冷やしワカメ始めました。   作:ブラッ黒

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この前ついに、評価バーに色が付きました。
何が起こったんだ……色付きの評価バーとか、都市伝説じゃないの?
ともかくありがとうございます。これからも冷ワカメ次元をよろしくお願いいたします。




黄金の英雄

僕の名前は間桐(まとう) 慎二(しんじ)

まぁ、自分でも言うのは何だけど、容姿端麗、頭脳明晰、おまけに魔術師の血まで引いている生粋の『選ばれし存在』なのさ。

普通なら、僕と話すことさえ憚られる馬鹿どもに対しても、にこやかに過ごす僕……

ああ、なんて僕は慈悲深いんだろう?なんて僕は完璧なんだろう……

思わずうっとりしてしまう……

さてと、この物語は僕の華麗にして、優雅な日々を綴ったものだ。

庶民の君たちは、感涙に目を濡らしながら読むといいよ!

 

 

 

 

 

「う~さぶさぶ……」

厚手のコートに身を包んだ慎二が、冬木の町を歩く。

町行く人の吐く息も白い物が混ざっており、昨晩にはついに雪が降った様で、所々建物の屋根に白い雪が積もている。

 

「ふぅ……冷えるな……」

慎二がここにいる理由は単純だ。桜が家に居るからだ。

いや、冗談でもなんでもなく、桜の存在が慎二が外出する理由その物になっている。

 

「どうも桜がいるとな……」

慎二がため息をつき、白く曇った。

家には暖炉があり温かく、非常に快適だが問題は桜だ。

暖炉の前で慎二がリラックスしていると、こっちをニヤニヤしながら桜が見て来たり、かといって自室にいると、ドアの前から怪しい息遣いが聞こえてくる。

何度も慎二は桜によって肝を冷やしている。

 

その結果慎二は逃げる様に、冬木の町へと繰り出したのだった。

余談だが、サーヴァントのライカは暖炉の前に丸まって動かなくなってしまったため、慎二一人である。

 

「犬は雪の庭で喜ぶんじゃないのかよ……」

童謡の一説を思い出しながら、慎二がつぶやく。

公園のベンチに座って、今後の動きを考える。

 

(さてと、何処に行くかな……休日のマンガ喫茶は高いし、何より生産性がない……

一人でカラオケっていうのもな……)

慎二が持て余す時間をどうしようか考えて、再度町を行く。

 

(そうだ、衛宮の家……偶には友人らしく衛宮の家に顔でも出して――)

 

「おお、シンジではないか!」

 

「よし、行くか!」

何をすべきか決めた、慎二が立ち上がった時――

投げかけられた声にいら立ちが混ざる。

 

()を無視とはいい度胸だな?」

 

ザ――シュン!!

 

「ひい!?」

慎二の足元に黄金の斧が突き刺さる。

その斧が投擲された方向を見て、慎二が初めてその人物に気が付く。

 

「オマエ――ギルガメッシュ!!」

 

「ようやく気が付いたか。王たる()が話しかけるのを無視するとは、良い度胸だな?雑種」

黄金色の髪に、真紅の瞳――

威厳を全身に纏い、戦いの為の鎧を身に着けている訳ではないのに、圧倒的な威圧感を放っている。

嘗て第4次聖杯戦争を戦い抜いた、アーチャークラスの英雄王がそこにいた。

 

 

「……なんで公園に?」

 

「くっくっくっく……教会に居ずらいからここに来たのだ」

 

「……は?」

慎二は自身の耳を疑った。

今、目の前の英雄王から何とも情けない情報が発された気がするが、聞き間違いだろうか?

 

「何度も言わせるな。言峰教会はカレンが来て以来、どうにも……

こう……居ずらいのだ……カレンは()に雑用を押し付けるし、綺礼は馬車馬の様に働かされ、愉悦を楽しむ時間すらない……

ランサーに至っては、教会の外でバイトをして帰って来ず、そのせいでカレンには『働かずに食べる食事はさぞおいしいでしょうね?』『おや、今テレビにアーチャーが……あ、違った!これは人生の底辺を生きるニートたちでした。見た目とか生き方がそっくりなので、間違えました』とか言われるのだ!!」

 

「……なんというか、お前も大変なんだな」

慎二がギルガメッシュにわずかに同情する。

無論その同情のそこには、自身と同じ共感できる部分を感じたからである。

 

