圧倒的な力を持つリトルマッチを前に、二人は敗北寸前のところまで追い詰められていた。
「ここまでかよ、クソッタレ……!」
歯を軋ませ、リボルブはそのカゲロウに似たデジブレインを睨みつけて立ち上がる。
しかし、やはりリトルマッチは手強い相手だ。炎の拳の乱打が降りかかり、ついに変身も解除させられてしまった。
そんな時だ。
鷹弘の持つマテリアフォンの画面が光り、銃声と共に空母のような物体が姿を現したのは。
「うおっ!?」
凄まじいスピードで放たれた銃弾は、爆風と共に炎を吹き飛ばす。それに伴って、炎の分身が数体散り散りとなって消滅した。
「こいつは……!」
自分の目の前を浮遊する空母型の銃、ヴォルテクス・リローダーを手に取り、鷹弘は目を白黒させている。
すると、マテリアフォンに通信が届いた。
『完成したわよ、鷹弘!』
「陽子か! けどこいつはマテリアプレートじゃねェぞ!?」
『大丈夫! ヴォルテクス・リローダーにV3のプレートそのものを内蔵させたの、これでオーバーシュートせずに能力をフルに活用して戦えるはずよ!』
「なるほどな……じゃあ、ありがたく使わせて貰うぜ」
そう言って鷹弘は、撃鉄の位置にあるスイッチを親指で押し込んだ。
すると、いつものマテリアプレートの起動音が廊下に響き渡る。
《ラプターズ・フリート!》
名を読み上げられたそのアプリは、いわゆる艦隊戦略シュミレーションゲームだ。
自国を勝利に導く将校として、艦隊に指揮を出す形で操作を行い、襲いかかる敵機を打倒するという内容だ。ただし、これらの艦や戦闘機は鷹や鷲といった鳥類の要素も併せ持っている。
起動の後、鷹弘はそれをマテリアプレート同様に、アプリドライバーのバックルへとセットする。
《ロック・オン・ターゲット! ロック・オン・ターゲット!》
「変……身!」
《
鷹弘が、銃の上部である甲板の位置にマテリアフォンをかざした。
その瞬間、銃口から六体の鳥型の戦闘機のテクネイバーが射出され、鷹弘の眼前を舞う。
そして翼をはためかせて身を翻し、赤いラインの走る黒色のアンダースーツを纏った鷹弘に向かって飛来した。
《ホーク! ファルコン! アウル! レイニアス! ヴァルチャー! イーグル!》
「ぐ、オオオオオッ……!!」
炎の羽根が吹き散り、頭部・右腕・右脚・左腕・左脚・胴体といった順にテクネイバーが命中し、装甲となって体を覆う。
最後に燃え上がる巨大な翼に包み込まれ、マントのように長い裾のコートが伸び出てくる。
腕や脚に描かれた翼の模様と、両肩と胸についた多種多様な鳥の勲章。V3のマテリアプレートによって、六体ものテクネイバーと一体化する事で得た力。
今この瞬間、リボルブは新たな高みに新生したのだ。
《羽撃く戦艦、フルインストール!》
「ラァッ!!」
六種の鳥の嘶く声と共に、全身から赤い炎を漲らせる。その姿の名は――仮面ライダーリボルブリローデッド。
恐怖を感じているのか、リトルマッチ・デジブレインの炎が激しく揺れ動いていた。
「ブチのめす……!」
《リボルブラスター!》
いつもの銃を構えるリボルブ。直後、リボルブラスターが右腕から溢れ出た炎を帯び、赤く輝きを増した。
射撃武器の性能強化。右腕に同化した、ファルコン・テクネイバーの力だ。さらに反動やブレなど命中精度に関わる部分を左腕のレイニアス・テクネイバーが補助する。
トリガーを引くと、今までとは比べ物にならない速度で炎の弾丸が飛び、着弾と同時に大爆発を引き起こす。
「キロロロ!?」
連射と爆風によって、リトルマッチの炎はどんどん剥がされていく。
終いには、炎の中に紛れていた小さなカゲロウが姿を見せていた。
これがリトルマッチ・デジブレインの本体なのだ。
「見つけたぞ、そこだ!」
《スピーディ・チューンアップ!》
決定的なチャンス。雅龍は炎の海の中へと疾走し、逃げ惑うカゲロウへと容赦なく拳を叩き込み、壁ごと潰す。
リトルマッチ・デジブレインは、ただそれだけで呆気なく儚い命を散らした。
「よし、さっさと行こうぜ。翔たちが心配だ」
その言葉に首肯し、雅龍はリボルブの後に続いて走り抜けるのであった。
そして、現在。
アズールたちとアヴァリスたちが交戦する中に、リボルブと雅龍が乱入した。
「バカな、リトルマッチはあのハーロットが対V3に調整を施した個体だぞ!? 新たな力を得たと言っても、簡単に倒せるはずが……!?」
驚きのあまり叫ぶのは、松波が変異したメガロドン・デジブレイン。マンモス・デジブレインとなった梅悟も、動揺から唖然としている。
すると、つい先程に手痛い攻撃を受けた都竹、即ちメガネウラ・デジブレインがその姿を見上げ、奇声を上げながら飛びかかる。
「キィィィーッ!」
「都竹、よせ!」
メガロドンの制止をも振り切り、メガネウラは向かう。
照準を合わせられなくなるよう高速で上下左右とジグザグに飛行し、接近と退避を繰り返すヒット&アウェイの戦法で翻弄している。
「多少姿が変わったくらいで! 粋がって貰っては困りますねェ!」
リボルブは攻撃を避けない。と言うよりもわざと受けているようで、大したダメージがない上にメガネウラの素早い動きを全て目で追っている。
それに気づかず、むしろ自身の優勢と見てメガネウラは必殺技を発動させた。
《フィニッシュコード!
