美遊兄が行く仮想世界   作:‪✝︎ビリー‪✝︎

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ごめーん、待ったー?(唐突)
いや本当にお待たせしました。すいません。許してください何で(ry
そして謝罪の後は恒例?の補足。現実での士郎が投影出来るモノは、彼の中にいるエミヤとエミヤオルタ(デミヤはカルデア産\_(・ω・`)ココ重要!)の情報、そして士郎自身が見たモノです。
あっ、そうだ(唐突)UA5000突破しました。ありがとナス!てっきり3000くらいかと思ってたらいつの間に増えてました。
そして今回は、あの子が出ますよ。


第5話 第1層ボス攻略会議

 

 

 あの後、俺たちはコペルと別れ、拠点をトールバーナの町に移して第1層迷宮区攻略に勤しんだ。彼はどうやらボス攻略には参加しないようで、それ故ホルンカの村で別れたのだ。

 現時点で、ゲーム開始から1ヶ月経ち、2000人もの犠牲者を出した。しかし、未だにボスへは辿り着いていない。

 

 そして今、俺たちは迷宮区にてベータテストで何度も相手をした《ルインコボルド・トルーパー》と戦っている。

「──!」

 跳躍し、頭上から体重の乗った攻撃を仕掛けるコボルド。しかし、これはかなり避け易いので、サイドステップで難なく回避する。

「ハッ!」

 攻撃後の硬直で動きが止まったヤツ目掛けて、《ホリゾンタル》を繰り出す。水色の光を湛えた剣が、阻まれることなく敵の首をすっ飛ばし、残った身体ごとポリゴンとなって消える。

「この剣のカンは大分取り戻せてきたな……」

 今俺が使っている武器は、前に手に入れたアニールブレードを6回強化した、《アニールブレード+6》だ。内訳は《3S3D》、つまり鋭さに3、丈夫さに3ずつ振っている。このゲームでの強化値の種類は全部で5つある。さっきの2つに加え、重さ、速さ、正確さだ。これを英語表記にしてその頭文字を取ったものがさっきの《3S3D》といった風になる。キリト曰く、「いちいち鋭さが3で、丈夫さが3……なんて言うのがめんどいだろう」とのことで、ああいう呼び方になっている。因みに、パートナーであるレインのものは《3S3A》─鋭さ3、正確さ3─となっている。

「そろそろ、戻った方がいいんじゃない?」

 後ろから、聞き慣れた声がした。振り返ると、そこには少し離れた場所で狩りをしていたレインがいた。

「そうだな。そろそろ、会議が始まるだろうし」

 会議というのは、第1層の攻略会議のことだ。今日の昼過ぎに行われるとのことで、もちろん俺たちも参加するつもりだ。ここにはいないが、キリトも参加すると言っていた。ともあれ、参加する以上は遅れるわけにはいかないので、いつもより早めに狩りを終わらせ、俺たちは帰路についた。

 

 帰り道は、モンスターとは殆ど遭遇しなかったため、レインと他愛ない会話をしながら歩いていたが。

「ねぇ、あそこにいるのって、コハルちゃんじゃない?」

「ん……?ああ、確かに、コハルに見えなくもないな。それと……あと1人、誰かが一緒に戦ってるみたいだ」

 レインが指さした方向に目を凝らすと、そこにはベータテストで出会ったコハルと思しきプレイヤーと、紫がかった髪の女性プレイヤーがコボルドと戦っていた。あちらは2人だが、相手の数はなんと5匹。

「助太刀した方がいいかな?」

「いや、その必要はないかな。多分、すぐに終わるさ」

 俺の予想通り、5匹いたコボルドの群れは思ったよりも早く倒された。

 ベータテストの時よりも腕前の上がったコハルだが、それよりも圧倒的な存在感を見せつけたのは彼女と一緒に戦っていた女性プレイヤーだ。見た感じ俺たちと年齢はそう変わらなさそうなんだが、その力は相当なものだった。

