原罪の創世巨塔、至高天の間。
カオスモードを発動した仮面ライダーケルビムは、変質したケルビムザンバーと全身に生えた無数の邪眼から光線を乱れ撃つ。
しかも邪眼は先程と同じく肉体から分離させる事も可能で、それらがあらゆる角度・方向から攻撃して来る。
「ぐあああああーっ!」
「くううう!?」
防ぐ事ができず、ビームを受けたリボルブや雅龍たちは、次々に大きなダメージを負っていく。
先程のピクシーズの回復を無意味とするかのように、絶え間ない激しいビームの連発。それを受けた仮面ライダーたちは変身を解除させられ、もはや立ち上がる事さえできなくなっていた。
たったひとりを除いて。
「こんなモンかよ、てめぇの本気は」
攻撃を無視して立って歩く、ジェラスレヴナント。変身者の文彦の肉体は痛覚を遮断するゾンビ状態となっており、それ故にダメージらしいダメージがない、というよりも痛みを感じていないのだ。
「やはり私と唯一戦えるのはあなたですか」
カオスケルビムもこの事態は予想しており、ケルビムザンバーを突きつけてくつくつと笑った。
「しかし、この死角のない邪眼をどうやって攻略するのですかねぇ?」
「フン……おめでたい野郎だな。まだ生き残れる気でいやがる」
言うなり、ジェラスは斧を振り上げながら突撃。それに対し、ケルビムはビームを無数に放って迎え撃つ。
破壊的な威力の光線が体を捉えているが、やはりジェラスは意に介さない。
「シャアッ!」
そのままレヴナントアックスを振り下ろし、痛烈な一撃をケルビムへと見舞う。
だが、ケルビムも挙動を先読みして自らの剣で防いでおり、そのまま何度も光線を放ってジェラスを押し返した。
「チィッ!」
「フフフ……今の私はそう簡単にはやられませんよ!」
今度はケルビムの反撃だ。何度も剣をジェラスの体に叩きつけ、光線を放ち、攻撃し続ける。
やはり痛覚のないジェラスには全く通じていない。よって、ジェラスも拳を突き出して反撃に移る。
「オラァァァ!」
「フフハハハ!」
痛覚遮断と先読み。攻撃を受け付けず、自らの攻撃を押し通す事に長けた二つの戦法は、完全に拮抗していた。
「あなたと私では決着がつかないようですね」
「知った事かよ。決着がつくまでやるだけだ」
肩で斧を担いで、堂々とジェラスが言った。
そして再び大きく踏み出して疾駆し、光線をその身で受けながら、大上段から斧を振り下ろす。
だが、やはりケルビムの眼には見切られており、大振りな一撃はバックステップで回避されてしまった。
「そもそも疑問なのですがねぇ! なぜあなたは『そちら側』にいるのですか!」
剣を振り回してジェラスを追い込むケルビム。さらに目玉の数個を体から分離し、背後から熱閃を放つ。
ジェラスは攻撃を全て体で受け止めつつ、無理矢理飛びかかって斧と剣で互いに押し合う。
「あなたは元々Cytuberだったはずだ! ならば分かるはずだ! あの御方の作った楽土が如何に素晴らしいものであるか、あの御方の志がどれほど崇高なものであるかを!」
「ハッ! そいつはてめぇの勝手な妄想だぜ!」
刃と刃が火花を吹く。ジェラスは斧を持っていないもう片方の手で拳を、ケルビムに突き出した。
当然、それも避けられる。しかし、構わずジェラスは叫んで斧を振り続けた。
「俺はなぁ! 確かに勝つためなら手段を選ばねぇ、100%勝つ戦いしかしねぇ! 正々堂々なんざクソ喰らえだ! だが、この世界はなんだ!? 何をしても何もかも思い通りになる!? 冗ッ談じゃねェェェーッ!!」
「むっ!?」
リンクナーヴの活性が、膨大なカタルシスエナジーを生む。
斧の破壊力が高まって剣を弾き始め、ケルビムは警戒して後ろに下がった。
それに勢いづいて、ジェラスは一気に攻め立てる。
