今回は1部設定を変えてお送りします。あと、この小説独自のソードスキルも含まれております。
因みに、剣ディル当たらなかったゾ……。悲しいなぁ……(諸行無常)フィンなんて要らねぇんだよォ!(声だけ迫真)
あっ、そうだ(唐突)UA1000突破しました。ありがとナス!
赤髪の少女ことレインとパーティを組んだ俺は、ボス部屋目指して迷宮区を攻略していった。
パーティを組んでて思ったのだが、やはりソロよりも複数の人数で攻略した方がやりやすくなる。わざわざ一人であれこれしなくても、仲間とスイッチするだけで戦闘を有利に進めることが出来る。仲間が居れば百人力だ、とはよく言ったものだ。
迷宮区を進んでいると、俺たちの行く手を阻むように侍のモンスターが湧いてくる。
侍は俺たちを発見するや否や刀の柄を握り、腰を低くする。《カタナ》ソードスキル《辻風》だ。居合系の技なので、本来は見てからでは対処が間に合わないのだが、生前培った戦闘経験は伊達じゃない。
《辻風》の初動を一瞬で見極め、俺は身体を倒れる寸前まで落とし、
《片手剣》ソードスキル基本突進技《レイジスパイク》を発動させる。左から突き上げた双方の得物がぶつかり合うと同時に、激しい火花が散らされる。俺も侍も、技を相殺されてノックバックする。ここで両者共に隙を晒すのだが。
「スイッチ!」
「うん、任せて!」
俺の掛け声と共に、ノックバックした俺に代わってレインが前に出る。
「やあっ!」
気合いと共に放たれた《片手剣》ソードスキル3連撃《シャープネイル》が侍の身体にヒットし、爪痕のような傷を残す。
「スイッチ!」
「ああ!」
レインの声と共に、俺は再び前に出る。
まだ隙を晒している侍に、先ず右から青白い光を纏った剣を振り、侍の胴を斬り裂く。続いて左から右に掛けて鎧ごと侍の胸元を斬る。そこから勢いを殺さず、寧ろ増していき(ソードスキルは自動なので勢いが殺されることはないのだが)、ぐるりと一回転した後に再度左から敵の身体を抉る。最後に剣を右に振り切り、鎧の隙間を捉えると同時に、俺の周りを正方形の軌跡が拡散する。《片手剣》ソードスキル4連撃《ホリゾンタル・スクエア》が侍のHPを残さず削り取り、その身体は無数のポリゴン片となって消えた。
「さっきから何回も見てるけど、エミヤ君って本当に強いね」
ひと息つこうとした俺の下に、レインが駆け寄ってくる。
「そんなことないさ。俺以外にも強いヤツなんて沢山いるよ。それに、レインだってかなりの実力者じゃないか」
レインの動きを見る限り、彼女も相当の実力を持っていると見た。流石、最前線をソロ攻略しているだけはある。
大技で一気にケリをつけるタイプの俺と(勿論搦手なども使うが)、隙と硬直時間の少ない技で敵を翻弄するタイプのレイン。やり方は違えど、相性の方は悪くないように思えた。
「そ、そうかな……。そうやって純粋に褒められると、ちょっと恥ずかしいなぁ」
と、そんなやり取りも程々に、俺たちは再びボス部屋に向かって歩を進めていった。
ボス部屋まで後少しだろうというところで、再び侍と相対する。だが今度の侍は少し違う。何処が違うかと言うと、持っている得物が刀ではなく、十文字槍なのだ。このタイプの侍とは戦った回数が少ない。恐らく、湧く頻度の少ないレアなタイプのモンスターなのだろう。
「■■■■ーー!」
侍が奇妙な叫び声をあげながら、中段突きからの突進をしてくる。
《両手槍》ソードスキル突進技《ソニック・チャージ》だ。このソードスキルは前にいると最初の突きで動きを止められ、続く第2撃をモロに食らってしまうのだが、離れていれば回避は比較的容易である。
事前に離れていた俺たちは、それぞれ左と右に回避する。
技を終えたことを確認した俺は、侍へと距離を詰める。
「はぁっ!」
左から右へ水平斬り、そして上から下への垂直斬り。
