冷やしワカメ始めました。   作:ブラッ黒

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思ったより、人気出てるじゃないか!?
これは、更新しなくては……
という事で、第二話!!


嗤う怪物

僕の名前は間桐(まとう) 慎二(しんじ)

まぁ、自分でも言うのは何だけど、容姿端麗、頭脳明晰、おまけに魔術師の血まで引いている生粋の『選ばれし存在』なのさ。

普通なら、僕と話すことさえ憚られる馬鹿どもに対しても、にこやかに過ごす僕……

ああ、なんて僕は慈悲深いんだろう?なんて僕は完璧なんだろう……

思わずうっとりしてしまう……

さてと、この物語は僕の華麗にして、優雅な日々を綴ったものだ。

庶民の君たちは、感涙に目を濡らしながら読むといいよ!

 

 

 

 

 

海外のとある魔術師を、源流とする間桐一家は非常に豪奢な家に住んでいる。

高価な調度品は、時たまTV番組で放送されている「セレブ御用達~」なんて部屋がかすんでしまうほどだ。

それほどまでに、慎二の部屋は高価な物であふれている。

 

「ふぅあ……朝か……」

枕元の目覚ましを止めて、慎二が起き抜けに背伸びをする。

眠っている間に固まった筋肉がほぐれるような感覚がする。

 

「さて、きょうも……ひぇ!?」

何気なく向いた部屋のドア、廊下に続くその扉が少し開いていて、そこから桜がこちらをじっと見ていた。

 

「あ、兄さん。おはようございます」

扉の隙間から、桜の笑みが半分見える。

笑っているのだが、その笑みは慎二にはひどく不気味に見えた。

 

「お、おい……なんで、そんなところから、僕の部屋を覗いているんだい?」

おっかなびっくりと言った様子で慎二が声をかける。

その瞬間、ぱぁっと桜の顔が明るくなった。

 

「実は朝ごはんが出来たので、呼びに来たんですけど、勝手に入るのも、起こすのも悪いなって思って……

けど、ちょっとだけ扉が開いていたから、兄さんがおきてるかな~って確認したくて……」

少し困ったように、桜が視線をずらす。

 

「あ、ああ……そうなんだ。わかったよ、朝ごはんなんだな?

起こさせてしまってすまないな、すぐに行くよ」

 

「大丈夫ですよ、今きたばっかりですから、ごはん冷めないうちに食べましょうね?」

そう言って、桜が姿を消す。

 

「ふぅ……驚かすなっつーの!全く、あの妹は変な所で気が利かないっていうか、タイミングが読めないっていうか……

あれ?しまったな……靴下が無いぞ?」

 

「兄さん。靴下なら、棚の2段目ですよ。ズボンの間に挟まってます」

 

「ひぃえええ!?桜!?なんで、どうして!!」

驚き後ろを向くと、扉から桜が再度顔を見せていた。

さっきより明らかに、扉が開いているのは気のせいではないだろう。

 

「いえ、帰ろうとしたら兄さんの困った声が聞こえて戻ってきたんです……」

 

「へ、へぇ……兄思いの妹を持って兄ちゃん幸せだなぁ……」

小さくつぶやいた一言を、聞き取って帰ってきた妹に戦慄する兄。

 

「な、なぁ?いつまで、そこにいんの?」

慎二が指摘するように、桜はずっと扉の隙間からこっちを覗いてる。

 

「だって、兄さん。また何か、困った事が起きた時私が対応できるように、スタンバってるんですよ?

さ、私に構わず着替え、着替え」

 

「お、おう……そうだな……」

桜に急かされ、なぜか妹に見られながら慎二が着替えを済ます。

慎二の妹の笑顔には、有無を言わせない強制力があった。

 

(令呪で望まない、命令をされるサーヴァントってこんな気分なのか……?)

何とも言えない居心地の悪さを感じながら、慎二は着替えをしていく。

まるで感情の読めない桜に、小さく怯えた。

 

一方桜は……

 

(ああ、兄さん!!兄さん!!今日もいつもと同じくらい素敵……

うっとりしちゃう……着替えの時の脱ぎ掛けの兄さん!!

出来るなら写真を撮りたい、出来るなら動画で保存したい……!

けど、出来ない!!!だって、カメラを覗いたら兄さんを肉眼で直接見れない!!)

鼻の奥に熱い迸りを感じながら、桜が慎二を連れて朝食の用意してある居間へと行く。

 

 

 

「兄さん、今日はパンなんですけど……トーストとクロワッサンどっちがいいですか?

