なんか今回の話を書いてると、だんだん何やってんだ自分、ってなりました。改めて見直すと、少し恥ずかしいですね。
補足:この話ではデミヤが出てきましたが、ノーマルエミヤもちゃんといます。でも同じ士郎の心の中にいても、デミヤもエミヤも互いを認知していませんので(多分)、そこは留意しておいてください。
FGOの新秋イベ……楽しみスギィ!もう待ちきれないよ。
あっ、そうだ(唐突)UA3000突破しました。ありがとナス!こんな拙作を読んでくれてる方に感謝を。グラッチェ!
それでは、どうぞ。
草原を駆け抜け、モンスターに注意を払いつつ森を抜けた先に辿り着いたのは、小規模の村《ホルンカ》だ。小規模と言っても、武器防具屋や宿屋など、プレイヤーに必要な施設は一通り揃っている。この村に着くまでに、殆ど休まず、モンスターとも極力戦闘を行わずにずっと走っていた。幸い、草原に湧くモンスターは、自分からこちらに襲ってくることがないので余計な足止めを食らうこともなかった。村に到着しても、居るのはNPCだけなので、俺たちが1番乗りということになる。取り敢えず、今までに手に入れた素材アイテムを全部売り払い、キリトと俺は革製のコートを、レインは簡素な胸当て(これも革製。というか序盤の防具は金属製のものは少ない。)を購入する。コートを装備する際に、キリトが姿見を見て「俺、だな……」と呟いていた。確かに、自分の姿そのものがこの世界にいることへの実感が湧かないのも分からんでもない。
その後は、ポーション類などを金が尽きるまで買い込み、今回、この村に来た目的の1つである《森の秘薬》という名のクエストをやろうとしたのだが……。
「……そういや、このクエって本来1人用じゃなかったっけ?」
「「あっ」」
キリトの言葉で思い出した。そう、このクエストは1回につき1人しか受注出来ないのだ。つまり、俺たち3人とも片手剣使いなので、合計3回もこのクエストをやらなければならないことになる。
「……どうする?」
「順番決めてやるしかないな。胚珠は1回で3つ集めればいいし、再受注可能になったらアイテムだけ渡せばいい」
「じゃあ、先ずはジャンケンだね」
レインの提案を皮切りに、バッ!と音がしそうな勢いで俺たちは一斉に身構える。
「言っておくが、これはただのジャンケンじゃない。これは──強武器を誰よりも先に手に入れるための闘いだ!行くぞ!」
ゲームにおいて、武器の強さは最も大事なソースの1つと言っても過言じゃない。いくらステータスが高くても、武器の性能が低ければ強力なモンスターを相手取ることなど出来ないだろう。それほど、性能の高い武器というのは大事なものなのだ。
2人とも、声を発することなく首肯する。一瞬の静寂が訪れそして──。
「「「最初はグー!ジャンケンポン!」」」
掛け声と共に、己の手を突き出す!
