みほとまほ 山を歩く   作:極限環境微生物

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新たに4名の方がお気に入りにいれてくれた…!本当に嬉しいです!!しつこいでしょうか?でも感謝したいやめられない…。
もしも改善すべき点があればぜひ教えてください。今後ともよろしくお願い致します。
このお話が西住みほと西住まほの家族愛を想起する一端となれば幸いです。

※9/5 追記 誤字脱字を修正しました。


第3話

  私たちは少し回り道はしたものの、山の傾斜から逃げたルートで進んだ。そして、越えるべき川に直面した時には二人で感嘆の声をあげる。

  渓流というには勿体無いほど開けた地形で、遊ぶには丁度いい穏やかで浅い川だったから。魚も泳いでいるくらいキレイで、訓練じゃない時に来たかったな。しかし、飛び石になるような足場は無く、仕方なく靴を脱いでズボンを膝上まで捲り上げて渡ることにした。

 

「転ばないよう、ぬめりに気をつけて渡ろう」

 

「…! まってお姉ちゃん!」

 

  まほの右足、内側の足首とふくらはぎの間くらいに一筋の黒い線がみえた。ヤマビルだ。もう小指くらいの太さまで血を吸っている。

 

「さっきスズメバチから逃げる時だろうか。ズボンの中でスパッツがズレていたようだな」

 

  (そんな冷静な…)

 

「こちら側よりも川を渡った先の方が河原になっているから対処しやすい。ひとまず渡ってしまおう」

 

 ひぃい……。 私なら気付いてしまったら気持ち悪くて付けっ放しなんていられないよ。

 

 ーーーーーーーー

 

「みほ、塩をまぶしてくれ」

 

  さっきよりもお姉ちゃんの血を吸って大きくなったヤマビルを、ピンセットで固定している。私はそこに塩をかける。

  すぐさま縮み出し、噛み口が離れる。お姉ちゃんはそれを石の上に置いて、近くにある手頃な石ですり潰し土に埋めた。

  血を吸ったヤマビルは卵を産みまた増える。殺すのは血を吸わせてしまった者の責任とかなんとか。

 

  そうしている間にもじわじわと出血している。消毒用のエタノールを塗布し、水に強い絆創膏を貼る

 

「夜にはもう出血も止まるだろう」

 

  ……ドキッ。

  ダメだ。絆創膏を貼ったお姉ちゃんが愛らしく感じてしまう。想像しちゃダメ。三角巾で片腕を固定し、頭に包帯を巻いて片目が開ききらないほどの青あざがあるお姉ちゃんを想像して、思わず抱きしめてしまいそうになる。

 

「お姉ちゃん、準備して出発しよう」

「いや、ここで食料を獲ろう。この川は浅くて水草が多く、魚が取りやすい」

 

  私は早く今日の野営する予定地に行きたかった。

  早くスパッツを脱いでガーゼを剥がすお姉ちゃんを見たかったから。

 

  私、訓練中なのにこんな変な気持ちで強くなれるのかな。お姉ちゃんは川で魚を獲るため、ザイルにテグスで自前の網シャツーー高機能メッシュアンダーシャツだと思いたいーーをくくりつけ、たも網を作り上げた。

 

「出来た。しかしたも網にしては少し目が細かくなってしまったな。まるで虫取り網だ」

「これならさっきのスズメバチもやっつけられるね」

 

  テグスで出来た網が先っぽになるよう流木に巻きつけて自作のたも網を作った。それに少し興奮気味の姉に乗っかって強気な冗談を言ってしまった。

  あ、しまった。お姉ちゃんの顔はやってもいいなという表情。

 

「じゃ、じゃあ、合図をくれたら追い込むね」

「よろしく頼む」

 

  上流に回り、お姉ちゃんの顔を見る。たも網を振り上げコクリと頷いた。

  私は上流から下流の水草が茂る場所に向かって歩く。その下流の先にはお姉ちゃんが待っている。追い込み漁とは言えないが猟師のよくやる勢子と待子の関係だ。

  打ち合わせしていた地点に着くとお姉ちゃんは水草の付近をガサガサすると魚やカニがたも網に入っていた。これで釣りよりは短時間で沢山捕まえられる。最初は生き物がいるだけで楽しくて喜んだけど、これ生き抜くための作業なんだよね。魚しか獲らないようにしてあとは逃した。

 

  今日の昼食と夕食には出来そうなくらい獲れた。少し小さすぎるかなというのも居るのは逃してあげた。お姉ちゃんは少ししぶったけど、未来の人達に残してあげたいと言うと納得してくれた。

  獲れた魚の頭を石で叩いて殺し、腹を裂いて内臓を抜き水で洗う。夕食の分はジップロックに入れパッキングする。内蔵などの残渣(ざんさ)は地面に埋めるようにして処理をする。

 

 私の持ってきた淡水魚の図鑑を見ながら、二人で焼く。ここで獲れた魚はアマゴ、ヤマメ、オイカワ。細い枝に刺して焼き、塩や醤油をかけて食べた。

 

「「いただきます」」

 

  川魚特有の臭みはある。しかもしょっぱいだけの味付け。でも、それでも、美味しかった。美味しいとしか思えなかった。なんだか分からないけど、今になって急にだけど。何かを食べて生きていることに感謝したくなった。

 

「美味しい。美味しいね」

 

「うん。本当に美味しい」

 

「私、もう食べ物を残すのやめるね。もうやめようと思う」

 

「……そうだな。感謝して頂こう」

 

 お姉ちゃんはハッと気付いたような表情をしたけど、すぐに優しく微笑んでくれた。

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 

  既に飲み水を使い切った空のボトルに川の水を入れ、パッキングした魚を出来る限り冷やして持ち運ぶことにした。せっかく減った重量だったが食料は貴重だし、悪いものを食べて体調を悪くすれば最悪の場合、自力で動けなくなる。それは避けなくてはいけない。

 

  今度こそ出発だ。たも網を片付けながらお姉ちゃんは言う。

 

 私は、お姉ちゃんが殺したヤマビルを土に埋めた気持ちが少し、分かった気がした。




川魚は調理次第で臭みも消え旨味のある肉質になり美味しいのですが、野生の魚には寄生虫などのリスクがありますのでお召し上がりの際はよく調べ、よく加熱する必要があります。
ちなみに私は北海道出身のため、川にはキタキツネの糞が流れている可能性がありエキノコックス感染をイメージするので非常に強い恐怖心があります。

あとまほ殿って網シャツとかジレみたいな昔流行ったけど昔からダサい服を持っているイメージがあります。なぜなんでしょう。
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