このパン私の焼き立てなんです。おすすめですよ?」

 

「いや、僕はクロワッサンが――」

 

「おすすめは、食パン・で・す・よ?」

桜がにっこり笑って、ホカホカと湯気を出す食パンの皿を出してくる。

その有無を言わせぬ笑みに、慎二は危険な物を感じた!!

 

(ま、まさか何か入れているのか?

毒物?い、いや、さすがに命を奪うほどではないだろうけど、今日一日のたうちまわる程度の毒なら入っていてもおかしくは――!

落ち着け、何を言うんだ慎二。桜だって食パンを食べる。自分の食べ物に毒なんて入れれる訳……いや、待てよ?

ある!!僕だけを毒で殺し、自身を無事にする方法が!!

()()()だ。おそらく、桜は自身のどれか一つに解毒剤を入れたんだ!!

そうすれば、同じ物を食べても自分だけ、解毒できる。

考えたな、狡猾な妹よ……)

慎二の視線は、きょとんとする妹に注がれる。

 

(だが、僕の方が一枚上手だったな!!)

心の中で勝利を確信した笑みを浮かべる。

そう、桜の策に対抗する手段はこの時すでに、慎二の中で出来上がっていた。

 

「うん、そうだな。そこまで言うんだ、こっちにしようか」

慎二が食パンを手にすると、バターを塗り始める。

だが、その目はしっかりと桜を監視していた。

 

(桜は解毒剤を必ず飲む!!そして、それは毒である食パンよりも前に口にするはずだ。食パンよりも先に口にするものに、解毒剤はある!!)

そして、慎二の目の前で桜が()()()()を口にして、その後パンを食べた。

 

「桜。それ、僕にも一口くれよ」

 

「あっ!兄さん!!」

慎二はそれをひったくる様に奪うと、一気に口を付けた。

 

「ふぅ、おいしかった。ありがとう、桜」

半場勝利宣言的な意味合いを込めて、自身の勝利を伝える慎二。

桜が茫然とした顔でこっちを見る。

 

「………ぅ」

そして、数瞬の後、顔を押さえてうつむいた。

 

(くっはっはっは!!愚昧が兄である僕をハメようなんて100年早いんだよ!!)

表情に現れないように、必死になって笑みをこらえる。

尚もうなだれる桜を慎二が見下ろす。

 

慎二は桜が落ち込んだと思っているようだが、実際は――

 

(兄さん、兄さん、兄さん!!

あ、朝からいきなり、か、間接……間接キスなんて……!!

しかも兄さんの方から……!

しかも、無理やり(牛乳を)奪うなんてこれは誘ってますよね?

朝一で学校に行かないといけないっていうのに、誘ってるんですよね!?

も、もう、私、準備は出来て……)

桜が胸の鼓動をさらけ出すように、胸の制服のボタンに指をかけ――

 

「くっくっく……朝から騒がしいの。我が孫たちよ」

 

「!?」

 

「!!」

突如聞こえた声に慎二、桜の両名が驚く。

その声が聞こえると共に、食堂のドアが開く。

緊張が張り詰めたのか、扉の開く速度が非常にゆっくりに感じる。

出来れば開いてほしくない。そんな二人の願いもむなしく、扉の向こうから現れたのは、この家のもう一人の住人にして、『魔術師 間桐』の始祖たる存在。

まるで『彼』の歩みを伝える様に、杖が床をつつく音がする。

 

カッ、カッ、カッ……

 

 

「どうした?もう、朝食は終わりか?」

杖を突きながら、小柄な老人が現れる。

それだけで、部屋の空気がガラッと変わった。

 

「爺さん!?」

 

「うっ……くっ……」

慎二が辛うじて、言葉を発する。

桜に至っては過去のトラウマからか、喉から出る音が意味のある声になっていない。

 

「あ、ああ……もう充分食ったからな……が、学校へ行かないと!!」

 

「わ、私も、帰ってから洗いますから……」

こうなってしまえば、二人の思惑など関係ない。

二人とも逃げるように、その場から去ろうとする。

後に残るのは人の抜け落ちた、団らんの抜け殻の空間。

 

「慎二」

 

「は、はい!!」

老人の声に、慎二がびくりと背を震わせる。

いつも自身満々な彼がこんな風になる相手は決して多くない。

それもそのはず、この小柄な老人は間桐家の始祖――間桐 臓硯。

500百年を生きる怪物で、最早比喩表現ではなく、本物の『怪物』だ。

 

「学校はどうだ?楽しいか?お前は、成績優秀者なのだろう?

