英 翠月こと仮面ライダー雅龍 パワフルチューンは、ホメオスタシスの戦闘エージェントや電特課の面々と共に、街に現れたデジブレインの対処を行っていた。
今のところ敵はベーシック・デジブレインばかりなので、楽に処理できた。
「このまま行きゃあ楽に終わりそうだな」
警官たちに指示を飛ばしている宗仁は、欠伸をしながらそう言った。
しかし、雅龍は決して楽観視していない。不測の事態は油断していると起こるものだ。
そしてその予測は、見事に的中した。
「なんだ、あの七光のクズがいないと思ったら……見慣れない仮面ライダーがいるなぁ?」
《フラッド・ツィート!》
「げ、この声……」
宗仁が渋い顔をする。
トランサイバーを左腕に装着したカソックを纏う男が、ゲートを通して雅龍の前に現れたのだ。
ヴァンガード、御種 文彦だ。雅龍の姿を見るなりマテリアプレートを起動し、それを装填して戦闘態勢となった。
《アイ・ハヴ・コントロール!》
「背深」
《
「そのシステムがどの程度のものか、俺がテストしてやるよ……」
コキコキと拳を鳴らしながら、サイバーノーツ・ジェラスアジテイターとなったヴァンガードが、雅龍の前に立ちはだかる。
雅龍はそれを受けてスタイランサー・スピアーモードを構え、ジェラスの顔を真っ直ぐに見据える。
「裏切り者の御種 文彦、貴様は私が処断する」
「ハッ! やれるモンならやってみろよ、仮面ライダーになりたてのヒヨコ野郎がよぉ」
沈黙し、睨み合う二人。
そして警官がマテリアガンを発砲した音を合図に、同時に飛び出した。
「いざ!」
「ヒャァハハハ!」
赤いインクを放出する槍と、擬音の文字で固められた斧がぶつかり合う。
「本当の自由、だと?」
ザギークの放った言葉に、エレファント・デジブレインとなった梅悟が難色を示す。
ダムセルフライ・デジブレインもシャーク・デジブレインも同じだ。それに構う事なく、ザギークは軽い調子で話を続ける。
「そっ。ノーブルが何者で、あんたらがそいつの何に惹かれたのかも何を期待してるのかも知んないけど。ウチから言わせりゃ、あんたらはなーんも自由に見えないんだよね」
「何が言いたい」
「自分より権力のある誰かから約束して貰う自由って、本当に自由なワケ? そんなのって約束とか与えられる必要とかもなしで、当たり前に手に入れるべきものじゃん。今のあんたらって、ただエサで管理されてる家畜と何が違うの?」
挑発的な口調で、ザギークは言い放った。
するとシャークが拳を握り込み、水中銃をザギークの頭部に向けて怒声を浴びせる。
「……キサマなどにノーブル様の何が分かる!?」
「分かんないねー。自分で動かず、部下に丸投げするようなヤツの事なんて」
「キサマァッ!!」
シャークが引き金を引き、銛が発射される。パワフルモードのザギークはそれを腕の装甲で弾き飛ばすが、既にダムセルフライが高速で背後に回り、攻撃行動に移っていた。
背中にダガーが突き立てられ、エレファントが接近するまでの時間を稼いでいる。シャークも、再装填された銛をザギークの頭部に向けていた。
「どんなに足掻いても、所詮は三対一! あなただけで我々に勝つ方法などないのですよぉ!」
「ざーんねーん。こっちはひとり増えるんだよね」
ザギークはそう言うと同時に、マテリアパッドに手を伸ばして犬の横顔のアイコンに指で触れた。
すると、電子音声と共に警察帽を被ったような姿のドーベルマン型ロボットが出現し、ダムセルフライの脚に噛み付いた。
《フレンドーベル!》
「な、なんだこいつは!?」
ダムセルフライは必死に脚を振って離そうとするが、喰らいついた機械犬の牙は中々離れない。
その様子を眺めてザギークは得意げに笑い、スタイランサーを変形させて弩弓に変えた。
《スタイランサー・ボウガンモード!》
「ほいっ!」
「クッ!?」
狼狽するダムセルフライを放置してザギークが狙いを定めたのは、シャーク・デジブレイン。パワフルチューンによって威力の高まった矢弾により、彼女の持つ水中銃を叩き落とした。
そして怒りのまま拳を突き出して来たエレファントに対しては、飛び上がって首筋に蹴りを叩き込んだ。
「ぬううう!?」
「フフーン。一人でも動きを止められれば、ウチにとっちゃあんたらは大した相手じゃないっぽいね?」
「ほざけぇ! 松波、来い!」
武器を失ったシャークは、エレファントと共に近接戦に持ち込む。
ダムセルフライもフレンドーベルを引き剥がし、蹴り飛ばして背後からザギークに襲いかかる。
無論、ザギークがその状況を許すはずもない。攻撃をいなしながら、マテリアパッドのバイクのアイコンをタッチする。
《ジェットマテリアラー!》