「死ィィィネェェェッ!!」
目にも留まらない速度でメガネウラが動き回る。こうなっては、チャンピオンリンカーのアズールでも捉えるのは容易ではない。
しかし。
リボルブはその動きに気を取られる事なく、右手に持ったヴォルテクス・リローダーのシリンダーを回転させる。
《スクロール! ホーク・ネスト!》
何か攻撃が来る。それを予期して、メガネウラは背後に回って必殺の斬撃を繰り出すことにした。
そうして死角に回ったその瞬間、撃鉄のスイッチを押したリボルブが、しっかりと背後から迫る敵意に視線を合わせて銃口を向ける。
《フレイミングフィニッシュコード!》
「え」
あまりの出来事に、メガネウラは間抜けな声を上げる。
必殺技を発動されようと、動体視力と反応速度の向上した今の形態では見えているのだ。
リボルブはマテリアフォンを甲板にかざし、必殺技を発動した。
「くたばりやがれ」
《
燃え上がる炎の大鷹が、目の前のデジブレインを爆炎で飲み込み、大きく吹き飛ばす。
「ギィエェェェッ!?」
「都竹!?」
全身から黒煙を上げ、メガネウラは慌てて立ち上がって一時撤退する。
攻撃・防御・敏捷全てにおいて隙がなく、無闇に立ち向かうべきではない。今の二人の交戦で、メガロドンはそう判断せざるを得なかった。
「くっ……」
「どうした、来いよ。なんなら纏めてかかって来やがれ」
手招きで挑発するリボルブ。すると、アヴァリスが巨大ルーレットのノブの上から飛び降りた。
「では、そうさせて貰おうか」
アヴァリスが指を弾くと、カジノで病気を治療する力と同じなのだろう、メガネウラたちの負傷が即座に癒える。
これでまた振り出しだ。しかも今度は不用意に飛び出して来たメガネウラだけでなく、リボルブを警戒する残りの三人も混ざって攻撃を仕掛ける事になるだろう。
しかし、リボルブにも仲間がいる。
「静間さん! 僕らが援護します!」
「頼むぜ」
仮面の中で微笑みながら、リボルブはシリンダーを二度回転させて撃鉄を押し込む。
《スクロール! ファルコン・ネスト! フレイミングフィニッシュコード!》
「喰らえ!」
《
疾き紅蓮の隼がマンモスを撃ち抜き、炎を浴びせる。
マンモスは防御する暇もなく攻撃を受け、しかし体勢を崩さないよう踏ん張って耐える。
「ぐ、なんのっ……」
「そこだ!」
「がぁっ!?」
しかし、ナックルガードで殴りかかって来たキアノスの強襲によって、今度こそ転倒する。
そのままキアノスと雅龍が追い打ちに向かうが、そこへメガロドンが割り込んだ。
「やらせない、オレたちがノーブル様の理想を守る!」
「邪魔をするな!」
《フィニッシュコード!》
《オーバードライブ!》
キアノスが二枚のプレートを二つの武器それぞれに装填し、必殺を発動。
サーベルの刀身が蛇腹状となり、メガロドンの全身を拘束する。
《
「ぐっ!?」
その身を襲う斬撃に、メガロドンは苦悶する。しかし攻撃は当然これでは終わらない。
絡め取ったメガロドンを引き寄せ、フェイクガンナーを握り締めてキアノスは思い切り拳を突き出した。
「ハァッ!」
《
剣が離れた瞬間、巨大な岩の如き堅殻がメガロドンを殴打する。吹き飛ばされる彼女をマンモスが受け止めるが、同時にメガネウラも背中にぶつかった。
見れば、アズールがアメイジングアローを構えて立っている。メガネウラは彼に挑んで容易く敗れてしまったのだ。
一掃の好機と見て、リボルブは動き出した。
「一気に行くぜ」
《スクロール! レイニアス・ネスト! フレイミングフィニッシュコード!》
四度回転するシリンダー、必殺技の態勢だ。しかしそこへアヴァリスが介入する。
「させるか!」
《
頭上からスポットライトが五人の仮面ライダーに向けられたかと思うと、各々の胸にダーツの的が描かれる。
直後、四方八方からダーツの矢が出現、さらにアヴァリスの力によって銀球が盤上に落ちルーレットが回り始めた。
「おお、これなら!」
「しゃらくせェッ!」
《
メガロドンが感嘆するのも束の間、ヴォルテクス・リローダーから放たれた無数の炎の
