仮面ライダーアズール   作:正気山脈

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EP.26[暴悪なるジェラス]

 ラチェスアーティストとの戦いが終わり、後は帰還するのみであったはずのホメオスタシス一行。

 その彼らの前に姿を現したのは、あのヴァンガードであった。

 手には返り血に染まったナイフが握られており、足元で彩葉の祖父の面堂 元作が永遠の眠りについている。即死だったようだ。

 

「どうして……どうして殺したんだ……!!」

 

 拳と声を震わせ、翔はヴァンガードを睨みつける。その両隣で、アシュリィも響も怒りの形相となっていた。

 

「この人にはもう戦う力も意思もなかったはずだ!! なんで、どうしてこんな事ができる!?」

 

 翔の非難を聞いても、ヴァンガードは眉一つ動かさない。むしろ面白そうに笑っている。

 続いて、翠月が彩葉をかばうように前に出た。

 

「ホメオスタシスを裏切った男だと聞いた時、それに初めて出会った時から、お前からはおぞましい悪意の臭いを感じていた。だが、栄 進駒や伊刈 律や面堂 彩葉を見ている内に、きっと何か……他のCytuberのように同情の余地がある事情を抱えているのかも知れないとも思った。退くに退けない何かがあると。そしてきっと……自分の罪に気付き、償うのだろうと」

 

 マテリアプレートを握る手に強く力を込めながら、翠月は叫ぶ。

 

「ついに超えてはならない一線を超えたな……下衆が!! お前だけは、どんな事情があろうとも絶対に許さんぞ!!」

 

 呆然とする彩葉を除く全員が、一斉にヴァンガードへと敵意を剥き出しにする。

 そんな彼らの怒りを嘲笑うかの如く、ヴァンガードは物言わぬ元作の顔面を蹴りつけた。

 

「さっきからうざってェなぁ~~~、こんな老い先短いクソジジイをブチ殺して一体何が悪いってんだ? ちょいと速めにポックリ逝っただけでガタガタ騒ぐなよ」

「なんて事を……!!」

「それに、このジジイとそこの元デカダンスは俺の領域の座標を知っている。どっちみち……遅かれ速かれいつか殺すつもりだったのさ」

 

 くつくつと喉奥で笑いながら、両腕を広げてさらにヴァンガードはホメオスタシスの面々を煽り続ける。

 

「つまり、こいつを殺す時期が速まったのはホメオスタシスのせいって事だよなぁ~~~? お前らがデカダンスを倒しに来なかったらこんな事にはならなかったんだからよぉ!」

 

 その勝手極まりない無神経な一言が、怒りの火が点いている翠月の心に、油を注いだ。

 

「構えろ……徹底的に叩きのめす!」

 

 翠月はそう言ってタブレットドライバーを装着し、ヴァンガードと対峙する。

 その後ろで翔もアプリドライバーを装備して、背を向けたままアシュリィと響に語りかけた。

 

「アシュリィちゃん、兄さん。二人は浅黄さんと一緒に面堂さんを連れて、あの街まで逃げるんだ。その後は被害者を連れて現実世界まで戻って欲しい」

「ショウはどうするの!?」

「……ヴァンガードを足止めする。怒ってるのは英さんだけじゃない、僕もこの人を倒さなくちゃいけない……!」

 

 大切な人を失う痛みと哀しみ。それを知っているからこそ、翔も翠月もヴァンガードを許す事ができなかった。

 その気持ちを理解して、アシュリィは言われた通り、響や浅黄を伴って街へと避難するのであった。

 

「人払いは済んだかよ? まぁお前らなら丁度良い実験台(モルモット)になりそうだなァ、特に散々俺を痛めつけてくれたお前の方は」

 

 腕を組んで翠月を見下すヴァンガード。

 その言葉を聞いて、今度は翠月が彼を鼻で笑った。

 

「自分から吹っ掛けておいて逆恨みか、安い男だな」

「クククククッ、そんな口を叩けるのも今の内だぜ」

 

 言いながら、ヴァンガードは懐からあるものを取り出す。

 それは、翔も翠月も見慣れたもの。マテリアフォンだった。

 当然、翔は瞠目する。なぜ彼が持っているのか、まさか変身するつもりなのか、と。

 一方で翠月は冷静だった。

 

「新たにドライバーを作製したか。だが、お前の持つV1アプリでは我々には……」

「ヒャハハハ!」

 

 話の途中で、突然ヴァンガードが笑い出した。そしてアプリドライバーを装着した後、さらに懐に手を伸ばす。

 

「残念だが。俺は既に、お前らを超える最強の力を手に入れたァァァ……もう誰も手の届かない高みになァ!」

「なに?」

「待ち焦がれたぜ、この時を!」

 

 言いながらヴァンガードが取り出したのは、二枚のマテリアプレートだ。

 ひとつは恐竜の頭部の骨格を模した装飾が伸びている、ヒンジつきのマテリアプレート。

 もうひとつは、多種多様なゾンビの群れが描かれたプレートだ。

 