その音声と同時にマテリアパッドからデータが具現化したバイクが飛び出し、エレファントを前方に吹き飛ばした。
「ぬおっ!?」
「梅悟!?」
驚いたシャークが余所見をした隙に、ザギークはボウガンで彼女の膝を射つ。
そして背後からのダガーは振り向いて両腕の装甲で受け止め、今度はダムセルフライの腕にフレンドーベルを喰い付かせた。
一方エレファントは、ジェットマテリアラーに手間取っている。このマシンにはオートバトルプログラムが組み込まれており、突進して自分から攻撃したり、敵側から攻撃を仕掛けられればそれを避けて回転しながら後輪で反撃までできるのだ。
「バカな! オレたちがたった一人相手に、なぜこうも一方的にやられる!?」
狼狽するシャーク。その間にも、ザギークは余裕綽々とタブレットドライバーの白のスイッチを押していた。
《テクニカルチューン!》
「さーてさて、そろそろ終わらせちゃおっかな」
《
むふふ、と笑いながら、赤から白の装甲に変化したザギークは、さらにフレンドーベルとジェットマテリアラーを指で招き寄せる。
マシンはザギークの背後へと移動し車体が分離、車輪がタービンエンジンへと変わり、ザギークの背中の装甲に合体する。
さらにフレンドーベルも全身が分解され、ザギークの手足や頭部装甲と合体。ドーベルの爪が新たな武器となり、ジェットマテリアラーとの接続部もドーベルの装甲に覆われ、姿が大きく変化した。
その姿に、ダムセルフライは思わずたじろいだ。
「なんですかその姿は……!?」
「フッフーン! これぞ雅龍とザギークの特殊形態、その名もワイルドジェッター! さーさー、とくと味わって貰おーかっ!」
「くっ、ハッタリを! 行きますよ、マイリーダー!」
飛翔したダムセルフライがシャークの隣に立ち、反対側でエレファントが構える。
そして三人は同時にガンブライザーに装填されたマテリアプレートを押し込み、必殺技を発動する。
《フィニッシュコード!》
「オレたちが……潰す!」
《
《
《
シャークの水中銃から発射された銛にカタルシスエナジーが集まってサメの姿を模したエネルギー体を纏い、ダムセルフライはエナジーの集中した翅を瞬かせてダガーを抜く。エレファントの両腕にもエナジーが集まっており、その光が巨大なゾウの前足として形成されていた。
そして、三人が一斉に必殺を解き放つ。水中銃から放たれたサメが大口を開けて迫り、ダムセルフライが高速移動してダガーを突き付け、エレファントが重力操作でザギークをその場に留めつつ拳を振り抜く。
しかしザギークは一切焦りを見せず、スタイランサーで地面に向かってゲル状インクの矢弾を放ち、自身の周囲をドームのように覆って白い防壁を作る。
三人の渾身の必殺技は全て弾き飛ばされ、防壁を破壊する事さえ叶わなかった。ザギークは仮面の奥で、にひひと笑う。
「な……!?」
「次はこっちの番!」
ザギークが叫ぶと同時に、両翼のタービンが高速回転して暴風を巻き起こし、ダムセルフライをアリーナの天井まで吹き飛ばす。
ダムセルフライは驚く間もなく背中を天井に叩きつけられ、さらにザギークがマテリアプレートを抜いてスタイランサーにセットしている瞬間を目撃した。
「しまっ……」
「まず一人!」
《パニッシュメントコード!
スタイランサーから白いインクが何発も発射され、ダムセルフライの両翅・両腕・両脚に命中。ゲル状のそれらが張り付いて、ダムセルフライはそのまま昆虫標本のようになって身動きが取れなくなり、さらに体がゲルで埋め尽くされていく。
そして完全にインクで覆われた直後にザギークが指を弾くと、その塊は赤熱して爆発、ダムセルフライ・デジブレインは地面に落下して変異を解除させられた。
「そんなバカな、この私がっ!?」
「ぬうううおのれっ! 都竹、俺が仇をとってやる!」
ガツンガツンと自らの拳を打ち鳴らして、凄まじい重量を感じさせる足音を響かせながら、エレファントが接近する。
だがそれでもザギークは慌てる事なく、タブレットドライバーの黒のスイッチを押して指紋認証した。
《スピーディチューン!》
「取れるといいねー?」
《
すると、今まで同様ザギークの体から白の装甲が分離し、新たに出現した黒の装甲がワイルドジェッターのパーツと合体。さらにそのままザギークに装着された。
ワイルドジェッターの発動中でも、チューンアップはできるのだ。再びタービンが回転し、ザギークは通常のスピーディチューン以上の加速度で移動、一瞬の内にエレファントの背後に回り込んだ。
「なっ……」
目を剥くエレファント。ザギークはスタイランサーを再びスピアーモードに切り替え、さらにそこへマテリアプレートを差し込んだ。
《パニッシュメントコード!