「どんなに卑怯卑劣と罵られようが!! 自分の頭で立てた計画で、作戦で!! 自分の力で敵をブチのめした上で頂点に立つのが最高に気持ち良いんだろうが!! だから競争ってヤツには価値があるんだ!! 誰もが満足行く形で終わる事が分かってる世界に何の意味があんだよ!!」
「あなたはそんな身勝手な理由で、アクイラ様の作った平和な世界を壊そうというのですか!?」
「身勝手に世界を書き換えやがったのはてめぇらの方だ! 俺はこんなモン頼んじゃいねぇんだよ!」
先読みの意味がなくなる程に力強く素速く攻撃を繰り返し、ジェラスは徐々にケルビムを押し始める。
ケルビムが振り下ろした剣も蹴り上げて弾くと、ジェラスはレヴナントアックスで袈裟に斬りかかった。
「そしてどっちにしろこの俺に!! 神の助けなんざ必要ねェェェーッ!!」
「がぁっ!?」
刃が胴を裂き、邪眼を砕く。さらに脇腹を蹴りつけ、よろめいたところに側頭部へ裏拳。
決定的な隙が出来た。ジェラスは自らのドライバーのプレートを押し込み、マテリアフォンをかざして必殺技を発動する。
《クルーエルフィニッシュコード!》
「話がそれだけなら……さっさと死にやがれぇ!」
《
胸を押さえるカオスケルビムに向かって、ジェラスがカタルシスエナジーを帯びた拳を真っ直ぐに突き出す。
しかし、その一撃が命中する事はなかった。
放たれたジェラスの右腕が、ノイズに包まれて力を失ってしまったのだ。
その姿に、鷹弘やアシュリィたちは目を剥く。
「御種、お前は一体……!?」
「が、あああっ!! こんな……時に!! クソが!!」
腕に力を込め、ノイズを振り払って元に戻すジェラス。
すると、様子を眺めていたケルビムは高く笑い声を上げ始めた。
「なぁんだ。やはりあなたもこちら側だったのではないですか」
単眼を閃かせ、ケルビムは語る。ジェラス以外の人間に、自らの置かれている立場を自覚させようとするかのように。
「本当なら、あなたの体はまだアクイラ様の細胞に適合できていないのでしょう? それが楽土の影響を受け、あなた自身の願いで適合状態として動けるようになったんだ」
「くっ……!?」
「ですが、楽土が消えればあなたも本来の姿に戻る。研究所で半ば植物状態だった頃と同じに。ノイズが起きているのは、人々がこの巨塔の存在に気付いて楽土が綻び始めているからでしょうねぇ」
笑うケルビムの邪眼がジェラスを包囲し、彼らの会話を聞いていた鷹弘は歯を軋ませる。
ケルビムの狙いは、ジェラスを味方に引き込む事だと結論が出たのだ。彼さえ手中に収めてしまえば、もはやホメオスタシスに自身を倒せる相手などいないからだ。
それが分かっていながら、鷹弘にはどうする事もできない。響も同じらしく、口惜しそうに拳を握り込んでいる。
「今のようにまた起き上がれる保証はどこにもない……それでも、あなたは我々に歯向かうというのですか?」
「……」
俯くジェラス。そしてもう一押しだとばかりに、ケルビムは剣と一体化していない自らの左腕を差し伸べた。
「私と共に、アクイラ様の忠実な下僕として生きませんか? そうすればもう何も心配いりません、あなたの中の細胞は完全に適合し、暗闇に囚われる事もなくなるでしょう」
沈黙していたジェラスが、ゆっくりとその左腕に向かって歩き出す。
ケルビムはくつくつと笑って、左手で手招きを続ける。
「さぁ、私と共に――」
※ ※ ※ ※ ※
ケルビムとジェラスが死闘を繰り広げている頃、アズールとパライゾも激しく戦っていた。
アクイラはパライゾエンピレオとなり、武器を持たずに肉弾戦を挑んでいる。
「フフフッ」
「くうっ!?」
上空を飛び、アズールは剣で斬りかかり、アクイラは拳で突いて来る。
アクイラの右拳が盾にぶつかると、アズールはあまりの威力に体勢を崩してしまう。
さらに鞭のようにしなって繰り出された左脚の一撃が、アズールセイヴァーを地上へと取り落とさせた。