「あっ、ほんとにすぐに終わっちゃった。またエミヤ君の予想が当たったね」

「まあ、そういうのは得意だから」

 さっきのように相手の力量が分かってしまうのは、やはり戦い慣れしてるからなのだろうか。もしくは別のなにかか。それは俺にも分からない。

「ともあれ、向こうは一段落ついたみたいだし、声でも掛けてみるか?」

「そうだね。おーい、コハルちゃーん!」

「……?あっ、レインちゃん!」

 あちらに向かって手を振るレインに気づいたのか、コハルが女性プレイヤーと共にこちらに駆け寄ってくる。

「久しぶり!元気にしてた?」

「うん。そっちも元気そうで何よりだよ」

「それで、その人は?……まさか、エミヤ君とか?」

 コハルが俺の方を向き、疑問を投げかける。

「ああ。俺がエミヤだ」

「へぇー……って、変わりすぎでしょ!?」

 気持ちは分かる。確かに、知り合いが劇的ビフォーアフターばりに変化したらそりゃあ驚く。

「えっと、その女の子は?」

 レインがコハルの隣にいる女性について質問する。俺はそのプレイヤーは恐らくベータテスターではないと推測した。なぜなら彼女は、顔すら見たことのない完全初対面の人だからだ。と言っても、それだけでテスターか否かを判断してもいいのかとも思うが。

「あっ、まだ言ってなかったね。ボクはユウキ!よろしくね!」

「ああ、よろしく頼むよ」

「こちらこそ、よろしくね!」

 口調を聞く限り、どうやら活発な性格の女の子のようだ。というか、ボクっ娘とはかなり珍しいな。アニメやゲームにしかいないと思っていたが、本当にいたとは。

「ユウキとは、成り行きでパーティー組んでたの。そしたら、すっかり意気投合しちゃって」

 詳細を聞くと、コハルがソロで迷宮区に潜っていたところ、同じくソロ狩りしていたユウキと出会い、どうせなら一緒にやらないかと話を持ちかけられ、迷宮区の出口までの即席パーティーを組んだのだが、同性ということもあってすぐに友達になり、ダンジョンを抜けた後でもこうしてパーティーを解散せずにしているのだという。どうやら、既にフレンド登録もしているらしい。

「なるほどな……あっ、そうだ。2人とも昼過ぎに行われるボス攻略会議に参加しないか?」

「「ボス攻略会議?」」

「ああ。人数は多い方がいいからな」

 俺の見立てでは、会議に参加する人数はフルレイドの48人には満たない、となっている。と言うのも、プレイヤーの大半がはじまりの街に篭っているので、俺たちのように迷宮区を攻略している者たちはごく少数の筈なのだ。なので、猫の手も借りたい、とまではいかないが、人数は多いに越したことはない。

「うん、行く行く!コハルも一緒に行こうよ!」

「ユウキが行くなら私も行くけど……大丈夫かな?レベルとか心配だし」

「問題ないと思うよ。2人とも最前線をソロで行ける位なんだし」

 レインも言った通り、迷宮区でソロ狩り出来るほどなのだから、レベルは恐らく10以上はあるだろう。このレベルなら普通にボス攻略の適正範囲だ。

「それもそうだね。じゃあ、行ってみようかな」

「決まりだな。というわけで、先にパーティーを組んでおこう。バラけるよりも4人で行ったほうがいい」

「だね。それじゃ、そっちから申請よろしくっ!」

 ということで、4人パーティーを組み、それからフレンド登録もして、俺たちはトールバーナの町に帰還した。

 

 トールバーナは、はじまりの街を除けば、第1層の各地に点在している町や村の中でも最大の規模を誇る。と言っても、やはりはじまりの街とは比べ物にならないほど面積が少ないが。この町に最初のプレイヤーが到達したのは、サービス開始から3週間後だそうだ。

 町村の中、通称《圏内》に入ったことを確認すると、溜まった疲れが一気に押し寄せてきた。肉体的なモノではなく、精神的な疲労だ。このSAOでは基本的に身体が疲れることやスタミナ切れを起こすことはない。なので、わざわざ息を整えたりしなくてもよいのだが、普段行っている行動というのは、不要だと分かっていても無意識にしてしまうものだ。