「それそれそれそれー!」
ザギークは圧倒的なスピードでエレファントの周囲をぐるぐると回りながら、槍を使ってエレファントの全身を何度も突く。
だが、この姿のザギークはパワーで劣る。その点を理解していたエレファントは、堅牢な装甲でこの必殺技をも防ぎ切っていた。
攻撃が止んで、エレファントは防御の構えを解く。これでやっと反撃に移れると意気込み、足を踏み出した。
そして次の瞬間、地面に倒れた。
「あ?」
一体何が起こったのか、エレファントには理解できなかった。
立ち上がろうとしても、全身が痺れて身動きが取れない。次第に、麻痺が抜けないまま変異も解除されてしまった。
「な、んだ……これは……」
「むふーふー。ウチのコト、甘く見ちゃったねぇ。フォレスト・バーグラーには、データを冒す毒を生成する能力があるのよん。それでゾウくんをフリーズさせたってワケ」
それを聞いて、エレファント・デジブレインの梅悟は己の不覚を嘆く。マテリアプレートの個々に搭載されている能力の事をすっかり忘れていたのだ。
これで残るはシャーク・デジブレインのみ。ザギークは彼女の動向を窺いながら、ゆっくりと赤のスイッチに手を伸ばした。
《パワフルチューン!》
「チューンアーップ!」
《
先程と同様に赤い装甲がザギークの体を包む。そしてスタイランサーを構えながら、じりじりと近づいていく。
「くっ!?」
「さて? もうあなただけなんだけど……どーする?」
「……やってやる! ノーブル様のために!」
叫び、シャークが拳を振り被る。ザギークは左腕の装甲でそれを受け止め、右腕の爪でシャークの脇腹を引き裂かんとする。
しかし、カランッという乾いた音と共に、攻撃したザギークの爪の方が折れて地面に落ちた。
シャークの全身にびっしりと生えている棘状の鱗が、まるでヤスリのように爪を削って破壊したのだ。これがシャーク・デジブレインの特性で、接近戦は不利となるというわけだ。
「だったら!」
叫びながら、ザギークはスタイランサーのトリガーを引く。
すると赤いゲル状インクが穂先を包んで固まり、球状に変えた。
ハンマーの完成だ。ザギークはそれを勢い良く振り回して、シャークの体を叩く。
剣や爪を刃こぼれさせたり削り折る鱗も、この打撃武器の前では無力。仮に鉄球が削れても、トリガーを引けばすぐに元通りだ。
「クソ……クソォッ!」
一方的に殴られて自分の不利を悟ったシャークは、最後の勝負だ、と言わんばかりにガンブライザーのマテリアプレートを押し込む。
それを確認して、ザギークもパニッシュメントアイコンをタッチし、マテリアルセンサーに人差し指で触れた。
《パニッシュメントコード!
《フィニッシュコード!
ザギークの右脚が黄色く輝き、シャークの両脚が青い光を帯びる。
「おりゃあああ!」
「でぇやあああ!」
二人が同時に跳躍し、ザギークがタービンを高速回転させて飛行しながら右脚を突き出し、エナジーを纏うキックが炸裂。シャークも両脚を突き出して、ドロップキックを放つ。
そしてアリーナのステージに降りた時、シャークは大きな悲鳴を上げて爆発、変異が解除されてその場に倒れ込んだ。
「そんなバカな……このオレが!?」
「はいっ、ウチの勝ち! なーんで負けたか、牢屋の中で考えといてね」
スタイランサーを地面に突き刺して、ザギークは三人の方に向かって歩く。
だが、松波は歯を軋ませてガンブライザーのマテリアプレートを抜き、ポケットの中からもう一枚マテリアプレートを取り出して、それを起動した。
《
「え!?」
予想外、という反応を示すザギーク。驚いている間にも、松波は素早くガンブライザーにプレートを滑り込ませる。
《ハック・ゼム・オール!》
「オレを喰え、"虚栄"のコード!」
《
松波が変異したその姿は、赤い体色でまばらに黄色い点がついているイモリ型のデジブレイン。
アズールがかつて戦って倒した、ニュート・デジブレインだ。
松波が変異したそのニュートは、舌先のライターでザギークに火炎放射を浴びせた。
「うひゃあ!? 熱っ、熱いって!」
大慌てでスタイランサーを滅茶苦茶に振り回して、懸命に炎を振り払うザギーク。
やがてタービンの風で炎が完全に消えると、その場から三人の姿は消えてしまっていた。
浅黄はタブレットドライバーからマテリアプレートを抜いて変身を解除し、頭を手で抑えて項垂れる。
「あちゃー、逃がしちゃったよ」
はぁ、と浅黄は溜め息を吐いた。まさか、他のデジブレインにも変異できるとは。
「勝ちはしたけど……あの三人、ほっとくと厄介かもなー」
頭を掻いてそんな風に悩む様子を見せながら、浅黄はひとまず翔たちを探して歩くのであった。
※ ※ ※ ※ ※
