冷やしワカメ始めました。   作:ブラッ黒

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タイトルで分かる様に、今回新たなサーヴァントが出てきます。
オリジナルで、本編には登場しない奴です。
人によって苦手なひともいるので注意してください。


10番目の契約

僕の名前は間桐(まとう) 慎二(しんじ)

まぁ、自分でも言うのは何だけど、容姿端麗、頭脳明晰、おまけに魔術師の血まで引いている生粋の『選ばれし存在』なのさ。

普通なら、僕と話すことさえ憚られる馬鹿どもに対しても、にこやかに過ごす僕……

ああ、なんて僕は慈悲深いんだろう?なんて僕は完璧なんだろう……

思わずうっとりしてしまう……

さてと、この物語は僕の華麗にして、優雅な日々を綴ったものだ。

庶民の君たちは、感涙に目を濡らしながら読むといいよ!

 

 

 

 

 

深夜の港――衛宮 士郎はぼおっと、海に出ていく船を見ていた。

 

『なにか、感じた事の無い気配がします』

夕飯時に突如セイバーがそう言って、走り出した。

一時中断してる聖杯戦争。そんな中、新たな存在の出現をセイバーは敏感に感じ取ったのだ。

しかし、探し出して早2日。一向にその『何か』は見つからない。

 

「おーい、何処だセイバー!」

自らの相棒(サーヴァント)に声を投げかけるも、返事が返ってくることは無かった。

だが、代わりに――

 

「よぉ、衛宮」

 

「その声!?」

投げかけられた声は、よく知る友人の物。

姿は見えないが、積まれたコンテナの間から友人である、間桐 慎二の声が聞こえてくる。

そう言えば、彼はここ数日学校でも見ていないと士郎が思い至る。

そして、彼の家は魔術師の家系であることも……

 

「慎二……慎二なのか?」

その時、月明かりがコンテナのすきまを照らす。

 

「久しぶり、っていうべきなのかな?」

慎二は彼にしては珍しく、パーカーとフードをかぶっていて目元は見えない。

ポケットに手を突っ込んで、こちらを見ているのだけは分かった。

 

「シロウ下がって!なにか、います……!」

突如現れたセイバーが、見えない剣を構え慎二をにらむ。

 

ぐぅるるるるるるるるる……

 

慎二の後ろ。闇の中で輝く一対の赤い瞳が士郎とセイバーを捉える。

決して人間ではない。獣が喉を鳴らす音が聞こえる。

 

「まさか……サーヴァントなのですか?」

セイバーが一歩、前へ歩を進める。

 

「そう、爺さんが召喚したアサシンとも違う、桜から借り受けたライダーとも違う。

正真正銘!僕のサーヴァントさ。

本来のクラスはライダーらしいんだけどさ、強化の意味も込めてコイツはバーサーカーのクラスで召喚された。

きっひっひっひ!衛宮!!僕のサーヴァントを見せてやるよ!!

いけぇ!!ライカぁ!!」

 

ライカ。そう呼ばれた存在が、暗がりから姿を見せる。

その姿は――

 

「きゃんきゃん!!わふわふ!!」

茶色い体にくるくるの巻き毛、つぶらな瞳に口からは小さな牙が見える。

毛に包まれた尻尾を振りながら姿をみせる。

 

「犬?」

その姿をみた、士郎がつぶやく。

どう見ても犬だ。

 

「シロウ!イヌです!」

士郎の心の内面を読んだかのように、セイバーが反応する。

何度見ても犬だ。

 

「犬じゃない!!僕のサーヴァントだ!!