「しまった!?」
続け様に、アクイラがアズールの胸に拳を叩き込み、素速く右側に回り込んで頭に踵落としを見舞う。
アズールは攻撃を受け、地上へと墜落した。
「ぐ、あ……はや、い……!?」
アズールメビウスが、パライゾのスピードに全く対応できていない。
立ち上がろうとするアズールへ、さらにパライゾスフィアからの無数のビームが雨のように降り注いだ。
「うっ!?」
アズールセイヴァーを急いで拾い、アーカイブレイカーを頭上に掲げ、難を逃れる。
だが、反撃しようと思ってアズールが盾の構えを解いた時、既にパライゾは目前まで迫っていた。
「何!?」
「ハッ!」
パライゾのキックが再び襲いかかり、地上に大きな擦り跡を作って後ろに押し出されながらも、間一髪でアズールは盾でそれを防ぐ。
スピードだけでなく、パワーまでも今のパライゾの方が上回っている。
ともかく速さで追いつけなければ話にならない。アズールがそう思って、ルクシオンムーンへとハイパーリンクチェンジしようと動いた。
《スワイプ!! ルクシオン……》
だが、その直後。
「無駄だよ!」
パライゾの両眼が紅く輝くと、周囲の空間がぐにゃりと捩じ曲がり、アズールの視界も歪んでいく。
そして、気がついた時には胸のシンボルが月の記号ではなく地球の記号に戻っていた。
「えっ!?」
「フフフッ!」
その上、パライゾはいつの間にかスフィアのひとつを剣に変えており、それを持ってアズールに向かって斬りかかっている。
アズールはその斬撃を自らの剣で受け止め、鍔迫り合いとなる。
「な……何をした!?」
「これがエンピレオの力だ」
蹴ってアズールを押し出し、今度はスフィアのひとつを銃に変える。
それを見ながら、アズールもマテリアプレートを作り出してアーカイブレイカーにかざして行った。
《タップ! ブルースカイ・アプリ! ロボット・アプリ! シノビ・アプリ! マジック……》
「させない」
再び両眼が光ると、先程と同じように空間が歪み、プレートも持たずにアズールは立ち止まったままになってしまう。
信じられない、という様子で、アズールは自らの身体と両手を見やった。
「なん、だ……これは……一体何が起きてるんだ!?」
アズールが困惑していると、パライゾは笑いながら語り始める。
「未来歪曲。僕が楽土を生み出し、操るのと同じ力だが……エンピレオユニットによって、それをより高度にしたものさ」
「なに?」
「君がアクションを起こすと同時に、そこから発生するはずだった無数の未来とあらゆる可能性の全てを摘み取る事により……『何もしなかった』という結果に到達させる。君は今、ただ立ち尽くしていただけなんだよ」
つまり、何が起きても後から行動を変更させられるという事だ。
それがエンピレオの力の正体。あまりにも強大な力に、アズールはただ愕然とするばかりだった。
「そんなの無敵じゃないか!?」
震える声。いくら翔が力を振り絞り、死力を尽くしたとしても、それが無意味となる。
その力がある限り、勝利の未来は決して訪れないのだ。
「もう諦めて、楽土に帰るんだ。君じゃエンピレオの力を防ぐ事はできない」
「く……!」
素速く踏み込み、アズールセイヴァーを振るう。
しかし、空間の歪みが発生すると、いつの間にか納刀して無防備な状態でパライゾに向かっている。
「ううっ!?」
「今の僕の前では速さなんて意味を持たない」
パライゾの足がアズールの顎を捉え、上空へと打ち飛ばす。
そしてスフィアを全て剣に変換し、それを操って四方八方からアズールを斬り裂いた。
「が、ああっ……!?」
轟音を立て、地面に墜落するアズール。
砂煙が巻き上がり、両腕と翼を拡げながら、パライゾはゆっくりと歩み寄る。
その時。砂埃の中で、音が響いて閃光が迸る。
《アストラルフィニッシュコード!!
