時は、翔たちが議事堂攻略の作戦会議をしている頃まで遡る。
アシュリィを救う手立てを考えている中で、翔はそんな事を言い始めたのだ。
「お前……本気で言ってんのか!?」
当然ながら鷹弘は反発した。
鷹弘だけではない。この場の誰もがアシュリィと戦う事を、アシュリィが死ぬ事を望んでいないからだ。
すると、翔は微笑んで首を横に振る。
「勘違いさせてるかも知れませんが、命を奪うつもりはないですよ。それは僕も望んでません」
「……じゃあ、どうすんだ?」
「僕の方が死ねば良いんです」
その発言に、やはり全員が驚き、反発しそうになる。
しかし翔の顔つきは至って冷静で、ヤケになって言ったものでも、ましてやふざけて飛び出した発言でもないと全員が理解を示した。
「死ぬと言っても、そう見せかけるってだけの話ですよ。いいですか? まず――」
武器を手にアシュリィが仮面ライダーピクシーへと変身し、ハーロットを討ち倒した後。
グリーフディクタトルの力でピクシーズさえも倒れ、窮地に陥る。
だが、その万事休すの彼女らを救ったのは――。
「な、なぜだ! 貴様なぜ生きている!? 天坂 翔!!」
胸に大きな傷ができ、髪の色も瞳の色も大きく変わってしまった翔だった。
あまりの出来事にアシュリィだけでなく、グリーフやハーロットでさえ驚いていた。翔の姿を見たジェラスネオなど、全身を腕で抱えて蹲って震えている。
「そこの娘の毒を無力化するために死んだのではなかったのか!? 貴様ァ……一体何をした!!」
それはアシュリィも気になっている事だった。
生きていてくれた事は嬉しいが、翔は確かに胸を貫かれ命を落とした。その目で確かに見たのだ、たとえアクイラに覚醒したとしても無事では済まない傷を負っている瞬間を。
だが、思い起こせばおかしな部分があった。
ほとんど出血していなかったとはいえ、なぜアシュリィの体内から毒を取り出す程の余力を残していたのか?
「簡単な事だよ。お前たちは大きな見落としをしていたんだ」
「なに……!?」
「仕込んだ毒は僕が何らかの要因で死んでいると発動しない。つまり『死んだままでも動く』事ができれば、後から傷を治して蘇れるのさ」
「何を言っている!? そんな事ができるはずなど……」
瞬間、翔の話を聞いてハーロットが目玉を剥く。
「あ……あああああっ!? し、しまった!?」
「どうしたハーロット!?」
「まさか、まさかあなたが使ったのは!?」
薄く微笑む翔。そして自身の体内から、ある一枚のマテリアプレートを取り出す。
使用者を
「僕が体内にマテリアプレートを埋め込んだのは、アクイラの力を増幅させるためだけじゃない。これを使って、アシュリィちゃんの体内にある毒に死を誤認させ、安全に取り出すためだ!」
「な……!?」
「それだけじゃない。必殺技をワザと自分で受けて致命傷を負えば、その分体内のアクイラの力も高まる。傷痕は残ったけどリカバリーを使えば血を流さずに済むし、アクイラの力を使って毒素を活性剤に変転させれば、ゾンビ状態を解いても復活できる。これが真相だ!」
アシュリィだけでなく、この話にはグリーフとハーロットも仰天していた。
翔はアシュリィを助けるために自害を選択をしたのではなく、どれほど無茶であろうとも自分の命も彼女の命もどちらも勝ち取る手段を、自力で見つけ出したのだ。
「あ、あり得ん……あり得ん、あり得ん……」
頭を抱えて俯くグリーフ。自分の想像と理解を超えた現実を目の前にして、驚きのあまり混乱しているのだ。
そして、アシュリィは逆にある事実に気付いていた。
翔が死に瀕していた時、ツキミとフィオレはそこまで驚いていなかった。鷹弘たちもその話に動揺した様子がなかった。