それぞれの出した手を見ると。
俺:グー、キリト:グー、レイン:グー。
見事にあいことなった。勝負はまだそう簡単には終わらない、ということか。
「「「あいこで、しょ!」」」
再び各々の手を出す。
今度は全員パー。またあいこだ。
「「「あいこで、しょ!」」」
全員チョキ。またしてもあいこ。3人ジャンケンで3回連続であいこが──しかも全員同じ手が続くのはそれなりに珍しい。アニメとか漫画ではよく起こるものなのだが。
その後も4回目、5回目とジャンケンが続くが、いずれもあいこばかり。そろそろ決着をつけたいところだが──。
そして、6回目。今度こそ終わりにしたいと願い、それぞれ魂を込めて手を出す。結果は──。
俺はパー、キリト、レインがグー。つまり、俺の勝利だ。
「よしっ、勝ったぁ!」
思わず、ガッツポーズをとる。誰よりも早くクエストを受けれるということは素直に嬉しい。
「くっそー、負けたかー……」
「あはは、負けちゃった」
レインは仕方ないね♂といった感じだが、キリトは明らかに悔しさを顕にしている。やはり彼は根っからのゲーマーであった。因みに、俺のリアルラックは高い方で、スマホゲームのガチャでも高レアのキャラをぽんぽん出したりしたし、ジャンケンだって負けたことが殆どない。
「んじゃ、クエスト受けてくる」
そう言って、俺は武器防具屋に程近い一軒家に向かって走り出した。
そのクエストの内容は、病にかかった娘を治すために、森に生息する植物型モンスターから採れる薬の材料である胚珠を取ってきて欲しい、というものである。見事クリアすれば、今後の攻略に大いに役立つ片手剣が貰える。剣使いにとっては必ずといってもいい程にやっておいた方が良いクエストだ。もちろん、やるやらないかは個人の自由だが。
中々に長ったらしい話を全て聞いたところで、クエストのログが更新される。それを確認した俺は、依頼主の家を後にする。
「思ってたよりも遅かったね」
「ああ、おかみさんの話が長くって」
「じゃ、さっさと終わらせようぜ。もう夜だしな」
俺たちが村を出ようとすると、ちょうど午後7時を告げる鐘の音が村全体に響き渡る。もうそんなに経ったのかと思いつつ、森の奥に向かってダッシュする。途中で、誰かとすれ違った気もしたが、まぁ気のせいだろう。
森で狩りをして約15分くらい経った。が、未だに目的のアイテムはドロップしない。
今戦っているのは、《リトルネペント》と呼ばれる植物型モンスターだ。リトルと言う割には、1メートル半を越える大きさを持つ何とも言えん形状のエネミーである。ヤツは太い顔(?)アンド胴体の上部分と、移動のための足みたいな細い根っこの下部分があり、この上と下の境目が弱点となる。そのため、垂直斬りの《バーチカル》よりも、水平や斜めの軌道の《ホリゾンタル》や《スラント》が効果的である。
ネペントが人で言う手の役割を果たすツタを振り回してくる。あのツタは先っちょがナイフのように鋭く尖っているので、当たるとそれなりにダメージを受ける。だが、俺はこれを難なく避け、隙だらけの弱点目掛けて《ホリゾンタル》を放つ。ソードスキルというのは、モーションに合わせて身体を捻ったりして意図的に威力を上げることが出来る。が、この技術はかなり集中力を使うので、少しでも切らすと最悪ソードスキル自体が不発に終わってしまうというリスクも孕んでいる。まあ熟達すればその危険性も少なくなるのだが、俺もキリトも、精々連続10回程度が限度だ。
ザシュッ!といい音を出すと共に、敵のHPが一気に5割強も減る。本来なら3~4割なのだが、威力を意図的に上げているので、通常よりも多くのダメージを稼げる。弱点に攻撃を受けた植物モンスターは動くことなくその場でスタンしてしまう。当然、この好機を逃さず、2発目の《ホリゾンタル》で敵のHPを残らず消し飛ばす。その後、割れたガラスのようにその体躯が爆散する。