同じ頃、現実世界にて。
パワフルチューンの雅龍が、突如として現れたジェラスアジテイターと対峙していた。
雅龍のスタイランサーとジェラスの斧とがぶつかり合う度、炎が舞う。ジェラスの斧は、炎が燃える擬音の文字で作られているのだ。
「ラァッ!」
ひたすら前に出て、ジェラスは斧を振る。
だが、その腕が上がった瞬間、狙い澄ましたように雅龍がスタイランサーの石突を振り上げてジェラスの肘にぶつけた。
それを受け、ジェラスは短く悲鳴を上げて斧を取り落とす。その瞬間、雅龍は斧に向かって力強くスタイランサーを突き出した。
穂先は斧を貫いて破壊し、さらにジェラスの胴に命中。そのまま吹き飛ばし、道路に転がした。
「チィッ、やりやがったな!」
《
「これでも喰らいやがれ!」
立ち上がると同時にジェラスはトランサイバーのボタンを押し、掌から『縛』の文字を生成。それがヘビ型の疑似情報生命体・ジェラスネークとなり、雅龍に襲いかかる。
それを涼しい顔で眺めながら、雅龍はマテリアパッドにある犬の横顔のアイコン、『フレンドアイコン』に触れた。
するとザギークの時と同様、電子音声と共にドーベルマン型のロボットであるフレンドーベルが出現する。
《フレンドーベル!》
出現と同時にフレンドーベルはジェラスネークを頭から食い千切り、吐き出す。いとも容易くジェラスネークは消滅した。
「なっ!?」
「少々拍子抜けした。この程度なのか、サイバーノーツの力は」
「この野郎……警察のコネでライダーになれただけのクズがッ!! 俺をナメんじゃねぇ!!」
ジェラスが左腕を前に掲げる。すると、トランサイバーのゲートを通じて、数十体のベーシック・デジブレインが湧き出す。
それだけでは終わらない。ジェラスはさらに、今までに使っていなかったトランサイバーの四番目のボタンを押し込んだ。
《
「本気で相手してやるよ……!」
ジェラスの左右の掌から『蛇』の文字が溢れて飛び出し、ベーシック・デジブレインたちの体内に侵入する。
すると、みるみる内にデジブレインたちの体表に『蛇』の文字が浮かび上がり、合体してデータを取り込んだ時と同様に姿が変化していく。
紫の体色をしている、鱗の生えた怪人。頭部は蛇を模しており、ぎょろりとした目玉で雅龍を見つめ、二本の牙が生えている。
スネーク・デジブレインだ。数十体のそれらが、ジェラスに操られて一斉に雅龍へと飛びかかった。
「オラァッ!」
《
続けてジェラスは雅龍に向けて、『痺』の文字を飛ばす。
高速で飛来したこの文字を受けてしまい、雅龍は体が麻痺してその場で膝をついてしまった。
「む」
さらに、それに続くスネーク・デジブレインたちの猛攻撃。拳や蹴りの他、牙から毒液を放つなど多様な攻撃で雅龍を苦しめる。
フレンドーベルが割って入って懸命に護るものの、勢いは止められない。雅龍はスネークたちの襲撃を、無防備な状態で受け続けた。
そこへジェラスも加わった。再び火炎を噴く斧を作り、雅龍の前に立っている。
「これで終わりだ。あの世で後悔しろ、ザコが!」
叫び、ジェラスが斧を振り下ろす。
斧が雅龍の仮面を砕く、かと思われた次の瞬間。ジェラスの腹にスタイランサーの切っ先が命中し、火花を散らした。
「がっ!?」
仰け反り、後ずさりするジェラス。見れば、雅龍は既に『痺』の文字の影響から解き放たれている。
しかし、ジェラスの計算では文字の効果の解除までにはまだまだ時間がかかるはずだった。これは一体どういう事なのか。
その答えは、雅龍自身の口から告げられた。
「気功法を扱う戦士たちが登場する
「なんだと!?」
明かされた衝撃の能力を耳にして、ジェラスは大いに狼狽した。
当然である。ジェラスアジテイターの使うフラッド・ツィートは攻撃にも防御にも使える万能な能力だが、その真骨頂は敵に文字を送り込んで戦闘能力を低下させ、その隙に畳み掛ける事にあるのだ。
そして万能であるが故に、特化したものがない。そのための文字による妨害なのだが、それさえ通じないとなれば、ジェラスにはもう対抗する術がないのだ。
何より、いくらなんでも同じV1アプリでここまでの能力を引き出せるはずがないし、ここまで顕著に差が出るはずがない。ならばこの状況は、一体どういう事なのか。
「……まさかお前、それはV2アプリなのか!?」
「ん? ああ、確か浅黄のヤツが『既存のアプリでは出力が弱いし、何よりタブレットドライバーの性能を活かしきれないからアップグレードする』と言っていたな」
「バカな……!?」
まさか、自分以外にもマテリアプレートのバージョンアップを図っていた者がいたとは。ジェラスにとって、何よりも衝撃的な事実だった。
