美遊兄が行く仮想世界   作:花火先輩

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最近忙しいねぇ(FGO、モンハン、執筆)
今年も今月で終わりとか早スギィ!あっという間すぎて草も生えない。




第11話 ウイッチ・アンド・フェイカー I

 

 

 宿命、運命。ソレは固く、同時に脆くもある。

 既に絶たれた運命は、いつかは巡り会う。

 例えば、別れ。ソレはひと時のモノである。

 終わることのない宿命は、いつかは訣別を迎える。

 例えば、因縁。ソレは永劫のモノではない。

 良くも悪くも、運命(Fate)からは逃れられないのだ。

 

 

 

 

 

 

 断絶した筈の縁は、突然に結ばれ合う。

 ある人によっては吉。またある人によっては凶となりうるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、暑い……」

 思わず、声が漏れる。今は8月中旬。正に夏真っ盛りである。照りつける太陽がジリジリと肌を焼き、謎の虫の鳴き声が更に暑さを引き立てる。生憎、この世界にはエアコンなどという文明の利器は存在しない。

 故に、やや大袈裟だが、洞窟や氷雪系フィールドに行くのが1番の解決策となっている。しかし、涼むためだけにわざわざモンスターが跋扈する圏外に赴くなど酔狂も甚だしい。

 こうも暑いと攻略なんてとてもじゃないがやる気にならない。

 でもまだ迷宮区どころかフィールドボスさえ倒されてない状況だ。何やらキーとなるクエストに行き詰まっているとか何とかだそうだ。全く、夏は暑いし、攻略は滞るし、最近オレンジプレイヤーの噂が流れてるし、いいことなどひとつもないではないか。

 ベンチに座る俺の前を通る血盟騎士団のメンバーも、何時もの士気など微塵も感じない足取りでふらふらと彷徨っている。確か、ゴドフリーとかいう名前だったか。こんな日に重装備とはご苦労なこった。耳をすませると「暑い……」と呟いていた。そりゃそうだ。

「だよなぁ……」

 と、彼に同情しながら立ち上がる。だが今後の予定は暑さのせいで溶け落ちた。もうやることはないと自分の中で決めつけて、比較的涼しい宿屋に戻ることにした。

 

 

 宿に戻って、頭からベッドに突っ伏す。のそのそとウインドウを開き、ひとつのアイテムを具現化させる。

《石版の破片A》、と名付けられたそのアイテムは、先程挙げたキークエストの重要なファクターとなる。この破片を集め、フィールドの各地に点在する台座に嵌めることによって次のエリアへの道が開けるというのがクエストを進める手段だ。全てのエリアを解放すれば、依頼主からフロアボスの情報を獲得することができる。

 肝心の破片の入手方法だが、ダンジョンのボスが持っているとか、宝箱の中に入っているとか、果ては街の何処かにあることもあった。実際、俺が持っている石版の破片Aは今居る主街区の町長の家のタンスの中にしまってあったものだ。蛇足だが、某RPGのような石版センサーなどありはしない。

 それはそうと、こんなに自堕落気味になるのは久しぶりな気がする。今の季節は気温が高く動くのが億劫になるし、冬は寒くて家から出たくない。因みに衛宮家ではコタツがあれば皆呑まれるので出すことは少ない。

 いや、そんなことはどうでもいい。今リアルのことを想起しても詮無いことだ。

 やはり何かしておかないと気が済まないので、閉じたウインドウを再び開く。

 確認するのは今まで集め、食した食べれる素材アイテムの味覚パラメーターを纏めたリストだ。何故そんなおかしなことをしているのかと言うと、SAOには現実ではあって当たり前の調味料が存在しないのだ。例えば、醤油、マヨネーズ、各種ソース等が挙げられる。限りなく真に迫ったものなら作ることは出来るかもしれないが、今のところそんな情報は皆無だ。

 SAOには《味覚再生エンジン》が採用されている。これは予め食材や調理法によって決められた味、匂い等の情報を脳に送り込んで実際に物を食っているかのように錯覚させるシステムだ。無論それで現実の体に影響が及ぶわけでもない。

 その味覚再生エンジンが定めた味を混合させることによって別の味を生み出すことも出来る。調味料の方もそれを利用して日々研究している。現に何度かハマる味や近しい味を発見したこともある。

 現在、57種類の調味素材の味覚パラメーターの詳細をリストにぶち込んである。アスナ、レインと協力しての成果だが、それが実ることはまだない。

「んー、醤油の方はウーラフィッシュの骨とアビルパ豆がいいか……けど何か決め手に欠けるな……」

 このようにあと1つ、何かが足りないものがある。もっと上の層に行ければ新素材が手に入るだろうが、こればかりは攻略を地道に進めるしかない。

 と、窓を操作していたら眠くなってきた。

 さすがにもう立ち上がる気力すらないので、大人しく睡魔に呑まれることにした。

 