「今この瞬間、俺は最強の頂に昇り詰める!」

 

 ヴァンガードは歓喜の表情を浮かべて、まずはゾンビの方のマテリアプレートを起動する。

 おどろおどろしい音楽と共に、電子音声が鳴り響いた。

 

BOOGIE WOOGIE ZOMBIE(ブギウギゾンビ)!》

 

 そしてそれをトランサイバー側にセットし、今度はもうひとつの恐竜のプレートを起動した。

 

《ジュラシックハザード!》

 

 力強い音楽と音声が鳴り、ヴァンガードはそれをアプリドライバーへと装填し、飛び出た骨格の部分をヒンジに従って閉じる。

 すると表面が骨格ではない紫色の恐竜の頭部となり、その大きな口がガパッと開いた。

 この頃には既に、翔も翠月も、彼のやろうとしている事を理解していた。

 

「まさ、か……」

「これが!! これこそが!! 俺の求め続けた、究極の力!! その完成形だァァァ!!」

《ユー・ガット・メイル! ユー・ガット・メイル!》

《アイ・ハヴ・コントロール! アイ・ハヴ・コントロール!》

 

 人体の許容量を大きく超過した強大なカタルシスエナジーが、ヴァンガードの内側で構築されていく。

 それを恍惚とした表情で受け止めつつ、マテリアフォンをアプリドライバーにかざし、叫んだ。

 

「ヒヒヒヒヒ、ヒャァーハハハハハハハ!! ヘェェェンシィィィン(変身)!!」

Alright(オーライ)! マテリアライド!》

Roger(ラジャー)! マテリアライド!》

 

 ヴァンガードの全身が紫色の瘴気に包まれ、皮膚や眼が変色し、さらに全身がボディースーツで覆われていく。

 そして彼の眼前には、翼や角を無理矢理に融合させられた、一体の恐竜のテクネイバーが現れていた。

 

《ジュラシック・アプリ! 太古の王者、インストール!》

《ゾンビ・アプリ! 黄泉帰る恐怖、トランスミッション!》

 

 音声と共に、恐竜の肉体がバラバラに散り、角や尻尾や翼も一緒に装甲となってヴァンガードのスーツに合着する。

 直後、装甲は瘴気を浴びて急激に白く染まった。まるで、白骨化したように。

 そうして完成したのは、禍々しい瘴気を放ち、化石となった恐竜の特徴を持つ、筋骨隆々の紫色の仮面ライダー。

 プテラノドンの翼の骨格をマントのように背負い、頭部はティラノサウルスの頭蓋、鎚のような尻尾はアンキロサウルスで、両肩からはトリケラトプスの大角が生えている。両脚にはブラキオサウルスの骨格が装甲として纏われており、両腕にはスピノサウルスのような棘状の突起が伸びている。

 二人はその姿に、そして変身方法に驚愕するしかなかった。

 

「バカな、二つの変身システムを同時に使うだと!?」

「そんな事をしたら、過剰なカタルシスエナジーの発生と必要量に肉体が追いつけなくなってしまうはず……一体どうやって!?」

 

 翔が問うと、自らの変身成功に楽しそうに笑うヴァンガードが「教えてやるよ」と言った。

 

「このV2アプリ、BOOGIE WOOGIE ZOMBIE(ブギウギゾンビ)は、内包されたゾンビ・デジブレインを使って瞬間改造手術する事で、使用者の肉体を仮死状態にする力がある。つまり、俺もゾンビなんだよ」

「……まさか」

「そう! 仮死状態のまま動く事ができる今、俺の痛覚は完全に遮断されている! どれ程の痛みがこの体を駆け巡ろうと、問題なく動けるって寸法だ!」

 

 翔と翠月は絶句した。こんな形でコントロールの難しいはずのV2アプリを強制使用するなど、考えもしなかったのだ。

 しかもライドオプティマイザーやアプリチューナーによる出力の調整が必要なくなっているため、常に100%の力を発揮できる事になる。この差は非常に大きい。

 続けて追い打ちをかけるように、ヴァンガードは言った。

 

「そしてもうひとつのV2アプリであるジュラシックハザードは、大幅な身体能力と再生能力の強化を施す代わりに、本来ならリンクナーヴへと凄まじい負荷をかけるがァ……ゾンビとなった今、そんなリスクは関係ない!」

 

 コキコキッと首を鳴らし、ヴァンガードは両腕を広げる。

 

「これぞ力の頂点、俺が最強のライダー……仮面ライダージェラス ジュラシックゾンビリンカーだァ!」

 

 恐竜さながらにドス黒い空に向かって大きく吼え、砂漠の大地を歩むジェラス。

 しかし、翔たちは怯む事なく立ち向かう。

 

《パワフル・チューン!》

「同じV2ならまだ勝ち目がある。何より、こちらは二人がかりだ」

天華繚乱(ウォーゾーン・ブルーム)!》

「はい! ここで倒しましょう!」

《ブルースカイ・アドベンチャーV2!》

「変身」

「変身!」

Alright(オーライ)!》

Oh YES(オゥ・イエス)!》

 