そしてジェラスにとって何より腹立たしいのは、何の問題もなく起動できるV2タイプアプリを、自分以外の人間が作ってしまえているという事だ。
しかも目の前にいる仮面ライダーは、その機能も十分に活かしている。苛立ちが、彼の脳を蝕んでいく。
「こんな事が、こんな事があってたまるか! 俺は強いんだ……勝つのは俺なんだよぉぉぉ!」
《
ジェラスは諦める事なく、両手から文字を生成した。
認めない。認められるわけがない。
目の前にいる仮面ライダーが、自分よりも強いなど。
たかがポッと出の、それもつい最近ライダーになったばかりの男を相手に、勝ち目がないなどと。
「ぬおおおおらぁっ!」
生み出したのは『大』の字と『筋』の字。それを自らの体に打ち込む事によって、体格が大きくなった上、筋肉量が増加する。
それだけでなく、ジェラスはセカンドコードも発動し、掌から『カチコチ』『ヒヤヒヤ』の文字を生み出して、それを鎧に変えて纏った。
妨害が通用しないのなら、強化に回せばいい。そう考えたのだ。
「どうだ!! これでも俺に勝てると、思うかぁ!?」
斧を拾い上げ、より破壊力の増した炎を噴き出す一振りを雅龍へと向ける。
スタイランサーでガードするものの、受け止めきれずによろめいた。
もちろん雅龍もやられるばかりではない。スタイランサーを突き出し、反撃に移る。
だが、その槍の先端がジェラスの鎧に命中した直後、スタイランサーが凍りついて鎧に張り付いた。
「むぅ……!」
徐々に凍りつくスタイランサーに、堪らず雅龍は手を離す。
それを見てジェラスはますます勝利を確信し、勝ち誇ったように笑い声を上げた。
「ハハハッ! お前もこれで終わりだ、死にやがれぇ!」
ジェラスがまた斧を振り上げて力を溜める。雅龍の背後には警官たちがおり、彼らごと攻撃して焼却しようとしているのだ。
その瞬間、雅龍はタブレットドライバーに手を伸ばした。
「その蛮行、目に余るな……良いだろう。ならば私も」
言いながら、雅龍はアプリチューナーのスイッチを上から順に押していく。
《パワフルチューン! テクニカルチューン! スピーディチューン!》
「一切容赦しない」
今度はマテリアルセンサーが赤・白・黒・赤・白・黒と明滅し、雅龍はそこに人差し指で触れた。
すると雅龍の赤い装甲が分離し、上空に移動。さらに白と黒の装甲が出現し、三つのデータが融合して新たな装甲に、白銀の装甲に変わった。
《
音声と共に舞い降りたそれが、雅龍のスーツに合着する。同時に、ジェラスが斧を雅龍へと叩き込んだ。
その一撃を、雅龍は片手で受け止めている。
「なっ……!?」
「無駄だ」
噴き出す炎になど興味も持たず、雅龍が言い捨てた。
ならば、とばかりにジェラスは左手で雅龍を殴りつけて斧を放させ、攻撃のスピードを上げる。
だが、斧を振り被っても今度は僅かに身を反らして避けられ、左拳やキックも簡単に避けられてしまう。先程までのパワフルチューンよりも、目に見えてスピードが増していた。
「これがマキシマムチューン。パワー・テクニック・スピード、全てを兼ね備えた姿だ」
雅龍はそう言うと、一瞬でジェラスとの距離を詰める。
そして拳が胴に触れるか触れないか、という距離から一度軽い力で手刀を鎧に押し当てた。直後、握り拳を作って、短い距離からジェラスの胴に打ち込む。
寸勁だ。凄まじい衝撃がジェラスの体を襲い、体が吹き飛ばされて鎧は砕け、彼はたちまち崩れ落ちて跪いた。
しかもスタイランサーの時と違い、雅龍の拳は凍っていない。凍結の無力化は天華繚乱によるものだが、鎧の上から拳を打ち込まれるという明らかな異常事態に、ジェラスは狼狽している。
「ゴ、ガハッ!? バカな……!?」
「修練が足りん。直接体内の気を突く
ゾクリ、とジェラスが背筋を震わせる。
拳を握ったまま、雅龍がまだ向かってくるのだ。
「何よりも……言ったはずだ。私に小細工は通用せん」
ザクッ、ザクッと歩く音を響かせながら、雅龍は無慈悲に接近する。
瞬間、ジェラスの脳裏にはある二文字が浮かび上がって離れなくなっていた。
それは『天敵』。この男は、最初から自分が相手にしてはいけない存在だったのだ。
「う……うおおおおっ!?」
雄叫びを上げながら、ジェラスはゲートを開く。
勝てない。ここまで相性の悪いヤツに、今の自分で勝てるわけがない。
逃げると決めてからのジェラスの行動は速かった。スネーク・デジブレインたちをけしかけ、囮に使って脱兎のごとくゲートの中へ走り去った。
「逃げたか。まぁ、仕方あるまい」
冷静な態度で、雅龍はパニッシュメントアイコンに指で触れ、センサーをタッチする。
右拳にエナジーが集約し、雅龍は大きく息を吸った後、それを地面に向かって振り下ろした。
《パニッシュメントコード!