《片手剣》ソードスキル2連撃《ホーリー・クロス》が侍に確実にダメージを与え、十字の軌跡を残す。威力が高めな分、隙が大きい技なのだが、相手が硬直しているときに使えば問題はない。
「スイッチ行くぞ、レイン!」
「うん!」
侍の放つ突きを、《スラント》で叩き落とす。ここで、侍に隙が生じる。距離を取る俺と入れ替わる形でレインが前に出る。
助走をつけてから、《片手剣》ソードスキル突進技《ソニックリープ》が侍の腰を捉える。
ザシュッ!、と先程とは明らかに違う斬撃音とライトエフェクト。レインの攻撃がクリティカルヒットした証だ。硬直の解けた侍が槍を2回に渡ってぶんまわしてくる。確か、《ヘリカル・トワイス》と言う名のソードスキルだった筈だ。しかしレインはこれを難なく回避する。そして、ここで勝負を決めるとばかりに《ホリゾンタル・スクエア》を全てヒットさせる。最後の一撃で侍の身体が真っ二つになると同時に、無数の光の欠片となって霧散する。
「やったな!」
「うん!」
剣を収めたレインとハイタッチを交わす。
更に先に進むと、広い回廊にたどり着く。柱や壁の装飾がより派手になっているなど、オブジェクトが重くなってきているし、マップの空白部分も残り僅かだ。この先にボス部屋があるのは明確だろう。回廊の突き当たりには、周りの柱よりも豪奢な装飾が施された大きな扉があった。
「エミヤ君、此処って……」
「ああ、間違いない。ボス部屋の扉だ」
「……どうするの?取り敢えず戦う?」
その言葉には先程の勢いがない。多少は怖がっているのだろう。
「そうしよう。いち早く情報を集めたいし、別にやられても黒鉄宮に戻るだけだ」
「う、うん、そうだね……」
レインが俺の赤コートの袖を掴み、身体を少し寄せてくる。俺との距離は僅か数センチだが、それを感じる余裕はない。
「それじゃあ、開けるぞ」
両手で大きな扉を押し開ける。ゆっくりと開かれる扉の先には、薄暗い空間が広がっていた。
俺たちが部屋へと足の踏み入れると同時に、沢山の燭台から炎が灯る。それに合わせるように、部屋全体が徐々に明るくなる。
緊張と少しの恐怖を押し殺して、先に進む。
真ん中まで行くと、漸く部屋全体を見渡せるようになった。無論、ボスの姿も。階層主が俺たちを紅き双眸で捉え、のしのしと歩み寄ってくる。
通常の侍よりも遥かに大きな巨体を甲冑で覆い、頭には立派な兜を被っている。さらにmobの侍の身の丈程もある刀を携え、左腕には白いナニカが巻き付いている。正に王道を往く侍といった姿であった。
その姿を直視するだけで、ヤツから放たれる剣気がひしひしと伝わってくる。
「シャアアアアッ!」
両腕を広げ、まるで蛇の様な叫びを上げる。それと同時に、6段のHPバーと、頭上にボスの固有名が表示される。
《Kagachi the Samurai Lord》。theの定冠詞が付くのはボスの証だ。直訳すれば侍の主カガチ、といったところか。
緊張の糸がぴんと張り詰める。俺たちに明確な敵意を露にしたのを感じ、咄嗟に腰の剣を抜く。
俺たちが剣を抜いたのを敵対行為と捉えた侍主(面倒臭いのでこう呼ばせてもらう)が、先程の雑魚侍たちとは比べ物にならない程の速さでこちらへと走って来る。どすん、どすん、と侍主が大きな足で地面を踏み鳴らす度に振動が俺たちに伝わってくる。ただのポリゴンの塊だというのに、それから滲み出る殺意は本物と比べても遜色ない程である。俺が生前感じたドールズたちの敵意、殺意に負けないくらいだ。
本当は後者の方がより緊張を煽ったのだが、やはり獲物が大きいのと自身と同程度のものだと言葉では表せない違いというものがある。
「どうするの?」
「取り敢えず、mobと同じ手順で行こう」
「うん、わかった。行こう!」
「ああ!」