攻撃を凌がれた。さらに、ルーレット上を回っていたはずのボールも、驚くべき事にその場で静止している。
「なっ……!?」
これにはアヴァリスも瞠目していた。
見れば、底面には粘度の高いゲル状のインクがへばり付いて、さながらガムのように銀球が転がるのを邪魔していた。
ザギークの仕業であった。
「にひひ、残念でしたーっ!」
「くっ、ならば!」
《
再びダイスを生み出すアヴァリス。そこへアズールが弓を引き絞って光の矢を撃ち、ダイスを粉々に破壊した。
「何っ!?」
「あなたの能力……かなり手強いけど、実は共通して単純な弱点がある」
再度矢を放ちながら、アズールが言う。
それらはアヴァリスが操るトランプによって全て防がれるものの、もうホメオスタシス側に動揺は見られない。
「そのダイスもルーレットも、ギャンブルの結果次第って事だ。結果が出る前に妨害すれば……攻撃は発動しない!」
ヒュプノスの三人の負傷を癒やしつつ、攻撃をトランプで塞ぎながら、アヴァリスはトランサイバーに備え付けられた最後の一種類のボタンを入力した。
「なら、これを見ても同じ事が言えるか!」
《
ルーレットの上空に巨大なスロットのリールが出現し、三つ並んだそれらが回転を始める。
攻撃が来る事を察知して、ホメオスタシスの面々は一斉にスロットへと攻撃を放った。
しかし、リールは全く止まる様子を見せない。
「……マズい! 来るぞ!」
キアノスが叫び、全員が防御態勢を取る。直後にスロットが停止し、雷のマークが三つ揃った。
瞬間、仮面ライダーたちの頭上から雷が降り注ぐ。
「ぐぅっ!!」
「うあああ!?」
雷撃を受け、雅龍とザギークが悲鳴を上げる。キアノスはハーミットクラブの殻で凌ぎ、アズールとリボルブは然程ダメージを受けていない。
「チッ、ならばもう一度……」
「させるかよ」
《スクロール! アウル・ネスト! フレイミングフィニッシュコード!
今度はシリンダーを三回転させ、必殺技を発動させるリボルブ。
ヴォルテクス・リローダーからは、今度は燃え上がるフクロウが射出された。
スピードは先程までの三種より速くないため、アヴァリスは即座にトランサイバーGのボタンを押し込んで回避に動く。
《
アヴァリスはヒュプノスの三人の前に立ち、トランプで幾重にもバリアを展開する。
が、炎のフクロウはそのバリアを悠々と飛び越え、アヴァリスのみを追尾して後ろの三人ごと爆炎で埋め尽くす。
アウルは追尾弾だったのだ。
「ぐあ!? なっ、なんだと……!?」
「まだまだ!」
怯んだ隙に、今度はアズールとキアノスが同時に飛びかかった。
アズールセイバーとアメイジングアローの二刀流、そしてキアノスサーベルとフェイクガンナーの激しい連撃が、アヴァリスに反撃の機会を与えない。
無理矢理でも突破しようとトランサイバーGを使おうとすれば、それは即座にアズールが弓で腕を撃って妨げる。
「おのれぇ!」
それを見て、今度はヒュプノスたちが動き出した。アヴァリスを助けるため、三人はアズールとキアノスに襲いかかる。
しかしその三人の行動は、雷撃から立ち直った雅龍とザギークが前に出て阻止した。
「こ、こいつら……!」
新たな力を身に着けたリボルブが現れてから、状況が一変してしまった。
感情エネルギーを変換して戦う以上、リボルブの増援によって士気と戦闘能力が向上するのは必然。アヴァリスたちは、こうなる前にアズールたちを倒すべきだったのだ。
「くっ、今からでもこの私がぁっ!」
メガロドンとマンモスを押しのけ、背中を見せているリボルブに向かって飛び掛かるメガネウラ。
直後、アヴァリスを相手取っていたアズールがそちらを向き、さらにキアノスが振り向かずにアズールへと二枚のマテリアプレートを放り渡した。
アズールもまた、振り返る事なくそれを受け取ってアメイジングアローへと装填する。
「なっ!?」
声をかけず目さえ合わせずに行われた連携に、メガネウラは驚くばかりであった。
《ツインフィニッシュコード!