「んで?その英雄王が僕に何の用だよ?」

 

「くっくっく、シンジよ。知っていると思うが明日は俗にいう日曜日――所謂おやすみの日だ」

ギルガメッシュの言う通り今日は土曜、その翌日は当然日曜である。

そんなことは誰でもわかっているハズ、ギルガメッシュの言いたい事はその後だろう。

ギルガメッシュが口を開いたとき、何かに気が付き慎二に歩み寄った。

 

「――貴様、それは令呪か?」

ギルガメッシュの指が、慎二の最近伸びてきた額の髪をずらす。

そしてそこに刻まれた漢字の「肉」を思わせる令呪に触れる。

 

「勝手に触るな!」

慎二がギルガメッシュの手を払いのける。

 

「ふん、仮ではなく本物か……貴様もサーヴァントのマスターと言う訳か。

いいのか?令呪(それ)は否応なしのお前を戦いへと、引きずりこむぞ?

無論、貴様が幾らマスターとして、力不足だとしてもだ」

ギルガメッシュの言葉に、慎二が一瞬だけひるんだ。

 

「そ、それがどうした!?僕に出来ない事なんてない!!

用が有るんだろ?さっさと要件を言えよ!!」

不安を振り払う様に、慎二が叫んだ。

その途端、ギルガメッシュの強者のオーラが一瞬で霧散した。

 

「その、あれだ……休日を利用して、セイバーを誘って、何処かへ行こうと思ってな?」

威厳を捨て去り、急に自身の人差し指を突き合わせ、視線を地面に投げ始めるギルガメシュ。

それは、まさしく――

 

「へぇ……デートの誘いか?」

 

「…………まぁ、あえて言えば、そうなる……」

今にも消え入りそうな声で、ギルガッメシュが話す。

なんというか、テンションというか威厳というか、とにかく落差が激しい。

 

「今の時代、どのようにデ、デートへ行くものなのだ?」

 

「いや、僕が知るかよ!?お前が勝手にやれば良いだろ?」

付き合うのが馬鹿らしいと、慎二がその場を去ろうとする。

 

「まてまて、シンジよ。我らはサーヴァントとマスター。

場合によっては契約を結び、共闘する事もあったかもしれん仲ではないか?」

ギルガメッシュが肩を組んでくる。

露骨なまでの友情アピールだった。

 

「オマエ、絶対裏切りそうだよな!!」

嘗て家に居るアサシンが『あ奴はすぐ裏切る故、ご注意を』と言っていたのを思い出す。

 

「まてまてまて!!王たる俺が頼んでおるのだぞ?ここはおとなしく付き合うのが道理であろう?」

 

「天下の英雄王が、デートスポットで悩むトコなんて、見たくはなかったよ!!」

 

「待つのだ、お願いだから。シンジよ。お前はその容姿に、優れた成績、そして上等な家の出というではないか?

ならば、女子の10や20は当然、侍らせているハズ。

お前の力を今こそ見せる時だぞ?無論、今回のプランで掛かる金の類は全て()が出そう」

腕を組みながらギルガメッシュが話す。

言ってることはどうしょうもないが、慎二にとってメリットなのは確かだ。

 

「……つまり、僕の遊んでるところを教えれば、今日は全額お前が出すって事か?」

 

「そうなるな」

 

「よし、分かった!んじゃ、僕のおすすめデートスポットを教えてやるよ。

衛宮んトコのセイバーもイチコロだぜ!!」

まさかの英雄王じきじきのヨイショを受けて、すっかり気分の良くなった慎二が店を紹介する。

なんというか、こういった所は案外似通っているのかもしれない。

 

「流石、シンジだ!頼りにしてるぞ?」

ギルガメッシュが慎二と肩を組んで歩き出した。

 

 

 

「あちゃー、臨時休業かツイてないな……ここのケーキ屋の味は確かなんだぜ?

セイバーって言えば、常になんか食ってるし、とりあえず甘い物を押さえておくべきだ。ここは、まだあんまり知られてないし穴場だ。店内の雰囲気も良い。

僕のオススメはティラミスかな」

休業中の、ケーキ屋の前で慎二が説明する。

 

「なるほど、少し話をしていくのが目的か。

だが、この後会話が続かないのでは?」

ギルガメッシュが当然の質問をする。

 

「そこは、ほら、駅前の映画さ。

同じ映画を見れば、感想が言い合える。

夕食を取りながら、二人で話すのはいいもんだよ?