 それぞれマテリアプレートを起動・装填し、ベルトを操作して変身に移行した。

 

《闘龍之技、アクセス!》

《蒼天の大英雄、インストール!》

 

 仮面ライダージェラスに対するは、アズールV2と雅龍 パワフルチューン。

 今はアズールセイバーV2が破損しているため使用可能なのは通常のアズールセイバーのみだが、それでも充分な戦力だ。

 二人は剣と槍を手に、ジェラスへと斬撃と刺突攻撃を仕掛けた。

 負傷と疲労があるとは言っても、これまで何度もデジブレインやサイバーノーツと交戦して来た二人。

 その渾身の一撃が――それぞれ片手で止められていた。

 

「えっ!?」

「バカな……!!」

 

 アズールの刃は右手で握って止められてビクともせず、雅龍の一突きに至っては左手の指と指で挟まれて微動だにしない。

 二人の驚く様を眺めて、ジェラスはせせら笑っている。

 

「おいおい、本気で来いよ。その程度のパワーで俺を倒せると思ってんのかァ?」

 

 挑発の言葉を投げかけ、ジェラスは剣ごとアズールを投げ飛ばす。それによって槍が指から離れた隙に、雅龍は猛攻を仕掛けた。

 

「ホアタァァァッ!」

 

 トリガーを引く事で槍の先端をインクで固め、鉄球型のハンマーを生成。それを全力で振るい、ジェラスの胸部に命中させた。

 メキッ、という骨の軋む音が雅龍の両腕に伝わる。だが、ジェラスは攻撃を受けたまま、反撃の素振りを見せない。

 むしろ重い攻撃を受けていながら、不気味に笑い声を上げている。

 

「余裕ぶっているつもりか!?」

「つもりじゃねぇ。余裕なんだよ」

「ならば!!」

 

 スタイランサーを地面に突き刺し、雅龍は前に大きく踏み出す。

 そして至近距離から、左右の拳撃と蹴撃の乱打を浴びせた。顔に、鳩尾に、脇腹に、胸に。

 全ての一撃が確かにクリーンヒットするものの、同時に不可解な感覚に苛まれていた。

 ――目の前の男の身体から、気の流れを感じない。

 

「どういう事だ……!?」

「効かないねぇ?」

「おのれ……ではこれでどうだ!!」

 

 言いながら、雅龍はそのままスタイランサーにマテリアプレートを装填する。容赦なく必殺技を叩き込むつもりなのだ。

 

《パニッシュメントコード! Oh YES(オゥ・イエス)! ギガント・マテリアルスティング!》

 

 穂先のハンマーが再度融解し、巨大な槍へと姿を変える。雅龍は上空に飛び上がり、それを力の限りに突き出した。

 

「ホオアタアアアアッ!!」

 

 パワフルな巨槍から放たれた、最高威力の必殺。その強大な一撃を、ジェラスは避けようともしない。

 そして、胸部に直撃。雅龍はたった今放った刺突に、確かな手応えを感じた。

 ――だが。

 

「クククッ……ヒヒヒヒヒッ、ヒヒャハハハハーァハハハハハァーッ!!」

「な、ん、だと……!?」

 

 大きなダメージを与えた手応えがあったにも関わらず、ジェラスはただただ笑い飛ばしていた。

 そして片手で巨大な槍を持ち上げると、雅龍を槍と共に思い切り地面に叩きつけた。

 

「ガハッ!?」

「ヒャッハハハハハ! バーカ、俺が言った事を忘れたかァ!? 身体改造でゾンビ化した俺に痛覚はなくなってんだよ!! そして恐竜の生命力とゾンビの再生力が合わさった今、たとえ必殺技だろうが傷は再生する!!」

 

 砂地に倒れている雅龍をもう一度掴んで持ち上げ、再度地面に叩きつける。

 そして苦しんでのたうっている彼の体へと、強烈な尻尾の一振りで追い打ちをかける。

 回避の手段などあるはずがない。腕についたパワフルチューンの装甲で辛うじて受け止めるが、一撃で亀裂が走り、雅龍を転倒させて空を見上げさせた。

 

「俺に勝てるヤツはもうこの世に存在しない……お前らはただ嬲り殺されるを待つだけの獲物だ!! 俺が!! 最強の仮面ライダーなんだよォ!!」

 

 瘴気を背中の翼に纏わせて翼膜を作り、飛翔。そして、強靭な脚で雅龍の胴を踏みつける。

 肋骨のひしゃげ、砕ける音。ジェラスの一撃に、雅龍は仮面の隙間から吐血した。

 その惨状に、思わずアズールが叫ぶ。

 

「英さぁぁぁん!!」

「ヒャーハァ! 死ね、死ねェ!」

 

 ジェラスは草を踏み均すように、何度も何度も同じ場所を踏みつける。確実に命を奪いにかかっているのだ。

 

