街の住民たちはそれを見上げ、恐慌状態に陥っていた。
もう終わりだ。世界はこのままアレが落ちれば、自分たちは助からない。
そんな言葉ばかりが、怒号のように飛び交っていた。
「助けて……」
両親とはぐれてしまった小学生の少年が、涙混じりに口に出す。
生きたいという、ただひとつの想いが、それだけの願いがそうさせる。
「誰か、助けて……!!」
人々は強く望んでいた。自由と平和を守る英雄の存在を。
「アクイラ様は……この世の全てを滅殺する事さえできるお方だった……」
原罪の創世巨塔の頂上。
ドス黒く染まった空を見上げながら、ドラゴン・デジブレイン・アポカリプス、スペルビアは静かに呟く。
「いきなり楽土なるものを作ると言い出した時は素直に『愚かしい』と失望したものだが、それでも俺はあの方のために尽くした。結果としてこうなってしまったがな」
全身から黒い炎を噴き上げ、剣を地に突き刺し、大きく溜め息を吐いた。
「感情エネルギーを毟り取るために貴様ら家畜を生かしておいてやったが、もうその必要もなくなってしまった」
その言葉の直後、スペルビアはいきなり剣を勢い良く引き抜き、前に掲げる。
剣の切っ先が向かう方では、翔が地に膝をつき、肩で息をしていた。
今までに変身していたアズールメビウスや、チャンピオンリンカーでも、V2ですらもない。その姿は、変身していない翔そのものだった。
変身の隙を一切与えずに、一方的に嬲っているのである。
翔は生身でも武器を生み出したり多少の戦闘をこなす事はできるが、アクイラとの戦いで消耗した後という事もあって、今はアズールセイバー一本を生み出すのが精一杯だ。
「まずは、天坂 翔。貴様を真っ先に殺してやる。アクイラ様がおかしくなったのも、何もかも貴様のせいなんだからな」
殺意を漲らせ、スペルビアはゆっくりと翔に向かっていく。
それに対し、翔は生身で剣を握ったまま強くスペルビアを睨んでいる。
「アクイラは……人を殺す事なんて、決して望んでいなかったはずだ」
「おやおやまだ抵抗するか……だが関係ないな。あの御方はもういない、しかし人類の救済などという下らん理想を引き継ぐつもりもない。俺はただ、貴様らを殺し滅ぼせばそれで良いのだ!」
「彼はお前の主じゃなかったのか! アクイラの心を踏みにじってまで人の命を奪うのが、お前のやりたい事なのか!」
「そうとも!! あの御方のいない世界など何一つ価値はない!! 言うなればこれは俺の欲望だ、誰も彼もを皆殺しにしたいという俺の願いなんだよ!!」
スペルビアはそう断じて、鋭く剣を振り下ろした。
アズールセイバーの腹で攻撃を受け止めようとするも、その一撃を抑え切れず、刀身は翔の左肩を僅かに抉った。
「お前のそれは、願いや欲望なんかじゃない……!」
出血しながらも、翔はスペルビアから目を逸らさずに真っ向から肩へ掴みかかる。
「ただ腹いせに人の命を奪おうとしてるだけだ! 都合の良い言葉を使ってすり替えるな、お前の事は絶対に許さないぞ!」
「貴様に許しを乞う必要などあるものか! 思い上がるなよクズが!」
「ぐっ!?」
スペルビアの拳が胸を打ち、翔大きく後方に吹き飛ばされた。
「貴様ら人間の何十億という命などよりも、アクイラ様の方が遥かに価値があった! 許さんというのは俺のセリフだゴミめ! 虫ケラめェ!」
倒れた翔に向かって黒い炎を放つスペルビア。
翔は身を焼かれないようすぐに立ち上がり、走り出した。
しかし、それでスペルビアから逃れられるはずもない。
「ウロチョロするなゴミクズが!! ただ死ね!! 今すぐに死ねぇ!! 骨の欠片も残さんぞォッ!!」
スペルビアが翼を拡げて素速く飛翔し、頭上から剣を振り下ろす。
間一髪というところで翔は斬閃を回避するものの、目前まで接近した龍人に首を掴まれた。
「う、あ……!?」
「そういえば貴様は、アクイラ様と同等の力を持つとはいえ、元は人間だったな。ならばもっと手っ取り早い殺し方があるではないか」
翔の首を締めたまま言いながら、スペルビアは巨塔から飛んで離れ、そして帝久乃市の上空まで連れて行く。