 

 

 

 太陽の日差しに照らされて、眠りから覚める。時刻を確認すると、午前9時だった。こんなに眠るなんて弛んでいる証拠だ、と己に言い聞かせつつ、ベッドから起きる。備え付けの鏡の前に立つと、寝癖だらけの不格好な自分が映し出される。

「我ながら格好悪いですわね……」

 言いながら、櫛で乱れた髪を梳いていく。

 そうして整った髪をゴムで結んで、いつもの髪型(ツインテール)にする。後は一通りの準備を終えて、宿を出るだけだが──小さなテーブルに置かれた新聞に目線が向く。

 先日、フードの少年、ヒイラギが恐らくだが(わたくし)にくれたものだ。それに書かれたある記事は、私を大いに驚かせた。攻略組トッププレイヤーの特集。《黒の剣士》キリト、《閃光》のアスナ、《聖騎士》ヒースクリフなど様々な人物がピックアップされていたが、1番目についたのは《紅の戦乙女》と大層な異名を付けられたレイン、というプレイヤーだった。彼女はリアルで疎遠であった幼馴染、《枳殻虹架》

 と完全に同じ風貌だったのだ。これにより、彼女に関する決定的な手がかりが見つかった。虹架に会いたい一心で日本に来たし、彼女を驚かせるために日本語を頑張って習得した。

 それらの努力が、漸く実を結んだ。この世界の何処にいるのかはまだ分からないけど、直ぐに見つかると確信している。

 例え離ればなれになったとしても、結んだ絆は、途切れることなどないのだから。

 

 

 主街区からそれなりに離れた場所にある、最近発見された洞窟。そこが今の私が通っているレベル上げスポットだ。最前線なので敵はどれも強いものの、得られる経験値はかなり高い。

 入った途端、目の前に敵が現れる。何時ものことだ。今更、恐れることなどなかった。ずっと、そうしてきたから。

 ──狩りを始めてから1時間が経った。今のところは割と順調だ。しかし、敵のタフさは前にいた層とは比べ物にならない。強いのもあるが、それ以前に、武器のランクが低いのだ。私の愛剣《フィンスタニス》はとある層にて《シュルーマン》を倒した際に手に入れたものだ。モンスターからドロップした剣──つまり、敵に盗まれたもの。元の持ち主が現れたら返すつもりでいた。それ故に、《魔女》と揶揄されようが放置していた。だが、その人物は、ついに現れることはなかった。つまり、──死。

 それからは、主を失った剣を振るい続けた。そのうちに、いつしかこの剣には自分の半身と呼べるまでに愛着を持っていた。

 1度も手放すことなく、出来うる限りの強化を施し、今に至るまでに使い続けた。しかし──

 

 

『それに、この層じゃその剣は火力不足だ』

 

 

 ヒイラギの言葉が頭を()ぎる。

 分かっていた。この武器が通用する適正層を超えていたことなど。それでも、これを手放して新しい装備に変えることはしなかった。

 ここまで戦いを共にしたこの剣を、おいそれと捨てられるものか。何か他に方法はないかと考えていると、更にモンスターが湧いて来る。《テラーゴースト》、アストラル系のモンスターだ。数は5体と多いが、安全マージンは十分に取っているつもりだ。それでも、危険なのは事実だ。

 

 

 瞬き1つ。一瞬の隙。その僅かな間に、敵は姿をかき消していた。

「っ!?」

 背中から悪寒を感じ、反射的に振り返ると、そこには鋭い爪を構えたゴーストが。

 バックステップで避ける。しかし気を抜いてはいけない。背後から別のモンスターが襲い掛かってくる。それを躱し、ソードスキルを叩き込む。だが、敵は怯む様子を見せない。

「くっ……」

 それを見て歯噛みする。やはり、ここでは私の武器の性能が《弱い》のだ。

 そんなことは先刻承知。今はその思考を振り切り、迫る敵に集中する。

 確実に剣技を急所に当てる。そうでもしなければ、決定打にならないからだ。

 1体目が倒れる。死亡エフェクトを払い、次に意識を向ける。振るわれる爪。フィンスタニスの刃がいなす。それでもまた、肉薄する凶器。

「うっ……!」

 一撃を貰ってしまった。されど、その傷は直ぐに回復できる。お返しに、《ホリゾンタル・スクエア》を放つ。2体目に密着していた3体目ごと、半透明な体を、正方形を描くように斬り裂く。