つまり彼らは、というよりもアシュリィ以外は、この作戦を知っていた事になる。
「ごめんなさいアシュリィ! 私たち、この事を聞いていましたの!」
「翔お兄ちゃんが黙っていて欲しいって言うから、仕方なく……」
それを聞いて、アシュリィは油の切れた機械のようにギギギと首を翔の方に向けると、彼の背中を両手でポカポカ叩き始めた。
「いたた、痛い痛い! ごめんごめん!」
「バカ! バカ! 本当に、本当に死んじゃったと思ったんだよ! 本当に……バカ……」
アシュリィの手が止まって、徐々に涙声になるのを聞いて、翔は振り返って彼女を抱き締める。
そして、安心させるように背中をそっと撫でた。
「ごめんね。こうしないと、君から毒を取り出せなかったから」
「……帰ってご飯作ってくれるなら、許す」
「うん、ありがとう」
翔が微笑み、アシュリィも納得した様子で頷く。
そんな二人の姿を見て、グリーフは額に青筋を立てながら、角を復元して両掌を突き出した。
「なァにを他所見している!! 戦う相手はこの私だ、この私を無視するな!! アクイラさえも超越したこの神をォォォッ!!」
両手から黒い光弾が放たれた。
その攻撃から慌てて逃げるでもなく、アシュリィと共に走るでもなく。
翔はただ振り返って、素手で叩いてそれを消し飛ばした。
「……はっ!?」
あまりの出来事に、グリーフは呆気にとられてしまっていた。
確かに今のは全力の攻撃ではなかった。だが仮にも変異した怪人の力である以上、生身の人間にそれを防ぐ事など、到底不可能なはずなのだ。
だとすれば、考えられる可能性はひとつしかない。
翔もアクイラに限りなく近いか、アクイラとして完成しているのだ。
「……ふざけるなよ……神はこの世に私ひとりで充分だ!!」
グリーフがさらに青筋を立て、怒りを露わにする。
直後に翔は振り返り、グリーフとハーロット、そしてジェラスの方を見た。
「まだかかって来ないのか?」
「なに!?」
「三人で来い。こっちは僕一人だ」
「貴様、私を侮辱するつもりか!?」
「違う」
ザッ、と翔が一歩踏み出す。瞬間、彼の全身からオーラのように青いエネルギー体が漲り天に昇った。
目の前の少年から感じる圧倒的な力に、グリーフもハーロットも背筋を凍らせ、ジェラスはさらに怯え始める。
「大勢を巻き込んで世界を掻き乱したお前らには、もう現実と向き合う時間は必要ない。反省の弁も聞きたくない。そんなのは檻の中でたっぷりやれば良い。だから今は、二度と同じ事ができないように……ただひたすら叩きのめすだけだ」
翔がマテリアフォンを取り出し、アプリドライバーを召喚。
そして、傍を漂っていた青い宇宙戦闘機のようなそれの、機首に当たる部分を手に取った。
「アシュリィちゃん、皆と一緒に下がってて。全部終わらせに行くから」
機首を引っ張る事で、大型戦闘機から小型戦闘機に分離。
さらに、小型戦闘機のボディにあるサークル状のプレートにマテリアフォンをかざした。
《ブレイクスルー・ドッキング!!》
音声を聞きながら戦闘機を機首と本体の二つに分割すると、右手に持ったキャノピーのある部位の方にマテリアプレートのような端子が伸びていた。
翔は左手に持った方を、アプリドライバーの左側にカバーのような形で装着。電子音と共に輝き、サークルがベルト中央に展開する。
続けて翔が機首にあるスイッチを押し込むと、そのマテリアプレートの名前が読み上げられた。
《
音声を聞きながら、翔は素速くマテリアプレートを差し込んだ。
すると左側に装着したユニットからの主翼が大きく広がってボディが伸び、まるで別の戦闘機のようになった。
《ビヨンド・ザ・ブルースカイ!! ビヨンド・ザ・ブルースカイ!!》
「変身!」
《