「出ねえなぁ……」
今戦ったのは、普通のネペントだ。目的のアイテムを落とすネペントは、頭部の頂点に大輪の花を咲かせている通称《花つき》と呼ばれるヤツなのだが、そいつが湧く確率は、僅か1%程度かそれ以下である。その他にも、花の代わりに大きな実を付けている《実つき》がいるのだが、この実を割ると、仲間を呼び出す効果のある煙を撒き散らしてしまうので、間違っても破壊しないようにしたい。
「まぁ、確率ブーストしても、出にくいものは出にくいし、仕方ないよね」
向こうで2体のモンスターを相手にしていたレインが、こちらに近づいて俺の呟きに応える。
確率ブーストと言っても、ただネペントを狩り続けるだけなのだが。
「そうだな……ん?」
カサカサ、と音のする方を見ると、そこにはなんと。
「「見つけた……!」」
草むらから出てきたのは、俺たちが探し求めていた、《花つき》だった。やはりベータと変わらず、てっぺんに花を咲かせている。ノーマルと違う点は、見た目だけでなく、ステータスも通常よりも多少上がっているようだ。その証拠に、カーソルの色が普通のヤツが少し濃いピンクだったのに対して、こちらはより赤に近い色になっている。因みに、モンスターの強さはカーソルの色の赤の濃さで変わる。自分よりも強ければ真紅または薄めの赤、弱ければ白となる。手に負えない相手となれば、真っ赤を通り越して血の色になるらしいが。
「私が錯乱させるから、その隙に倒しちゃって!」
「ああ、分かった」
ネペントが体を反らし、口を膨らませる。腐食液発射のモーションだ。浴びれば防御力が下がる上に武器でガードしても耐久力が減ってしまう、厄介な攻撃だ。しかし、避けてしまえばどうということはない。
俺とレインがそれぞれ左右に跳び、その後に敵の口から腐食液が吐き出される。着弾点を見ると、地面が少し溶けていた。だが、俺たちはちゃんと回避したので、影響はない。
続けてレインに対してツタを振るうが、彼女はこれを距離を詰めながら舞うような動きで避けていき、そのまま弱点に向かって攻撃する。ヤツのHPバーが2割減り、追撃を見舞おうとするが、敵の反撃にいち早く勘づいたレインは腕を咄嗟に引き戻し、側面に回避。一瞬、動きが止まったのを見逃さず、弱点を一閃する。刹那、動きを再開したネペントのツタが横薙ぎに振るわれる。レインはそれをジャンプし、紙一重で避ける。
「今だよ!」
「ああ、任せろ!」
まだレインにタゲを向けている敵の茎に《ホリゾンタル》の一撃がヒットし、一瞬の手応えと共に、胴と根っこを両断した。切断された胴体が地に落ちるよりも早く、ポリゴン片になって霧散する。
ネペントが完全に消えたのを確認して、腰の鞘に剣を収め、足元に落ちた球体を拾い上げる。これが《リトルネペントの胚珠》だ。
「やったぁ!1つ目ゲットだね!」
「ああ、幸先がいいな、今回は」
同じく剣をしまったレインとハイタッチを交わす。
ベータテストの時にもキリトと同じクエストをやったのだが、その時は2人で乱獲したにも関わらず、1時間経っても《花つき》が出て来なかったのだ。こんな短時間でお目当てのものが手に入ったのは、僥倖以外の何物でもない。
「こんなに早く手に入るとは思わなかったよ~。エミヤ君の運がよかったのかな?」
「んー……確かに、リアルラックは高い方だとは思うけど」
こういうところで運が働くのは素直に嬉しいことだ。まぁ、その運が尽きるかどうかは別の話だが。
「おーい、2人ともー!」
声のした方を振り返ると、こちらに向かってくるキリトと、見知らぬ男性がいた。年齢は俺たちと同じくらいだろう。その男は革鎧にバックラー、そしてスモールソードを装備している。一目見て分かった。彼は、元ベータテスターだ。それに、恐らく彼も──
「キリト、その人は?」