 そういえば、帰り道にもキリトを見掛けなかったので、もうこの町に戻ってるのかもしれない。

「っはぁ~、戻って来たぁ~!」

 町の入り口に入ると同時に、ユウキが思いっきり体を伸ばす。

「外じゃ集中力を切らさないようにしてるから、町に戻ると安心するね」

「そうだな。安全圏にいると、やっぱホッとするな」

 圏内では、モンスターは決して入って来れないし、PK(プレイヤー・キル)される心配もないので、緊迫した精神も落ち着く。デスゲームという状況下では尚更だ。

「会議まではまだ時間あるし、それまで自由行動だね」

 レインの言葉の後に時刻を見ると、午後3時を回っていた。これなら、多少ぶらぶらしてても遅れることはないだろう。

「ああ、一旦、ここで別れようか」

「じゃあ、4時に円形劇場に集合!……だよね?」

「うん、そうだよ。ってことで、また落ち合おうね」

 そうして、俺たちは一旦コハルたちと別れることとなった。パーティーも解散し、元の俺とレイン、コハルとユウキのメンバーになった。

「元気で活発な女の子だったね、ユウキちゃん」

「ああ、ああいう性格の人は頼りになる。今の状況で元気でいられるのはすごいことだ」

 そうやって、今日出会った少女、ユウキについて話していると、後ろから聞き慣れた声がした。

「あの女の子について気になるカ?」

「うわぁっ!あ、アルゴか……。急に脅かすなよ……」

「あっ、アルゴさん、こんにちは」

「こんにちは、レーちゃん。エミやんも元気そうだナ」

「まあな。……で、さっきの女の子ってのはユウキのことか?」

 今話しかけてきたのは、俺が確認している中でアインクラッド唯一の情報屋、アルゴだ。トレードマークは頬に描かれた3本のおヒゲ。ヒゲの理由は分かっているのだが、言わぬが花と言うやつだろう。もしその情報を聞き出そうものなら、10万コルは支払わなければならないことを覚悟しておくべきだ。

「そうダ。テスターでもないのに、とんでもなく強いって、どういうことなのかネ」

「何か知ってるんですか?」

 レインの言葉を聞くと、アルゴはにっ、と口元を吊り上げて。

「安くしとくヨ。500コル」

 案の定、金を要求してきた。まあ、情報というのは基本等価交換なので、金を払うのも当たり前なのだが。

「いや、やめとこう。女の子の情報なんて買うモンじゃない」

「ニシシ、いい心がけだナ」

 意地の悪い台詞と共に、これまた意地の悪い笑みを浮かべる。その顔を見ると、ある噂を思い起こしてしまう。

 曰く、「《鼠》と5分話していると、100コル分のネタを抜かれる」というものらしい。確かに、あの怪しげな笑いを見ればそう言われるのも必然だろうと思う。因みに、《鼠》というのは彼女の通り名のようなものだ。これには的を射てるとしか言い様がない。

「少し、アルゴと話してくるよ」

「うん、また後でね」

 そう言って、小さく手を振るレインに見送られながら、俺たちは近くの路地裏に移動した。

 