「ホオオオオオアタアアアアアッ!」
拳が地面に突き入れられ、振動が周囲に伝わると同時に地面に龍の形のクレーターができあがり、数十体といたスネーク・デジブレインはのたうち回った後に全て消滅する。
「大地に流れる気……龍脈を突き、その振動で気の流れを狂わせた。これが
そう言いながら雅龍は変身を解除し、タブレットドライバーを外す。
近くで彼の戦いぶりを見ていた宗仁は、大層驚いた様子で翠月に話しかける。
「とんでもねぇ威力だな……なんで最初からその、マキシマムってヤツにならないんだ?」
「必要とするカタルシスエナジーが多すぎる、私では三分しか維持できん。奥の手というヤツだな」
「はぁ~、なるほどねぇ」
納得した様子で宗仁が頷いている。
ともかく、これで当面の危機は去った。後はサイバー・ラインに向かったチームの帰還を待つのみである。
「無事でいれば良いのだが」
侵攻チーム、特に浅黄の事を想って空を見上げながら、翠月はポツリと呟くのであった。
※ ※ ※ ※ ※
雅龍とザギークが戦闘を終わらせたのと同じ頃、翔たちは施設内を探索していた。
ステージにいるであろうと思っていたロックの姿がなかったため、それらしい場所を虱潰しに探すしかない。もちろん、警備のデジブレインに見つからないようにだ。
しかし、どの階に行ってもロックの姿はない。
「クソッタレ、どこにいやがんだ……」
「これだけ探しても見つからないなら、ここにはいないんじゃないの……?」
悪態をつく鷹弘に、アシュリィが提言する。だが、彼は首を横に振った。
「こんな規模の建造物を、何の意味もなく設置するとは思えねェ。ここは間違いなくヤツの拠点……どこかにいるはずだ」
言いながら、鷹弘は通信機で鋼作・琴奈へと連絡を取る。
「そっちでは何か解析できたか?」
そうして返ってきたのは、力ない二人の言葉だ。
『すまん、マップの内容以上の事は何も』
『こっちもダメです……一体どこにいるっていうの?』
ここに来ての手詰まり。鷹弘もアシュリィも深く息を吐き、鋼作と琴奈も嘆息しているのが通信機越しに聞こえる。
そんな時、翔が何か思いついたように「あの」と手を上げた。
「もしかして、この案内図に載っていない場所があるんじゃないですか?」
「隠し部屋って事か? 確かに考えられなくはないが……」
「そこまで大仰なものでなくても、例えばスタッフ用の通り道とかバックヤードは案内図から排除してるとか。そんな可能性もあるんじゃないかと」
そこまで言われて、鷹弘はハッと顔を上げた。
「控室……楽屋だ! 案内図には載ってねェが、絶対どこかにある!」
「でも図に書いてないものをどうやって探すの?」
「楽屋ならアリーナからそう遠くないはずだ、準備のための場所なんだからな。浅黄の様子も気になる、一旦戻るぞ」
三人は頷き合って、急いで走って浅黄との合流を図る。
幸いにも、浅黄はまだアリーナの入口前にいたため、無事に合流を果たす事ができた。
翔は浅黄の姿を見て、安心したように話しかけた。
「浅黄さん、無事だったんですね!」
「んー、問題ないない。で……焦ってるみたいだけど、まだロックの居場所は見つかんない感じ?」
「そうなんです。控室があるはずなのでそこを探してるんですけど」
「ははぁー、なるほどね。そっかそっか、確かに楽屋にならいるのかも」
言うなり、浅黄はすぐさまマテリアパッドを操作してエディターツールを呼び出し、ケーブルを壁に接続した。
「ウチも一通り辺りを調べたけど、目に見える範囲にそれらしい場所はなかったのよねーん。でーもー、もし入口を偽装してるとするなら……よし、みっけ!」
カチッ、と浅黄はエンターキーを入力する。
すると廊下の奥の何の変哲もない壁が、突如として透けて消え、廊下が出現した。
「偽装してやがったのか……見つからねェワケだ」
「多分この先にお望みの楽屋があるよ。レッツゴー!」
アシュリィの尻を揉みながら浅黄が言い、即座に力強いビンタで制裁を受ける。
こうして、四人は新たに出現した通路を歩き、ロックのいる楽屋を探す事になったのだが――。
「……なに、これ」
ここでまた問題が発生した。
通路には無数に扉が設置されており、そのどれも内側から鍵がかけられていて、中に入る事ができないのだ。