「やめろ……やめろぉぉぉっ!!」

 

 風を起こしながら飛翔し、アズールがジェラスの背後から剣を振り下ろす。

 その時、ジェラスは背後を見る事なく、雅龍の肋を足で踏み躙りながら、左手を前に掲げた。

 すると電子音声と共に、その手に武器が装備される。片刃の大斧のようにも見えるチェーンソーだ。

 

《ジェラスローター!》

 

 武器を持とうと関係ない。アズールは、今の自分にできる最大の一撃で、背後から襲いかかった。

 

《フィニッシュコード! スーパーブルースカイ・マテリアルスラッシュ!》

「そぉりゃあああああっ!!」

 

 これまで何度もデジブレインやCytuberを倒し続けて来た、烈風を纏う強大な光の刃の一閃。

 その最高の一撃でさえも、ジェラスの右手一本で、容易く防がれていた。

 

「ヌルい。ヌルいなァ、アズール」

「そ、そんな……同じV2なのに、どうしてここまで差が……」

「同じじゃねぇんだよバァーカ! 俺はお前らの戦いと使ってるマテリアプレートを分析しながら改良を重ね続けてんだよ、2.0や2.1より最新の2.9の方がより優秀になるのは当たり前だろうが!! ましてやそれを二枚使ってんだから強いに決まってるよなァ!!」

 

 ジェラスは剣を離し、トリガーを引きながらグルリと回転してチェーンソーをアズールの背中に向かって振り抜いた。

 高速回転するノコギリの刃が、V2の力で十全に強化されているはずのアズールの装甲を、バターのように容易く斬り裂く。

 

「うわあああ!!」

「あぁ~、気持ちィー! 最高ォー! 格下(ザコ)を一方的に弄んで勝つのはやっぱたまんねぇ快感だよなぁ!?」

 

 地面に落ちる寸前に蹴りを入れ、アズールを再び砂地へと吹き飛ばす。砂塵が舞い散り、アズールはうつ伏せに地面に倒れた。

 そして自分の足元で吐血して悶えている雅龍を見下ろして、再びジェラスローターのトリガーを引く。

 刃が高速回転を始め、ジェラスはその音を聞きつつ、ゆっくりとチェーンソーを頭上に掲げた。

 

「こいつもそろそろ殺しておくかァ」

 

 雅龍にはもはや抵抗する術がない。深刻なダメージを受け、この場から逃れる事さえできない。

 ジェラスにとって、それは心を満たす事のできる素晴らしい悦楽だった。

 他者を見下し、圧倒的な力を持つ自分だけが他の命を奪える快感。生態系の頂点に立った高揚感。そして誰も自分を傷つける事などできない。

 目指した最強の力が手中にあり、そしてこの世のあらゆる命を掌で弄ぶ事ができる。小さな虫をプチプチと潰すように。ジェラスの欲望は、ついに完成したのだ。

 

「それじゃあ……なッ!!」

 

 ジェラスは仮面の中で喜色満面になりながら、雅龍の首目掛けてチェーンソーを振り被らんとする。

 その時だった。

 突如として黒炎がその腕を焼き、チェーンソーを取り落とさせた。

 

「あぁ?」

「今のは……!」

 

 驚愕するアズール。その黒い炎には、見覚えがあった。

 

「困りますねぇ」

 

 頭上から、そんな声が聞こえる。

 ゆっくりとジェラスの前に降り立ったのは――孔雀の仮面の男、スペルビアだ。

 珍しく楽しげな声ではなく、かと言って言葉通りに困った様子もなく、抑揚のない無感情な声色だった。

 

「私の差し上げたフラッド・ツィートではなく、勝手に仮面ライダーの力を使うとは。これは立派な契約違反ですよ」

「ハッ! 知ったこっちゃねぇな。俺の願望は最初から『力を手に入れる事』だぜ。それに」

 

 雅龍から離れ、地面に突き刺さったチェーンソーを拾って肩で担ぎ、ジェラスはスペルビアを睨みつける。

 

「俺がお前の真の目的に気付いてなかったと思うか?」

「……ほう」

「お前の思惑通りになると俺も困るんでねぇ。Cytuberの戦力を削いだ上で阻止もできる、画期的な手段だったってワケだ」

 

 スペルビアが目を細め、長く深い溜め息を吐いた。

 

「そうですか、それでは仕方ありませんね」

 

 そして、孔雀の仮面を引き剥がし、黒い炎を纏って姿を変える。

 拘束具のようなものを装着した、ピーコック・デジブレイン。黒き剣を握り、仮面ライダージェラスと対峙する。

 

「契約違反に計画の阻止。ここまでの反逆行為が重なった今、非常に残念ですがあなたにはここで死んで頂きましょう」

「面白れぇ、やれるもんならやってみろよ」

「……ですがその前に」

 