短いやり取りの直後に、俺は地を蹴って侍主へと肉薄する。
向こうは走りながら刀を上段に構え、ソードスキルの体勢に入る。《カタナ》ソードスキルには居合突進技の《辻風》の他に、上段突進技があるとアルゴから聞いたことがある。確か、その名は《無空》だったような気がする。現時点で確認されているであろう《カタナ》の突進技はこの2つしかないので、《無空》で間違いないだろう。
対して俺は同じく上段突進技の《ソニックリープ》を選ぶ。技同士が激突する軌道だ。ボスなのだから敵の膂力は相当のものだろうが、刀は片手剣よりも細身なので相殺するくらいならいけるだろう。
紫色の輝きを纏う侍主の刀と、黄緑色の光を伴う俺の片手剣が激しい音と火花を撒き散らしながらぶつかり合う。
侍主の力は予想以上に強く、少しでも集中を切らせばその時点で俺の片手剣は弾かれ、身体はバターの様に切り裂かれるだろう。しかし、俺はそんなヘマはしない。
「せあっ!」
気合いと共に、侍主の攻撃を強引に相殺させる。再びギャイイイン!と耳をつんざく音が鳴り響き、侍主の刀が地面に叩き付けられる。
「スイッチ!」
そう叫びながら俺は後ろへと大きく飛び退き、ふっ、と息を吐く。
強い。それがヤツに対する感想だった。単純な力もあるが、それ以上に技量が卓越しているのだ。やはり、今までに戦ってきた侍たちとは一線を画している。思い出せば、5層のボスもこんな風に今までのボスよりも強かった。多分、5の倍数の層のボスは他と比べて段違いの強さを持っているのだろう。確証は持てないが。当然だが、2人では到底勝てそうにない。
一気にボスへと距離を詰めたレインが《片手剣》ソードスキル2連撃《スネークバイト》を放つ。左から即座に右に切り返した剣がボスのHPを少し削る。分かってはいたが、体力面でも相当タフだ。
地面から刀を引っこ抜いた侍主が刀を真上に上げる。あのモーションは《幻月》の筈……なのだが、あのソードスキルは上から来るのか下から来るのかが完全ランダムなので、技を見切りにくい。果たして、どう来るか──。
真上へと振り上げた刀が、真っ直ぐに振り降ろされる。それにほんの少しだけ遅れる形でレインも剣を振り降ろす。火花が散ると共に、侍主の攻撃が弾かれる。だが、レインの攻撃はこれで終わりではない。彼女はそのまま手首を返し、第2撃を見舞う。続いて垂直斬り、そして最後に切り上げ。4連撃《バーチカル・スクエア》が次々とヒットしていく。ここで漸く、ボスのHPが目に見えて減少した。ボスにいい感じにダメージを与えれたことに心の中でガッツポーズを取りながら、レインと交代する。
硬直の解けた侍主が刀を両手で持ち、腰まで下げる。あれは《浮舟》の構えだ。あれを食らうと次のコンボに繋がってしまい、大ダメージを受けてしまうので、きっちりと無力化する必要がある。対して俺は、左斜め下からの《スラント》で迎え撃つ。2つの刃が激突し、両者共にノックバック。しかし俺は足に力を込めて踏みとどまり、吹っ飛ばされるのを軽減する。直ぐに体勢を立て直し、剣を3回に渡って振り切る。3連撃《シャープネイル》が大きな爪痕を残す。
こんなものか、と見切りをつけた俺は次の攻撃を弾いてブレイクポイントを作るべく、少し離れて剣を構える。
──さぁ、次はどう攻めてくる。
俺の思考を遮るように、侍主が刀を左脇に構える。あのようなモーションは見た事がない。一体、何を──
瞬間、侍主が振った刀から、横長の斬撃が飛んできた。
「何っ!?」
幸い、離れていたお陰で何とか反応することが出来た。咄嗟にジャンプし、斬撃を回避する。
「跳べ、レイン!」
「う、うん!」