「そういや、キリトには会ったか?」

「キー坊カ?それなら、さっきここで少し話したヨ」

「話……ああ、アイツの剣についてか」

「その通り。ニーキュッパまで上げたそうダ」

「ははあ、大きく出たな。でも、キリトは売る気はないんだろう?」

 キリトがアルゴとした話、というのは彼の剣を売って欲しいという誰かさんの交渉の話だ。俺もその旨をキリト本人に聞いている。

「そうだナ。キー坊はあの剣に愛着でもあるのかネ」

「まあ、3層まで世話になるし、1度の失敗もなく+6に出来たから、アイツとしては手放したくないんだろうな」

 +値を上げるには、武器鍛冶スキルを持ったプレイヤーか、鍛冶屋のNPCに金と素材を積むしかない。だが、1層に鍛冶職のプレイヤーなどいるはずもないので、NPCに頼むしかない。しかし、NPCがやると成功率が割と低めなので、正直運任せになる。さらに、武具には《強化試行上限数》というシステムがあり、その詳細は成功失敗に関わらず武器ごとに指定された上限数までしか強化出来ない、というものだ。アニールブレードの上限数は、確か8回なので、ノーミスで6回成功出来たのはかなりすごいことだ。そんな剣を、キリトがおいそれと手放すとは考えられない。俺だってどんなに金を積まれても売ることなんてしない。

「そっカ。まああそこまでもってくるのには相当な根気がいるだろうし、キー坊の気持ちも分からんでもないナ」

「キリトは、根っからのゲーマーだからな。というか、アイツが譲る気ないんなら、その交渉は無理筋なんじゃないか?」

「オレっちも何度も依頼主にそう言ってるんだけどナ。どうやら奴さんにとっては多額のコルを払ってでも欲しいシロモノなんだろうナ」

 ここまで来ると、向こうの目的も知りたくなるが、別にその事についてコルを払う気にはならないので、やめておくことにする。

「そうか……。ともかく、変化なしってとこだな。んじゃ、俺はそろそろ行くよ。時間が押してるからな」

「ああ、それじゃあナ」

 これ以上、アルゴと話すと今度は100どころか300コル分のネタを抜かれそうなので、話を切り上げてそそくさと退散した。

 

 時間を見ると、既に4時前になっていた。もう円形劇場に行かなければならない頃合いだ。

「悪い、待たせた」

「あっ、やっと来た。もう時間ギリギリだから、早く行こう」

 俺は首を縦に振り、レインと共に劇場に向かった。

 

 俺の予想通り、集まった人数はフルレイドにギリギリ満たない46人だった。その中には、見たことのある顔もいれば、ほぼ初対面の者もいる。劇場をぐるりと見渡すと、隅っこ辺りに俺の親友、キリトとフードを被ったプレイヤーがいた。腰に下げてるのはレイピアか。

「キリト!」

「エミヤ、やっと来たか。もうすぐ始まるから、座った方がいいぞ」

「そうだな。よっこらせっ、と」

 キリトの隣に腰掛け、レインもそれに倣う。そして、1つの疑問を問うてみる。

「その人は、一体?」

「ああ、迷宮区で倒れてたところを助けたんだ」

「へぇ、キリトが人助けとは……まあ、よろしく頼むよ、細剣使い(フェンサー)さん」

「……よろしく」

「こちらこそ、よろしくね」

 フードから見える口から、愛想のない声が辛うじて聞こえた。声からして、多分女性だ。

「ナンパとは大胆だな、キリト」

 隣の女子2人に聞こえないように、耳元でボソッと呟く。

「バッ、そんなんじゃないって!俺はただ、彼女の持つ迷宮区のマップデータが目的であって、決してそんな邪なことを考えてるなんてことはない」

「どうだか」

「……」

 俺が茶化すと、キリトの顔が赤くなる。こんな顔もするから、女の子と勘違いされることもあるんだよなあ。

「何を話してるのかなぁ?」

「さぁ、分からないわ」

 どうやら、俺たちの会話には気づいてないようだ。

 その後、4時になったがまだ始まらないので、少し談話していると。

「ごめん、ちょっと遅れちゃった」

「もう、4時集合だって言ってたのに」

「ごめんごめん、次からは気をつけるよ」

 ユウキとコハルが小走りでこちらに向かってきた。これで、人数はレイド上限ぴったりの48人となった。

「大丈夫だ、まだ始まってないよ」

「ふう、よかった〜。危うく途中参加になるところだったよ」

 こちらに来たユウキたちがレインの隣に座ると同時に。

 