もしも落下して地面に直撃してしまえば、木っ端微塵となってしまうだろう。
「なっ!?」
「この高さから落ちれば無事では済まん。粉々になってしまえ、人間」
スペルビアはそう言いながら手を放し、そのまま翔は真っ逆さまに頭から落ちていく。
「く……うわあああっ!?」
引力に従って地上へと落下する翔の姿をニヤつきながら一瞬眺めた後、島に向かって腕を伸ばすスペルビア。
カーネルドライバーのエンピレオユニットに変化させられていたスペルビアは、アクイラと同様に七つのデジブレインの力を取り込んでいたため、新たな力に覚醒していた。
それは『未来確定』。パライゾエンピレオの未来歪曲とは違い、他者の未来を摘み取るのではなくスペルビア自身の思うがままに未来を描く力。たとえそれを覆そうとしても、必ずその結末に辿り着いてしまう。
「地球はもう終わりだ」
グッと拳を握ると、島全体が黒炎を纏い高熱を帯びる。
この状態で落下すれば、地球は必ず滅ぶ。
「この俺が齎す破滅の未来からは、誰も逃れられんのだ!!」
悪しき龍の高笑いが、真っ黒な空の下で響き渡った。
※ ※ ※ ※ ※
巨塔で戦いが起きているのと同じ頃。
フォトビートルで状況を監視していたホメオスタシスの面々は、一方的に殴られ続ける翔の姿にざわめいていた。
「どうにかできねェのかよ!?」
「翔が危険だというのに……!」
悔しさから怒鳴り声を上げる鷹弘と、自身の無力さに歯を噛みしめる響。
彼らもまた、先の激戦による消耗のために戦闘できる状態ではない。翠月や浅黄、肇にアシュリィたち三姉妹も同様だ。
さらに島が落下して来る以上、そもそも一般エージェントであろうと救出班の派遣さえ不可能だ。
誰にも、どうする事もできない。ただ翔が痛めつけられるのを、眺める事しかできない。
「まずい! あいつ、翔くんを落とす気だ!」
そうしてついに、スペルビアに追い詰められてしまった翔は、鷹弘の言った通り帝久乃市上空から墜落して行ってしまう。
「やだよ……ショウ、お願い……死なないで……!」
声を震わせ、アシュリィは祈るように指を組む。
その直後。彼女の上着のポケットから、突然眩い閃光が迸った。
「え……!?」
驚きながらアシュリィがポケットを探ると、そこには翔から託されたアクイラの核と、彼女の使うマテリアプレートが入っている。光っているのはそれらだった。
彼女だけではない。鷹弘たち仮面ライダーの持つプレート、さらにマテリアフォンや鋼作らエージェントの持つN-フォンも同じ輝きを放っているのだ。
「なに、これ……何の光……?」
そんな言葉と共に、アシュリィたちは光に包まれていく。直後、すぐに全員がその光から響く声を心で聞いた。
この世に住むあらゆる生命の『生きたい』という純粋な願い。老若男女や種を問わない、心の底から溢れ出す切なる想い。
そして、翔自身の宿す同じく『生きたい』という願い。二つの願いが激しく共鳴し、あらゆる命の宿す感情エネルギー全てを、カタルシスエナジーへと昇華している。
地球が楽土と未だに融合しているが故に引き起こされた、言葉を超えた『全生命の心の統一』という奇跡だ。
「お願い……もしも届くなら、このみんなの想いを、願いを……ショウに届けて!! ショウを、助けて!!」
涙ながらに叫ぶアシュリィ。鷹弘たちも、プレートやN-フォンなどを強く握り締める。
その言葉を聞き届けたかのように、アクイラの核が強く輝くと、さらなる奇跡は引き起こされた。
※ ※ ※ ※ ※
「まだだ! まだ、僕は……!」
落下しながら、翔は最後に残ったプレートを手に取る。
それは、始まりの一枚。翔が初めて変身に使った、ブルースカイ・アドベンチャーのマテリアプレート。
「こんなところで諦めない、諦めてたまるか!」
翔は叫びながら、強くそれを握り込む。
「決めたんだ、全部勝ち取るって!! 自分の命も人の命も、絶対に諦めないって!! だから!!」
瞬間、地上全体が輝くと、その光が柱のようになって真っ直ぐに翔とプレートを包み込む。
光に触れた瞬間、翔は理解した。ここにあるのは、人々の強い願いと、人間の自由を守るために戦い続けた仮面ライダーを支えたいという想い。
