冷やしワカメ始めました。   作:ブラッ黒

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うーん、一か月投稿がデフォに成りつつある現在。
出来れば、もっと早く書きたいなぁ……


アイの狂騒曲

僕の名前は間桐(まとう) 慎二(しんじ)

まぁ、自分でも言うのは何だけど、容姿端麗、頭脳明晰、おまけに魔術師の血まで引いている生粋の『選ばれし存在』なのさ。

普通なら、僕と話すことさえ憚られる馬鹿どもに対しても、にこやかに過ごす僕……

ああ、なんて僕は慈悲深いんだろう?なんて僕は完璧なんだろう……

思わずうっとりしてしまう……

さてと、この物語は僕の華麗にして、優雅な日々を綴ったものだ。

庶民の君たちは、感涙に目を濡らしながら読むといいよ!

 

 

 

 

 

目の前の男が慎二を見下ろす。

聞いた事の無い言語だが、なぜかその言葉の意味だけは分かった。

 

「我々は、かの国に負ける訳にはいんのだ。

必ずこの宇宙開発競争に勝利する必要がある。

たとえ競争に勝つ為に、どんな犠牲を払ったとしても……

お前にはその計画の礎となってもらう。お前の名は永遠に我々の中に刻まれる」

目の前の白衣の男が苦々しい顔を浮かべ、慎二を見下ろす。

その男の後ろで、様々な研究者らしき人物たちが慌ただしく働いている。

 

「おい、一体何をする気なんだ!?」

余にも物騒な物言いに、慎二が声を荒げるが誰も返事をしてくれない。

気が付けば体はがっちり拘束されており身動きも出来ない。

 

「カウントダウン、開始します」

 

「お、おい!?聞け、聞けってば!!」

慎二が必死になってその男に詰め寄ろうとするが、蓋の様な物が閉められまともに声も聴くことが出来なくなった。

 

「おい、おい!オイってば!!」

数秒後、慎二の乗るロケットが揺れ始める。

どうやらエンジンに点火された様だった。

 

「う、うぁ、うあぁあ、やだぁ、やだぁやだぁあああああああああああ!!!」

嫌がる慎二の言葉も他所に、ロケットは打ち上げられすさまじいスピードで飛び始めた。

凄まじい勢いのGが慎二の全身に掛かる!!

 

 

 

「うぅあああああ!!あぁあああああ!!!ぁああああああ!!」

凄まじい声と共に、慎二が自身のベットの上で飛び起きる。

 

「はぁー、はぁー、はぁー……あ、あっ……夢か……」

冬だというのに全身に汗をかいて、キョロキョロと自身の部屋を見る。

ちらりと時計を見ると、時刻は午前4時を僅かに過ぎた頃。

結構大きく騒いだと思ったのに、布団の上ではライカがいびきを立てて眠っている。

時折『わ、わっふ!あうぅるぅるん……』なんて寝言(?)を言ったりしている。

 

「犬も寝言を言うのか……いや、それよりも……

あー、なんて夢だよ……目覚め、最悪だな……

もう一回寝れるかな?」

ロケットに乗せられて飛ばされる夢なんて、初めてみた。なんて誰も居ない部屋でつぶやく。

 

「――兄さん私が添い寝しましょうか?」

 

「え……うゎぁああああああ!!??」

突如聞こえる桜声に、慎二が今度こそ飛び起きた。

誰も居ないと思っていた一人事に返事が来たのだ。

当然のリアクションである。

 

「さ、さささささささささくら!?お前、一体どこから!?」

今は夜中の4時だとか、部屋に入って来たのに全く気付かなかったとか、そんな事がどうでも良くなる衝撃に見舞われた。

 

「いやだなぁ、普通にドアからですよ?

なんだか目が覚めて、台所へ水を飲みに行った帰りです」

やけに生地の薄いパジャマを翻しながら桜が話す。

()()桜が起きていて、()()慎二の部屋の前を通りかかった時、()()慎二の悲鳴が聞こえたから飛び込んだらしい。

ずいぶんと嘘くさく感じるが、まぁ、そんな事もあるだろう。

 

「わっふ……?」

その騒ぎについにライカまでもが目を覚ました。

 

「さ、兄さん。兄さんが眠るまで私が添い寝してあげますからね?