 しゅうしゅう、と苦悶の声が上げられる。

 ここで集中を切らしてはいけない。重く感じる体に鞭打って、追撃を加える。2体同時撃破。しかしまだ残っている。向こうは余裕の表情を見せている。気味の悪い笑みさえ浮かべて、こちらを挑発している。

 ここで動けば敵の思う壺だ。じっと待機していると、しびれを切らしたゴーストが光弾らしきものを放ってきた。

「あう……」

 対応しきれず、まともに食らってしまう。加えてノックバックまで発生して、こちらの動きが阻害される。当然、あちらはそれを逃すことなく、ここぞとばかりに猛攻を仕掛ける。

「あ、ぐ──」

 HPが3割まで減る。HPは文字通りの生命線。無くなれば、死ぬ。だが、ここで死ぬことは許されない。自分には、その理由があるのだから──!

 

 

 再び、体を動かす。一旦距離をとり、突進技《ソニックリープ》でゴーストのウィークポイント、つまり首元を捉える。

「まだ、ですわ!」

 硬直が解けるや否や、再度のソードスキルで敵を討つ。最後の1体に目を向けるが、敵は恐れをなしたのか、そそくさと逃げて行った。

「…………はぁ」

 集中が途切れ、糸の切れた人形のようにその場に崩れる。

「やはり、1人では厳しいですわね……」

 ソロプレイも、そろそろ限界を感じていた頃だった。けれども、どうしても"仲間"というものの価値を見いだせない。今まで、不要と断じてきたもの。今更、それを求めるなんて──

「──帰りましょうか」

 脳内の思考を遮断し、ポーチから転移結晶を取り出す。

 今日は何時も以上に疲れた。最早戦う気力などなかった。値の張る結晶アイテムだが、それを私は躊躇うことなく使うことにした。

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 最近になって、よく見る風景が映る。36層主街区は夏の熱気で陽炎の如くその景色が揺らいでいた。コートなどという厚手の装備を着ている私にとっては暑いことこの上ない。なので、紅のコートだけを装備解除することにした。

 少しマシになったところで、ずっと贔屓にしている宿屋に向かう。

 普段と変わらない光景。攻略組がいれば、物見遊山に来たプレイヤーもいた。自分は……前者に分類されるのだろうか。ただ虹架──いや、レインを探しに来たのならそうではないのかも。

 歩き続けていると、何処かから微かに声が聞こえた。

 とても、とても、聞き覚えのある声色だ。決まったリズムに乗ったそれは……歌だ。

 知っている。私は、その歌を知っている。幼い頃、虹架がよく歌っていたもの。

 頭をからっぽにして、歌が聞こえる方へ駆け出す。

「はぁっ、はぁっ……!」

 無我夢中で走る。周りなど無視して、足を必死に動かす。

 早く。早く、早く、早く早く早く早く早く早く早く早く!

 それだけを自分に言い聞かせる。ただ、1分でも、1秒でも早く。"彼女"がいるであろう場所まで疾走する。

 そして──がむしゃらに走り続けたその先に、それは居た。

 肩まで伸びた長い髪。垂れ目と柔らかな表情。間違いない。記憶と同じで寸分違わぬ彼女──それは(まさ)しく。

「虹架……!」

 ピクリと、彼女の体が動く。此方へ向けたその目は、しっかりと見開かれていて、驚愕に染まっていた。

「え……サーニャちゃん、なの……?」

「ええ、ええ!私よ!」

 目に涙を溜め、心の底から喜んでいるような顔。それがあまりにも嬉しそうだったから、まるで救われたのは、私のではなく、レインの方だと思うほどだ。

 無意識的に、彼女の方へと駆け出す。レインも私に向かって走り寄る。

 そうして、腕をいっぱいに広げて、私たちはひし、と抱き合った。それでようやく、彼女に再会出来たのだと認識した。もう永遠に来ないと思われていたこの時を、どんなに求めたことか。

「ああ、レイン!やっと、会えましたわ……!」

「本当に……本当に、サーニャちゃんなのね!よかった……本当に、会えてよかった!うっ、うう……」

「私、ずっとあなたを探していたの……。けど、何をやっても見つからなくて……それで、このゲームの中であなたのことを新聞で見て、やっと、こうして会うことが出来た……!」

「サーニャちゃん……わたしの為に、そこまで……!本当に嬉しい……!」

 お互いに万感の思いを込めて、さらに抱擁を交わす。

 人目なんて気にしない。今までの努力が報われたことがとても嬉しかった。そして分かった。離別は永劫のモノでなく、"会いたい"と願い続ければ、必ず巡り会うことはあるのだと。