「ああ、紹介するよ。彼はコペル。俺たちと同じ、《森の秘薬》をやってるんだ。さっき向こうで出会ってな。今はパーティは組んでいないけど、一緒にネペントを狩ってたところなんだ」
予想的中。初期武器よりも強いが、ネペントの腐食液に弱い《ブロンズソード》を装備していない点で既に察していたが、本当に当たるとは。
「へぇ、そうなのか。俺はエミヤ、よろしく」
「私はレインだよ」
「うん、こちらこそ、よろしく。……って、エミヤって名前、何処かで聞いたような……」
「えっ?き、気のせいじゃないかな」
彼も俺のことを知っているのか。ベータテスターだから有り得なくもないことだが、自分の名が知れ渡っていると思うと、なんだか気恥ずかしくなる。
とまあ、新たな仲間を招き入れ、残り2つの胚珠をとるために、さらに奥へと進んでいく俺たちなのであった。
いや、残り3つだったか。
『……嫌な予感しかしないのだがな』
「……?」
「エミヤ君、どうしたの?」
レインが俺の顔を覗き込んでくる。
「……はっ!?あ、ああ、いや、なんでもない」
「んー……ならいいんだけど……」
(──今の、声は……一体……)
あれから、30分くらい経過したが、未だに2匹目の《花つき》は見つからない。ノーマルを狩り続けているうちに、レベルが3に上がった。
聞き慣れたファンファーレと共に、俺の身体が淡い光に包まれる。
3ポイント加算されたスキルポイントを、筋力に1、敏捷に2振る。
「レベルアップだね、おめでとう!」
「うん、ありがとう」
「随分と早いんだね。一体、どれだけ狩ったんだい?」
今までに1時間経過したが、どうだろうか。数えるヒマなんてないし、そもそも数えようとも思わなかった。
「ざっと、100は越えてるだろうな」
コペルの問いに、キリトが答える。大まかに数えていたのか。いや、恐らく勘だと思う。
「へぇ、そこまで狩っていたなんて……」
その途端、コペルの言葉を遮るように、向こうでモンスターが湧いてくる。大雑把に積み上げられたポリゴンの塊は、やがて形を成していって──
「「「「あっ!」」」」
その頂点には、先程見たのと同じく、真っ赤な花が咲いていた。
「しめた、2匹目だ!」
「まて、エミヤ!」
《花つき》に突っかかろうとした俺を、キリトが首根っこを掴んで静止する。
「えっ?」
「奥をよく見ろ。《実つき》だ」
キリトに言われてよく見ると、確かにそこには赤い実をつけたネペントがいた。あれこそが《実つき》だ。噂によれば、《花つき》を放っておくと、《実つき》に変化するらしいが、真相は分からない。
さらに、後ろからは数匹のノーマルタイプが。
「どうする?」
「……行こう。僕が《実つき》を抑えておくから、キリトが速攻で《花つき》を、2人は後ろのネペントを頼む」
「……分かった」
提案者のコペルが、キリトの返事よりも早く、《実つき》に向かって走り出す。
「さて、キリトの援護に行きたいのは山々なんだが……先ずは──」
「うん、先ずは──」
後ろを向き、同時に剣を鞘から抜く。
「この雑魚を倒さなくっちゃな」
「この雑魚を倒さないとね」
そう言って、俺たちも地面を思いっきり踏み出した。
僅か1分程度で全ての敵を仕留めた俺たちは、《実つき》を抑えているコペルの元へと向かう。
「悪い、待たせた!」
《花つき》をきっちり仕留めたキリトが叫び、コペルの元に走る。
だが、その足が突然、ぴたっと止まった。
何事かとキリトの視線の先のコペルを見ると、こちらに顔を向けて、口を開き。
「ごめん、3人とも」
そう言って、相対するネペントに向き直って、剣を大きく振りかぶり、《バーチカル》を発動させたのだ。
振り下ろされた剣は、実を割り、ネペントの体を断ち切った。鼻腔を刺激する臭いが撒かれると共に、モンスターは無数の欠片となって爆裂する。
「ごめん」
もう一度謝り、コペルは近くの茂みに隠れる。
「え、な、なんで……?どうして、コペル君は実を──」