「そぉりゃあああっ!!」
ヒュボッ、という風を切り裂く音が聞こえ、右脚を突き出したアズールが飛んで来る。
だがライダーキックが命中するより前に、空間が歪む。
そして、アズールは気付かない内にその場で突っ立っていた。
「これでも……ダメなのか!?」
「仕方ない。必殺技を使わせて貰うよ」
そう言いながら、パライゾはエンピレオユニットの上部にあるスイッチを一度押し込む。
《
音声が流れ、ドライバーが紅く輝く。
さらにもう一度、パライゾは何度も押し続けた。
《
「くっ!」
スイッチを押す度に、カーネルドライバーは発光する。
これ以上やらせては行けない。アズールが疾駆して攻撃しようとするが、空間の歪みが彼を元の場所へと戻した。
「そんな、止められない!?」
「フフフッ」
《
「さぁ……終わらせよう」
《ドゥームズフェイタルコード!! ルード・シンズ!!》
七度目の入力を終えてプレートを押し込んだ直後、デジタルフォンをかざし、パライゾが右手を頭上に掲げる。
するとドライバーが赤黒い光を放って禍々しい声を発し、天空に巨大な赤黒い光の球体が生み出されていく。
《
「大丈夫だとは思うが……死んでくれるなよ、翔」
まるでこの塔を、島そのものを破壊せんばかりの巨大なエネルギー体。それを目にしたアズールは、すぐに盾を構えて護りに入った。
破壊的なエネルギーの塊がアズールを飲み込み、火柱のように天へと紅い柱が立ち上る。
その中でアズールは、痛みと苦しみで悲鳴を発してもがき苦しんでいた。
「ぐあああっ!? あ、あああ、うわあああああああああーっ!!」
紅い光の柱は徐々に薄くなって消え、アズールはついにその場で倒れ伏した。
「分かっているはずだ、翔。君の力では一生かけても僕を倒す事などできはしない。僕らの間には、それほどの超えられない力の差があるんだよ」
「ぐ、くぅっ……!」
それでも腕に力を込め、立ち上がろうとする。
しかし、パライゾは首筋に剣を突きつけて、それさえ許さなかった。
「抵抗は無意味だ、もう諦めてくれ。命を奪うつもりもない。ただ眠って楽土に身を委ねて欲しい」
パライゾが優しい声色で言い放った。
しかし。倒れているアズールの両手の指が、ガリッと地面を削った後、剣を掴む。
「……それじゃ、ダメなんだよ……アクイラ」
「なに?」
刃が食い込んで血を流しながら、アズールはゆっくり立ち上がる。そして剣を握り砕き、パライゾに対峙した。
「お前が何度未来を奪って可能性を摘んだって、それは僕が全てを諦めて楽土に依存する理由にはならない!!」
「……何故だ翔! こんな戦いにどれほどの意味がある、それとも君はそんなに死にたいのか!?」
「違う!!」
頑なに否定し、パライゾの襟元に掴みかかった。
能力を使う事も忘れ、彼はアズールの言葉に聞き入っている。
「生きていくって言うのは、自分の意志で選択して、決断するって事なんだ! 人間からその意志を奪ったら、それはもう人の形をしているだけのロボットと同じだ! 死んでいないだけで、生きてもいないんだ!」
「だが……その決断のせいで人は不幸になる、不幸を招く!」
「だから手を取り合って乗り越える! 何か失敗したって、人はまたいつか立ち直れるんだ! こんな世界に縋らなくたって、生きていけるんだよ僕たちは!」
「それでも、最初から失敗しない世界だった方が良いに決まっている! 僕にはその力がある、人の死だって変える事ができるんだぞ!」
「人間はその失敗や哀しみからいくらでも未来を変えられる! 何もしなくたって、お前の力は人間ならみんな持ってる! それが意志の力なんだ!」
「なら!! なら……!!」
突如として、パライゾの様子が一変する。
「なら、僕は……僕は何のために生まれた!? どうしてこの世に生み出された!?」
両手で頭を抱え、バチバチと両眼から火花を発している。今にも頭から煙でも吹かんばかりだ。
「アクイラ!?」
「人間を導くのが人工知能の役割じゃないのか!? それを否定されたら僕は……僕は……!?」
思考がショートでもしているかのように、パライゾは頭を押さえて苦しむ。
そして荒く息をついた後、ギラリと瞳を怪しく輝かせ、突然アズールに向かって飛びかかった。