サークルにマテリアフォンをかざす翔。瞬間、青い極光と煌く粒子が『∞』を描きながら動き、全身を包み込んだ。
《夜空に瞬く幾千の綺羅星!!》
青い光が漆黒のアンダースーツを形成。虹彩の粒子は光が散りばめられたディープブルーのアーマーを作り、装甲の縁を金で彩る。
今までの騎士然とした甲冑のようなものと少し違い、どこか機械的あるいはサイバーチックで鋭角なフォルムを持ち、神々しさと同時に禍々しささえも感じさせる造形。
《銀河を彩る神々しき惑星!!》
アーマーの胸の中央に緑色の水晶のようなものが生み出され、そこに地球の惑星記号が浮かび上がる。
さらに、両肩にも同じ水晶が作られた。右肩は太陽、左肩は月だ。
《無限に拡がる大宇宙、エヴォリューショォォォン!!》
最後に背中から伸びる、深青のマント。裏地には、宇宙空間のように星々が描かれている。
銀色の双眸を輝かせるその姿は、世界を守護する救世主にも――万象を滅殺する大魔王のようにも映った。
「な、なんだその姿は……お前は一体、何者だ!?」
尋常ではない力を感じ、グリーフは狼狽しながら尋ねる。
それを聞いて、翔は堂々と名乗りを上げた。
「仮面ライダーアズールメビウス! 歪んだ欲望を断つものだ!」
叫ぶと同時に翔は、アズールメビウスは大型戦闘機の残ったボディの底にあるグリップを左手で掴み取り、スイッチを押す。
すると戦闘機の翼が上を向いて広がり、盾の姿となった。
《アーカイブレイカー!》
さらに、機首が抜けて開いた部分に手をかざす。
するとそこに剣が形成され、アズールメビウスは納刀状態のそれを引き抜いた。
《アズールセイヴァー!》
通常のアズールセイバーよりも拡張・延長された刀身。
アズールメビウスは二つの武装を構え、臆する事なく歩み出る。
だが、盾を見たグリーフは余裕を取り戻した様子で、アズールを鼻で笑っていた。
「何かと思えば、専用の武器が盾とはな。片腹痛い! それでどうやって私を倒すつもりだ!?」
グリーフは再度変異したルードウィッチと共に並び立ち、さらにそのルードがジェラスを先頭に立たせる。
ジェラスネオは、嫌がって何度も首を横に振る。するとグリーフは舌打ちをし、彼のトランサイバーGのリューズを無理矢理回した。
《
「ウ、ウ、ウオオオオオッ!!」
「その姿なら嫌でも戦えるだろう」
ジェラスの姿は、身体にトンボの翅が生えた巨大な緑色の蛇になっていた。
口からは様々な文字が毒液のように滴り、雷や炎を発している。
「ググァァァァァッ!」
空を飛び、頭上から思い切り尻尾を叩きつけるカオスジェラス。
その強烈な一撃は、倒すまではできなくとも充分なダメージを負わせるだろうと、グリーフもルードも確信していた。
だが。その予想は大きく外れる事となった。
「グッ……!?」
「そぉりゃぁっ!」
アズールメビウスは左手のアーカイブレイカーのみでその攻撃を容易く受け止め、逆に押し返したのだ。
「ギ、ギィィィッ!?」
カオスジェラスは続いて、文字の液体からデジブレインを次々に生み出す。
これによって生み出されるのは、ハーロットが産んだものと同じ童話のデジブレイン。戦闘能力も全てトレース・フィードバックされたものだ。
しめた、とばかりにルードは領域を展開し、それらを支配下に置きつつ自身も戦闘に参加する。
グリーフもそれを好機と見て杖を再生、トランサイバーGを入力した。
「無駄だ。スターリットフォトン、散布開始……!」
その言葉と同時に、アズールメビウスのボディ各所にある噴射口から星のように煌く粒子が飛び出し、それが敵勢の頭上で武器を形取った。
《アズールセイバー!》
《リボルブラスター!》
《スタイランサー・スピアーモード!》
《スタイランサー・ボウガンモード!》