 パンッ、パンッ、パンッ、っと手を叩く音が響き渡った。

 視線をやると、下のステージに鎧を纏った青髪の男性がいた。

「はーい、それじゃ、5分遅れだけど、そろそろ始めさせてもらいます!」

 朗々と響き渡る声に皆が一斉に男性の方を向く。よく見ると、彼の顔はベータテストで何度か見たことがあった。というか、彼とは即席のパーティーを組んだこともあったし、会話も交わした。その時も、今とそう変わらない見た目をしていた。

「今日は、オレの呼びかけに応じてくれてありがとう!オレはディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!」

 その言葉に、あちこちから笑い声やら拍手やらが飛んだ。それに混じって、「SAOにジョブシステムなんてないだろー!」「ホントは勇者って言いてーんだろー」などというのも聞こえてくる。

 会場が静まると、ディアベルがまた口を開く。

「今日、オレたちのパーティーが、あの塔の最上階で、ボス部屋に続く扉を発見した」

 彼の発言は、会場をざわつかせるに足るものだった。何せ、俺たちでも辿り着けなかった最上階まで到達し、その上ボス部屋の扉まで見つけたと言うのだ。

「ここまで、1ヶ月かかったけど……それでも、オレたちは、ボスを倒し、第2層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリア出来るんだってことを、はじまりの街にいる皆に伝えなきゃならない。それが、今ここにいるオレたちプレイヤーの義務なんだ。そうだろ、皆!」

 会場が再び沸く。今度は拍手に加えて口笛を吹いている者もいた。ディアベルの最もな発言に、異を唱える者は誰もいない。

 

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 しかし、1人の闖入者が拍手喝采を静寂に変える。ぴょんぴょんと階段を降り、ディアベルと同じステージに立つその男は、俺も見たことのない人物だ。というか、頭が、その、ドリアンみたいで吹き出しそうになる。現にレインの隣のユウキはクスッと笑っている。というか、転生前に見た並行世界の衛宮士郎の記憶の中に、全く同じ声の金ピカがいたような気がするのだが。

「わいはキバオウってもんや。こん中に、死んでいった2000人に、ワビぃ入れなあかん奴らがおるはずや」

 そう言って、劇場の群衆に向かって指を突きつける。

「キバオウさん、君の言う奴らとはつまり、元ベータテスターの人たちのこと……かな?」

「決まってるやないか」

 その後に続いた言葉を纏めると、《ベータ上がり共はゲーム初日にビギナーを見捨てて消えて、効率のいい狩場やクエを独り占めして自分たちだけ強くなっても初心者のことは知らんぷり。この中にもいるはずだ、ベータ上がりだということを隠している小狡い奴らが。そいつらに土下座させて、金銭とアイテムを全て貰わなければ、命は預けられないし、預かれない》といったものだ。

「あの言葉はさすがにないんじゃない!?」

 キバオウの主張に文句でもあるのか、ユウキが小声で呟く。

「……いや、ある程度は合ってると思う。確かに、俺たちテスターの行為は傍から見ればそう感じるだろう」

「でも、死んじゃった人たちの中にはそのベータテスターもいるんでしょ?」

 俺が鎮めようとするが、ユウキは止まらない。

「ああ、そうさ。俺だってそれを言いたい。けど、今ここで言っても意味はない。君の気持ちは分かるが、今は事を荒らげないでほしい」

「むぅ、分かったよ」

 頬を膨らませて不服そうにしながらも、ユウキは口を閉じてくれた。

 ユウキの言葉の通り、死んだ者の中には元ベータテスターもいた。その数はアルゴの推測だが、ざっと300人。デスゲーム開始直後にいたテスターは恐らく700〜800人位だと思うので、結構な数の人たちが命を落としている。

 

「発言、いいか」

 その時、大きく張りのある声が響いた。見ると、そこにはキバオウの下へと歩み寄る巨漢の男性が。

(でけぇ~っ、190以上はあるぞ〜!)