同じ床の中で、お互いの体温が触れ合う距離で……さぁ、さぁ……」

ヤバイ目をしながら桜が、近づいてくる。

 

「ひぃ!!ら、ライカが居るから十分だ!

お前は自分の部屋に戻れよ。明日も学校だろ?弁当も作るんだろ?」

しっし!と慎二が手で桜を追い払う。

 

「兄さん……そうですね。私も戻ります。おやすみなさい……」

非常に、非常に残念そうな顔をして桜がうなづく。

 

パタン

 

そう言って桜は扉を閉めた。

 

「ふぅー、漸く行ったか……さて寝る……か」

慎二がベットに再度寝転ぶと、その衝撃で起きたのかライカが起き上がり慎二の首元か

ら布団の中に入って来た。

 

「寒いから入れろって事か?ったく……あんまり、毛を飛ばすなよ?」

文句をいつつも慎二が横になると、クローゼットからこちらを覗く桜と()()()()()

 

「ひぃえ!?」

一気に眠気が吹き飛び、慎二が跳び起きる!

 

「な、何してるんだ!?」

 

「あー、兄さんごめんなさい。部屋の外に出る気だったんですが、寝ぼけて兄さんのクローゼットの中に……すぐに、部屋に帰りますねー(チッ、バレたか……)」

小さく桜が何かを言って、部屋の外へ出ていった。

だが、何となくだがまだ部屋の前に桜が居る気がする。

 

「…………桜、いい加減にしないと怒るぞ」

ドアに向かって声をかけたら、どたどたと慌てた足音がして去っていった。

 

「……まったく……あいつは、気配遮断スキルでも、持って……い、る……の……か……」

再度、眠気がやって来てそのまま眠った。

 

そして数時間後――

 

 

 

 

 

ちゅんちゅん、ちゅんちゅんでちぃ~

朝に日差しとスズメの声で慎二が起きる。

だが、爽やかな目覚めとはいかない。

 

「ん~、ヘンな時間の起きたなぁ……ああ、夢のせいか?

体がなんかベトベトする……」

体にまとわりつく不快感で、またもや目覚ましより速く起きてしまった様だ。

 

「……ん?なんか、ヘンな臭い……甘い様な、刺激の様な……?」

 

「くぅん……」

その時、慎二の前にライカがベッドから降りて、お座りをする。

そして申し訳なさそうに顔を伏せる。

 

「ん?なんだ、お前……?

その顔は――おい、まさか……」

嗅ぎなれない匂い、ベタベタとした感覚、そして申し訳なさそうにするライカ――

ふと、慎二がベッドを見ると布団にはデカデカとしたシミが広がっていた。

そしてそれは、慎二が今着ているパジャマにも……

 

「ライカー!!トイレはシートでしろぉおおお!!」

 

「あうぅうぅぅぅぅぅぅん……」

申し訳なさそうにライカが、うずくまり頭を前足で押さえた。

 

 

 

 

 

「全く……ベッドと布団を洗って……えーと、その後は……」

慎二がシャワー室で汚れた体を流す。

まさか起きて早々、こんな事に成るとは思ってもみなかった。

 

「ご子息殿ー、汚れた布団は私がやっておきます故、学校にお急ぎください」

 

「ありがとうー、アサシンー!」

脱衣所で黒い影が作業をするのが分かって、慎二が返事を返した。

何時もは桜がやるのだろうが、お互いに学生の身。

家事をそつなくこなしてくれるアサシンに、慎二は心の中で再度感謝した。

 

 

 

「はぁ、朝から疲れた……」

 

「兄さん大変でしたね……やっぱりあんな犬、保健所に――」

 

「ぐぅるるるる!」

桜の言葉に足元のライカが唸る。

 

「大丈夫だって、お前を捨てる訳ないだろ?

桜も冗談でも言いすぎだ。

ってか、『保健所』の意味分かるのか……

聖杯のシステムすげーな」

慎二が制服に着替え、食パンをトースターに入れて桜の用意してくれた目玉焼きを食べる。

 

「ん、うまい……」

少し時間が込んでいるが、遅刻と言うほどではない。

急ぎながらも、食事を終え慎二が立ち上がる。

 

「じゃあ兄さん、先に行っててください。

私は洗い物を済ませてから、行きますから」

 

「ん、分かった」

桜の差し出したお弁当の包みを受け取り、玄関へと向かう。

 

「さーて、速く学校へ――ん?」

靴を履こうとした時、後ろから視線を感じる。

 

「なんだ、ライダーか」

何時の間にか後ろに立っていたのは、眼鏡をかけた長身の女性で桜のサーヴァントであるライダーだ。

何時もは霊体化している彼女が、実体化しているのは非常に珍しい。

 

「マスター、少々お待ちください」

 

「ん?」

酷く久方ぶりにライダーに『マスター』と呼ばれて、僅かに違和感を感じる。

 

「ほら、制服に犬の毛が付いていますよ?