 スペルビアがクイッと人差し指を上げると、雅龍が保有していたスロース・デジブレインのCytube Dreamのマテリアプレートと、スムース・ペイントのマテリアプレートが浮遊。

 そのままスペルビアの手の中に収まった。

 

「あぁっ!?」

「これは返して貰います。代わりにあなた方には現実世界へお戻り頂きましょう」

 

 今度は右手を広げてアズールと雅龍に向け、二人の頭上にゲートを生み出す。

 アズールも雅龍も、そのままゲートを通じて消えてしまった。

 

「さて。それでは始めましょうか」

 

 そう言った直後、返事を聞く前にスペルビアは大きく前に踏み出して一瞬でジェラスの眼前に立ち、素速く拳を腹部に突き出す。

 当然痛みを感じないジェラスは避けもしない。拳を受けながら、反撃とばかりにスペルビアの首を分厚い手で掴んだ。

 

「そぉらぁっ!」

 

 そして腕力に任せ、強引に投げ飛ばす。

 スペルビアは翼を広げて即座に態勢を立て直すが、そこへプテラノドンの翼の骨格に瘴気を纏わせて飛翔するジェラスが追撃をしかける。

 

「む」

「ヒヒャハハハ!」

 

 チェーンソーがスペルビアの左腕を斬り落とし、さらにジェラスの回し蹴りが脇腹を捉える。

 そうして砂漠に墜落したところを、強力な尻尾で何度も叩く。スペルビアは剣で攻撃を捌き続けているが、数発は避け切れず肩や膝に直撃した。

 

「どうしたどうしたどうした、こんな程度かよ!?」

 

 攻撃を何度も叩き込み、さらには両肩の角を伸ばしてスペルビアの翼を貫く。

 スペルビアは立ち上がって左腕や負傷した部位を再生させているが、その隙にジェラスは一枚のマテリアプレートを手に取り、必殺の態勢に移った。

 

「このまま一気に終わらせてやるぜ」

《フィニッシュコード!》

 

 プレートをジェラスローターにセットし、マテリアフォンをかざしてトリガーを引く。

 使ったのはフラッド・ツィートだ。チェーンソーに、無数に『蛇』の文字が浮かび上がる。

 

Alright(オーライ)! ツィート・マテリアルザッパー!》

「死ィねェェェッ!!」

 

 ジェラスがチェーンソーを振るうと、エネルギー体の蛇が何体も出現してスペルビアの胴を貫いた。

 だが、それでも彼は倒れない。右手に剣を握ってジェラスに高速接近すると、その頭を一撃で喉元に至るまで真っ二つに叩き割った。

 

「この姿の私を手こずらせるとは、中々の力を手に入れたようですが……所詮は人間ですね」

「そい゛つ゛は……ゴボッ、どうかな゛ァ?」

 

 目の前から声が聞こえて、スペルビアは瞠目する。

 そして気付いた時には既に遅く、ジェラスの拳で顔面を殴打された。

 頭を割られても、ゾンビの能力を持つ彼は生きていられるのだ。傷はたちまち再生し、元通りになる。

 

「どうやらあんたでも俺は殺せないようだな。安心したぜ、クククッ」

「流石に少々驚きました。まさか、あなたがこれ程の力を持っているとは。戦う術がないワケではありませんが、中々分が悪いですねぇ……」

 

 そう言いながらも、スペルビアの負傷も既に回復しつつある。

 攻撃力はほとんど互角。しかし再生速度と痛覚遮断の能力を持つ今、優位なのはジェラスと言えるだろう。

 

「クク……強がりとはみっともないじゃねェか。今の俺の力はあんたより上なんだよ、一気に終わらせてやるからな」

「……申し訳ありませんが」

 

 スペルビアが空中を飛び、スムース・ペイントのマテリアプレートを掲げる。

 するとプレートが青い光を吸収し、デカダンスの作り上げた領域が崩壊を始めた。

 

「ここは退かせて頂きますよ。あなたと無駄に泥仕合を演じる気はありませんので。では、さようなら」

 

 一瞬の内にスペルビアが姿を消す。

 ジェラスは舌打ちと共にマテリアフォンを取り出し、自身も現実へと帰るのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 帰還を果たした翔は、すぐに翠月を連れてホメオスタシスの管理する病院に赴き、到着と同時に意識を失った。

 翔も重傷だが翠月は特に傷が深く、二人共すぐに治療を受ける事になった。

 その報告を受け、アシュリィや浅黄や鋼作・琴奈、そして陽子もすぐに病院へと向かうのであった。

 病院には既に治療を受けた響がおり、病室で眠る翔と翠月の姿を見ている。同じ病室には眠る彩葉の姿もあるが、こちらは三人に比べて軽傷である。

 

「……幸い二人とも命に別条はない。しかし、当分の間は動けないだろう」

 

 そう言った後で、響は深く頭を下げた。

 

「本当にすまない。翔が俺と戦っていなければ、万全な状態だったらこんな事には……」

 

 彼の言葉に反応したのは、友人である鋼作と琴奈だった。

 二人は響の肩にポンと手を乗せ、なだめるように語りかける。

 