「英さん、浅黄さん! 避けて!」
矢が発射され、メガネウラの眼前で八つに分散して刃の生えた触手のようになり、背後のメガロドンとマンモスを絡め取る。
さらにその決定的な隙をついて、雅龍とザギークが動き出した。
「浅黄!」
《パニッシュメントコード!
「オッケー、続いちゃうよ~ん!」
《ウォーゾーン・マテリアルシュート!》
《フォレスト・マテリアルシュート!》
ボウガンモードのスタイランサーから放たれる二つの矢弾。
それをガンブライザーに受け、三体のデジブレインは倒れて変異を解除させられるのであった。
「くっ、オレとした事が!」
「ぬうっ……無念だ」
「ギ、キ、キィィィッ!?」
悔しそうにアズールたちを見上げる松波と梅悟、そして怒りのあまり奇声を発しながら都竹が地面に拳を打ち付ける。
「私にも、私にもあの力が……力があればァ……!!」
嫉妬に満ちたドス黒い感情を右眼に宿し、かつて左眼を奪ったアズールを見上げ、都竹が怨嗟の言葉を吐き散らす。
ともかくガンブライザー自体を使えなくなった今、これでアヴァリスが彼らの負傷を治療しようとも無意味となった。
あとは、アヴァリス自身を打倒するのみだ。リボルブは彼との一騎討ちとなり、ヴォルテクス・リローダーに一枚のマテリアプレートをセットする。
《ブレイジングフィニッシュコード!》
「一気に決めさせて貰うぜ」
《
「こっちのセリフだ……! 『ファイナルコード』!」
《
リボルブがヴォルテクス・リローダーの甲板にマテリアフォンをかざし、アヴァリスはトランサイバーGに音声入力を行う。
必殺技の発動だ。
《デュエル・マテリアルデストロイヤー!》
《ゴールデン・マテリアルジェノサイド!》
赤く燃えて飛ぶ炎の弾丸と、無数のカジノチップを右腕に集約して作られた巨大な黄金の拳がぶつかり合う。
剛拳は弾丸を押し戻し、リボルブを打ち砕かんとする。
しかしその直後、さらに五発の弾丸が発射され、黄金の拳は打ち砕かれた。
「なっ!?」
「くたばれェェェッ!!」
必殺技が相殺されると見るや、リボルブは大きく飛び上がって強力な蹴りを浴びせる。
蹴飛ばされたアヴァリスは仰向けに倒れ込んでしまう。
「押し負けただと……!?」
すぐさま立ち上がろうとするが、時既に遅し。
アヴァリスは五人の仮面ライダーに囲まれ、弓や銃口を向けられている。
「観念しな。あんたはもう終わりだ」
降伏を促したのはリボルブだ。
事実、もはや戦力の差は歴然で、必殺技ですら破られてしまっている。
だがアヴァリスは血が吹き出んばかりに両拳を握り込むと、ゆらりと立ち上がってリボルブを睨みつける。
「ふざけるな……諦められるか! 俺がやらなければ世界から死という病は取り除かれない! 貧しさと難病に苦しむ人々が安心して生きる事が出来ないんだ!」
「ふざけてんのはお前だろうが」
吐き捨てるようにリボルブが言った。
「俺もここに来るまでに心の歪みってヤツを見せて貰った。確かにお前の掲げた理想は立派なモンかも知れねぇ、命を救われたヤツも大勢いるんだろう。だがな……」
リボルブがほんの一瞬、銃を握る手を緩めた。
「人が永遠の命を手に入れて、どれだけ楽な生活を送れるようになったところで、お前が経験した『人と人が争い合う世界』はなくならねェよ」
「な、に……」
「ちょっと考えりゃ分かる事だ。いや、お前自身もう気付いてんじゃねェのか」
図星を突かれたようにアヴァリスが言葉を詰まらせると、リボルブはさらに話を続ける。
「病気も怪我も死にもしない世界……金がなくても食い物に困らない場所。そんな風に世界を書き換える力を、お前の大嫌いな争いを引き起こす連中が欲しがらないと思うか?」
「ぐっ……!!」
「この世界を管理するお前を狙って、利権争いに発展するだけだ。そのせいで大勢がまた負傷する……一瞬で治療される分、今までよりずっと激しくなるかもな」
アヴァリスは何も言えない。そこへ「そもそも」と畳み掛けるようにリボルブが口を開いた。
「スペルビアの目的はアクイラの復活だ。人間を支配しようって連中が、マトモにお前との約束を守ると思うか?」
「それは……!」
「お前のやってる事が無意味なんて思わねェが、先を見据えていないのなら本気で救うつもりがあるようには見えねェな」
たじろぎ、後ずさりするアヴァリス。すると今度はアズールが彼に対して語りかける。
「本当はただ後悔してるんでしょう。あの子を救えなかった事を」