「うわっ!?」
「教えてくれ、教えてくれよ!! 僕は何のために生きているんだ!!」
「くっ……離せ!!」
驚きのあまり、アズールは剣で突いてパライゾを突き飛ばそうとする。
当然、相手には未来歪曲の力がある。それが働けば為す術がないという事も、アズールには分かっていた。
だが階下で爆発音が響くと同時に、アズールセイヴァーの剣先がパライゾの胸の装甲を斬り裂く。
「え……?」
「え、ああぁっ!? なんで、なんで!?」
パライゾにも大きな変化が起きていた。
頭部に亀裂が走り、全身が斑状にノイズで覆われ、翼も動きを止めている。ドライバーはそのままだが、先程までの光が失われている。
さらに頭上のドス黒い空も、大きく歪んでノイズに包まれていた。
「一体何が起きたんだ……!?」
※ ※ ※ ※ ※
「さぁ、私と共に――」
爆発が起きるよりも前。
カオスケルビムが差し出した腕へと、ジェラスはゆっくり歩み寄っていた。
そして、その左手を固く握る。
「く、嘘だろオイ……!」
鷹弘が悔しそうに言い、ケルビムとジェラスが手を取り合う様子を見上げている。
だが。
「うん?」
ケルビムが、その違和感に気付いた。
自分の手を握ったジェラスが、そのまま右手で肩を掴んだのだ。
そしてジェラスは喉奥で笑いながら、自らの腕を圧し折りながら、強引にケルビムの腕をひねって背後に回る。
「捕まえたァァァァァ……!!」
「な、に!?」
ひねる力を強め、ジェラスはさらに自らのマテリアプレートを強く押し込んだ。
《クルーエルフィニッシュコード!》
「まだやるつもりか!? 命が惜しくないのか!? 楽土を破壊すれば、あなたもタダでは……!!」
「あ゛ぁ!? 知った事かボケが!! 俺はな、こんな世界を作って偉そうにふんぞり返ってるてめぇらに勝ちゃそれで良いんだよ!!」
どうにかして拘束を解こうとするケルビムであったが、ジェラスは一切力を緩めない。
ケルビムは、必死に説得を試みた。
「考え直せ!! 楽土がなくなれば、人はアクイラ様の管理から外れるんだぞ!!」
「それがどうした!」
「くうう……この、不信心者があああっ!!」
直後、ケルビムから分離していた邪眼がビームを発し、ジェラスの背中を焼く。
しかしその程度では彼も手を放さない。それが分かっているので、ケルビムはさらにビームの威力を強めて連射した。
複数の邪眼を一点に集中させる事によって、貫通力を高めて装甲を貫く。
だが背中から胸まで貫かれても、おびただしい量の血を吐いても、ジェラスはまるで手を抜かない。
「離れないねぇ?」
「おのれぇ貴様ぁぁぁ!!」
煽るような言葉に怒りをあらわとし、ケルビムは光線を乱射する。
攻撃を受けながら、ジェラスは思い出したように鷹弘へとプレートを投げつけた。
赤い鳥の羽根のような形状をした、地面に落ちているそれを拾い上げると、鷹弘は不思議そうに顔を上げる。
「これは?」
「改造したは良いが俺には扱えなかった。生き残りたきゃ勝手に使え、後は俺の知った事じゃねぇ」
「おい、待てよ……何する気だ」
問われると、不敵に笑うジェラス。
直後、彼の全身にカタルシスエナジーが漲っていく。それこそ、破裂せんばかりに。
次に起こる事態を予測して、ケルビムも鷹弘も瞠目した。
「悪いがこれ以外に方法がないんでな。俺一人で勝ち逃げさせて貰う事にした」
「まさか……おいやめろ、そんな事するんじゃねェ!! 御種ェッ!!」
鷹弘が右手を伸ばすものの、時既に遅し。
カタルシスエナジーを暴走させ、ジェラスはマテリアフォンを振り下ろした。
《
「あばよ!! ヒャーッハハハハハハハハハハ!!」
ケルビムの背後で起こる、紫色の大爆発。
ジェラスの最期の策は、先読みなど無意味となる超至近距離からの自爆だったのだ。
「グアアアアアアアアアアッ!?」
爆炎に飲み込まれるケルビム。御種の肉体は完全に四散し、データの塵となって虚空に溶け込んでいく。
黒い煙が目の前で立ち上っていく中、鷹弘は両膝を地につき、叫びながら拳を何度も叩きつけた。
「あの馬鹿野郎!! なんで!! なんで死ぬ必要があんだよ!!」
「静間さん……」