確かに、多少犬っぽいけど……

クラスはバーサーカーで、まともにコミュニケーションすら取れない危険な、サーヴァントなんだぜ?」

 

「噛みませんかね?」

ちっちっと、セイバーがしゃがんで、慎二のサーヴァントを呼び寄せる。

 

「あー、子犬ってなんでも噛むからな……知り合いの奴が子犬に教科書、噛まれたって言ってた――」

 

「犬じゃない!!サーヴァントだ!!」

士郎の言葉を遮るように、慎二が叫んだ。

 

 

 

事の初めは3日前にさかのぼる。

 

家で慎二が読書をしていた時、家のチャイムが鳴る。

一瞬桜を呼ぼうかと思ったが、自身で行くことにする。

 

「はーい、どちらさ……ま?」

 

「やぁ、少年」

扉の外には、大柄な男が立っていた。

首からかけた十字架は、この男がどのような役職なのかを語っている。

 

「帰れ」

 

「待ちたまえ!」

慎二が扉を閉めようとした時、綺礼が扉を掴み無理やり玄関を再度、開かせる。

 

「なんだよ、帰れよ!出来ればかかわりたくないんだよ!!」

前回の事件を経て、慎二の中にはなるべく綺礼には関わりたくないというスタンスが出来上がっていた。

触らぬ神に祟りなし。慎二は綺礼を見なかったことにして、再び平和な日常を取り戻そうとした。

扉が閉まるその一瞬、4本の指が扉にかけられる!!

 

「そうはいかないのだよ、少年よ……!」

ギリギリと鉄製の扉が嫌な音を立てて軋む。

 

「ちょ!?帰れよ、大人しく……!」

慎二と綺礼の問答が繰り広げられる。

 

「なんじゃ、騒々しい」

騒ぎを聞きつけた臓硯が、つえを突きながら慎二の背後に現れる。

 

「じ、爺さん!!助けてくれ!いきなり、いきなりコイツが家へ押しかけてきたんだ!!」

地獄で仏……いや、仏とは到底言えない人物だが、今回だけは、とばかりに慎二が臓硯の元へ駆け寄る。

その態度に、臓硯が内心のテンションを上げる。

 

(うぅおおお!?いつもは、そっけない孫がこんな近くに!?

これは行幸……100年に一度、有るか無いかのチャンスじゃぞ!!)

心臓の動悸が早くなるが、そんなことど今の臓硯は気が付かない!!

 

「ひぇ!?」

一瞬笑みによって顔をゆがませた臓硯に慎二がひるむ。

だが臓硯はそんなこと関係ないとばかりに、一歩前へ進み出る。

 

「くっくっくっく。これは教会の若いの、一体どうした?

遅々として進まぬ聖杯戦争を進める算段でも整ったか?」

 

「違う、そうではない。ご老体よ……

今回ここへ来たのは、ご子息に令呪を渡す為、です」

 

「令呪!?なんで……?」

令呪の言葉に慎二が反応する。

令呪とはサーヴァントに対する命令権であると同時に、マスターの証でもある紋章。

魔術師ではない慎二は当然、令呪を持っておらず『偽臣の書』という道具を使って桜の召喚したライダーと、疑似的な契約を結んでいた。

『選ばれた存在』に固執する慎二にとっては、どうしても欲しい物だった。

 

「それは……前回の事が、カレンにバレてだな……

こう、どんな手を使ってでも揉み消しなさい。という事で……」

 

「賄賂じゃないか……」

何処となく透けて見える、綺礼とカレンのパワーバランスを感じながら、慎二が答えた。

 

 

 

 

 

 

「いや、令呪……もらえるって言ったって……ああ、けど……」

慎二が突如迷い込んだチャンスに二の足を踏む。

確かの状況は待ちに待った、千載一遇の機会だ。だが、その相手は到底信頼できる人物ではなく。

だが、彼には上層部が圧力をかけており……

 

信じるべき、信じないべき、踏み出すべき、とどまるべき……

 

慎二の中では思考が堂々巡りを繰り返す。

そして、決断を下す。

 

「やめておく。僕は他人の情けなんて受けなくても――」

 

「サーヴァントは、ボディーガードにもなるぞ?

具体的に命を狙ってくる相手から、身を守る術となるだろう」

何気ない動作で、綺礼が小さく指をさす。

その慎二がその指の先を見ると――

 

「いぃぃ!?」

屋敷の一角、カーテンの隙間から桜がこっちをじっと睨んでいる。

どうやら、ずっと監視していた様だ。

 

 

 

 

 

「あ!ライダー!!見て見て!!兄さんがこっちに気づいた!!