 と思わず心の中で叫んでしまう。あそこまでデカいと多分ハーフだと思う。日本語上手いし。でもアフリカン・アメリカンという線もある。

 というかデカい。とにかくデカい。背中の両手斧が小さく見えるくらいだ。

「オレの名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元ベータテスターが面倒を見なかったからビギナーが沢山死んだ、その責任をとって謝罪、賠償しろ……ということだな?」

「そ、そうや」

 巨漢であるが故の迫力に気圧されそうになるキバオウだが、すぐにさっきの調子に戻る。

「あいつらが見捨てへんかったら、死なずに済んだ2000人や。アホテスター共がちゃんと情報やら金やらアイテムを分け合うとったら、今頃は2層3層まで突破出来とったはずなんや!」

 その2000人の内300人はアイツの言うアホテスターなのだが、それは言わない方が無難だろう。

「あんたはそう言うが、情報はあったぞ。このガイドブック、あんただって貰っただろう。あちこちの町や村の道具屋で無料配布してるんだからな」

 そう言って、腰のポーチからメモっぽいアイテムを取り出す。表紙には鼠のマークが。アルゴが販売しているガイドブックだ。俺もレインも貰っている。その本には、クエや狩場、エリアごとのモンスターの情報やらが網羅されている。俺たちもそうだが、ビギナーなら尚更重宝するシロモノだ。

「む、無料配布だと?」

 俺の隣でキリトがそう言う。確か、キリトが先に買った時は500コルしていたが、後から無料になったのだ。

「……わたしも貰った」

 今まで滅多に口を開かなかった細剣使いが囁く。キリトが「タダで?」と尋ねると、こくりと頷く。

「値段が0コルだったから皆貰ってたぞ」

「ど……どうなっているんだ……」

 まあ、キリトが驚くのも無理はない。アルゴは情報屋の鑑のような人物なので、情報を無料配布なんてありえないのだが、まあ彼女なりの理由があるのだろう。

「貰たで。それが何や」

 再び、キバオウの口から彼の頭のような刺々しい声が漏れる。

「これを配布していたのは、元ベータテスターたちだ。あんたも思っただろう?情報が早すぎると」

 周りが一斉にざわめく。これにはキバオウも黙るしかないようだ。

「いいか。情報はあったんだ。なのに2000人ものプレイヤーが死んでいったのは、彼らが他のMMOゲームと同じものさしで計っていたからだ。だが今は、その責任を追求してる場合じゃないだろ。オレたちがそうなるかどうかは、この会議で左右されると思っているんだがな」

 エギルの発言はどれも正しく、キバオウも付け入る隙がないくらいだった。それに彼は終始堂々としており、キバオウの態度にも動じなかった。それを見ると彼の性格の良さが伝わってくる。

 

「……みんなに、言いたいことがある」

 その時、意を決したかのように、ディアベルが口を開く。

 プレイヤーたちも彼の一変した態度にざわついている。

「言わないでおこうかと思っていたけれど、ここで言おう。──オレは……元ベータテスターなんだ」

 その途端、ざわめきが一気に大きくなった。「嘘だろ!?」「マジで?」

 という声がちらほらと上がってくる。

「……それは本当なんか、ディアベルはん」

 面食らった顔をしたキバオウが驚愕の声を漏らす。

「ああ、本当だ。オレも、君の言った通り、ゲーム初日にはじまりの街を出て、自分の生存を優先していた。俺のやっていたことは、他のテスターと何ら変わりないんだ……」

「だが、あんたも元ベータテスターなら、このガイドに1枚噛んでいたんじゃないのか?」

「……!」

 エギルの言葉に、ディアベルは開いた口が塞がらかった。

「言っただろう?情報はあったと。あんたらテスターが情報提供しなかったら、犠牲者は更に増えていただろう。何も、元ベータテスターだけが悪いわけじゃない」

「確かに、そうかもしれんな……」

 この事実には、キバオウも認めざるを得なかったようだ。そんなエギルの言葉に突き動かされて、無意識のうちに俺は声を張り上げていた。

「ああ、エギルさんの言う通りだ」

 俺の声に反応して、全員が俺の方に向く。キリトたちも「えっ!?」という風な顔をしている。もうこうなったら言いたいこと全部言ってやる。もうどうにでもなれ、という心境でステージに出る。