「お前のせいじゃないって」

「そうだよ。そもそも響くんを罠にかけたアイツが悪いんだから!」

 

 その優しい言葉を噛み締め、響は陽子の方を見て「静間さんはどうしているんですか?」と問いかける。

 

「血眼になって御種を探してるよ。絶対見つけ出してブッ倒してやるってさ」

 

 鋼作と琴奈が顔を見合わせ、浅黄が驚きのあまり声を荒げた。

 

「この二人を一方的に倒した相手を一人で!? それは無茶っていうか無謀だよ!!」

 

 浅黄の言い分には陽子も同意し、頷いている。

 

「アズールと雅龍のアイカメラに録画されたデータを見たけど……アレは、今の私たちの手に負えるモノじゃない。最悪、全滅するかも知れない」

「じゃあなんで止めないの!?」

「……どっちにしろ、ここで御種を足止めしておかないとマズいのよ。アイツの性格から考えて、翔くんたちが病院にいると知ったら、真っ先に襲撃に来るわ」

 

 指摘を受けて浅黄が言葉を詰まらせる。そして意を決したように顔を上げ、病室の外へと歩き始めた。

 

「ウチも行く! 足止めなら一人より二人だよ!」

「待った!」

 

 焦った様子を見せつつ、鋼作は彼女を引き止めた。続けて、琴奈が事情を説明する。

 

「浅黄さんにはどうしても手伝って欲しい事があるんです! 鷲我会長も知恵を借りたいって!」

「鷲我が? でも、足止めはどうしたら……」

 

 そこへ、腕を組んで様子を見ていた響が軽く手を上げた。

 

「俺が引き受けよう。少し休んで、体調も良くなった」

「……大丈夫なの?」

「問題ないさ。それに、ヤツとは因縁がある……!」

 

 軋む程に拳を握り、パンッと自らの掌で受け止める響。

 方針は定まった。響はこのまま鷹弘と同様に文彦を捜索し、浅黄は鋼作・琴奈と共に鷲我の元へ。陽子は戦闘グループの補佐を行い、アシュリィは病院に残って二人を守る。

 響は翔の方に近寄って、微笑みながらその頭をそっと撫でた。

 

「必ず生きて帰る。まだお前の作ったカレーを食べてないからな」

 

 そして背を向けて病室を後にすると、彼の表情は一変する。笑みが消え、研ぎ澄まされた刃のような冷徹な眼差しとなった。

 心優しい『兄』ではなく、情け容赦一切なしにあらゆる相手を打倒する『チャンピオン』の顔。

 廊下を駆け抜けて病院を出ると、マシンマテリアラーを呼び出してそれに跨り、文彦を探して疾走するのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 響たちが病院を出たのと同じ頃。

 鷹弘は帝久乃市を歩いて、文彦を探していた。

 闇雲に探しても見つかるはずはないのだが、鷹弘にはその内向こうから現れるという確信があった。

 そして、その時は来た。

 

「よぉ、誰をお探しかな?」

 

 海の見える広場の前に辿り着いた時、不意にそんな声が耳に届いた。

 見れば、探していた男、ヴァンガードが煙草を咥えて海を眺めながら立っている。既にアプリドライバーを装着しており、臨戦態勢だ。

 

「……俺の仲間が随分世話になったらしいな」

「ヒハハ! お前の口から『仲間』なんて言葉が出てくるとはなァ? ところで……」

 

 ヴァンガードは吸い殻を地面に捨て、踏み躙る。

 

「あのプレゼントはどうだった?」

「なに?」

「お前にけしかけてやったキツネだよ」

 

 言われてすぐに思い出し、鷹弘は大きく舌打ちする。

 

「アレもテメェの仕業ってワケか……胸糞悪ィ」

「ヒャハハッ、万が一にもお前にサイバー・ラインに来て欲しくなかったんでねぇ……一番ブチ殺したいヤツは最後まで取って置かねーとなぁ?」

 

 それを聞いて鷹弘は眉をしかめ、強く右拳を握り込んだ。そして深呼吸しながら空を見上げ、小さく声を発する。

 

「正直なところ、俺は今の今までテメェを捕まえる気でいた。だがどうやらそれが甘かったらしい、あの時取り逃がしちまったからな……」

 

 拳をパキパキと鳴らしながら、鷹弘はマテリアフォンからアプリドライバーを呼び出す。

 そしてマテリアプレートを手に取って、ヴァンガードを睨みつけた。

 

「死ななきゃ止まんねェってンなら、俺がブッ殺してやるよ……!!」

「そりゃ無理だな。お前如きなら尚更」

 

 ヴァンガードも、マテリアプレートを二つ取り出した。

 二人は同時にアプリを起動し、叫び合う。

 

《デュエル・フロンティアV2!》

「御種ェェェッ!!」

「偉そうに呼び捨てかァ!? クソザコがよォッ!!」

BOOGIE WOOGIE ZOMBIE(ブギウギゾンビ)!》

《ジュラシックハザード!》

 