「ぐうっ!?」
「頼んでもいないのに誰も死なない理想の世界を作るのは、結局あなたの身勝手だ。何もできなかった自分から目を逸らして気分を紛らわせようとしているんだ。あなたのやっている事はあの子への贖罪でもなければ、世界の救済でもない……自分の無力に対するただの八つ当たりだ!!」
「だっ……黙れ!!」
「他でもないあなた自身が、あの子の死を利用しているんだ!! 現実を見ろ!! こんな事をしても、あの子が帰って来る事は……」
「黙れぇぇぇっ!!」
逆上の叫びを響かせ、アヴァリスはトランサイバーGに手を伸ばし、素速くリューズを回転させる。
《リーサルドーズ! カオスモード、オン!》
アヴァリスの全身がモザイクに覆われ、大きく膨れ上がっていく。
名前は少し変わっているが、ビーストモードに相応する力だ。
しかもデバイスが強化された事でその性能も飛躍的に高まっているらしく、カタルシスエナジーが全身から溢れている。
変化はそれだけに留まらない。足元のルーレットが分解されて融合し、さらに部屋の外からカジノチップが現出して吸収されていく。
「チッ、使いやがったか……!」
ルーレットから巨大な緑色のカジノテーブルに着地し、リボルブたちはその巨大な影を見上げる。
そこに佇むのは、ルーレットを背負った大蜘蛛と、そのノブを止り木のようにしている大きなカラスだった。
その名もカオスアヴァリス。明確な敵対の意思を見せ、大きく翼を広げる。
「八つ当たりで何が悪い!? 医学だけでは、綺麗事ばかりではあの子を救えなかった!!」
蜘蛛の口から赤と黒の二色の糸が伸び、アズールやリボルブの足を絡め取る。
さらに、新たに銀色の糸を球状と変えて盤上へと放り、カラスが翼をはためかせてルーレットを回す。
カラカラと音を立てながらボールが走り、カランと赤いポケットへ入る。
瞬間、赤い糸が足に巻き付いていたアズールと雅龍とザギークの全身が橙色に発光し、その光がカジノチップとなって糸を伝いカオスアヴァリスに吸収されていく。
「こ、これは……!!」
苦悶する雅龍とザギーク。アズールが自分のものと一緒にすぐ糸を引き千切ったが、二人は変身を解除させられてしまった。
「気をつけろ! この糸でカタルシスエナジーを吸収するようだ!」
「でも、どうやってこんな事を……!」
言った後で、浅黄はハッと顔を上げる。
メンバーズカードに入っていた一枚の白いチップ。失う事で精神失調症へと追いやる、都竹曰く『精神を形にした最後のチップ』。
アレに干渉してカタルシスエナジーを吸い取ったのだろう、と浅黄は推察した。だから二人とも変身が解けてしまったのだ。
次に同じ攻撃を喰らえば、ただでは済まない。少なくとも精神失調症は免れないだろう。
「俺はもうあの子のような被害者を生み出さない! 苦しんで死ぬ必要のない、そんな世界を作るんだ!」
蜘蛛とカラスの姿のまま、カオスアヴァリスは喚き散らす。
そして鋭利な刃のようになった蜘蛛の脚を、翠月と浅黄へと突きつけた。
しかしその直前にキアノスが飛び出して立ちはだかり、キアノスサーベルとフェイクガンナーを駆使して、攻撃を防ぐ。
「そんなものは彼女自身が望んだ事じゃないはずだ! 彼女の死を都合の良い言い訳に使うな!」
「……お前らに何が分かる!?」
再び蜘蛛が糸を吐き出した。
キアノスは後ろの二人を連れて回避に動き、リボルブも背中から炎の翼を生み出して空へ逃げる。
しかし、アズールはその場から動かずに糸を引っ掴んだ。
右腕に赤い糸、左腕に黒い糸。どう足掻いても、逃げ場はない。
「ああ、そうだよ! 俺は彼女を救いたかった! 彼女もきっと、まだ生きたかったはずだ! でもこの世界は彼女が生きる事を許さなかった……!」
アヴァリスは叫びながら、再度ルーレットを回転させる。
「勝手で何が悪い!! 貧しさが罪となるのがこの世の秩序なら、俺が壊してやる!! そう望む事の何が悪いっ!!」
ボールは黒のポケットに乾いた音を立てて転がり落ちる。
エナジーの吸収が始まる。アズールへ迫る危機に声を上げそうになるリボルブであったが、当人は至って冷静であった。
アズールは糸を両手で握り締め、ヴェスパーフォトンを全力で噴出して糸へと大量に流し込み、蜘蛛の口内で炸裂させる。
「ガァッ!?」
蜘蛛が怯んで崩れ落ち、その衝撃でカラスも転倒して地面に墜落する。
その決定的な隙を、アズールもリボルブも見逃さない。