何も声かけてないのに、きっと愛のなせる業よね?

私の心の、テレパシー伝わったのよね?」

万遍の笑みを浮かべて桜が声を上げる。

 

「え、ええ……そうですね……」

しかし、ライダーは引きつった笑みを浮かべて力なく、相づちを打った。

 

 

 

 

 

「アイツ……まさかずっと?」

こっちが気が付いた事を察知した桜が、手を振ってくる。

そのあまりに自然な、動きに慎二の背に冷たい物が流れる。

 

「サーヴァント……欲しくないか?」

 

「ほ、欲しいです!!すっごい欲しいです!!」

外敵ではなく、妹から身を守るためにサーヴァントを欲しいと慎二は強く思った。

 

「よかろう、少年よ。今、君の願いは叶う」

 

「あ、いや。そう言うのいいから……

むしろ、桜に脅かされない生活が欲しいだけだから……」

死んだ目をして、慎二がつぶやいた。

 

(この死んだ目……愉悦!!)

綺礼がほくそ笑んだ。

 

 

 

間桐の屋敷の地下。そこに魔術の工房がある。

霊脈の通る場所にある場所に、床に大きく描かれた魔法陣。

その中心にあるのは、臓硯が持ってきた何かの機械の破片、熱がかかったのか一部溶けて、一部が砕けてすすだらけ。元が何かは分かりはしない。

臓硯の魔術によって、令呪が偽臣の書に移され、召喚が終わり次第慎二に移される算段だ。

召喚に必要な場所。召喚に必要な触媒。召喚後に必要な令呪のすべてがこの場に集まっている。

 

総てが滞りなく進んでいる中で、自然に慎二の口角が上がっていく。

前に見たことが有る。ライダーを召喚した時の物に似ている。

今度は自分の番だ!と慎二の胸が高鳴るのを感じる。

 

「慎二、これを……」

臓硯が持ってきたのは、所謂召喚の呪文。

それを唱えることで、サーヴァントの召喚が可能となる。

 

素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三又路は循環せよ

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する

――――告げる。

汝のみは我が下に、我が運命は汝の剣に。

聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ

誓いを此処に。

 

我は常世総ての善となる者、

我は常世総ての悪を敷く者

されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!

 

慎二詠唱が終わると共に、光が瞬き魔力の渦が生まれる。

そして、目を再び開けた時には――

 

「あんあん!!きゃん!!きゃん!!はっは!はっは!!」

一匹の小型犬が、慎二の足元にじゃれついてきていた。

 

「え、あれ?僕のサーヴァントは?」

突然現れた犬に慎二が困惑する。

 

「コレ……の、様じゃな……」

困ったような顔をして、臓硯がほほを掻く。

 

「あ、え?サーヴァント……犬……クラスとかあるのか?犬に……」

指をさし、自身のサーヴァントをみて慎二が困惑する。

何かを思い立った臓硯が、さっき慎二に渡した紙を見る。

 

「しまった!さっきの呪文は、バーサーカー用の奴じゃ!!

雁夜の時の奴と間違えたわい!!本来はライダーのハズじゃったんじゃが……

ま、まぁ、大事に使役するのじゃぞ?」

臓硯が、足元の犬を撫でながら話す。

その露骨なまでの、話を逸らす姿に、慎二が何か言いかけてやめる。

 

「一応はサーヴァントだし……えっと、クラスはバーサーカーだよな?

来い!バーサーカー!!」

 

「アン、アン!!」

茶色いクリクリの毛をしたつぶらな瞳のバーサーカーが慎二に駆け寄ってくる。

正直な話、かわいい。

人懐っこい子犬の様に、慎二の足元に寝転がり差しだした手をぺろぺろと舐めた。

 

「おー、よしよし。ちゃんと来たな……って違う!!

ちーがーう!!これ、サーヴァントじゃない!!