私がとってあげますね」

ライダーが玄関口にあるコロコロを取り慎二の背中で転がす。

 

「やはりマスターも、立派な体ですね。

しなやかでいて、決して筋肉は不足していない……

天性で生まれ持った物なのでしょうかね?」

コロコロをかけながら、ライダーが慎二の体を撫でていく。

その様は、慎二には蛇が獲物をゆっくり絡み取っていく様に見えた。

 

「ら、ライダー?どうしたんだよ!?」

 

「いえ、いえ。むしろこれから――」

イタズラな笑みを浮かべるとライダーが慎二を後ろかだ更に強く抱きしめた。

 

「な、何だったんだ?」

 

「さぁ?なんでしょう?」

イタズラっぽいライダーの口調に艶が混ざる。

 

「令呪を持って命令します。ライダー、自害しなさ――」

 

「桜!?何やってるんだ!!」

廊下の向うで、張り付いた笑みを浮かべた桜が令呪を使おうとする。

 

「大丈夫ですよ兄さん。邪魔になったから処分するだけですから。

じゃ、ライダー。改めて――」

 

「やめろ!!」

令呪を使って自害させようとする桜を、慎二は全力で阻止した。

だが、それでも先ほどのライダーの態度の説明が付かない。

慎二は違和感を感じつつも、学校へ向かった。

 

 

 

 

 

慎二の感じた違和感は、学校に近づくにつれダンダンと大きくなっていった。

 

「あ!間桐せんぱーい!おはようございます!」

 

「ああ、おはよう」

後輩の女の子に慎二挨拶される。

ここまでは何時もの光景だ。

 

「間桐君おはよう」

 

「おはようございます」

次はグラマラスな先輩だ。

だが、今日はそれだけではない。

 

「間桐くーん!」

 

「シンジー!」

 

「慎二先輩ー、今日一緒にお昼どうですか?」

 

「あー、ずるい!!なら、私は放課後――」

次から次へと、女子生徒が慎二に挨拶しに来る。

中には、今日の予定を組もうとしてくる。

ぞろぞろと集まり、最早異常も言える数だ。

 

「一体、どうなってるんですか!?

急に兄さんに悪い虫が……けどなんで――ハッ!!」

自身の兄の困惑しながらも、嬉しそうな顔をみて桜が何かに思い至る。

 

「昨日のポーション……」

昨日キャスターから貰ったポーション。

ライカが間違って飲んでしまった為、失敗となったが、一日たってライカの体から排出されたポーションを今朝、兄が浴びた事で何らかの効果が出たのではないかと、桜は考察した。

 

「兄さん!私、少し行ってくる場所が出来ました!!

学校には遅れるって言っておいてください!」

そう叫ぶと桜は、慎二に群がろうとする数名の女子生徒にタックルをくらわして走り去った。

 

「さくら!?学校はどうするんだ!さくらぁ~~~!!」

慎二は、女子生徒に囲まれながら桜を静かに見送った。

 

 

 

 

 

「モテ期……ついに僕にもモテ期が来たのか……

一生に3回あるっていう奴……

ならば、ならばこのタイミングで遠坂に――!」

女性陣からのアタックを回避して、屋上で慎二が自身に気合を入れる。

ならば、狙うは自身がほのかに恋心を持つ遠坂 凛その人だ。

 

「よぉ慎二!朝からモテモテだな」

その時、士郎が姿を見せる。

 

「衛宮……見てたのか?」

 

「あったりまえだろ?

ってか、アンだけ囲まれてりゃイヤでも分かるぞ?