 それぞれアプリドライバーとトランサイバーにプレートが装填されると、同じタイミングで目の前の相手に向かって走り出し、拳を突き出し合った。

 互いの拳が腕で防がれると、今度はキックを繰り出し、足と足がぶつかり合う。

 そして再び腕をぶつけ合いながら、マテリアフォンをドライバーにかざした。

 

「変……身!」

《最速のガンスリンガー、インストール!》

ヘェェェンシィィィン(変身)!!」

《太古の王者、インストール!》

《黄泉帰る恐怖、トランスミッション!》

 

 二人の姿が変わる。ガンマンのような風貌の赤い仮面ライダーと、恐竜とゾンビの特徴を持つ紫色の仮面ライダー。

 先に仕掛けたのはリボルブだ。異形の怪物、ジェラスが動くよりも遥かに速く二挺の拳銃(リボルブラスター)を抜き、胴体へと次々に銃弾を撃ち込んで行く。

 攻撃はジェラスの巨体へと全弾命中し、火花を散らせる。反応速度は未だにリボルブの方が上なのだ。

 しかし、ジェラスはその攻撃を一切意に介する事なく、真っ直ぐに猛進して来た。

 

「くっ!?」

「そんな豆鉄砲がァァァ、今更効くワケねぇだろうがァッ!!」

 

 タックルを回避するため、リボルブは右方向に大きく飛び込み、転がりながらも撃ち続ける。

 アズールと雅龍の交戦時の記録から、攻撃が通じない事自体は分かっていた。ここまではある意味想定通りなのだ。

 彼にはひとつだけ策があった。通じるかどうかは賭けになるが、少なくとも状況を打破する切っ掛けを作るであろう一手が。

 問題は。

 

「いつまで逃げ切れるかなァ?」

 

 たった今ジェラスが言った通り、策を打つ前にパワー差で倒されるかも知れないという事だ。ジェラスのスピードはアズールや雅龍・ザギークよりも遥かに上で、リボルブも今は反射神経で辛うじて回避に動けているが、スピード自体が他のライダーよりも遅い以上、疲労が蓄積すれば確実にやられる。

 ジェラスはチェーンソーを装備し、より激しい攻撃に移った。動き回るリボルブを徹底的に追い詰めるつもりでいるのだ。

 高速で回転する刃が、リボルブが盾とした鉄柵やベンチ、地面のコンクリートを両断していく。

 段々と逃げ場もなくなり始めた頃、ジェラスは大きく動いた。

 

「面白いモン見せてやるよ!」

Roger(ラジャー)! ファーストコード、オン!》

 

 サイバーノーツのエフェクト発動だ。それを失念していたリボルブは、舌打ちしつつもすぐに距離を取る。

 そうしてジェラスが地面に右掌を叩き込むと、その周囲に紫色の沼が出来上がり、その中から一体の怪人が這い出てきた。

 恐竜型のデジブレインだが、その姿は体が腐って骨や肉の断面が剥き出しとなっている。恐竜にしてゾンビのデジブレインなのだ。

 腐乱死体ではあるが、その長い尻尾や鋭い牙から、リボルブにはティラノサウルスである事が分かった。

 

「イカシてるだろ? ティラノゾンビ・デジブレインだ」

「イカレてるの間違いじゃねェのか」

「クククッ、こいつの力を見てもまだその口が叩けるか……見せて貰おうじゃねェか!!」

 

 言って、ジェラスは生み出したティラノゾンビに攻撃命令を下し、自らも飛び出す。

 ただでさえ押されているというのに、一対二という厳しい状況に追い込まれてしまった。

 それでも諦める事なく、リボルブは二つの銃を組み合わせて抵抗を続ける。

 

《バーニングモード!》

「ゾンビには炎だ!」

 

 銃口から火炎弾が飛び出し、ティラノゾンビの腐った体を焼く。

 しかし、止まらない。炎に身を焦がしながら、負傷部位を再生させて進撃して来る。

 

「なっ……」

「残念だったな、そいつも俺と同じで痛覚がない。そして傷はすぐに塞がる」

 

 ジェラスローターとティラノゾンビの牙とが、挟み撃ちの形で同時に襲いかかって来る。

 避けきれない。そう思っていたリボルブの耳に、自分の放ったものではない銃声が聞こえ、ティラノゾンビの両眼と足の腱を銃弾が貫いた。

 視界を閉ざされたティラノゾンビはそのまま勢い良くジェラスの方に倒れ込み、攻撃を中断させてしまう。

 

「なんだ今のは……!?」

 

 再度距離を取り、リボルブは銃弾の飛んで来た方向を確認する。

 そこに立っていたのは、アプリドライバーを装着し、フェイクガンナーを構える響であった。

 

「響!」

「静間さん、俺も戦います」

「気をつけろ! こいつらには攻撃が効かねェ!」

「分かってます。それでも……やるしかない!」

 