俺の声に応じたレインが向かってくる斬撃をジャンプして躱す。しかし、侍主はまだ動く。右に振り抜いた刀を、今度は垂直に振り下ろす。またしても刀から今度は縦長の斬撃が飛んでくる。俺たちはこれを紙一重で避ける。もしコンマ数秒でも反応に遅れていたら、身体が真っ二つにされていただろう。考えただけでも背筋が凍る。あの斬撃飛ばしはソードスキルではないのか、侍主は硬直時間を課せられることなく動きを再開しようとする。そうはさせまいと俺は牽制のために懐から投擲用のピックを3本同時に投げるが、ヤツが前に出した腕の篭手に防がれる。
侍主はレインに狙いを定め、《辻風》を繰り出してくる。だがあちらも冷静に攻撃を見極め、《レイジスパイク》で迎え撃つ。
「スイッチ!」
「せやあああっ!」
彼女の声に応じ、横から侍主へと迫っていく。無防備なその身体にソードスキルを叩き込もうとした、のだが。
「ッ!?」
侍主の左腕が突き出された。その瞬間、ヤツの腕に巻き付いていたナニカが俺に向かって襲いかかる。
蛇だった。ヤツの腕にくっ付いていたのは。白い蛇は大きな口を開けて俺に接近してくる。
(──これは、拙い!)
そう思った俺は、即座にソードスキルを中断し、蛇を迎撃する。大口を開けて俺に噛み付こうとする蛇を、ソードスキルを発動せずに叩き落とす。だが、敵は勢いを止めずに再度俺に攻めてくる。
「くっ……!」
弾いても、弾いてもなお蛇はしぶとく俺を喰らおうとする。そして、十数回かに渡る攻め合いを制したのは──
「シャアアアッ!」
俺ではなく、あちら側だった。蛇は俺の攻撃を学習したのか、横に振った剣を巧みに避け、俺の左腕に噛み付いた。
「しまった!」
咄嗟に振りほどこうとするが、噛む力が強く、簡単には振りほどけない。そうこうしている内に、侍主が腕を戻し、俺を引き寄せる。
「うわぁっ!」
俺を拘束した侍主が、その腕を宙に掲げてぶんぶんと振り回す。周りの景色が分からなくなり、目が回る。次第に自分が何をされているのか理解出来なくなる。そして何故か宇宙が見えてきた。
(ほ、星!星が見えたスター!SAOではこんなこと起こる筈がないってかそうじゃなk──)
突然、俺の思考が遮られる。侍主がいきなり俺を投げ飛ばしたのだ。俺はそのまま壁に激突し、HPが一気に半分以上削られる。
「エミヤ君っ!」
レインが俺の方を向いて叫ぶ。だがその間に敵の硬直が解ける。
「レイン!前、前!」
「えっ──」
侍主が振り上げた刀をレインに叩き付ける。バシュッ!と異質なサウンドが響き渡る。拙い。あれはクリティカルヒットの音だ。大ダメージは免れないだろう。さらに敵は手首を返して切り上げ、締めに一拍溜めてからの強烈な突きを放つ。《カタナ》3連撃《緋扇》が彼女の身体を紙の様に吹き飛ばす。それに運の悪いことにその全てがクリティカルヒットしてしまい、レインのHPが一気に残り3割まで減らされる。
「くっ……、レイン!」
数メートルも後ろに飛ばされたレインの元に急いで駆け寄る。この状況は非常によろしくない。俺たちのHPは残り3割程度だ。もし次に強攻撃が来たら間違いなくHPがゼロになってしまう。
「うう、エミヤ君……」
「早く回復を──」
だが、そんなことを許す程敵は甘くなかった。先程と同じように、刀から上に振りかぶる。あれは、今さっきの《緋扇》ではなく、《幻月》の初動だ。
「チッ!」
舌打ちしつつも、すぐさま《バーチカル》の体勢に入る。本当は相殺した後でも連続してダメージを与えられる《バーチカル・アーク》や《バーチカル・スクエア》の方が良いのだが、今の俺にそんな余裕はない。
しかし、予想を裏切り、ヤツの刀が半円を描き、下へと回った。
「やばっ……!」
咄嗟にソードスキルをキャンセルしようとするが、今更止められるものでもなく、《幻月》を受けた俺は後方に吹き飛ばされ、レインに重なる形で倒れ込んでしまった。
「きゃっ!」
「くぁっ……」
正面を向くと、そこには侍主の姿はなかった。
(一体、何処に────まさか!)