アズールはチャンピオンズ・サーガのマテリアプレートを押し込み、さらにマテリアフォンを手に取った。
「道を誤った今の自分の姿を、あの子の前でも見せられるのか!?」
《ストロングフィニッシュコード!》
「死んだあの子にあなたがしてあげられるのは、人間が不死身になった世界を作る事なんかじゃないでしょう!!」
同様にリボルブもヴォルテクス・リローダーを再度アプリドライバーへと装填し、てスイッチを入力。そしてマテリアフォンを左手で握る。
「別に誰かに八つ当たりするなとは言わねェよ、お前の怒りも分かる。だがな」
《リボルビングフィニッシュコード!》
「昔の恨みなんざテメェで勝手に抱えてろ!! 俺たちはな……先に進むんだよ!!」
二人はマテリアフォンをアプリドライバーとヴォルテクス・リローダーにかざし、同時に跳躍した。
そしてエナジーを溜め込んだ脚を突き出し、蜘蛛とカラスへとダブルキックを繰り出す。
《
「その歪んだ欲望、僕が断ち斬る!!」
《チャンピオン・マテリアルインパクト!》
「くたばりやがれェェェッ!!」
《ラプターズ・マテリアルエクスプロージョン!》
アズールの朱色の輝きが蜘蛛を、リボルブの赤い炎がカラスを徐々に押し潰していく。
「ぐ、ごぉ……おおおおおっ……!?」
悲鳴と共に、カオスアヴァリスはチップを血飛沫のように全身から噴きながら爆散。
巨大ルーレットも消滅し、アヴァリスマネージャーは白衣を纏う痩せ細った中年の男に戻った。
左腕のトランサイバーGも破損し、煙を吹いている。
「バカな……ノーブル様が、負けた……」
仰向けに倒れ込んだ樹を見て、呆然と松波が呟いた。
梅悟も悔しさに涙を滲ませ、拳を地面に一度叩きつける。
「ま、まだだ! 俺は望みを果たすまで諦めんぞ!」
樹も肩で息をしながら細い足を立たせ、アズールを見上げる。
「俺は何も間違っていない、俺が世界を変えなければならないんだ! そうしなければ、あの子の死が全て無駄に……!」
「世界を変えなくたって人の死は無駄になんかなりません」
睨まれてもアズールは怯まずにそう言って、樹を見据えた。
「あの子が命を失ったのは、あなたの責任じゃない。でも何か償う方法があるとするなら、世界を歪めるんじゃなくて……挫けずに医者として人を救い続ければ良いんじゃないでしょうか?」
「……!」
「彼女が何を望んでいたのかは僕にだって分かりません。だけど、あなたがそんな風に苦しんで生きる姿は、きっと彼女だって誰だって見たくないと思いますよ」
樹は沈黙して地を見つめ、仮面ライダーたちから背を向けて引き摺るように足を動かす。向かう先は、ヒュプノスの三人の方だ。
そんな彼の方へと梅悟と松波が駆け寄り、両側から肩を支えた。
「今まで協力してくれてありがとう。だが聞いての通りもう終わりだ」
「ノーブル様……」
「もうノーブルとは呼ばないで欲しい。俺はただの医者に、金生 樹に戻るよ」
それを聞いて、二人とも口を噤む。そして顔を見合わせて頷き合い、樹へと微笑みかけた。
「ならばオレたちもCytuberを辞めます」
「あんたがいないならこの道を選ぶ意味もないからな。これからは医者のあんたを、金生先生を俺たちが支える!」
樹は二人の言葉を聞くと目尻に涙を浮かべ、小さく感謝の言葉を伝えた。
だが、その時だった。
ホメオスタシスたちや樹たちの頭上から、一人の男の声が響き渡る。
「おやおやおやおや。まさかあなたまで敗れるとは」
孔雀の仮面の男、デジブレインのスペルビア。
その姿を見て、アズールの声色も怒りに染まった。
「何をしに来た……!!」
「簡単に勝つなどとは思っていませんでしたが、いやはや分からないものですね」
トントンとこめかみを指で軽く叩きながら、スペルビアは言う。
その後、まるで手を差し伸べるかのように樹へと右手を突き出した。
「プレートを返して頂きましょうか」
穏やかな口調だと言うのに、どこか威圧的に感じる言葉。
ホメオスタシスの面々の視線が集まる中、樹は「そうは行かない」とマテリアプレートを胸元で握り締め、松波や梅悟から離れて後ろに下がる。
「これを渡せば、アクイラってのが復活するんだろう。それだけは許しちゃおけないね」
「……そうですか」
至極残念そうにスペルビアが言うと、彼は右手に一振りの剣を握って地に立つ。
そして樹の方を見ながら、刀身を指でついっ、と撫でた。
「では、力づくで貰いましょう」
スペルビアの攻撃が来る。それを予期して、全員が動こうとした。