ここではあまり、相手の意見を否定しないのがポイントだな」

ケーキ屋を通り過ぎ、映画館までの道のりを慎二と二人で歩いて説明する。

その後も、さりげない会話のコツなどを、ギルガメッシュに教える。

 

「じゃあ、僕はこれで帰るぞ?」

ひとしきり教える事を教えた慎二は帰ろうと、踵を返す。

だが――

 

「何を言っているのだ、この雑種は!!

映画とはすべて当たりはずれがある。無論、()一人では意見も一つのみ。

ならば、()とお前で一番面白い映画を見つけるのだ。

さ、付き合ってもらうぞ。シンジ?」

 

「は?ちょっと待て、なんで僕がお前なんかと――」

 

「チケットはもう買った!!行くぞ!!まずは、王道の恋愛物からだ!!」

ギルガメッシュがチケットを手に、慎二を強引に映画館へ連れ込む。

 

「お、男二人で見る物じゃないだろぉおおおおお!!!」

受付のお姉さんに、男二人で恋愛映画というシチュエーションで怪しまれたのは別の話。

 

 

 

 

 

「う~あ……4本目終了……あ~目がチカチカする……なぁ、ギルガメッシュ?

もう帰っても――」

 

「だめだ。どれもこれも、イマイチ……

こう、もっとセイバーの心を掴むような、映画は……む、あれは?」

 

その時、一枚のポスターが、映画館のスタッフにより壁に張りつけられる。

そこには、精悍な顔をした騎士たちが、剣を構え立っている有様が書かれていた。

非常に完成度が高そうなポスターで、一目見ただけで気になってしまうポスターだった。

そして何よりそのタイトルは――

 

「『エクスカリバー』か……なるほど、セイバー本人の話と言う訳か……

くっくっく……やはり()は王だ。このような幸運が自らやってくるとはな」

 

「えっと、次はコレを見るのか?」

慎二がぐったりしながら、ポスターを指さす。

 

「いや、その必要はない。ここは敢えて初見で行こうと思う。

こういったものは、相手に語らせる方が良い。この作品の当事者たるセイバーならなおさらだ。お前もさっきそういったろ?

当たり映画が見つかれば、もう問題は無い。

ご苦労だったなシンジ。礼を言うぞ……

後はセイバーを誘うだけか……こ、ここからは、()だけの戦いか……なにを、恐れることが有る……俺は王の中の王……小娘一人、映画に誘うなど造作もない……そう、そうだ……」

ぶつぶつと言いながら、ギルガメッシュが衛宮の家へと向かって歩き出した。

なにはともあれ、慎二はどうやら解放されたらしい。

 

「はぁ……なんだか、ドッと疲れた……何度も映画を見たせいで目が痛い……

帰るかな……」

すっかり疲れ果てた慎二が歩き出す。

本当は、さっきギルガメッシュと話したのとは別の店で、ケーキでも買おうかと思ったが、そんな事すらもう億劫になってしまっていた。

だが――

 

「ま、暇な時間が潰れたただけでも、十分か」

そう言って慎二が適当にタクシーを止めるべく、駅へ向かった。

余談では有るが、このギルガメッシュの見る事にした映画のレビューは以下である。

 

 

 

非常につまらない、作品が長い上に内容が驚くほど薄い。

人生を無駄にしたい者のみが見るべき、河原で面白い形の石を探している方がまだ有意義。

つまらないという言葉をこれほどまでに再現できたのはすごい。

真似できないレベルでのつまらなさ。役者がかわいそう。もはやポスター詐欺。

円卓の騎士をモデルにしたらしいが、本人たちが見たら間違いなくブチぎれる。

評価は100点中で、3点くらい。

など等である。

 

 

 

翌日――

 

「チっ……まさか、こんなにも不快な気分に成るとは思いませんでした。

なるほど、英雄王よ。貴方は何時までも自分に(なび)かない私に対して嫌がらせを行ったのですね?」

今まで一度も見た事の無い位の無表情さで、セイバーがギルガメッシュを見ている。

第4次の時ですら、ここまで不機嫌だった事は無いだろうと、容易に想像できる不機嫌さだ。

 

「ち、違うぞ、セイバー!()は、ただお前と普通に映画を見て、その後一緒にお茶でもしながら感想を語り合おうとだな……」

しどろもどろになりながら、ギルガメッシュが必死で弁明をする。

だが、映画の中とは言え、自身の半生をけちょんけちょんに貶されたセイバーはそんな事、気にも留めはしない!!