ただならぬ気配を感じ、上を向くと、そこにはくるりと一回転をして黄色に染まった刀を振り下ろそうとしている侍主がいた。あのソードスキルは、確か《天輪》という単発重攻撃だ。恐らく、《カタナ》スキルの中でも上位に入るものだろう。今の俺たちに当たれば間違いなくやられる。かといって、今更避けることも出来ない。
振り下ろされた刃が、俺とレインの身体をぶった斬る。途方もない衝撃と、不快なショックが襲いかかり、俺と、その下に表示されたレインのHPバーがゼロになった。
眼前に《You are dead》の文字が表示されると同時に、俺たちのアバターは、モンスターと同様に、無数のポリゴン片となって消えていった。それに合わせて、俺の視界は徐々にぼやけていって、最後には暗転した。
俺たちが再び目を覚ましたのは、黒鉄宮の中だった。プレイヤーはHPがゼロになって死ぬと、この中に強制転移される。特にペナルティはないのだが、やはりゲームの中であろうと死ぬというのはいい気分にはならない。
「あはは、負けちゃったねー」
「ああ、さすがに2人だけじゃなぁ……でも、大体の動きは掴めたし、ベータの内じゃもう無理だろうけど、製品版になったらいけるさ」
ボスのHPは結局1段目の半分程度しか削れなかった。が、その動きは大体理解出来た。次はしっかりと作戦を練って大人数で挑めばきっと勝てるだろう。
「そうだね。もう、終了まで後数日だもんね。あっ、そうだ。エミヤ君、今、何時?」
「今か?ちょっと待って」
右の人差し指と中指を胸の前で揃えて、下に振り、メインメニュー・ウインドウを呼び出す。ウインドウの上側に表示された現在時刻は、午後5時45分だ。そろそろ夕飯の支度をしなければならない時間だ。
「5時45分だな」
「ええっ!?もうそんな時間?そろそろログアウトしないと!」
レインの叫びが黒鉄宮内に響き渡る。
「と言う訳で、わたし、もう落ちるね!」
「ああ、お疲れ様」
レインも指を揃えて、ウインドウを呼び出し、項目の下側にあるログアウトボタンを押そうとして。
「あっ、その前に……」
「ん?どうした?」
少し間を開けて、レインが口を開く。
「ええっと、コンビを組んでもらっても、いいかな……?」
「うん、別に構わないよ」
それを聞いた彼女の顔がぱあっと明るくなる。
「──ありがとう!じゃあ、これから、よろしくね!」
「ああ、こちらこそ」
そう言って、差し出されたレインの手を固く握った。
「今の内にフレンド登録しとこう」
「うん、そうだね」
俺はウインドウを開き、素早く操作してフレンド申請を送る。レインの前に紫色のウインドウが表示され、これを受諾する。
また1つ、俺のフレンドリストに新しい名前が追加された。
「じゃあ、もう落ちるね。また明日ね!」
「ああ、じゃあな」
レインがウインドウ下部のログアウトボタンを押すと、その姿は光の粒子となって消えていった。
「さて、今回得た情報をアイツに伝えないとな」
俺は黒鉄宮から出て、はじまりの街の商業区に行く。
「さて、アルゴのヤツは何処に──」
「オレっちなら此処にいるゾ、エミやん」
急に後ろから件の人物の声がした。これが噂をすれば影、というやつか。
「うわぁっ!?急に脅かすなよ、アルゴ」
「ニシシ、オレっちは神出鬼没だからナ」
アルゴは悪びれる様子もなく意地悪く笑う。
「それで、ボスはどんな感じだったんダ?」
「まあ待て。まずは何処か座れる場所に行こう。立ち話もなんだしな」
「りょーかい。いい店紹介してくれヨ」
「はいはい」
その後、はじまりの街の中にあるモダンなカフェーで持ってきた情報を全て提供した。アルゴは対価を払うと言ったが、最初は断った。しかし、根負けして結局対価を受け取ることになった。