ペットショップで犬買ってきたのと変わんないわ!!」

癇癪を起す慎二を恐れ、バーサーカーが逃げだす。

 

「兄さん……この子、女の子ですよ?優しくしてあげないと……」

心配してみていた桜が、バーサーカーを抱き上げる。

 

(兄さんの手とか……私も舐めた事ないのに……)

桜の瞳が一瞬、影を帯びる。

 

「きゃうん!?」

何かを察したバーサーカーが小さく悲鳴を上げる。

 

「けど、これで兄さんも令呪とサーヴァントがそろいましたね?」

 

「あ、そうだ!僕にも令呪が……あれ?ない?」

桜の言葉に、慎二がもう一個のアイテムを思いうかべる。

そうだ、今の自分には選ばれし者の証が有るはず、と左手の手の甲を確認するが何もない。

 

「右手だったか?こっちもない……」

 

「慎二よ、令呪は必ずしも手に現れる訳ではない。

場合によっては背中や、胸に現れる事もある。

だが、ふむ……額は初めて見るな」

 

「兄さん、額、額」

臓硯、桜二人が指摘して、桜が鏡を渡してくる。

 

「え?コレ……」

そこに令呪は確かにあった。3画のみマスターに与えられる、サーヴァントの絶対命令権。

それが、慎二の額にでかでかと刻まれていた。

 

その形は、漢字の『肉』の字に非常に似ていた。

 

「これ……これ、アレやん……筋肉なマンが戦うアレやん……修学旅行でやられる奴じゃないか……」

絶望した慎二が、両手を地面につく。

 

「くぅ~ん、くぅ~ん……」

心配したバーサーカーが近寄ってきて、手を舐める。

 

「ばーさーかぁ……慰めてくれるんだな?」

慎二が静かにバーサーカーを抱き上げる。

ぺろぺろと、慎二の涙を舐めとる。

 

「よぅし!バーサーカーじゃ言いにくいし名前を付けてやろうな!

えっと、史実は分からないが……多分狼男だろうから……」

 

「兄さん、この子、女の子です」

桜の指摘に慎二が、一瞬考える。

 

「あ、じゃ、人狼……で、ライカンスロープ……ライカ、ン……

そうだ!お前は今日からライカだ!!」

 

「わぅん!!」

バーサーカー改め、ライカが嬉しそうにほえた。

 

 

 

「――という事で、僕はサーヴァントのマスターになったのさ!」

慎二が決めポーズで、笑みを浮かべる。

 

「なるほど、額に『肉』って書かれてたら、さすがに来れないよな……

芸か何か覚えさせて、消費したらどうだ?」

ちらりとパーカーのフードから見えた、慎二の額の令呪を見て士郎がいう。

 

「うっせぇ!!やれぇ、ライカ!!衛宮のサーヴァントを倒せ!!」

 

「やめろ、慎二!!動物虐待は、保護団体がうるさいんだぞ!!」

勝てる訳ないと、言う前に慎二が別の心配をする。

正義の味方にあこがれるだけあって、動物保護団体には優しいのだ。

 

「うわぁぁぁぁ……この、私が……このような、屈辱……くっ!殺せ!!」

 

「わふ!わっふ!!」

ライカにマウントされて、セイバーが倒される。

カクカクと腰をふる、ライカが満足そうにほえた。

 

「……犬って、立場が下だと思うやつには、アレやるよな……」

まさかの敗北を喫した自身のサーヴァントを見ながら、士郎がつぶやいた。




サーヴァント バーサーカー(ライカ)
間桐家にて召喚されたサーバント、真アサシン、アーチャーを含む10番目のサーヴァント。
バーサーカーの例にもれず、会話機能が低下しており意思相通が困難。
だが、こちらからは伝わる様で名前を呼べば来るし、芸も出来るし、トイレも覚えている。

ステータス。
筋力―D 耐久―D 俊敏―B 魔力―E 幸運―E 愛嬌―A

身長―32センチ 体重6キロ
真名 不明
出典 史実
地域 旧ソ連
属性 犬・狂
性別 メス

宝具 スプートゥニック・ドブァー
詳細不明の宝具、彼女はこれのせいで英雄となり、同時に狂った。
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