そして生命の光を浴びたブルースカイ・アドベンチャーは、金色に染まっていく。
《ブルースカイ・アドベンチャー!》
「これが僕の意志だ……僕が仮面ライダーだ!」
緩やかに落下しながらも起動し、翔はそれをアプリドライバーにセット。その場で電子音が鳴り響く。
《ユー・ガット・メイル! ユー・ガット・メイル!》
「変身!」
《
マテリアフォンをかざすと、今までのようにテクネイバーが現れる事はなく、翔の体へとアンダースーツと装甲が直接装備される。
両足から先に装甲が組み上がり、翔は右手をついて着地。その姿勢のまま、空へと大きく跳躍する。
そして完成したのは――。
《ブルースカイ・アプリ! 仮面ライダーアズール、インストール!》
「行くぞ……スペルビア!!」
銀色のマフラーをはためかせ、飛翔する仮面ライダーアズール ブルースカイリンカー。
その蒼い衝撃は、音さえも置き去りにして瞬く間にスペルビアの前に到達し、驚愕した彼の左頬を右拳で思い切り殴りつけた。
「ゴォアアアッ!?」
拳を受け、スペルビアは後方へと吹き飛ばされる。
しかし視線を殴った相手の方に向けた時、既にその姿は消えていた。
そして、背後からキックによる追撃。背を打たれ、赤き龍は悲鳴を上げる。
さらに再びアズールが正面に現れ、今度は腹部と胸、顎に膝と、力を使う暇もなく何度も何度も拳や蹴りが叩き込まれ続けた。
「ギエエエエエッ!? な、なんだ!? 何が起きている!? 貴様、なぜまだ生きているというんだ!?」
金色の光を纏うアズールは、その言葉を聞くと空中で静止してスペルビアと同じ視点に立つ。
「簡単な話だ。これが生きる者たち全ての、みんなの願いなんだ」
「ぐぅ……!!」
「どれだけ虫ケラと嘲ろうと、お前はそのちっぽけで儚い命にさえ勝てない!! 他人を巻き込んだ破滅を望むお前ほど、人間は弱くなんかないんだよ!!」
「黙れ……どこまでも不要で無用な……虫ケラ以下のゴミクズ如きが、この私を見下すなァァァッ!!」
「まだ分からないのか!! みんな、お前の作る終わりなんか何一つ認めていないんだよ!!」
力強く剣を振り下ろすスペルビアの一刀を、アズールセイバーが鍔迫り合いさえ許さずに斬り裂く。
そして、凄まじい速度から放たれた刺突の閃きが、スペルビアの胸を貫き大きな風穴を開けた。
痛みに身悶えしつつ、スペルビアは飛んで逃げるものの、今のアズールにはすぐに追いつかれてしまう。
落下しつつある島を背にするように追い込まれ、スペルビアは怒りを撒き散らす。
「ガァァァッ!? な、なぜだ!? なぜ勝てないィィィッ!?」
「そんなの当たり前だ。ここにあるのは、僕一人の願いだけじゃない……お前は今、この世界に生きる全ての命を相手にしているんだ!! 世界の破滅なんて、お前の独りよがりでデタラメな妄想だ!!」
堂々と言い放つアズールに、さしものスペルビアも言葉を詰まらせる。
ハッタリではないという事を、自分の身体で痛感したからだ。今のアズールは、人間や動植物を問わず、全ての生命のカタルシスエナジーを受け取り、それを余す事なく自身の力としている。
だが、スペルビアには未来確定の力がある。このまま戦わずとも、いずれは島が地に落ちるのは確定済み。
そうなればアズールが何をしようと、その時点で終わりなのだ。
「く、ククク……良い事を教えてやろう、仮面ライダー。もはや破滅の未来は既に決まっているのだ、誰にも覆せない」
「なに?」
「俺にはアクイラ様が持っていたのと同等の、未来を操る力を持っている! アレが落ちる事は確定事項だ、俺が消えたとしても何も変わらない! もう手遅れだ、諦めて死ね!」
高笑いしながら、スペルビアは言い放つ。
しかし、アズールに少しも動揺は見られなかった。
「それがどうした」
「なんだと? バカめ、貴様俺の言った事が分からんのか?」
「お前こそ何も分かってない」
剣の切っ先をスペルビアに向け、アズールは叫ぶ。
「人間には未来を変える力がある! お前のひとりの作るちっぽけな未来なんか、文字通り飛び越えられるんだ!」
「……傲慢な事を! 地球ごと滅びよ、人間!」