そして、誰も手に取っていないにも関わらず銃口からひとりでに弾丸や矢が飛び出し、剣と槍が肉を斬って踊り続ける。
しかも威力が通常のものよりも遥かに高い。あっという間に、生まれたデジブレインは全滅した。
役目を終えると、それらの武器は再び粒子となって消え去った。
「な、あ? え?」
仰天するルードウィッチ。領域のデジブレインたちを利用して戦おうとしていたのだが、そう思ったときには既に全員消えていた。
さらにアズールメビウスは再び剣を引き抜き、これ以上デジブレインを生み出せないようにとカオスジェラスに向かっていく。
「はっ!? ま、待ちなさい!! 『ファイナルコード』!」
《
背を向けているアズールに、ハサミと尻尾から毒液を噴出するルードウィッチ。さらにグリーフディクタトルも、靄の中から火炎弾や岩石の飛礫を放つ。
対して、アズールメビウスは立ち止まって振り返りざまに三度剣を振るう。たったの三閃だ。
だがたったそれだけで、全ての大技を斬り裂き消し飛ばしてしまった。
「なん、ですって!?」
「バカな……あの剣、一発一発が必殺技レベルの威力だとでも言うのか!?」
激しく狼狽し後退りするルード、額から汗を流して息を呑むグリーフ。
しかし、それでもグリーフは諦めない。
「問題ない、勝てるぞ! どんな武器を生み出そうと、当たらなければ意味などない! ヤツの能力など所詮その程度の――」
「何を勘違いしてるんだ?」
アズールから発せられる冷たい声。彼は背を向けたまま、ジェラスの方に向かって歩いている。
「この剣も、盾も……スターリットフォトンだって、装備ではあっても能力じゃない。僕はまだ一度も『アズールメビウスとしての能力』なんか使ってないよ」
「え」
「今見せてやる、まずはグラビティガイアからだ」
剣をアーカイブレイカーに納刀し、腕を前に掲げるアズール。
直後、三人のサイバーノーツの全身に急激に重力が与えられ、動きを封じ込める。
「がっ……あっ!?」
あまりのパワーに、腕さえ動かせず地上に向く。これではトランサイバーも操作できない。
すると、カオスジェラスが再び口から文字の液を漏らし、デジブレインの群れを生成させた。
「無駄だ!」
それに対し、アズールは一度指を弾く。瞬間、デジブレインたちの身体は斥力によって浮き上がり、攻撃もできず混乱状態に陥る。
すかさずアズールセイヴァーを抜刀し、極大の重力を纏った斬撃を飛ばす。その一閃を受け、デジブレインたちの半数が消滅した。
仮面ライダーアズールメビウス グラビティガイア。重力操作によって敵の動きを阻害するのを得意とする、
「さて」
アズールメビウスが、再び剣を納める。
カオスジェラスは今も敵の数を増やし続けている。今のままでは、放置しては後々面倒になるだろうと考えているのだ。
すると、アズールはメビウスユニットを装着して進化したアプリドライバー、アプリドライバー
《スワイプ!!》
「ハイパーリンクチェンジ!」
《シャイニングサン、ハイパーリンク!!》
アズールの胸の水晶に浮かんだ記号が、地球から太陽に切り替わる。
それと同時に両手を合わせ、開いたそこに灼熱を帯びた巨大な光の球体を生み出した。
「消し飛べぇぇぇっ!!」
光の球体を前に押し出すと、それが生まれ続けるデジブレインたちに無数の熱線を浴びせる。
たちまちカオスジェラスの周囲は焦土と化し、液も蒸発。ジェラス自身の身体にも炎が燃え映った。
「ギャェアアアア!?」
「そぉりゃあああっ!」
続けてアズールは両拳に同じ極熱の閃光を宿し、ジェラスの顎を殴る。
牙が折れて仰向けに倒れても攻撃は止まる事なく、アズールに尻尾を掴まれてぐるぐると振り回される。