 

 

 

 

 

 

「あれ、あの女の子、誰だ?」

 歌声に導かれて広場に行くと、そこにはレインと抱き合う少女の姿があった。

「先輩、何だか感動の再会っぽいシチュみたいですし、暫く待ってあげましょう」

 そう言って袖を掴むのは、先日ばったりと会ったリアルでの後輩、天城柊ことヒイラギだ。彼とは中学で知り合い、キリト共々それなりの付き合いのある人物だ。実は、彼は魔術師の家系で、その歴史はなんと1500年という超が付く程の名家である。そんなヒイラギが、まさかSAOにいたとは思いもしなかったが。

「うーん、確かにそう見えるな。……適当に時間でも潰すか」

「ですね。外野は引っ込んでおきましょう」

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 時間を置いてさっきの場所に行こうかと思ったが、結局メッセージでこっちに来てもらうと送ることにした。

 その20分後、俺たちがいるカフェにレインと先程の少女が合流した。

 ちらっと横を見ると、数秒前まで居たはずのヒイラギの姿が消えていた。

「えーッ」

 とここで、ヒイラギからメッセージが送られてくる。

 

 

『後はごゆっくりどうぞ』

 

 

 託したのか、逃げたのか。そんな曖昧な文面を見つめて、肩を落とす。

「アイツ……」

 小さく溜め息をついてから、こちらを視認した彼女らに向かって手招きする。

「お待たせ、エミヤ君。急に集合場所変えるなんて、どうかしたの?」

「……いや、あそこで割り込むのは無粋だと思って」

「えっ、もしかして、見てた?」

「見てた、か。まあ、そうだな。具体的なことは分からなかったけど、邪魔だけはしない方がいいと思ったから直ぐに別の所に行ったぞ」

「そっかぁ。ごめんね、余計なことさせちゃって」

「別に気にしてないぞ。……それよりも、彼女は一体誰なんだ?」

 言いながら、銀髪の少女に顔を向ける。そう、これが1番気になっていたことだ。あの少女はレインの何なのだろうか。知り合い……にしては距離が近すぎるし、となれば……友人辺りか。

「あっ、紹介がまだだったね。ええっと……言ってもいいのかな……?」

「その位なら構いませんわ。……私の名はサーニャ。レインの幼馴染ですの。以後、お見知り置きくださいませ」

 流暢な日本語に内心驚きつつも、こちらも名乗る。

「俺はエミヤ。レインのパートナーだ。……にしても、幼馴染か」

 リアルのことをおいそれと話しても良いものかと感じたが……この程度ならいいのだろう。

「ええ。小さい頃からの付き合いですのよ」

「なるほど」

 ならばあの感動も納得がいく。再会と言うのは、そんなものだ。幼馴染。義妹。立ち位置は違えど、それが大切な人であることに変わりはない。

「暫く疎遠だったんだけど、今日漸く会えたんだよ」

「それは……いや、これ以上はタブーだ」

 これより先はリアルに深く関わる事情だ。この世界では現実の話を過剰に持ち込むのはプレイヤー間の暗黙の了解となっている。恐らく、プレイヤーたちが現実を認識するのを避けるためだろう。決して、リアルから乖離しろ、という訳ではない。現実への強い想いによる精神の混乱を防ぐため……なのかは推測でしかないので分からない。が、なんであれ、それが不文律なら守らなければならないだけだ。

「あら、その辺は弁えているのですね」

「聞いていいことといけないことの境目位はちゃんと分かっているからな」

 さすがに無闇矢鱈と人の深い事情にずかずかと踏み込むほどデリカシーのない男ではない。分別はつけるし、理解もする脳は持ち合わせている。

 やがて、まるで値踏みするような視線でサーニャがこちらを見つめてくる。なんだろう。見定めているのか。他人に対してはこう、疑り深く接する性格なのか、そのまま俺をじっと見つめている。

 

 

 ──もしや、人見知りではなかろうか。

 

 

「……レインが信を置くのも頷けますわ。良いパートナーを持ったのですね」

「うん。エミヤ君がパートナーで本当によかったよ」

「……」

 頬を赤らめて、レインがそう口にした。

 そのようなことを言われるとは思わなかったので、なんだか気恥ずかしくなってきた。

「あー……挨拶は済ませたし、そろそろ本題に入ってもいいか?」

 照れを誤魔化すように、本来の目的についての話を振る。

「あっ、そうだね。……で、進捗はどうなってるの?」

 レインが言うのは、現在絶賛進行中のキークエストについてのこと。エリアの解放に必要な石版の欠片の位置が完全ランダムなので、攻略組たちも手を焼いている。というか、広大なフィールドの中からちっこい欠片を見つけること自体、苦行以外の何物でもないのだが。