「それはこっちのセリフだ!!」
《フィニッシュコード!》
アズールがドライバーのプレートを押し込み、剣を投擲。
スペルビアの翼にアズールセイバーが深く突き刺さり、態勢を崩させる。
そして、アズールの背中に太陽のように黄金に煌めく大きな光の翼が形成された。
「あ、ぐ」
「他者との共存を拒み、命を滅ぼす事しかできないお前が!! この地球を消し去る事しかできないお前こそが、不要なんだ!!」
《
「この世から……失せろぉぉぉぉぉ!!」
《ブルースカイ・マテリアルインパルス!》
全身にエネルギーを纏って右脚を突き出し、真上に飛翔するアズール。
スペルビアが放出する黒炎を打ち破り、その必殺のライダーキックは龍のデジブレインの身体を穿つ。
そして、その先にある島を、スペルビアごと押し返す。
「が、あ……なんだと!? だ、だが俺の作る未来は……絶対だ!! 貴様には変えられん!!」
「そぉりゃああああああっ!!」
既に島は地上からは大きく引き離されているが、それでもアズールは上へ上へと昇って行く。
仮面ライダーアズールが持つ原初の力、飛行能力。当然ながら、それも極限まで高められているのだ。
「な、何ィ……貴様、何をする気だ!?」
「もっとだ、もっと遠くへ……!!」
直後、ドス黒く濁っていた大空に、ガラスが割れるような音と共に亀裂が走った。
地球とサイバー・ラインは一体化し楽土となっている。しかし、その外となればどうか? そして、この島がその楽土の外へと蹴り出されれば、どうなるのか?
デジブレインはサイバー・ラインの中以外では、ゲートなしで生きていけない。この島も現実世界では存在を維持できないだろう。
そして、スペルビアも例外ではない。
これこそが翔の狙い。島そのものが消失してしまえば、サイバー・ラインの外に出てしまえば、歪んだ未来など何の意味も持たないのだ。
「行っけぇぇぇぇぇっ!!」
「や、やめろォォォォォッギイイイアアアアアアアアアアッ!?」
偽りの空が割れ、砕け散る。
夜が明け空が青くなるように、本物の空の色が還って来る。
大気圏の外へと吹き飛ばされた浮遊島は、サラサラと砂のようにデータとなって分解され、消滅。
それと同時に、ブルースカイ・アドベンチャーの黄金の輝きが消え、アズールの纏う光も消失した。
だが、徐々に肉体が塵になりつつあるものの、スペルビアは未だに生きている。
「こ、のぉ……クソガキがァァァァァッ!! お前だけは必ず、必ず殺してやるウウウウウゥゥゥゥゥッ!!」
翼を動かし、拳に黒炎を纏って殴りかからんとするスペルビア。
しかしアズールもまた、変身が解けたワケではない。
《フィニッシュコード!》
「粉々になってしまえ」
《
空中でぐるりと反転し、再びアズールは足を突き出して蹴りつける。
ダメ押しのその一発を受けて悲鳴を上げながら、赤い龍はさらに先へと弾き飛ばされて行く。
そして、まるで地面に激突したかのように、木っ端微塵になって消滅するのであった。
「これでやっと、全部終わったんだ」
スペルビアが消えるのを見届けた後にそう呟いて、アズールは背後を振り向いた。
「帰らなきゃ……みんなのところへ。帰らな、きゃ……」
帝久乃市の街に向かって、空を仰ぎながら手を伸ばすアズール。
激しい死闘によって体力も気力も使い果たしたのか、ぐらりと腕が垂れ下がり、大地へと静かに落下していく――。
※ ※ ※ ※ ※
――それから。
それから時が経ち、4月。
Z.E.U.Sグループの社長室にて、二人の男が談合していた。
静間親子、鷹弘と鷲我だ。
「……というワケで鷹弘。アクイラという脅威がなくなった今、お前には社長になって貰うぞ」
肩に手を置かれ、鷹弘は引き攣った笑みで返す。
その明らかに緊張している顔を見た鷲我は、思わず吹き出してしまった。
「不安か? 今日この時が来るまでに、必要な事は全て教えて来たはずなのだが」
「そりゃ不安になるだろ。覚悟してなかったってんじゃねェが、いざこの日が来るとなると」
言って溜め息を吐きつつも、鷹弘は自らの左手の薬指で光る指輪に視線をやると、フッと笑みを見せる。
