の残りを指先で撫でながら桜が階段を下りる。

紅茶を飲んで夜までぐっすりでも、桜にとっては問題ではない。

 

「兄さんには無事進学して欲しいけど……

留年したら、したでもう一年通えるからいいか。

あ、お買い物行かなくちゃ」

桜はスキップをしながら買い物に向かった。

用は桜にとって、慎二の進学はどちらに転んでも構わなかったのだ。

 

 

 

 

一方その頃

「あ、ああ……ああ……」

目の前に広がるのは絶望――

慎二の教科書&ノートの上を濡らす赤い液体。

さっきの衝撃なのか?それとも、気が付かない内に倒してしまったのか。

紅茶が勉強道具全てを、良い香りに染めていた。

 

 

 

「ああ、もう終わりだ……僕はもう、終わりだ……」

すっかり絶望した慎二の脳裏に、これからが浮かぶ。

もう一年する事に成る3年生。

後輩と呼んでいた生徒たちの同じクラスになり、クラス内では微妙な空気になるに違いない。

クラスメイトからなぜか「さん」付されたり――

いや、寧ろ後輩だった奴に呼び捨てにされる可能性もある。

日夜クラスの中では「あれ、間桐先輩って――」「あ、ほら、留年したから妹と同じクラスに――」

 

「うわぁあああああ!!!いやだぁああああああああ!!!

あぁあああああああ!!!死にたい死にたい死にたい死にたい!!」

 

ピンポーン!ピンポーン

 

「ああああ、もう!!

こんな時に来客だし!!桜!!桜居ないのか!?

さっさと出ろよ!!チぃ!アイツ肝心な時に!」

苛立ちながら慎二が立ち上がり、玄関へと向かっていく。

今の慎二はほぼ留年という、精神状態を受けて非常にやけっぱちになっているのだった。

 

「はい、こんにちは!!

って、衛宮か。なんだよ?

ひっしにあがいてる僕を笑いものにしに来たのかよ?」

露骨にトゲが言葉に混ざる。

だが、やって来た士郎はもう慣れっこなので気にした様子はない。

 

「どうした、なんかあったか?

ま、良いや。

そう言えばお前学校しばらく来てなかったろ?

だからさ、ほら、その間の俺のノート、良かったら――うわっ!?」

 

「え”、え”み”や”ぁぁぁぁ……」

 

「なにも、泣く事ないだろ!?」

急に泣き出す慎二を見て、士郎が驚く。

ギリギリの更にギリギリ、というか最早留年を覚悟した慎二に伸ばされる救いの手。

地獄で仏とはまさにこの事。

慎二が非常に大事そうに士郎のノートを受け取った。

 

「ま、まぁ、頑張れよ?

忙しいだろうから、もう帰る――っと、忘れてた。

コレ、差し入れだ。気が向いたら食べてくれよ」

若干の困惑を残し、士郎は慎二に味ごはんのおにぎりを渡すと帰っていった。

 

「えみやぁぁあああああああ………

お前はほんとにいいやつだよぉおお……」

慎二は士郎の姿が見えなくなるまで、ずっと感謝の言葉を述べていた。

 

 

 

 

 

一週間後……

「で、結局なんとかなったのか?」

 

「ふっ、無論だ。僕が本気になればあんな物容易いよ」

余裕だね、と言いながら慎二が髪をかき分けた。

 

「ほんとか~?俺のノートが無けりゃ結構つらかったんじゃないか?」

 

「余裕、余裕だって!

けど、その……お前の、ノートのおかげで、点が取れた部分もあるからな。

そこは、そのあれだ……感謝しない事もない……」

ごにょごにょと最後の方は言葉が小さくなって、聞き取れなくなって行く。

 

「なんだって?」

 

「な!何でもない!!

そんな事より、僕の進級確定祝いをなんかさせてやるよ」

 

「なんかさせてやるって、普通逆じゃないか?

そもそも、進級ってよほどの事が無い限り……」

 

「うっさいなもう!!ほら、さっさと祝えよ!!」

 

「分かった、分かった。あ、そうだ、夕飯家で食えよ、ちょっといい物作ってやるから。

あ、その変わり、このまま買い物に付き合ってくれよ?

スーパーの特売玉子おひとり様2パックまでだから、慎二がいれば4パック買える」

 

「それって、僕のこと利用してるだけじゃないのか?」

やんややんや言いながら、二人はスーパーへと向かった。

 

「兄さん……男同士はダメですからね?」

少し離れた場所で、桜が忌々し気に士郎の姿を睨んでいた。




書いてるうちに文字数がかなり増えました。
う~ん、長いと読みにくいので6000字くらいを目指しているのですが……

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