冷やしワカメ始めました。   作:ブラッ黒

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さて、そろそろみんなこの作品を忘れた頃でしょう。
そんなタイミングを狙って投稿!!

……実際はモチベーションの低下が原因なんですが……


現れる外道

僕の名前は間桐(まとう) 慎二(しんじ)

まぁ、自分でも言うのは何だけど、容姿端麗、頭脳明晰、おまけに魔術師の血まで引いている生粋の『選ばれし存在』なのさ。

普通なら、僕と話すことさえ憚られる馬鹿どもに対しても、にこやかに過ごす僕……

ああ、なんて僕は慈悲深いんだろう?なんて僕は完璧なんだろう……

思わずうっとりしてしまう……

さてと、この物語は僕の華麗にして、優雅な日々を綴ったものだ。

庶民の君たちは、感涙に目を濡らしながら読むといいよ!

 

 

 

 

 

間桐の屋敷の一室、桜が読んでいた本を閉じて本棚へと戻す。

 

「ねぇ、ライダー」

桜が何もない虚空に向かって、声をかける。

一瞬の後、そこに光の粒が集まり人の形を成す。

それは臓硯が呼びだした、アサシンとは大きく姿が違っていた。

 

アサシンが、人型をした異質な存在だったが、こちらは一応は完全な人間型だった。

長い髪の女性。すらりとした長身に体のラインの出る服。

しかし、その顔の上半分は巨大な眼帯に覆われていて、彼女の表情をうかがい知ることは出来ない。

 

「お呼びですか、サクラ(マスター)

マスター。彼女は確かに桜を主人(マスター)と呼んだ。

これはつまり、彼女と桜の間には魔術師とサーヴァントとしての、契約があるという事だ。

桜も臓硯と同じく、サーヴァントの主人なのだ。

 

「兄さん……をね?」

 

「処分ですか?なるべく残酷に殺して――」

桜の言葉をフライング気味に解釈して、鎖のついた杭の様な短剣を手にする。

光を反射して、チャラっと鎖が音を立てた。

 

「ま、まって!違うの!

そっちじゃなくて、その……前に言ってた、ライダーの宝具を貸して欲しいの。

ほら、手綱のやつ」

 

「ああ、『騎英の手綱(ベルレフォーン)』ですか?

貸すのは良いのですが、あの手綱だけではサクラには何の意味も……

あの子に乗りたいのですか?」

 

「ううん、そうじゃなくてね?

あの手綱を兄さんに付けて、それで鞭を……」

 

「なるほど……それなら……」

桜とライダーが話をする中、ドアを一枚挟んだ外では……

 

 

 

 

 

「ひぇ……桜が、物騒な話をしてる……ぞ……」

慎二が顔を青ざめさせて、立っていた。

時刻は1時32分。お昼には、少し遅い位なので、慎二は桜を誘って偶には外食でも行こうかと部屋に来たのだが、聞こえてきたのは……

 

『処分ですか?なるべく残酷に殺して――』

桜のサーヴァントの冷酷な言葉!!

もし、ここでドアを開ければ、きっとライダーは蛇の様に音もなく、走ってきて――

 

「ひっ!」

慎二の脳裏に、巨大な蛇に巻き付かれ自身が頭から丸呑みにされるヴィジョンが見えた。

だが、慎二の恐怖はそこで終わらない。

桜の声が小さく聞こえてくる。

 

『あの手綱を兄さんに付けて、それで鞭を……』

 

(ライダーじゃなくて、直接僕を殺す気か!?

そうだ、あの手綱でも僕の首を絞め落とす事くらいはできる!

けど、ライダーが宝具を消せば、消えてなくなる。

消える凶器を、用意しているのか!!

今、顔を合わせるのはまずい!!逃げなくては!!)

慎二はそのまま、足音を立てないようにその場を後にした。

 

 

 

 

 

「でね?兄さんにその手綱を付ければ、すっかり()()()になった兄さんは、何時もの理性的な仮面を捨てて、獣になるの!!

ビーストな兄さん……略してBBに私は襲われて……そのあとは……きゃぁあああ!!」

酷く興奮した様子で、桜が顔を真っ赤にして手を振るう。

 

「……あの、サクラ?その気というのは、そう言う意味では……」

ライダーが珍しく、困惑しながら桜をなだめる。

乱心したマスターを補佐するのも、サーヴァントの仕事だと、ライダーは必死に自分に言い聞かせた。

 

「え!?ちがうの?ケダモノ兄さんは?BBは?」

 

「どっちも、ありませんよ……」

酷く疲れた様子でライダーがそう言った。

 

(たまに暴走さえしなければ、サクラは……

これも全てあのワカメのせいですね!!)

ライダーの当てつけが慎二を襲う!!