あーあー、羨ましい事で……俺もハーレム欲しいぜ」

 

「……お前何時から『性技の味方』に成ったんだよ」

小さな冗談を言い合い笑う。

だが、突如士郎の気配が変わった。

 

「なぁ、慎二……今日のお前、何か格好良くないか?」

 

「え、衛宮?」

何処か怪しい雰囲気を醸し出し、ゆっくりとフェンスへと追い詰めていく。

 

「慎二ぃ……俺とお前は友達だよな?」

 

「じょ、冗談はよせよ?笑えない……ぞ?」

トロンと士郎が目に怪しい光を宿す。

 

「そろそろ、俺たちの友情のもう一段階上へ――」

にじり寄る士郎を躱そうと、慎二がフェンスにもたれ掛かる。

その時――

 

「おいおいおいおい――え!?」

 

ガごッ!

 

慎二がもたれ掛かったフェンス、それが老朽化しており体重を支え切れず()()()

 

「慎二!!」

咄嗟に士郎が手を差し出す。

しかし、むなしくその手は空を切っただけだった。

 

「うわぁあああ!!!」

慎二の体は自由落下を始めた。

 

 

 

 

 

「キャスターさん!!兄さんがおかしいんです!!」

授業をボイコットし、寺に走りこんだ桜がキャスターの工房の扉を壊さんばかりに開け放つ!

 

「どうしたの、お嬢ちゃん?」

必死すぎる桜の表情を見て、キャスターが心配そうに話す。

 

「はぁ、はぁ……昨日の、昨日のポーションなんですけど――」

 

「ポーション?使ったのね、アレを……」

酷く残念そうな顔をして、キャスターが目を伏せる。

 

「あれ、うちのライカちゃんが飲んじゃって――」

桜が細かく昨日会った事を説明する。

 

 

 

「……どうなってるのかしら?

サーヴァントの体内を経由したことで、効能が変わったという事かしら?

確定では無いけど、考えられる最も現実的な……」

キャスターがぶつぶつと思案する。

どうやら神代の時代の魔術師でも予想の出来ない状況だったようだった。

 

 

 

 

 

同時刻

「うわぁあああああああ!!」

慎二の体は支えを失い自由落下していた。

落ちたのは校舎の裏の方。

滅多に生徒は来ない為、誰も助けてくれるとは思えない。

人間が高所から落ちて無事でいられるのは果たして何メートルだったか?

そんな、事を慎二が慌てて考え始める。

だが、結局は『今更どうしようも無い』という結果にたどり着くだけだった。

 

(ああ、僕は、ここで死ぬのか……もっと桜にやさしくしてやるべき……だった……)

走馬灯まで見え始め、自身の過去を強制的に見返される。

 

(遠坂には……最後まで、あこがれてばっかりか……『アーチャー、着地は任せた』とかやりたかった――)

 

「着地は()に任せろ!!」

 

「え!?」

何処かで聞こえた声がした瞬間、慎二に向かって幾つもの剣や槍、斧が飛んできた!

 

キン!キン!キキィン!!

 

「うぇあぉ……」

何とも言えない声を出して、慎二が校舎の壁に武器を使って上下逆さまで縫い付けられた。

 

「シンジ、気分はどうだ?」

 

「サイコーの気分だよ……おかげでね……

なるほど、()()()()()()()だけど何とかなった訳だ」

制服は穴だらけになったが、何とか命だけは助かった。

慎二はそう思う事にした。

 

そう思った瞬間、武器が消え慎二が地面に落ちる。

 

「いてて……んで、天下の英雄王様がどうしてここに?」

目の前で、笑みを浮かべるギルガメッシュに慎二が尋ねる。

 

「知れた事よ。偶にはお前が通っている学校の様子を見に来たのだ」

 

「要するに暇だったみたいだな……」

ビックリするほどの偶然で自分は助かったのだと、慎二が人知れず安堵する。

 

「だが、慎二よ。貴様ずいぶん悪趣味な物を使っている様だな?」

 

「悪趣味?一体なんの事だよ?」

身に覚えの無い言葉に聞き返す。

 

「しらを切る積りか?それとも本当に知らないのか?

貴様は今、特定の魔術がかかった状態にいる」

 

「魔術!?」

全く以て心当たりのない、慎二はまさかの単語に驚く。

 

「その様子。本当に知らない様だな?」

 

「だから何を言って――」

 

がさっ!