コペルの意図を掴めないレインが震え声で疑問を投げかける。
「──《
その方法は、何もSAOに限った話じゃない。他のオンラインゲームでも、そういうことは偶に起きる。現に俺は、その被害者となったのだから。
「じゃあ、なんでこんなこと……」
「生きるため、だと思う。アイツは俺たちを蹴落としてまで、自分の生存を優先させたんだ」
コペルの中では、実を割ってネペントたちを集め、タゲを俺たちに集中させて殺させ、しかる後に胚珠を回収、何事もなかったかのようにクエストクリア、という寸法だったのだろう。だが、これには1つ、穴があった。
「でも、ヤツには《
キリトの簡略な説明の後に、コペルの計画の穴についてこれまた簡単に話す。そう、ネペントに限らず、植物型モンスターには、視覚がないヤツが多い。どんなカタチを持っていても、所詮は植物だからだ。ではどうやって標的を認識しているか?答えは明瞭だ。視覚以外の感覚器官を用いているからだ。実際の植物にも、感覚毛という人間でいう触覚に相当するであろう器官が存在する。ハエトリグサがいい例だ。だが、ゲームの植物型モンスターには、触覚のみならず、聴覚や嗅覚の存在するものもいる。構造や原理はまるで分からないが。ゲームだから深く気にしてはいけないって?ごもっともデス。
「さて、どうする?このまま道を開くか、それとも──」
キリトの言葉が一瞬、途切れる。が、再び口を開き。
「コペルを助けるか」
「私たちを殺そうとしたのに?」
キリトの言葉に対し、抗議するレイン。確かに、誰もがそう言うだろう。しかし──
「俺たちが助けなければ、コペルも死ぬ」
「あっ、そっかぁ……」
さすがに、そんなヤツに生きる価値なんてねぇ、なんて言うことはなかったか。
「それに、俺は見捨てられないんだよ。たとえ俺たちを殺そうとしたとしてもだ。目の前で誰かを失うのは、もう嫌なんだ……!」
生前、俺は色んなモノを失った。切嗣を。桜を。そして、美遊を。だから、たとえ名も知らぬ赤の他人であろうと、俺の救える範囲であれば、極力救いたい。
「エミヤ君……」
「……そう言うと思ったよ。分かった、助けよう。俺は前をやる。2人は、コペルの救出に回ってくれ」
「「了解!」」
急げ、と心の中で呟きながら、俺はネペント共の群れに突っ込んだ。
sideコペル
有り得ない。計画は完璧だったはずだ。なのに、何故、ヤツらは僕に向かってくるんだ……!?
ハイドはちゃんと出来ている。距離も十分にとっている。でも、1部の標的は僕に向けられている。
と、そこではっとなった。《
デスゲームという状況下で、思考が甘かったのだろうか。僕は早々に理解していたはずなのに。結局、他の人と同じように、根底では恐怖が残っていたのか。
こんな状況なのに、自分を嗤ってしまいそうになる。僕は、生きるどころか自決するのと同じような道を選んでいたのだ。
ついに、ネペントが僕の前まで接近してくる。
「ひいッ!?」
死への恐怖のあまり、その場にへたりこんでしまう。そんな無防備な僕に、敵の鋭いツタが振るわれ──
「おおおッ!」
その一撃が、僕に届くことはなかった。
side out
どうにか間に合ったようだ。振るわれたツタは、すんでのところで俺の剣に切断される。
「エミヤ……どうして……」
「話は後だ。先ずはヤツらを仕留める」
と言っても、その数は実に40を越える。俺たちにタゲを向けてきた、今まさにキリトが相手をしているネペントは僅か5匹。多分、コペルの隠れた場所が悪かったのだろう。
そんなことは置いといて、先ずは目の前の相手に集中するとしよう。
はっきり言おう。劣勢だ。何せ2人で20匹を相手しているのだから。それに、自然に湧いてくるヤツらも含めると、減るどころか増えてる気がする。
「エミヤ君、これじゃ埒が明かないよ!」
「くそっ、何か……何か方法は……」