 

 

 

 

 

「はぁ~……あの家も居にくくなったな……」

腕を頭の後ろに回しながら、慎二が道を歩く。

少しばかり、奇妙なポーズをするのは今でも首に桜の手がかかるイメージがぬぐえないからだ。

 

「悩んでたって、仕方ないか。

……そんな事より、どっかで昼めしにするか」

なんだか、最近桜がこっちをじっと、熱のこもった目で見てくることにも慣れた、慎二が思い出す様に空腹を訴える腹を何とかしようと歩き出す。

その時、慎二の鼻をくすぐる良い香り。

 

「あ、ここ……」

顔を上げるとそこは中華料理の店。

若干色あせた『泰山』の看板を見て思いだす。

ここは、以前友人の衛宮 士郎と来たことのある中華料理の店だ。

 

「ふぅん、おしゃれなカフェとかじゃないけど……

偶にはこういう大衆料理屋も良いかな」

慎二が扉を開けると、客はほとんどいなかった。

昼食には多少遅いからか、それとも単純にこの店が不味いのか。

内心では(失敗したか?)などと考えているウチに、店員に声をかけられてしまう。

 

「お好きな席にどうぞー」

 

「…………お?」

店員に促されるまま、奥に入るととあるテーブルにつく男の姿に見覚えがあった。

黒い服に、胸にあるロザリオ(十字架)

 

「やぁ、少年。君も昼食か?」

鉄面皮が、愛想を浮かべ唇を上げる。

この男は――

 

「言峰、綺礼……」

慎二の言葉が聞こえているか、それとも気にしないのか、綺礼は目の前の真っ赤な麻婆豆腐を蓮華で掬い続ける。

 

「はふっ、はっ、うっく……ふぅー……」

一気に掻きこみ、服の前を開け汗をぬぐう。

 

「食うか?」

 

「食べる訳ないだろ!!」

慎二の声が荒くなる。

この麻婆豆腐が普通の麻婆豆腐では無い事は、その色を見れば容易に理解できる。

真っ赤な色に、慎二の位置からでも目を刺激する、香り。

近づこうものなら、それだけでむせて咳が止まらなくなるだろう、代物だ。

 

こう見えて、この男は聖杯戦争を管理する側の存在の人物で、たとえ魔術師ではなくなったとはいえ、聖杯戦争の要の御三家の魔術の家系である『間桐』の家の慎二とは面識があった。

 

「まぁ、座りたまえよ。ひさしぶりの再会だ。

仲の良い友人の様に、話でも交わしながら食事をしよう。

そろそろ、私の麻婆豆腐のお替りが来る頃だ」

 

「まったく……店長!!

俺はこの、チャーハンセットで!!」

厨房に向かって声をかけると、『あいよー』と声だけが帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってか、仕事はどうしたんだよ?結構、偉い立場の人間じゃなかったか?」

 

「言峰教会は……クビに成った」

麻婆豆腐を掬って、口に運びながらまるでバイトをやめる様な気軽さで綺礼が話した。

 

「はぁ!?」

 

「聖杯戦争が、一時中断した後の事だ……

聖堂教会からカレン・オルテンシアという、痴幼女が送られてきてな。

その痴幼女が偉く優秀で……

私が教会から送られてくる運営資金を、高級な酒や麻婆豆腐代などの着服していたことをバラしたせいで私は教会をクビ、サーヴァントのアーチャーも、ランサーも没収。

そしてめでたく、私は無一文。という訳だ」

なんというか、この時ばかりは自身の不幸すら楽しむ彼がかわいそうに見えた。

 

「いや、10―0でお前が悪いんじゃん!

ってか、無一文って……ここの支払いどうする気なんだよ?」

 

「少年、ここは任せる――」

 

「待て、何処へ行く!?」

逃げ出そうとする、綺礼を慎二が無理やり捕まえる。

 

「実は朝一で、入ってずっと食事を続けていて……そろそろ、店主を誤魔化すのもきついと感じていたのだ。

少年、君が来てくれて助かったぞ」

 

「こいつ……!!

最初からその気か!!それが大人のやる事かよ!!」

慎二が必死になって、綺礼を止めようとする。

 

「この……!!ハアァッ!」

 

「ぐぇ!?」

綺礼の掌底が、綺麗な軌道を描き慎二のみぞおちに叩き込まれた。

慎二は白目をむき、口から胃液を吐いた。

 

「ふ、食事前で良かったな。少年」

綺礼は気絶した慎二を椅子に座らせると、そのまま歩き出した。

 

「店主よ。会計はその子供に任せるぞ」

そう言って、笑みを浮かべる。

 

(愉悦……!)