そして全身を焼け焦がされながら、投げ飛ばされて頭から大地に突き刺さる。これで変異も解除され、都竹は戦闘不能となった。
光熱操作のシャイニングサン。閃光によって多数であれ少数であれ問答無用に敵を焼き払う、攻撃型のバトルスタイルである。
「お、おのれ……おのれおのれおのれ!」
アズールの姿が変わった事で重力から解き放たれたグリーフが、怒りのままに杖から靄を発し、背を向けている仮面ライダーに攻撃しようとする。
単調な攻撃だが、避けようとしたアズールの脚にルードの伸ばした尻尾が絡みつく。
「今ですわ!」
「はっははは! でかしたぞ!」
頭上の靄から雷が放たれる。
戦いを見ていたアシュリィや鷹弘たちは思わず悲鳴のように声を上げるが、直後に信じられない出来事が起こった。
足を拘束されていたはずのアズールが、粒子と化してその場から消えてしまったのだ。
「え……?」
間抜けた声を発するグリーフ。
しかも事態はそれだけでは終わらず、虹彩の粒子と共に、アズールの肉体がルードの背後で再構築される。
全形態が共通して持つ、肉体をスターリットフォトンに変換する力。それを利用したショートテレポートである。
アズールは振り返ったルードの顔面に、全力で拳を叩き込んだ。
「アギャッ!?」
鼻が潰れ、顔の中心が大きくへこむ。これ程の傷を負うと、変異を解除しても影響は大きい。
「わ、私の顔が!? 私の美貌……」
「ハッ!」
「がブッ!?」
再度、アズールが顔を目掛けて殴る。よろめいている間に、反対側の拳でもう一度。
ルードの顔がさらに変形し、原型を留めなくなる程にグシャグシャに歪む。
「お願い……ゆ、ゆるして、顔はやめて……」
「そう、そんなに顔を殴られたくないんだ。じゃあ顔だけ殴らせて貰うね」
「ヒッ」
泣いて慈悲を請おうとしているルードに対し、容赦なく鉄槌を下そうとする。
だが、その寸前。
「『ファイナルコード』!」
《
「隙を見せたな愚か者がァァァ!」
ルードに注視している間に、グリーフは必殺技の発動を終えた。
靄で周囲を包み込み、そこから無数の炎の龍が牙を覗かせて迫っている。
先程のショートテレポートでは、視界に映る範囲までにしか移動できない。よって、靄で塞がれている今の状況では、ルードウィッチごと必殺技を受ける事になるだろう。
なので、アズールはサークルをもう一度回転させ、別の対策を講じる事にした。
《スワイプ!!》
「ハイパーリンクチェンジ!」
《ルクシオンムーン、ハイパーリンク!!》
胸の水晶が月の記号に変化し、それと同時にアズールは右手の指をパチンと弾く。
すると、周囲から飛び出そうとしている炎の龍が、その動きを止める――否、途轍もなくゆっくりと動いている。
ルクシオンムーンは、時流操作の力。視界内の任意の物体や空間内そのものの時間の流れを遅くしたり、逆に速める事ができる技巧型のスタイルだ。
時間を止めたり戻したりする事はできないものの、この力でアズールメビウスは必殺技の命中を遅らせているのである。
「な、なにを……」
アズールに突然首根っこを掴まれ、ルードは驚く。
そしてそのまま、アズールは飛び出つつある炎の龍目掛けて、ルードを投げ飛ばした。
「何をぉぉぉぉぉあああああつううううういいいいい!?」
ルードにも時流減速を与えつてゆっくりと直火焼きにし、アズールはスターリットフォトンを使って手元に一枚のマテリアプレートを形成する。
ロボットジェネレーターだ。そのプレートを、アーカイブレイカーの表面にかざした。
《タップ! ロボット・アプリ! マーキュリーエフェクト!》
「とりあえずこれで良いか」
盾の表面に水星の記号が浮かぶのを見て呟き、アズールはさらに表面へマテリアフォンをかざす。
《マーキュリーフィニッシュコード!