「何や、ジブンは」

 キバオウがキッ、とこちらに鋭い視線を向ける。

「俺の名はエミヤだ。キバオウさんが言うように、俺たちテスターは街を飛び出した。傍から見れば初心者を見捨てたように見えただろう。けど、それは違う。テスターだって、このゲームを一刻も早くクリアしたいという思いでやってたんだ。余計な犠牲者を出さないように。それに、彼らの中にはビギナーに手を差し伸べている人もいた」

「「「「「……」」」」」

 エギルもディアベルも、キバオウも、そしてここにいる皆も、何も言えないようだった。

「過程や手段はどうあれ、目的は皆同じなんだ。あなただって、このゲームをクリアしたい、ここで死にたくない、と思っているだろう。キバオウさん」

「そ、そうや。わいだって、こんなクソゲームの中で死にとうない」

 初心者にもテスターにも共通の意志がある。生きたい、という強い意志が。だからテスターだって頑張っているのだ。

「こんな状況でテスターがどうとか言ってる場合じゃない。例えテスター全員の助けがあっても、犠牲が増えるのは変わりない。このゲームでは、生きるか死ぬかだ。そしてなるべく犠牲者を出さないためには、皆の結束が大事なんだ。こうやっていがみ合ってたら、クリアなんて夢のまた夢だ。それに、2000人の犠牲者の中には、キバオウさん。あなたの言うアホテスターもいるんだ」

「そ、そうなんか……?」

 どうやら、キバオウは初めてその事実を知ったようだ。彼はテスター全員が生き残っているとでも思っていたのだろうか。

「そうです。テスターだって、全員が強いわけじゃない。中には、ビギナー同然の人もいる。情報、アイテム、技量、武具。確かにこれらはこのゲームで生きる上で重要な要素だ。けど!本当に大切なのは精神面での問題だ。決意のないまま街を出たって、死んでしまうだけだ。テスターだって、状況を未だに飲み込めず、はじまりの街から出てない者もいる。だけど、ここにいるのは決意を固めた者たちだ。テスターだろうが初心者だろうが関係ない。そんな人たちが手を取り合ってボスを倒し、皆に希望を与える。それが俺たちのするべきことだろう!」

 一通り喋り終わると、次々に歓声が飛んできた。どうやら、彼らは俺の言葉に賛同してくれたみたいだ。羞恥心を押し殺して熱弁したかいがあったというものだ。

「どうかな、キバオウさん。まだ文句があるかな?」

「……いいや、もう何も言えへん。ジブンの言う通りや。確かに、こんなとこで争っとる場合やなかった。悪かったな、ジブンらテスターを罵ってもうて」

 彼も分かってくれたようだ。ともあれ、事が終息して良かった。

「いいんですよ。分かってくれてなりよりです」

 そして、融和の証ということで、キバオウと固い握手を交わした。

「じゃ、ディアベルさん。会議の続きをしてもらえますか」

「ああ。皆、聞いてくれ!エミヤさんの言う通り、今は皆がテスターとそうでない者の垣根を越えて一致団結すべきなんだ。オレだって、経験者として皆を率いたいという気持ちがあったから、この会議を開いたんだ。皆も同じ気持ちだろう!」

 何度かの歓声。あちこちから「その通りだ!」「俺だってこのゲームをクリアしたいからここに来たんだ!」と、彼の言葉に賛同する声が響いた。

「色々あったけど、一旦この会議は終了したいと思う。この後、有志を募ってボス部屋の調査をする。我こそはという者はオレに着いてきて欲しい。エミヤさん、あなたも来てくれないか?」

 言葉の矛先を俺に向けられて、少したじろぐが。

「あ、ああ。俺で良ければ」

 快諾してしまう辺り、やはりお人好しなのは変わらないのかと思ってしまう。根底では誰かのためになりたい、という正義の味方としての心があるのだろうか。

「ありがとう、エミヤさん。では、これにて1回目の会議を終了する。では、解散!」

 その声の後に、40数人の人たちが会場を後にする。

 