何の罪もない、慎二を食い逃げに仕立て上げた自身の行為。

そしてその後の、非常に困るであろう慎二の顔を思い浮かべ、綺礼は再度笑みを浮かべる。

 

扉を開こうとした時、表側から扉が開く。

誰かがこの店にやってきたのだ。

その人物は、綺礼など目に入らないかの様に、小走りで店の中に入った。

 

「あ!兄さん、こんな所にいたんですね?

まったく、食べに行くなら一言、言ってくださいよ」

そう言って、桜が慎二の座る場所へと歩み寄っていく。

平常を装っているが、気絶した慎二が転ばないように自身の胸で受け止めた。

 

(なぜだ?なぜ、あの少年が気絶しているのを知っている?)

その行為を不審に思ったのは、綺礼の方だった。

桜の行動は明らかに、先ほどの状況を知っている。

 

「言峰教会の『元』神父さんですよね?」

 

「なに……っ?」

振り向いた桜が放った言葉に、綺礼は再度驚いた。

 

(知っている……のか?

さっきの少年と私の会話を一言一句、全て!?)

小さく笑みを浮かべる桜の足元を一匹の虫が走った。

その虫は、慎二の服の隙間から出て来ていた。

 

(間桐の魔術か……!

しかし、しかし普通、兄に盗聴用の虫など仕掛けるか!?)

 

「あ、もう一人お客さんが来たようですね?」

 

「なに?」

 

「元聖職者が嘆かわしいわね……

本当に、教会の恥晒しよ」

小柄な体躯に、気の強そうな目。

彼女は、現在の言峰教会の主の――

 

「カレン!」

 

「はい、帰りますよー。

あんたは、野に放つより教会できっちり馬車馬の様にこき使った方が賢いみたいね。

サーヴァントで、腕の2、3本でも折ってでも連れ帰る事にするわ」

カレンの言葉に、綺礼は自身が詰んだことを理解した。

 

「くっ……!」

 

「じゃあね、間桐の妹さん」

 

「はい、失礼しますね、教会のシスターさん」

女二人が笑みを浮かべ、それぞれの『獲物』を連れて帰っていく。

 

 

 

 

 

「はっ!?」

慎二が部屋の中で目を覚ます。

そして、自身の視線の10センチ先には桜の顔があった。

 

「ひぃ!?さ、さくら!?」

 

「ああ、兄さん心配したんですよ?

出かけ先で、急に気絶したらしくて……

一緒にいた教会の人が、連絡くれたんです」

桜は嘘を言って、慎二を納得させた。

大切なのは真実ではない、都合のいい方便だ。

 

「そ、そうだったのか……」

 

「もう、夕方近くですけど……

なにか、食べる物を作ってきますね。

ライダー、兄さんがどこかに行かないように見張ってて」

 

「はい、サクラ」

ライダーが音もなく現れ、慎二の首に短剣を突き付ける。

 

「ら、ライダー!?」

 

「逃がしませんよ?サクラからも、サクラの料理からも……」

いつもの感情の読めない声で、ライダーがそう言った。

 

 

 

 

 

「ふん、ふふん♪兄さんを看病♪兄さんを看病♪

兄さんの世話が出来るなんて、幸せよね。

このまま一生私が、お世話したいくらいだなー」

笑みを浮かべた桜が廊下を小さくスキップする。

慎二への料理という事で、バレない程度に自身の〇〇とか、××とか、△△△とかを投入したいが、そんなことをして料理が不味くなって、自身から離れては困る。

むしろあまりにおいしくて、依存してしまうほどの味が欲しい位だと桜は思った。

 

「さてと、とりあえずおかゆを……」

 

「おかゆでも作るかな。愛爺料理に慎二の奴も……くっくっく……」

キッチンを覗くと、そこにいたのはエプロン姿の臓硯!!

鍋に火をつけて沸かしてる最中だった!!

 

「おじい様……!」

 

「ぬぅ、桜。まさか貴様も、慎二に……!!

成らん!!ならんぞ!!!おぬしは何時もの家事で疲れておるだろ!?

ここは儂が慎二におかゆを作るのじゃ!!邪魔をするな!!」

 

「おじい様は、何時もキッチンに立たないじゃないですか?

私の方が確実においしい、おかゆが作れます!!

おじいさまは、お茶でも飲んでいてください!!」

二人の視線が台所でぶつかり合う。

そして――

 

「ライダー!来て!」

 

「出ろ!アサシン!」

ほぼ同時に二人が自らのサーヴァントを呼び出す。

 

「やれやれ……」

 

「またですか?」

アサシンとライダーが、お互い主人には苦労するな。と言いたげな顔をしてぶつかり合った。

何とも、締まらないサーヴァント同士の戦いである。

 

 




前回、詳しく次元を考えていないと言ったら、アドバイスをくれた人が。
そのため、結構自由にやることにしました。

とりあえず、この次元は『冷ワカメ次元』とでも呼びましょう。
カルデア辺りに、修復されそう……
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