「なるほど、カガチ・ザ・サムライロード、カ。使用するスキルはカタナ、時折縦横に斬撃飛ばし、刀を2本携えていることからHPが減れば恐らく、2本目を抜いてくる……大体はわかったヨ」
俺の提供した情報を、一語一句余さずに羊皮紙アイテムに書き込んでいく。
「ごっそさん。情報は得たし、オレっちはもう行くヨ」
書き終えたアルゴが椅子から立ち上がる。
「ああ、じゃあな」
立ち去るアルゴに、軽く手を振る。
「さて、俺もログアウトしないと」
指を振り、ウインドウを呼び出す。メニューの下側にあるログアウトボタンを押すと、たちまち俺の意識は仮想世界から離れていった。
現実世界に戻ったあとは、妹たちと飯を食い、風呂に入った後に、和人に今日の成果をLI〇Eで送ってからベッドに着いた。
それから、次の日、また次の日と、キリトとの狩りの後に、レインと一緒にクエストの消化をしていった。
そして、ソードアート・オンライン《クローズドベータテスト》最終日。いつもと変わらず、キリトとのレベリングの後に、レインのクエスト消化を手伝っていた時のこと。
場所は第2層。ある特定の素材を持ってきて欲しい、という内容のクエストを受けていた。そのクエストはコルがそこそこ貰えるので、金欠の初心者プレイヤーにはかなり重宝するクエストだ。その素材をゲットする為に、俺たちは主街区近くのダンジョンを探索していた。
必要な素材を集め、依頼主の元に戻ろうとした時。
「エミヤ君、あれ」
「ん?あれは──」
レインが指差した方向には、ソロで牛型モンスターと戦っている少女がいた。
「どうする?助太刀する?」
「そうだな。見たところ、かなり押されているようだし」
「じゃあ、行くよ」
「ああ」
俺たちは少女の元へ駆け寄ると、あっという間にモンスターを倒していった。
全てのモンスターを倒したことを確認して、ふぅ、と息をつく。
助けた少女は《コハル》、と言う名だった。その後、俺たちはコハルと一緒に依頼主の所へ行き、クエストを達成させた。
主街区に戻り、コハルとフレンド登録をした後、アイテムの整理をしようとしたその時。
『《ソードアート・オンライン》ベータテストにご参加いただき、ありがとうございました。本日、午後5時をもちまして、ベータテストを終了致します。ベータテスト終了に伴い、全てのプレイヤーデータはリセットされます。正式版のご参加を心よりお待ち申し上げております』
「あー……もう終わりかぁ」
レインが残念そうに呟く。
「そうみたいだね。ありがとう。最後に2人に会えて本当に良かった。エミヤ君、レインちゃん、またね!」
「ああ、またな」
「うん、またね!」
別れの挨拶をして、コハルはログアウトした。
「じゃあ、わたしも落ちるね。正式版でまた会おうね!」
「ああ、楽しみにしてるよ」
そして、レインも落ちていった。
「さて、落ちるか」
俺もウインドウを開き、ログアウトボタンを押して、2ヶ月間遊びまくった仮想世界を後にした。
さて、正式版ではどのようなことが待ち受けているのだろうか。考えただけでワクワクしてきた。
「ああ、楽しみだなぁ」
その呟きは、茜色の空にそっと消えていった。
聖杯くん~アスナ編~
「聖杯くーん!」
「どうしたんだい?アスナ君」
「最近、キリト君が私を差し置いて他の女の子と一緒にいるのよ~!」
「もう、しょうがないなぁ、アスナ君は~」
っ出刃包丁「ランベントライト~!」
「えっ?」
「抜刀妻の恐ろしさを思い知らせてやれよ(ゲス顔)」
次回 「デスゲームの幕開け」
漸くほんへに入れるゾ。
感想、お待ちしてナス!