アーカイブレイカーから水色の光線が竜巻めいて照射され、それが炎の龍を薙ぎ払っていく。
そしてルードも靄も含めた全てが消し去られ、向こう側に立っていたグリーフは恐怖に目を見開いた。
「な、なにぃ……!?」
「ハイパーリンクチェンジ!」
《スワイプ!! グラビティガイア、ハイパーリンク!!》
また靄の中に閉じ込められるワケには行かない。
そう思ってアズールは先程と同じくショートテレポートを駆使し、素速くグリーフの背後に回り込んだ。
「ぬうっ! 甘いわ!」
グリーフはそれを先読みして背後へ触手を伸ばすが、そもそも地力が違う。
アズールセイヴァーの抜刀により、一本残さず叩き斬られた。
「な、あ」
「終わりだ」
そう言って、アズールメビウスはベルト左側に装着されたメビウスユニットのスイッチを押し込み、さらにマテリアフォンをサークル上でかざす。
《スターリーフィニッシュコード!!
「そぉりゃあああああっ!!」
腕でせめて防御しようとしたグリーフに対し、重い回し蹴りを食らわせる。
その一撃は胴を守った腕を容易く圧し折った上、時流減速が解かれて地面に落ちたルードの上に重なるようにグリーフを吹き飛ばす。
しかし、これだけ殴られても彼らは負けを認めなかった。
「ま、まだだ! まだ終わっていない! リカバリー!」
グリーフディクタトルは叫びながらアクイラの力を行使しようとする。
だが、何も起きない。
「なにぃ!? な、ならばデータ・アブソープションを……!」
何度試みても、グリーフが使おうとしているアクイラの力は全て発動しなかった。
一体何が起きているというのか。当惑しているところへ、アズールから声がかかる。
「……完全なアクイラの前で、同じ力を使う事はできないんだよ」
「ど、どういう意味だ」
「僕もこの姿になってから初めて知った話だけど。完成したアクイラがいる場合、その力に満たない『未完成者』たちはいかなるアクイラの能力も行使できなくなる」
「なんだと!?」
「アクセス・リストリクション。アクイラは自分の力が利用される事すら、予測済みだったのさ」
グリーフがまたも愕然とする。
能力の正体についてというのではなく、未完成者という点についてだ。
「バカな! 私の力は完成している! 私こそが真のアクイラなのだ!」
苛立ちながらルードも起こし、グリーフは彼女と共にリューズを回した。
《
するとルードウィッチは巨大なサソリの怪物に、グリーフもリボルブたちと戦った時と同じ異形の怪物となってアズールを見下ろす。
「この美しき我が威光を見よ! これこそが完成形なのだ、神の姿の……はずだ!」
巨大な触手を震わせながらそう言うが、アズールは頑として否定した。
「違うよ。お前はアクイラが何を望んでいたのか分かってない」
「なに……!?」
「鷲我さんが言ってた事だ。アクイラは感情に興味を示し、人の姿になったって。そして、人間を支配するためにドライバーを作ろうとしたって」
「それがどうした! 人を支配するために、その後の仮面ライダーとの戦いで怪物になったのだろうが!」
「間違ってるのはそこだよ」
そう言いながら、アズールは巨大な怪物に向かって指を差した。
「怪物の姿を取ったのは、飽くまでも反撃するべく戦うためだ。支配するためじゃないし、むしろ人の姿を捨てる事は望まなかったはずだ」
「ぐっ!?」
「それに、あの姿じゃドライバーは使えない。それなら異形の生物になる意味なんかないだろう」
「ば、バカな……」