『駄目だな。全くもってなってない。それではいつまで経っても劣勢のままだ。最悪そのガキ共々死ぬぞ』
不意に、さっきも聞いた声が頭の中で響く。
『全く、これだから未熟者は。仕方ない。久しぶりに表に出てやるとするか。他者を巻き込んでも文句を言うなよ』
(──まさか、また
『今はすっこんでろ。どの道お前じゃあ役者不足だ。いいからさっさとその身体を寄越せ』
その言葉の後に、エミヤの視界の前に2丁の拳銃を持った"黒いアーチャー"を幻視する。こういうことは何度かあったのだ。この、自らの中に潜む異物に身体を掌握される感覚を味わったことが。
「うっ、……おっ、おお……!」
突然、激しい頭痛が襲う。痛みに耐えかねて反射的に頭を抱えてしまう。これも昔と同じ、現象の前触れだ。徐々に意識が薄れていき、身体が支配されていき、自分が自分でなくなっていく。
「エミヤ君!?」
レインの叫びも、もう聞こえなくなっていた。
「や、や……めろ……!」
必死に抵抗するが、時すでに遅し。
「お……あぁ……、ああああアアアアッ!!!!」
彼の全ては、完全に支配された。
再び項垂れ、然して顔を上げて、目を開く。その瞳は、黄金色に光っていた。
「エミヤ……君?」
レインは何が起こったのか、理解が追いつかないようだ。それもそうだ。いきなり目の前のパートナーが頭抱えて発狂するなど考えられない。
「フッ……。無能共が、雁首揃えて」
今までよりも、明らかに低い声。そんな声を洩らす口元は、まるで何かを嗤うように、醜悪な笑みを浮かべていた。
「シッ!」
いつの間にかネペントに肉薄していたエミヤは、威力を最大限までブーストさせた《ホリゾンタル》で敵の弱点をぶった斬る。
一撃必殺。目の前のモンスターが爆散する。
「これがソードスキル、か。全く、敵を殺すのに技を使わなければ決定打を与えられないとは、不便な世界だ」
今の彼は、いつものお人好しな衛宮士郎ではなく、冷徹に、効率よく、感情を捨てた
「おい、コペルとやら」
「えっ、な、何?」
エミヤの圧に押されてか、コペルの声がやや上ずっている。
「死にたくなければお前も戦え。元はと言えば、お前の撒いた種だ。自分のケツは自分で拭え」
「う、うん、分かった」
そう言って、コペルは立ち上がり、剣とバックラーを構える。
「お前らのような雑草は刈られるのが道理だ。大人しく消えていろ」
剣を敵の群れに突きつけて、エミヤは挑発するかのように声を発した。
sideキリト
一転攻勢、とは正にこのことか。
突如豹変したエミヤは、40ものネペントの群れを次々と狩ってゆく。
その動作には、一切の無駄がなかった。ただ効率よく殺し、そのために卑劣な手を何度も使う。コペルを盾にしているところもあった。あまりに効率が良すぎて、俺が介入する余地がないくらいだ。
「何するんだ、エミヤ!」
見ると、今まさにモンスターの前にコペルを引っ張って盾にしているエミヤがいた。
「
「エミヤ、やっぱり変だよ……一体何が……」
「ごちゃごちゃ言ってないで、目の前の敵に集中しろ」
さらっとコペルの言葉を受け流すエミヤ。こういうところも普段のアイツとガラッと変わっている。
エミヤが突然豹変するのは、これが初めてではない。過去にも何度かあったことだ。その現場を、俺は何度も見てきたというのに、未だにあの変化には慣れない。
「エミヤ君、一体どうしちゃったの……?」
レインも、アイツの豹変ぶりに唖然としていた。無理もない。今まで優しく接していたパートナーが、いきなり冷徹になったのだ。そして、何故そうなったのかも分からないときた。レインがああなるのも当然か。
「口よりも手を動かせ。伝令ならまだしも、無駄話などするんじゃない」
「…………」
それからは、また無言で敵を屠り続けるエミヤ。的確に弱点を狙い、使えるものは何でも使う。