デジブレインは未だに全滅していない、Cytuberの残党や雲隠れしている久峰の一派もいる。謎の怪盗騒動も耳に届いている。しかし、それでも戦いにひとつの区切りはついた。
意を決した鷹弘は改めて陽子の両親に会いに行き、彼女との結婚の了承を得たのである。
「まァ、やるしかねェわな。アイツのためにも」
「そうだな。速く孫の顔も見たいものだ」
「気ィ速いわ親父……」
「フッ。それより次のホメオスタシスのリーダーだが、後任は決まったのか?」
問われると、鷹弘は強く頷く。
「響が戦闘部隊と兼任でリーダーになる、技術開発には鋼作を指名した。琴奈も、卒業したら本格的に入社してくれるってよ」
「頼もしい限りだな。そうだ、ついでに報告しておくと、肇がZ.E.U.Sグループの傘下として探偵社を立ち上げたぞ」
「ほォ、ンな事してたのか」
聞けば、肇の立ち上げた探偵社ではホメオスタシスとの連携も想定しており、各地のデジブレインのような怪人やそれらを利用する犯罪への調査・対処を行うのだという。
メンバーには浅黄や彩葉、それにアシュリィたち三姉妹も加わる。また、進駒も見習いとして活動したがっているようだ。
「みんな頑張ってんだな。英警視と安藤刑事も昇進したんだっけ」
鷹弘の言葉に、鷲我が首肯する。
警視正となった翠月は、電特課の名前を変えて新たな部署を作った。宗仁がそこの課長に就任し、共に活動している。
「あの戦いで我々が失ったものは多いが、それでもみんな前に進んでいる。安心したよ」
哀しげに微笑みながら鷲我が言い、窓から外を眺める。
「……ああ。そうだな」
鷹弘も、物憂げに目を細めた。
机の上では、かつて御種 文彦から譲り受けたプライミヴァル・クラスターのマテリアプレートが、電灯の光を反射していた。
そして、昼。
帝久乃市の繁華街で、大きな爆発が起きた。
「これがデジブレイン! 最高の力じゃないか!」
「派手に暴れてやるぜ! フハハハハハハ!」
元Cytuber、あるいは久峰の一派からガンブライザーとマテリアプレートを受け取ったと見られる若者たちが二人、暴れていた。
片方はアリのデジブレインで、もう片方はキリギリスのデジブレイン。破壊する事に喜びを感じているのか、ただひたすらに辺りを破壊し続けている。
人々は逃げ惑い、両親とはぐれてしまったらしい幼い男の子が恐怖に涙を流して助けを乞う。
だがそんな時、逃げる人々とは反対方向に歩いて来る者がふたりいた。ひとりは眼帯を付けた少年、もうひとりは銀髪の少女だ。
彼は子供の頭にポンポンと手を置き、安心させるように優しく声をかける。
「大丈夫。僕に任せて」
男の子が逃げて隠れるのを見届けると、彼は懐からマテリアフォンを取り出した。
「始業式が終わったかと思えばコレだ。本当にいい加減にして欲しいなぁ」
「大変だよね。帰りたいから、速く終わらせて」
「オッケー」
屈託のない笑みを見せ、少年は改めてデジブレインたちに向き直る。
「なんだぁお前らはぁ……?」
アリ型のデジブレインが首を傾げる。すると、マテリアフォンを操作した青年の身体にアプリドライバーが装着される。
《ブルースカイ・アドベンチャー!》
「仮面ライダーだ」
《ユー・ガット・メイル! ユー・ガット・メイル!》
「変身!」
そこに現れた戦士の姿を見ると、二体のデジブレインは目を剥いた。
銀色のマフラーをなびかせ、風を操って空を舞い、剣を携える青い戦士。
《
「命は奪わない、だけど君たちのやってる事は……止めさせて貰う!」
仮面ライダーアズール、天坂 翔。
彼は自らの意志で戦い抜き、人々の心と自由を護り続けるだろう。
今までも、そしてこれからも……。
――時代が望む時、仮面ライダーは必ず蘇る。
これまでご愛読、ありがとうございました。
仮面ライダーアズールの物語はこれにて終了とさせて頂きます。
しかし以前にも活動報告で申し上げた通り、いくらか外伝も投稿予定ですので、よろしければお付き合い下さい。
改めてもう一度、本当にありがとうございました!
※ ※ ※ ※ ※
「お前を塗り潰す色は決まった!」
次回作、仮面ライダームラサメ
2022年公開予定