 マテリアプレートを取り出しながら、響はリボルブの隣へと歩いて行く。

 すると、立ち上がったジェラスがジェラスローターを手に下卑た笑い声を発した。

 

「ヒャハハ! 今更何しに来たってんだ、もうお前なんざ俺の敵じゃねぇぞ?」

「御種……俺はお前を許さん。俺を陥れた事だけならともかく、元作さんを殺し、今度は翠月さんと翔まで……!」

 

 響が連ねる怒りの言葉を聞いて、ジェラスはより愉快そうに笑う。

 

「お前だけは! 俺が必ず、この手で倒す!」

「できねェ事を軽々しくほざきやがって。脳味噌ブチ抜かれようが死なねェ今の俺をどうやって倒す? 大言壮語っつーんだぜ、そういうのは」

「攻略不能な戦いなど存在するものか! お前こそ思い上がるな!」

 

 そう言って響はマテリアプレートを起動し、発砲しながらドライバーへと装填する。

 

Arsenal Raiders(アーセナル・レイダーズ)!》

「変身!」

Alright(オーライ)!》

 

 アプリドライバーにマテリアフォンをかざすと、光と共にその体にシアンカラーのボディースーツが纏われて行く。

 そして眼前にはウォリアー・テクネイバーと似たソルジャー・テクネイバーが姿を現し、分解されて鎧じみた装甲となる。

 

《アーセナル・アプリ! 迷宮の探索者、インストール!》

 

 音声と共にスーツの上に白い装甲が合体。紫色の鋭利な複眼が輝いた。

 仮面ライダーキアノス。武器であるキアノスサーベルとフェイクガンナーを構え、リボルブの隣に並んでジェラスと対峙する。

 直後、リボルブは声量を落としてキアノスに訊ねる。

 

「……来て貰って何だが、マジに勝算はあるのか?」

「安心して下さい。隙さえできれば、勝ち目はあります」

「お前を信じるぜ」

 

 特に合図も出す事なく、二人は同時に散開した。

 知能が低いらしく、ティラノゾンビはどちらに攻撃すれば良いのか判断できずに、行動が遅れる。

 そこをジェラスがカバーした。このデジブレインを盾にするという形で。

 

「かかって来いよ!」

「望み通りにしてやるぜ、クソ外道が!」

《フィニッシュコード!》

 

 立ち止まったリボルブが一枚のマテリアプレートをセットし、ジェラスに狙いをつけて必殺を発動。

 ジェラスはティラノゾンビを盾にしたまま、前進し続ける。

 

Alright(オーライ)! オラクル・バーニングマテリアルカノン!》

「オラァッ!」

 

 引き金を引いた瞬間、極熱の火炎弾が銃口から飛び出し、ティラノゾンビごとジェラスを焼く。

 当然ジェラスには通用しないが、しかし、ティラノゾンビは必殺の一撃によって消滅した。どうやら、こちらはジェラス程には不死身ではないようだ。

 

「今更この程度の必殺技でこの俺を……グッ!?」

 

 突如、攻撃を受けたジェラスが膝をつく。

 焼けた部分は再生している。しかし、その全身に異常なまでの激痛が走っているのだ。

 

「なんだ、何しやがった!?」

「俺の使ったマテリアプレートの能力だ」

 

 そう言って、リボルブはリボルブラスター・バーニングモードに挿入したマテリアプレートを取り外して、ジェラスに見せつける。

 Oracle Squad(オラクル・スクアッド)。遮断の能力を持つ、V1タイプのプレートだ。

 瞬間、ジェラスは理解した。リボルブはこれを使って、ジェラスが発動している痛覚除去の能力をシャットアウトしたのだ。

 全身への痛みは、本来なら感じるはずのV2使用のデメリット、即ちオーバーシュートが発生し続けているというだけだ。

 

「だが無駄だ、俺の肉体はダメージを受けても再生する! 今更こんな痛みで音を上げてたまるかよ!」

「それでも、テメェは連続したオーバーシュートで動けなくなる。俺たちの狙い通りにな」

 

 リボルブからの言葉を受けて、ジェラスはハッとしてキアノスの姿を見る。

 彼はマテリアプレートをフェイクガンナーに装填し、その力を発現させていた。

 

Fake Armed(フェイク・アームド)……センチピード・スキル、ドライブ!》

 

 銃口から伸びる鋼鉄の鞭。キアノスはそれを、ジェラスへと振る。

 

「まさかお前らァッ!?」

 

 狙いはひとつ。ジェラスのアプリドライバーにセットされた、ジュラシックハザードのマテリアプレートだ。

 このプレートが外れれば変身が解除され、ジェラスは普通の人間に戻る。

 それこそがホメオスタシスたちにたったひとつだけ残された、勝利の糸口なのだ。

 

「お前はこれで終わりだ……ハァァァッ!!」

 

 初めて焦りを見せ出したジェラスの腰に、ムカデの如くうねる鞭が走るのであった。

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