「この先いつ目覚めるか分からなくても……いつか、いつかは罪を償って、前を向いて生きていけたかも知れねェじゃねェかよ……!!」
響もアシュリィたちも、肇や浅黄も哀しげに爆破の跡を見つめる。
文彦とは、決して良い関係であったとは言えない。むしろ最悪と言えるだろう。彼はホメオスタシスを裏切ってCytuber側についた過去を持ち、激しく争い合ったのだから。
それでも今は、楽土を滅ぼしアクイラを倒すという共通の目的や、お互い打算もあったとは言え、共に戦う仲間だった。
哀しみでも怒りでもあるような複雑な心情を抱えながら、鷹弘は慟哭する。
一方、翠月は静かに目を見開き、黒煙の先に指を差していた。
「バカな、アレは……!!」
鷹弘を含む一行も目を凝らす。
そこにいたのは、邪眼の大半を砕かれ失いつつも両足で立つ、カオスケルビムの姿だった。
半分に折れた剣を床面に叩きつけ、獣のように咆哮する。
「あのクズめ! 人が下手に出ていれば調子に乗りやがって! この私を、よくも……よくもぉぉぉ!」
激しく地団駄をしながら、今は亡き文彦に対して罵声を浴びせる。
そして鷹弘たちの方を見ると、剣を突きつけて躙り寄って行く。
「ヤツは無駄死にだが、こうなっては貴様らもタダでは帰さん……憂さ晴らしさせて貰うぞ! この剣で斬り刻んで……?」
言いながら剣を再び振り下ろそうとした、その時。
カオスケルビムの全身が、ザザザッと音を立ててノイズに埋め尽くされていく。
「あ、が……ギエアアアアアッ!? なんだ、なんで!? 何が起きている!?」
狂乱し、困惑するケルビム。突然の出来事に、鷹弘たちも驚くばかりだった。
自爆のダメージが思ったよりも深かったのかとも考えるが、それにしてはケルビムは力を残しすぎている。
全員が事態を飲み込めずにいる中、肇はひとり「そうか」と得心のいった様子で目を見開いていた。
「御種 文彦……一体なんて事を思いつくんだ……! 考えついたとして、容易に実行できるものじゃねえぞ!」
「父さん?」
「ヤツの自爆は、楽土に修復不能な傷を作りあげたって事だ!」
それを聞いて、鷹弘たちやケルビムもハッと息を呑む。
アクイラの作り上げた楽土は、誰一人として不幸になる事のない完璧な世界。
もし、本来ならそこで起こり得ない殺人や自害といった要因で人が命を落とせば、どうなるか?
これが答えなのだ。深刻なエラーによって、楽土は動作を停止し、その力を喪失する。
その上、現実世界とサイバー・ラインとの融合によって生まれた世界であるが故、融合状態が不安定となればデジブレインたちにも影響が出るのだ。
無論それは、アクイラとケルビムも一切例外ではない。
このような大きなトラブルを防ぐため、アクイラは極力戦いを避け、殺さないように命じていたのである。
「こ、こんな方法が……私が負けるというのか!?」
力を失っているためか、それとも怒りからか、ガクガクと全身を震わせるケルビム。
身体を引きずるように動かし、ホメオスタシスたちの横を通り過ぎようとする。
どうやら、塔の頂上を目指すつもりのようだ。
「まだ、まだだ! アクイラ様のお力ならば楽土を修復できるはず!」
「行かせねぇよ」
その眼前に、鷹弘が立ち塞がる。その手には、文彦から受け取ったマテリアプレートがあった。
「テメェは俺が……ブッ潰す!!」
《プライミヴァル・クラスター!》
起動したプレートを強く握り込み、ドライバーに装填。
マテリアフォンを手に取って、鷹弘はゆっくりとそれをかざした。
《デッド・オア・アライブ! デッド・オア・アライブ!》
「変……身!」
《
鮮やかな七色の羽根をはためかせ、真っ赤な怪鳥が現れる。
アーケオプテリクスのようなそれは、赤い光を纏った鷹弘と融合。それと同時に炎が噴き上がり、ケルビムを怯ませた。
《プライミヴァル・アプリ! 乱れ舞う太古の双翼、インストール!》
次の瞬間、光の消失と共に一人の仮面ライダーがケルビムを睨む。
両腕と両脚に鋭利な爪を生やし、ヴォルテクス・リローダーとリボルブラスターを持つ、新たな姿のリボルブだ。
炎が揺らめき、七色に輝く翼となって拡がって行く。
「仮面ライダーリボルブリベリオン!! 今度こそ……俺が勝つ!!」