仮面ライダーたちは変身に、松波と梅悟は樹をかばうために。
だが。スペルビアがピンッと指を弾くと、その手元から剣が消えて、直後に樹の胸から白刃が閃いた。
「……え?」
「せん、せい……?」
呆然とする一同。信じられないとばかりに、出血する自らの胸を見下ろす樹。
剣が引き抜かれて樹が倒れると、彼の背後に立っていたのは、ヒュプノスのひとりである曽根光 都竹だった。
驚いてアズールが三人の方に駆け寄ろうとするが、スペルビアがまた指を弾いた瞬間、ホメオスタシスの面々を取り囲むように黒炎の壁がせり上がった。
「都竹っ……!? な、なぜ――」
そこから先は言葉にならず、梅悟は喉と頸動脈を裂かれる。
さらに唖然として全く身動きが取れずにいた松波の腹に、返り血に濡れた剣が突き立てられる。
「あ、がっ?!」
「ケヒッ、ケヒヒヒヒッ!」
「な、なぜ……どう、して……いつから、お、おまえ……が……」
剣が抜けると、松波は白目を剥いて痙攣し、だらりと腕が垂れ下がってその場に倒れ伏す。
降り注ぐ赤い雨と、小さく川のように流れる鮮血が、三人の死を物語っていた。
「なぜ? どぉしてだと? ケヒヒヒッ!」
狂気の笑みを浮かべながら、都竹は自らの右手の返り血を舐め取った。
そして既に死んでいる樹の手からマテリアプレートを引ったくり、都竹は剣と一緒にそれを返還する。
「私は最初から、自分の地位を守るために戦っていただけですよ。あなたたち二人ほど忠誠心に溢れた性格じゃあなぁ~い……そもそもずっと邪魔だったんですよ、リーダーもノーブルも。私はあなた方よりも高い地位につきたかったのでねぇ。だからずっと、ずっと力が欲しくて羨んでいた」
ステップを踏み、氷上で踊るように血で濡れた腕を振って腰を伸ばし、都竹は大きく身を反らす。
既に屍となった樹は何も答えない。松波も梅悟もだ。
都竹はそのまま松波と梅悟の懐をまさぐり、メガロドンとマンモスのデジブレインが封入されたマテリアプレートを奪い取る。
「そして今、私に出世のチャンスが巡って来た! これを利用せずにいるほどお人好しじゃないんですよねぇ、ケケケッ!」
用が済んで、松波や梅悟の亡骸を蹴っ飛ばす都竹の言葉を聞きながら、アズールは歯を軋ませる。
彼の蛮行を止めたいところであるが、黒い炎が道を阻んでいるのだ。
「さぁ、今なら彼らも抵抗はできません。スペルビア様……今こそ私に契約を、大いなる力を!」
「素晴らしい。よもやあなた様がこれほどのポテンシャルを秘めていたとは。その"羨望"には、まさしくこの力が相応しいでしょう」
両手を叩きつつ、スペルビアは都竹に二つの機械を投げ渡す。
ひとつはトランサイバーG。もうひとつはマテリアプレート、それもかつて文彦が使っていたものだ。
《フラッド・ツィート!》
「ケケケッ、ケケケケケェェェーッ!!」
《レスト・イン・ピース! レスト・イン・ピース!》
「
《
その場に姿を現すのは、文彦の時と同じ下半身に鱗が見える拘束具のデジブレイン。
都竹の首にロープがかけられ、そのデジブレインがモザイクと共に都竹と融合を始めた。
《ツィート・アプリ! 惑いの言霊、トランスミッション!》
そうしてモザイクが消えた時、そこにはひとりの怪人が立っていた。
紫色で鱗に覆われている、ぬらぬらとした爬虫類特有の光沢。しかしそこに、腕や脚や肩などに昆虫の節足のようなものがついている。
また、背中には筋の入った薄い翅が伸びており、瞳のバイザーはトンボ型だった。
「そ、そんな……」
「ジェラスアジテイターが……復活した……!!」
都竹が変異したその姿を見て、浅黄と翠月が呟く。
すると、その怪人は以前に仮面ライダージェラスが使っていた大斧型のチェーンソーを手に取った。
《ジェラスローター!》
「ジェラスアジテイターネオ、とでも呼んで貰いましょうかねぇ? 前任者よりは役に立ちますよ、確実にね」
愉快そうに笑いながら、名乗りを上げる。
その一言で怒りを堪え切れなくなったのか、とうとうリボルブはヴォルテクス・リローダーを手に取ってジェラスネオに向かって壁越しに発砲し始めた。
「クソ野郎が……ざっけんじゃねェェェッ!!」
飛び来る弾丸。しかしジェラスネオは慌てる事なく、トランサイバーGのボタンを入力する。
《
地面に『壁』の文字が張り付き、土壁がせり上がって銃撃を防いだ。
「チィッ!!」
「おぉ、怖い怖い……
「逃がすと思ってんのか!!」