そうそう、弓道部で毎日汗を流しているそうではないか?」

まるでお前の学校の行動はすべて知っているぞ。と言わんばかりの言葉に慎二の背にイヤな汗が流れる。

 

「くっくっく、せいぜい頑張れよ?そうすれば、()()()()()()()()が歩めるだろうな」

 

「は、はい……」

慎二は間桐家に生まれた、正真正銘の子孫だ。だが、養女として桜が貰われている。

その理由は慎二は生まれつき魔術師の臓器とも呼べる部分である魔術回路を持っていなかったからだ。つまり慎二は魔術師ではなく普通の人間でしかないという事だ。

魔術の家系に生まれた魔術師でない者。それがどんな扱いを受けたか、想像に難くはないだろう。

 

「妹の桜ともども()()()()()

臓硯の言葉の一つ一つが、慎二を責め立てる様だった。

まるで針のむしろに座らされたような気分を味わいながら、部屋を後にした。

 

それから数分後、桜も慎二も逃げる様に部屋を後にした。

一人残された臓硯は、お茶を入れて戸棚の大福を口にする。

 

「……なぜじゃ……なぜ、我が孫たちは儂と朝食を食べてくれんのだ!!」

ダン!!と机を臓硯が叩く、その顔にはひどくがっかりした様な表情が張り付いていた。

 

「アサシン!!アサシン!!」

臓硯の声が響くと同時に、小さな光が集まって人型を作る。

漆黒の痩躯に、白い髑髏を思わせる仮面。

目を引くのが棒の様にまっすぐになっている右腕。

彼はこの世の者ではない、万能の願望器『聖杯』によって呼び出された、過去の英雄を写し取った存在――サーヴァントだ。

 

「いかがなさいました、魔術師殿?」

 

「アサシンよ……孫が儂になんか冷たいんじゃ……」

今にも泣きそうな顔で臓硯がアサシンに話す。

 

「魔術師殿?」

 

「最近読んだ本でな?とりあえず、褒めるのが大切じゃと書いてあっての。

とりあえず、慎二をほめてみたんじゃよ。

儂の見立てでは、『うん!おじいちゃま!ボクがんばるよ!!』となるはずじゃったんじゃが……!!」

困ったように臓硯が顔を上げる。

 

「魔術師殿……なぜ、急にそのような事を?」

 

「何を言うアサシン!!かわいい孫に好かれたいのは、全国のおじいちゃんの夢じゃ!!なぜ、問う必要がある?」

 

「おおぅ……」

マジかよと言いたげに、アサシンの仮面が歪んだ気がした。

不思議な話だが、アサシンの仮面はなぜか表情豊かだ。

 

「……雰囲気が固いのでは?もっと、砕けた態度で……」

 

「間桐の当主がそのように、軟弱にふるまえるか!!

儂だって、出来るなら慎二も桜も甘やかしまくりたいわ!!

特に慎二は、若いころの儂に似ておるのでな?欲しがる孫の為にサーヴァント位やりたいんじゃが……どうにも令呪が用意できんのでな。

はぁ……」

困ったという様に、臓硯がため息をついて見せる。

 

「孫にお小遣い感覚でサーヴァントをやるのはどうかと思いますが……」

 

「んん?なにか、言ったか?」

 

「い、いえ……なんでもありません……」

ジロリと、臓硯がにらむ。

 

(はぁ……扱いにくい……)

アサシンが小さくため息をつく。

 

「さて、学校での孫たちの様子を見に行くか」

そう言って臓硯が無数の虫たちを放つ。

 

「ふぅ、学校で孫たちがいじめられていないか、心配で心配でたまらんなぁ……」

何処か心配そうに、おじいさんがため息をついた。

 

「もう、このジジイ一人でいいんじゃないかな?」

 

「んん?何か言ったか?」

 

「いいえ……なんでもありません……(ジジイのツンデレとかどの辺の需要なんだ?)」

再度アサシンはため息をついた。

 

 

 

 

 

「にーさん!今日のお弁当です!!さ、姑ジジイの居ない間に、学校を楽しみましょうね!!」

 

「さ、さくら!?どうしたんだ!?急に……」

急にくっついてきた妹に、まさかの直接手を下しに来たのかと、慎二が驚く。




どんな世界軸?と聞かれると実は詳しく考えていなかったり……
小次郎と真アサシンが寺の階段で、一緒にもつ鍋をつつく様な平和な世界……かもしれません。
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