 

慎二の言葉を遮る様に、誰かが草をなぎ倒して現れた。

最初は、自身の落下を目撃した士郎が来てくれたのだと思ったがそうでは無かった。

姿を現したのは、名も知らぬ女子生徒だった。

 

「あ、間桐先輩……」

 

「誰、君?悪いけど、僕は君の事知らないんだけど――」

 

「間桐先輩見つけた!!」

またしても、新たな女子生徒が姿を見せる。

これでは朝と同じだ。

 

「うっス!間桐先輩!」

今度は男子生徒までもが姿を見せる。

1人、2人ではない。

まるで、引き寄せられるかの様に男女問わず、生徒が集まってくる。

 

「シンジ。一つ忠告しておいてやる。

このままでは貴様は八つ裂きになるぞ?」

ギルガメッシュの言葉を肯定する様に、男子生徒女子生徒、更には教員まで怪しげな光を目に宿している。

皆が、ゆっくり慎二を囲むその時――

 

「少年よ――無事か?」

一陣の風と共に、男が駆け寄り生徒たちの首に手刀を当てて、気絶させていく。

その男に慎二は見覚えがあった。

 

「言峰……」

外道麻婆の愛称で知られる、言峰 綺礼その人だった。

言峰教会の元神父で、未だに魔術を秘匿する役目を持っている為、慎二を助けに来たのだった。

だが――

 

「少年……なんだか、可愛くなったな」

急に怪しい目をして、慎二の尻を撫で始める。

その瞬間、ぞわっと背中にうすら寒い物が走った。

 

「うわぁあああああ!!!僕はノーマルなんだぁあああああ!!」

 

「ふははははは!!少年よ、何処へ行くつもりだ?

ただ単に、食事でもと思っただけだぞ?

逃げなくて良いではないか!!ふははははは!!」

 

「オマエが、一番、怖いんだよ!!」

さっきの生徒の群れよりも、恐ろしい物を感じて慎二が逃げ出す。

 

「少年、少年!!」

走り出そうとする綺礼の足元に、剣が刺さる。

 

「ギルガメッシュ、貴様!邪魔立てする気か――!」

 

「くふふ、貴様の必死な顔を見るのはなかなか面白いのでな。

まぁ、愉悦という物だ」

 

「ふん、お前とはやり合ったことは無かったな――面白い!!」

綺礼が両手に黒鍵を構えて、走り出した!!

 

「良いだろう、神父。我が遊んでやるのだ、光栄に思え!!!」

二人の男がぶつかり合う。

 

 

 

 

 

学校を飛び出し、逃げる慎二。

その耳に、聞きなれた声が届いた。

 

にーさーん、にーさーん

 

「はっ!?桜……桜なのか!!」

遠くから聞こえる自身の妹の声に、慎二が僅かに安堵する。

 

「にーさーん!この騒ぎを収める方法がわかりましたぁ!」

遠く離れた場所。桜は何かを包んだ布を持って走ってくる。

どうやら、あの布の中にこの事態を何とかする道具が有るのだろう。

 

「でかした!」

すがるような気持ちで、こちらに走ってくる桜を見る。

今朝から続いた、この訳の分からない騒動が終わると考えた慎二が安心する。

 

「これで、これで全て解決です!」

走りながら桜が、布を取っ払う。

その下から出て来た物は――

 

「ひぃ!?」

 

「さぁ、兄さん。少しチクッとしますよ?」

笑顔の桜が振り上げるのは歪な形のナイフ!!

 

「いやだぁ!!お前もか!!いや、より悪いわ!!」

 

「兄さん!?なんで逃げるんですか!!兄さん!!」

桜が手に持つのは、魔術破りの宝具(ルールブレイカー)

その名の通り、魔術を壊す能力を持っている。

 

『とりあえず魔術なら、コレよね』

と言ってキャスターが貸してくれた物だった。

だが、見た目はどう見たって凶悪なナイフ!!

当然ナイフを見た慎二は逃げ出す!

 

「兄さん!逃げないで、これですぐ解決ですから!!ね?ね?」

 

「ひぇあ!!どう見ても鮮血の結末だよ!!」

ひゅんひゅんとナイフが風を切り、慎二に向かって桜が走り続ける!!

 

 

 

 

 

「にーさーん!!止まってください!!兄さんを、兄さんを他の女に渡したくないんですー!!」

 

「どう見ても病んでるじゃないかぁあああ!!いやだぁあああああああ!!!」

 

ズブリッ!!

 

「に”ぁあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」




Q反転したポーションの効果が桜に無かったのはどうしてですか?
Aほら、桜はデフォでポーション状態だから……

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