 

「ええ、たっぷり映画は見ましたとも。2時間56分使って、私の伝説をたっぷりと貶めて頂きましたとも。

さて、ここからは、感想ですか?今の気持ちですか?

それは勿論――貴方を叩き潰したい気分ですよ!!」

瞬時にセイバーが、鎧を身に纏う。

 

「まて、待つのだセイバー!!今日は戦いに来たのではない!!

俺は、俺はお前と普通の――」

 

「問答無用!!『約束された勝利の(エクス)――」

 

「違うのだぁぁああああああああああああああ!!」

ギルガメッシュの声が、街中に響いた。

 

 

 

 

 

『本日、冬木の町の映画館前広場で、大規模なガス爆発が発生しました、現在分かっているだけで被害は――』

 

カラーん!

 

ニュースキャスターの言葉に、居間で紅茶を飲んでいた慎二が手を滑らす。

画面にはモクモクと黒煙が立ち上り、警察や救急車が忙しく走り回っている。

 

「ひぇ……ぼ、僕のせいじゃないよな?違うよな!?」

ニュースキャスターの、読み上げた言葉に慎二は内心ドキドキしっぱなしだった。

 

「兄さん?」

 

「ひえ!?――桜か……脅かすなよ……心臓に悪い……」

後ろから掛かった声に、再度慎二が驚くが桜はにこやかな笑みを浮かべたままだ。

 

「あ、紅茶。丁度良かったです。コレ、ケーキを買ってきたから二人で食べましょう?兄さん、その紅茶、私の飲めるだけの分ありますか?」

そして、手に持ったビニール袋を見せる。

 

「お、この店……お前にしちゃ良い趣味してるじゃないか。

この店は僕のお気に入りなんだ、特に――」

 

「特にティラミスが絶品なんですよね?」

桜が慎二の言葉を引き継いだ。

 

「そうそう、この店はティラミスが……なんで知ってるんだ?」

慎二は確かにこの店のケーキが好きだ。

だが、この店は最近見つけたばかりで、誰かを連れて行ったことは無いし、更に自身の感想などを誰かに話したことなどたった一度、昨日のギルガメッシュに付き合った時だけだ。

本来なら、桜が絶対に知るはずの無い情報。

 

「何言ってるんですか、兄さん。

昨日言ってたじゃないですか。『ここの店のティラミスは悪くない』って。それって兄さんにとっては『好き』っていう意味ですよね?

ふふ、兄さんったら絶対に『好き』って言わない、ひねくれものなんですから」

困ったにいさん、と言いながら桜が皿を出してくる。

さーっと、慎二の背中に冷たい物が走る気がする。

 

「な、なんで、え、え?」

様々な言葉が脳裏に浮かぶが、言葉をなしてくれない。

なぜなら、声に出してしまえばそれは『問い』に成ってしまう。

そしてその『問い』に桜は答えるだろう。

もしも、もしもその『答え』が慎二の想像したものだったら……

 

「昨日のお出かけ。楽しかったですね。

私あんなに一気に映画を見たの初めてです」

 

「ひ、ひぃぃいいいい!?」

桜の笑みに、慎二が震えあがる。

桜は『居た』のだ。慎二が家を出た後も、公園で時間をつぶしている時も、ギルガメシュに絡まれた時も、仕方なくセイバーと見る為の映画を探している時も――()()()

 

「これって……デートって奴ですよね?

あ、妹の私だって、ちゃんと女の子なんですよ?」

 

「ひ、ひぇ……ひやぁああああ!!!」

慎二が桜から逃げ出した!!

 

「あ!兄さん!!…………『デート』って聞いて照れちゃんたんですね。

もう、意外と初心な兄さんなんだから」

今回のデートの顛末を桜が思い出して、頬に手を当てイヤイヤと嬉しそうに首を振る。

 

そんな桜の様子をライカが、興味無さそうに暖炉の前であくびをしながら見ていた。




やったぁ……デート回だぁ……(白目)
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