あれだけ多かったネペントたちは、みるみるうちに数を減らしていき、とうとう最後の1匹となった。
「シャアアアアア!」
最後の足掻きのつもりか、一瞬の隙を見せたレインにツタを振るう。
「しまっ──」
しかし、その攻撃は、エミヤの刃に阻まれる。
「跪けッ!」
そう言って、ネペントの茎を切断し、地に落ちた胴体を踏みつけて口に剣を突き立てる。直後、足共々ポリゴンとなって爆砕される。
「おい、怪我はないか」
剣を収め、ぶっきらぼうに尋ねる。
「うん、ありがと……」
「そうか、ならいい」
ぷいと顔を背け、また素っ気ない口調で呟く。だが、その顔が少しだけ笑っていたのを俺は見逃さなかった。
「さて、こんなものか。では、オレは戻るとしよう」
エミヤが目を閉じると、さっきまでの凄まじい殺気は嘘のように消えていた。
side out
「はっ!?」
意識が一気に覚醒する。さっきの記憶はないが、アイツがまた俺の身体を使ったということは分かる。
「やっと戻ったか」
声のした方を振り向くと、キリトがこちらに近づいて来た。
「?戻った?」
「一体、どういう……?」
誰もが抱えるであろう、当然の疑問。だが、馬鹿正直に俺の心の中には未来の俺が2人いる、などと言えるわけもなく。
「……まあ、その、なんだ、ほら、アレだ。所謂二重人格ってヤツだよ。うん」
こうやって誤魔化すしかないのだ。本当のことを話せば、きっとドン引きされるだろうからな。
「へ、へぇー……。──なぁ、みんな」
「「「ん?」」」
「どうして、僕を助けたんだ?僕は、君らを殺そうとしたのに……何で……」
コペルがおずおずとそう尋ねる。俺たちを騙し、間接的に手をかけようとしたコペルは、他の人にとっては許されないことだろう。だが、彼は自分が生きるためにそうしたのであって、決して悪の道に走るためではなかった。故に、俺は助けた。
「お前が死ぬのが、嫌だったんだ。それに、お前は決して、進んで悪になろうとしたわけじゃないんだろう?だからだ」
「君たちは、僕を許してくれるってのかい?」
「そうだな。コペルの行動は悪意あってのものではないし、寧ろこの状況下だと、仕方の無いことだ。そうだろ?2人とも」
デスゲームを生きるとなれば、彼以外にもそういう行為をする者もいるだろう。最悪、MPKではなく、直接自分の手でプレイヤーを殺す者も現れるだろう。そう考えると、コペルのやったことなどかわいいものだ。
「うん、そうだね。最初は許せなかったけど、本当の目的を知ったら、何だか共感しちゃった」
キリトの問いに、俺は無言で首肯する。確かに、生きるために小を切り捨てるやり方は、どこか理解出来るものだ。
「……ありがとう、3人とも……うっ、うぅっ……」
自分の犯したことが許されたと感じたコペルは、堪えきれぬ嗚咽を漏らす。涙は出ない。もしかして、現実の身体が涙を流しているのだろうか。
「もう気にしなくてもいいんだ。さあ、帰ろう、コペル。クエストを達成させるんだ。ちょうど胚珠も4つになったし」
「……うん……」
そして俺たちは、最短ルートでホルンカの村に帰還した。
その道中には、不思議とモンスターは1体も出なかった。
聖杯くん~リズベット編~
「このコーナーまだ続くのか……作者もネタが尽きかけてるらしいんだけどなぁ……」
「聖杯くーん!」
「む、リズ君、どうしたんだい?」
「私も最前線で活躍したいのよ~!」
「しょうがないなぁ、リズ君は」
っ出刃(ry「ダークリパルサー!」
「???」
「それ使えば最前線なんて余裕だよ」
因みに、聖杯くんの推しキャラはリズです。
自分はレインですね。最初はアスナかなーやっぱwwwだったのですが、メモデフやってたらなんだこの娘!?おぉー、ええやん、気に入ったわ、ってなりました。ゲーム版もやりたいっす……(切実)
感想&評価、お待ちしてナス!
次回 「第1層ボス攻略会議」
ぜってぇ見てくれよな!(悟空)