というよりも浅黄がハッキングを試みたところ、これらの扉には奥に部屋が存在するものの、人が一人入る程度のスペースしか存在しないようだった。
「んー、ハリボテってワケじゃないんだけど、なんだろこれ。とりあえず奥まで行ってみる?」
「そうしましょう」
四人が廊下の最奥へと進んだ時、それは見つかった。
他の簡素な扉と違って、真っ赤に縁取られている、ラメを一面に散りばめた青い派手な扉。
どう見てもこれがロックの楽屋、彼の玉座だ。一行は確信していた。
だが、やはり鍵がかけられており、扉は開かない。
「ほんじゃいっちょやってみますかー」
そう言って、浅黄はエディターツールによるハッキングで解錠に取り掛かる。
しかし、突然その手が止まった。
「あー、こりゃダメだ」
「どうしてですか?」
「ハッキングでどうにかなるレベルを超えてる。技術とかセキュリティ云々じゃなくて、かなり特殊なギミックだね。早い話、正規の手段じゃなきゃ開かないようになってる」
「じゃあ、その正規の手段っていうのは……」
「残念だけどウチにも分かんない」
折角ロックの居所を見つけたというのに、ここに来てまた手詰まりとなってしまった。
頭を抱えながら、鷹弘は翔とアシュリィに質問を繰り出す。
「お前ら、何か心当たりねェのか? ストライプの時はどうだったんだ?」
「それは……」
翔は当時の事について頭を巡らせる。あの時、自分はどのようにして玉座まで辿り着いたのだったか。
そして、すぐに翔もアシュリィも思い出した。
「そうだ、確かあの時は銅像に触れたら階段が出て来たんだった!」
「でもアレってなんだったの? 今回も同じものがあるって事?」
アシュリィに問われて、翔は首を横に振る。
「同じ性質を持ってはいるだろうけど、多分全く同じものではないと思う。あの像は多分、進駒くんのトラウマに関係しているものだからね」
「……どういうこと?」
「覚えてない? あの像に触れて、僕らの頭の中に映像が流れて来た時の事。アレで進駒くんの過去が分かったでしょ?」
「あっ!」
「それに今思えば、二つの像の顔は進駒くんの両親に似ていた……Cytuberの領域では、その主にとってのトラウマとなるものが玉座への鍵になっている。僕の推測はこうです」
それを聞いて、鷹弘も浅黄も納得したように頷く。しかし同時に、また別の問題が浮上した。
「なら、ロックのトラウマって何だ? どうやって俺たちがそれを調べる?」
「元の姿も分かんないしねぇ……結局また手詰まりかな」
考え込む鷹弘と浅黄、そしてアシュリィ。
そんな中、翔は神妙な面持ちで三人へと話しかける。
「ひとつだけ怪しいところがあるかも知れません」
それを聞いて、三人が一斉に彼に注目した。翔にも確信はない様子だったが、鷹弘は訊ねる。
「一体どこなんだ? いつの間に見つけた?」
「ここに入る前ですよ。一緒に見たじゃないですか」
「……なんだって?」
「本当にここなのか?」
楽屋への入口を見つけた後、四人はアリーナから外へと出ていた。
というのも、翔の言う怪しい場所が、外部にあるためだ。
それは、駐車場。車が一台もなく、なぜか化粧台などのゴミが散らばっている場所だ。偵察した時と変わらず、警備のデジブレインが彷徨いている。
「確かに怪しいが、ゴミが捨ててあるだけだぞ?」
「ええ。でも、ここには警備員がいます。おかしいと思いませんか? 何もないのにどうして警備をする必要があるんでしょう」
「……確かにそうだけどよ。ロックは男だぞ? なんで化粧台なり下着なりがトラウマになるんだ?」
「それは僕にも分かりませんけど、調べて見る価値はあると思います」
腕を組み、唸る鷹弘。
念の為に鋼作・琴奈へと通信を飛ばし、この場に何か反応するものがないかモニタリングさせてみたが、気になるものはないという。
考えた末に、鷹弘は組んだ腕を解いて翔の肩に手を乗せる。
「分かった。とりあえずやってみるか」
「はい!」
四人は警備員に見つからないように身を潜めながら、散らかった駐車場に侵入する。
そして、翔が割れた鏡に手を触れた、その時。
ストライプの
『ついに買っちゃった、憧れのエレキギター! よーし、アタシの歌で世界中を湧かしちゃうぞ!』
「……え?」
四人が四人、驚いていた。
何故ならこの映像は、翔と近い年頃の少女の視点になっているからだ。
学生鞄に名前が書いてあり、それによると少女は名を