「ヒースクリフのヤツに聞いた話だと、今は2エリア目まで進んでいて、欠片の方はまだ揃っていないらしい。俺は1つ持ってるけど、2人はどうなんだ?」

「わたしは持ってないかな」

「私は1つ持っていますわ」

「……え、そうなのか?」

「ええ。洞窟を散策していたところ、隠し部屋を見つけまして。そこで手に入れたのです」

 サーニャが言った洞窟は、エリア2と1を繋ぐ門のすぐ近くにあるところだった。まさかそんな近場にあったとは、誰も想像出来なかっただろう。

「それは気づかなかったな……」

「欠片の位置は分からないからね……」

 石版の欠片がある場所は、恐らく定まっていないものと思われる。圏内、圏外問わず、あちこちに置かれているので、本当に見つけにくい。

 1例だが、その辺の草むらに落ちていた、なんてこともあったらしい。

「まあ、持っているなら後は1つだけだな。既に4つがプレイヤー側の手元にあるわけだし、残りの欠片がある場所の目星もついている」

 エリア3への道を開くための欠片は俺、レイン、血盟騎士団(の誰か)、キリトの合計4人が持っている。その中で、自分のものを含めた2つが台座に嵌め込んである、とキリトが伝えてくれていた。因みに、エリアを解放するのに必要なアイテムの数は5つだ。まだ2エリアしか開かれていないので確証は持てないが。

「その場所と言うのは?」

「ここなんだけどな」

 言って、可視化させたマップの1点を指す。

「……また洞窟ですわね」

 めんどくさがるように、サーニャが呟く。

「それに、割と遠いね……」

「ああ。後、ここはまだ誰も入っていない未開のダンジョンだ。慎重に進んで、あわよくば欠片ゲット、くらいの気持ちで行こう」

 先駆者の役割は少しでもダンジョンのマッピングをすること。そうすれば後続のプレイヤーも提供されたマップデータのお陰で安心して攻略することができる。別に初見で踏破しても構わないが、そういった事例は多くはない。

「うん」

「了解ですわ」

 2人の賛同を得たところで、椅子から立ち上がる。

「よし、そうと決まれば早速出発しよう。時間かかるだろうし、さっさと向かった方がいい」

 両者が頷く。店を出て準備を済ませた俺たちは、新たな仲間と共に目的地へと向かうべく、主街区を後にした。

 

 

 

 

 

 

 街を出て、街道を歩く3人を、遠くから3つの人影が見据えていた。

「おほっ、見つけたぜぇ、ヘッド!」

「あれが、銀の、魔女か」

「そうだ。まあ、《錬鉄の英雄》と《紅の戦乙女》もご一緒のようだが、あくまで俺たちの目的は《銀の魔女》だ」

「それなら纏めて殺しちまえばいいじゃん!」

 甲高い声をあげて、頭陀袋のような頭防具を被ったプレイヤーが捲し立てる。

「それもそうか。錬鉄の英雄には、また会いたいと思ってたところだしな」

 黒ポンチョの男に同意するかのように、しゅうしゅうと骸骨マスクの中から息を漏らす3人目のプレイヤー。

「んじゃあ、殺るとするか。イッツ・ショウ・タイム」

 見えざる脅威が、エミヤたちに肉薄しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

「錬鉄の英雄。オマエと黒の剣士は、徹底的に殺してやるからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





サーニャって、割と純粋キャラだと思うんですよ。多分。下ネタとか言っても?ってなってそう。そして作ったのがコレ。
※あくまでギャグなので本来の性格とは違っています。

後書き小話(オチなし)~日本語と……~

レイン「そう言えば、サーニャちゃん日本語話せるようになったんだね」
サーニャ「ええ。貴女を驚かせるために、一生懸命努力したのです」
「すごいよ、ここまで流暢に話せるなんて!……それで、日本語の他に何か学んだことはあるの?」
サーニャ「ええっと、確か……」


サーニャ「ナイスち○ち○!」スパパーン
↑(意味分かってない)
レイン「ひゃああっ!?そんなの何処で覚えたの!?」
サーニャ「えっと確か、引っ越し先で親切にして下さった尼さんが……」
レイン「その人、絶対ロクな人じゃないよ~!」

~Fin~

この後めちゃくちゃ間違いを正した。


次回、『ウイッチ・アンド・フェイカー II』

「それともなんだ、遠慮なしに偽善者(フェイカー)とでも呼んでやろうか?」


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