頷き、スペルビアは手に入れたマテリアプレート、
だがそんなスペルビアの前に、アズールが飛び出して来た。
「おや?」
「どうして!! どうしてそんな簡単に人の命が奪えるんだ、お前たちは!!」
アズールセイバーとアメイジングアローを振り、怒りのままに攻撃を続ける。
スペルビアはピーコック・デジブレインに変異するが反撃の暇などなく、ただただ右手に持った剣で攻撃を防ぐ事しかできなかった。
斬撃の激しさは勢いを増し、スペルビアの首を、脇腹を、胸を貫く。しかしその度に負傷は再生されてしまう。
「ふ、ふふ。感情の爆発を感じますよ、まさかこれほど強くなるとは……実に面白い」
「許さない!! 僕は絶対に、お前らを許さないぞ!!」
アズールの斬撃が顔面と左肩を斬り裂き、剣が右腕を落とす。
その直後。
「ですが少々図に乗りすぎだなぁ?」
突然スペルビアの口調が変わると同時に、アズールの体は一瞬の内に地面に叩きつけられた。
「かっ!?」
何が起きたのか、避難して見ていたアシュリィにも浅黄や翠月にも、誰にも理解できなかった。
ただ再度スペルビアの方を確認すれば、その姿は今までの孔雀に似た姿とは違う。
拘束具から解放された太く逞しい筋肉質な右腕は、まるでトカゲやワニのようにびっしりと黒い鱗に覆われているのだ。
その右腕に殴られたとアズールが気付くのは、すぐ後だった。
「さっきからウザいんですよお前。人間はデジブレインにとって、食われるために生きている家畜や毟れるだけ毟って利用するための資源でしかねぇんですよ。たかが家畜風情が多少力を持ったくらいで俺と対等になったつもりですかぁ? なぁ?」
ノイズの混じった耳障りな声を発するスペルビアの右腕が、ザワザワとモザイクに包まれていく。
そしてモザイクが消失する頃には、腕は元の拘束具の状態に戻っていた。
「おっと、失礼……少々本気を出しすぎました」
丁寧に一礼しながらそう言って、スペルビアは頭上にマテリアプレートを掲げる。
すると、領域の床や天井から橙色のエネルギーが溢れ出し、それがプレートへと吸収されていく。
これでまたひとつ、アクイラ復活のための鍵が完成した事になる。それを確認してすぐ、ジェラスネオはスペルビアと共に消え去るのであった。
「くっ、逃げるぞ!」
「ショウ! 立って!」
慌てた様子でアシュリィが翔に近づき、彼を支える。
しかし全員で逃げようとする寸前で、地鳴りが酷くなる中で響が声を上げた。
「待って下さい、ここにいる人たちは!?」
鷹弘が表情を苦しげに歪める。今から避難勧告をしたのでは、物理的に間に合わない。しかし、見捨てる事も絶対にできない。
ではどうすれば良いのか。その答えは、翔が握っていた。
翔は右手を地面に向けると、青い翼を広げてノイズを纏わせ始める。
「翔、お前まさか……!」
「使い所はここでしょう、一か八かやらせて下さい!」
「待て! そんな事をすればお前は――」
鷹弘の話に聞く耳を持たず、翔は右腕から青い光条を放つ。
すると、段々と揺れが収まり始めた。
データ・アブソープションとは異なる新たな力に目覚めてしまったのだと鷹弘が気付くのに、そう時間はかからなかった。
「良かった、間に合っ……た……」
翔はそのまま意識を失ってしまう。
まだ二つ目の力を手にしただけだが、彼がアクイラそのものとなってしまうまでに、間違いなく猶予がなくなりつつある。
今回の戦いは無事に終わったというのに、確かな焦燥感が鷹弘の心を蝕んでいた。
「……これで四つ目」
黒い靄が広がる空間の中、弾むような声色でスペルビアはマテリアプレートを巨柱に差し込む。
小さな鬼のような絵が彫刻された柱は、橙色に光って大穴の中へとエネルギーを供給した。
「半分を超過しました。そして、次に私が使うのは最強の駒」
そう言って、スペルビアは至極楽しそうに頬を歪める。孔雀の仮面には、僅かに亀裂が走っていた。
「ひょっとしたら仮面ライダーたちは死んでしまうかも知れませんが……まぁ、そうなったらその時はその時ですねぇ。クククッ」
そう言った後で「さて」と大穴に背を向ける。
「次の結果次第ではハーロット様も動かねばなりませんねぇ。彼女は少々自由すぎますから、あえて手綱を放しているのですが……まぁ、目指すものは同じだから構わないのですがね」
スペルビアはくつくつと笑い声を発し、音もなく姿を消す。
しかし大穴からは、微かにゴゥンゴゥンと胎動が響くのであった。