「ど……どういう、こと?」
「分からない……この人がロックに何か関わっているのかも。とにかく続きを見てみよう」
言いながら、翔は地面に散らかされている他の残骸に触れる。
部活仲間と共に音楽活動を続けていた律が、一人のスーツ姿の男に声をかけられていた。
『え!? スカウトですか!? アタシたちを!?』
『そうとも。ずっと聞かせて貰っていたが、君らには紛れもなく才能がある! ぜひうちの事務所に来て欲しい!』
少女たちと男は、そんな会話をしていた。
映像はここで途切れ、何となしに嫌な予感がしているのだが、再び翔は残骸に触れた。
そして、その予感は的中する。
『な、なに……これ……』
デビューしてから一ヶ月後、とある県の大型アリーナの駐車場で。
そこに停めてあるキャンピングカーに来るように指示を出されていた律は、トイレに行った後に少し遅れて到着した。
他のバンドメンバーからは既に目的地に着いたと連絡を受け、急ぎ足で向かったのだ。
だが、キャンピングカーの中に入った彼女の目に飛び込んだのは――衣服を乱され泣いている仲間の少女たちの姿と、全裸の男たちだった。
律は彼らの顔を知っている。有名な歌手グループで、高い歌唱力とダンスで男女問わず人気な存在だ。律も、ここにいる仲間たちも彼らのファンだ。
その彼らが、仲間を手篭めにしている。これは一体どういう事なのか。
よく見れば自分たちをスカウトし、プロデュースしてくれていた男もそこにいた。彼はスーツを着ていたが。
『すまない……上司が、彼らの好きにさせてやれと……そうすれば、君たちの事もなんとかしてやると……』
『……』
つまり、自分たちは生贄として差し出されたのだ。彼の上司と、看板グループのために。
律の頭が、心が、全身が熱くなる。怒りで燃え盛り、煮え滾る。
『全員揃ったしそろそろ始めちゃって良いスか?』
一人の男のそんな笑い声が聞こえ、仲間たちの服を引き裂き始める。仲間たちが抵抗しても、彼らは止めない。無理矢理に押し倒し、暴威を振るい始める。
そして自分にも魔の手が迫り、律の怒りが頂点に達した時、その男は現れた。
『欲しくはありませんか? こんな理不尽を迫らない、怒りの声が届く世界が。人を穢し狼藉を働く者を、根絶やしにする世界が』
『誰……?』
『私めならば、あなた様にその機会を差し上げる事ができます。それを活かせるかどうかはあなた様次第となりますが』
声の主は、スペルビアだ。という事は、ロックの正体は――。
『さぁ、あなた様は何を犠牲になさいますか?』
『……』
伊刈が無言で指差したのは、かつてファンだった歌手グループの男たち。自分をスカウトした男。
そして、夢も心も何もかも奪われてしまった、自分の仲間たちだ。
『それでは、あなた様の"傲慢"なる悪意、プロデュースさせて頂きます』
スペルビアが手を前に掲げると、彼らは意識を失う。律の両眼は絶えず怒りで燃え、涙を流していた。
そこで映像は途切れる。あまりにも衝撃的な事実を知って、翔も鷹弘も瞠目していた。
これが彼女の記憶。ロックは、女だったのだ。
「お前ら……何を見た……」
背後で、そんな声が聞こえた。
ロックだ。映像に夢中になっていて、誰も気付かなかった。
「見たのか……俺の……アタシの……記憶、をぉぉぉ!!」
ゆっくりと歩きながら、彼、いや彼女はポケットから一枚のマテリアプレートを起動する。
《ロックンロール・ビート!》
「
《
彼女の魂の叫びが木霊し、頭部に一本角を生やした、全身に拘束具を装着しているデジブレインが現れる。
そしてロックとデジブレインの体が重なり、モザイクで覆われて姿が変わっていく。
口部にジッパーのようなものがついたレザーマスクを装着している、両眼がオオカミ型の赤いバイザーで覆われた怪人。
頭部には狼の耳が生えており、体はファーに包まれ、右手にはエレキギター、左手にはマイクスタンドを持っている。さらに両肩にはスピーカーのようなものが装甲として付いているのが見える。
また、全体としてどこか女性的な丸みを帯びた体型だった。
「アタシの秘密を知ったヤツは生かしちゃおけない……どいつもこいつも殺してやる!! このフュアローミュージシャンがなァッ!!」
ジャァンッ、とフュアローミュージシャンと名乗ったサイバーノーツがギターを鳴らした。