 

 翌日の夕方、再び会議が行われた。今度はディアベルの要望で、俺も前に出ることになった。少し恥ずかしいが、仕方ない。

「では、実際に見て分かった情報と、ガイドブックの情報を報告しよう」

 その言葉と共に、ディアベルが1歩前に出る。

「ボスの名は、《イルファング・ザ・コボルドロード》。取り巻きに、《ルインコボルド・センチネル》が計12匹湧いてくる。ここからは、エミヤさんに言ってほしい」

 俺は大きく頷き、ディアベル同様1歩前に出る。

「昨日ボスを見てきたけど、武器は斧とバックラー。ここまではベータと変わらない。そして、最後のHPバーが赤になるとガイドブックではタルワールを使用すると書いてあったが、ボスの背中を詳しく観察すると、武器はタルワールではなく、野太刀に変わっていた。こうなれば、ボスが使うスキルは《曲刀》ではなく、《カタナ》になる。だから今から、知ってる人は少ないだろうから、ボスの使う《カタナ》スキルについて説明する。キリト、レイン。お前らも前に出てくれ」

 キリトたちの方に手招きすると、キリトが「お、俺!?」と驚きの声を上げた。レインも少々驚いているようだ。やっぱり俺1人じゃ恥ずかしいので、キリトたちにも来てもらおう。《カタナ》のことを知ってる奴がいるのは大きいからな。

 その後は、もうめちゃくちゃに《カタナ》スキルについて説明し合い、情報を広め、2回も意見を交換した。

 

 パーティーを組む時、キリトがえっ、てなってたが、最終的には俺、キリト、レイン、コハル、ユウキ、そしてアスナという名のレイピア使いのメンバーになった。

 

 ディアベルは実務面でもも中々のものだった。まず、ディアベル、キバオウのパーティーを主軸にし、重装備のタンク部隊と長モノを持つサポート部隊を2つ。さらにアタッカーを1つ。そして俺たちのパーティーは経験者が3人もいる、ということで、状況に応じてボスと取り巻きの両方を相手取る役目を担った。何気に大変かつ重要な役割だ。

 一通り終わったのを見計らって、ディアベルが締めの言葉を言う。

「攻略会議は以上だ。最後に、アイテム分配についてだが、金は全員で自動均等割り、経験値は、モンスターを倒したパーティーのもの、アイテムやLAボーナスは、ゲットした人のものとする。例え、元テスターたちが取っても、文句を言わないように。異存はないかな?」

 多少ざわざわしているが、意見の述べる者は誰もいない。

「明日は、朝10時に出発する。では、解散!」

 ディアベルの一声と共に会議が終了し、集団は町の宿やレストランに向かって散っていった。まあ、テスターを良く思わない人たち(1部だけだが)と和解出来て本当に良かった。さて、明日はボス戦。この戦いが人々の希望になることを信じて、精一杯頑張らなければな。

「明日、頑張ろうね、エミヤ君」

「ああ。必ず勝とう」

 言葉を交わす俺とレインを、煌めく夕日が照らしていった。

 

 

 

 

 




はい、ということで、出ましたね、ユウキ。病気?今作では最初から生存ルートですが何か?いやあ、個人的にはユウキには生きていてほしいので、つい。さらに今回はベータテスター反対派との和解ルートになっております。やっぱり、何事も丸く収めたいですね。
お次は恒例のアレです。


聖杯くん~PoH編~

「よう、聖杯くん(bro)
「おや、PoH君じゃないか。どうしたんだい?」
「このゲームは退屈でな、何か楽しめるモノはないか?」
「そういうことなら任せて」
っ出刃包丁「殺し屋育成キット~!」
「これは……」
「殺しって、楽しいよ?」
「ふっ、それもそうか」


次回「confronting」
意味は対峙する、だそうです。
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