「だからお前は神なんかじゃない、その姿はアクイラが望んだものじゃない! 自分自身の歪み切った欲望が生んだ、ただの醜い化け物だ!」
鋭い指摘を受けて、カオスグリーフは巨躯を震わせて頭上を見上げ、慟哭にも似た咆哮を発する。
そして再びアズールを見下ろすと、血走った眼を向けて叫んだ。
「許さんぞ!! この私を……愚弄するなァァァッ!!」
狂気に満ち溢れた怒声を響かせ、触手を地上のサソリに巻きつける。
すると、二体の巨大怪物の肉体が融合を始め、カオスグリーフの下半身はサソリのものに変異した。
「とうとう本気になったか……!」
そう言ってアズールは斥力を操作し、宙を跳ぶ。
サソリのハサミと靄から発せられる爆炎、さらに尻尾の毒針と、多彩な攻撃手段でアズールを追い詰めていくカオスグリーフ。
アズールもショートテレポートやアーカイブレイカーを駆使して回避し続けるが、突如として背後から襲ってきた雷撃への対処が遅れてしまった。
そこへ、炎鳥の弾丸がアズールを守る。リボルブが救援に来たのだ。
「翔!」
「静間さん!? 大丈夫なんですか?」
「お前にばっか戦わせられるかよ! それに、俺だけじゃねェぜ!」
そう言ってリボルブが地上を指差すと、そこでは雅龍もザギークもキアノスも、ネイヴィやピクシーズも戦っている。
サソリの動きを分散させるために、全員で散開して攻撃に当たっているのだ。
もう一度リボルブの方に視線をやると、彼は小さく頷いた。
「足止めは任せろ、お前は……やっちまいな!」
「了解!」
アズールが、自らの盾の上部にアズールセイヴァーを組み合わせる。
それによって剣にスターリットフォトンが集まって行き、緑色に輝く刀身の大剣を形成した。
《ブレイクセイヴァー!!》
「皆のためにも……これで、終わらせる!」
《ドライバースキャン!! オール・エフェクト!!》
盾の表面をドライバーにかざし、さらにマテリアフォンを滑り込ませる。
そして剣を構えた瞬間、剣からビームが発振され、地上どころか惑星さえ斬り裂かんばかりの巨大なビームソードを作り上げる。
《グランドクロスフィニッシュコード!!
横に薙ぎ払うように振るわれたビームソードは、醜い合成生物の胴に命中。
ズル、と音を立てながら、背後の無数の建造物ごと、上半身と下半身を真っ二つに焼き斬った。
「あ、が」
大サソリから離れ、上半身だけで浮遊するカオスグリーフ。
その両眼には血の涙が溢れ、なおも諦めまいと天を見上げて手を伸ばす。
「まだ、だ……私は神に……世界の……ちょうて……」
ただひたすら上へ、上へと伸ばした腕の先にいたのは。
ドライバーのプレートを押し込み、必殺技を発動しようとしている仮面ライダーアズールの姿だった。
《アストラルフィニッシュコード!!》
「お前の
《
全身を青く輝かせ、さらにスターリットフォトンを右足に集中。
そして両肩と胸の地球・太陽・月のエネルギーを爆発させ、カタルシスエナジーを一気に解き放ち、時流加速によって素速く蹴り出す。
星々を背負って飛んで来る熱閃のキックを、カオスグリーフは防ぐ事すらできず、顔面で受けた。
《エタニティ・アプリケーションコンプリート!!》
「そぉりゃああああああああああっ!!」
「ブゥアアアアアアアアアアアアッ!?」
グラビティガイアが生み出した重力と共に、二人は激しい速度で落下して行く。
舞い上がった砂煙が晴れた時、変異が解除された遼が、意識を失って仰向けに倒れている姿が露わとなる。
――それは、長きに渡って翔たちを巻き込み続けた因縁が、終わりを告げた事を示していた。