「最近過労なのでお休みします」――――UMP45
とのことなので別のお話。シリアスをガタガタやってたらジャンルを疑われるので仕方ねえ、テンションジェットコースターいえー!
今回は没を拾った話にして、多分結構面白い方。
「え、マジで入るけど良いのか?」
じわりと頬から汗が滴った。緊迫感はドアノブのせいか、横目に映る笑顔の彼女のせいか。ともかく今の俺は簡単に言うと年甲斐もなく緊張していたのだ。
ニコニコとして言外の了承、というよりゴーサインを出すのはKar98k。いつもながらの笑顔には確かに寛容な姿勢が見て取れるが、だからといって俺も不用心に出来ることではない。
私室への入室、色めき立つ若者なら口にするだけでどよめく蠱惑のキーワードだな。俺は今、彼女の私室への入室を果たそうとしていたのである。
「さあさあ、遠慮なさらずに」
「ああうん。お前がそう言うなら良いけども…………」
嘘だ、俺だって抵抗は有る。
人形をあくまで機械と会計処理するグリフィンなのだが、意外なことにプライベートスペースには寛容だった。
I.O.P社製の彼女達は高性能かつ脆弱、な性質上は『維持費』が掛かるものなのだがどうしてだろう。家具、アクセサリー、嗜好品も場合によってしっかりと支給される。正しくは給料という自由資金の形だが。
減価償却し続ける彼女たちの部屋というのは――――――ああ、言い切ろう。「女の子の部屋」なのだ、決して機械の置き場所じゃない。Karならば例えば、大学生の女の子の私室に上がり込むのとかと同じと考えうる。
間違いない。俺はそんな断定に頭をくらくらさせつつ、へっぴり腰のままドアノブをくるりと回す。
「あの、謝ってくれるか」
さて、俺は絶句していた。何故か? いつも大概なラノベ展開に耐久してきた俺が溜息をつくなど、さぞ面倒事が起きたのだろうと思うかもしれないが当たりだ。
Karがキョトンと首を傾げる。人形のような顔立ちのせいでついつい可愛く思うが、今は其れどころじゃねえんだよ。
「…………? えっと、私は何かしたかしら?」
ああした、俺のただでさえ低いフラグ管理能力を悪用してフラグという鈍器で薙ぎに来たな。
散らかる本やアルバムは装丁が革である辺り、高級そうだが地面に生えるように散乱してちゃあ値段なりの威厳など持ち合わせない。一応ブラシだとか女の子らしい用品は存在したが、これも散乱してると逆効果なのはご存知の通り。
家具や物品の一つ一つの価値が読み取れるほど、その部屋はチープさを濃くしていた。高級品は手に余らせると逆効果を匂わせるもんだったらしい。
まあお分かり頂けただろう。彼女は――――――うん。
「いや、お前。これは俗に言う汚部屋だろ」
Kar98k。かつてドイツ軍で旧式ながら抜群の安定感と生産性で居座り続けた主力ライフル、イメージ上高貴で育ちが良い人形だと思う奴も多いかもな。
さよならエレガント、こんにちわ要保護幼女。分かってはいたが背丈はなくとも気品あるその上っ面はただの見掛け倒し、その実ただの生活能力ゼロの残念ミニチュアライフル人形だったというわけだ。
お前の取り柄は今日からモコモコでドイッチュなライフルって事だけだな。うん。
「掃除じゃ掃除じゃ! 貴様の汚部屋をお部屋に戻してくれる、敵は整理能力にあり!」
「汚部屋などと言わないでくださるかしら!? 全て配置に意味がありましてよ!?」
Karがアワアワと具体的施策をすることなく俺を制止する。
ええい辞めんか合法ロリお嬢様! 育ちの良さは外面でも持ち物でも無くて行動に表れてんだよ、一応羨望の眼差しを向けてる後輩に申し訳が立たんぞこれは!
「部屋が汚いやつはどいつもそう言うんだよ! 人を入れたいなら常識的な配置を覚えるんだな!」
別に個人の休息の場として汚いだの綺麗だのは宗教。俺も別にね、そこまで言う気はない。ただゴミが多くて異臭がするだとか、変な虫湧いたら公共の福祉ってやつに従うまでのことだ。
だがこのKarとかいうアホの子は俺を招いた。インヴァイトの上でこれだ、自覚までもないとなるとこの汚さは視覚公害、貴様は発生源! 世が世であるなら貴様など万死に値する!
まずは散らばった資料らしき紙を乱暴に集める、見てるだけで歯軋りしそうだ。
「ああ!? ちゃんと分けていましたのよ、グチャグチャにしないで頂戴!?」
「知るかよ!? 既にグチャグチャだしそもそも紙は這いつくばって探し出すもんじゃねえんだよ!」
何をどうしたら整理していると認識するんだねこれ。今どきNの方が部屋に統一性有るレベル。
パワープレイを敢行した俺になりふりなど構わぬと決断してしまったのだろう、Karは俺にのしかかってくる。物理的な妨害が重くなってきた、何がって物理的に重かったってことね。
「Karちゃん重い」
「お、重い!? 失礼よ指揮官さん!?」
だって重いんだもん! これを軽いと言えるのはイケメンなんかじゃねえ、筋肉モリモリマッチョマンの変態だ!
戦術人形は生体部品を使っているだけ有って、例えば胸とかお腹の感触は人間の其れだ。ああ、俺は焦る男じゃないぞ。
セックスアピールが出来るなんてI.O.P社は何がしたいんだ。民間用の流用だから、やっぱり「こだわり抜くことこそ親しみやすさなのさ!」なんてペルシカがノリノリで提唱したりした結果か? 待て、ペルシカってそういう仕事だったっけ。まあ良いや。
まあそれでもやっぱり人間の器官って結構凄いものらしい。機械とか技術で代用すると結構重いんだと。俺達ってスゲー!
――――――ええっと、それでKarはちょっと本格的に落ち込んだらしい。妙な所まで人間だよな君ら…………。
「ああー、でも何か良いヌイグルミみたいだ。やっぱのしかかって良いよ、人肌恋しい年齢だからな…………」
「何だか恥ずかしいからやめですやめっ!」
「ええ…………天邪鬼、寂しい男に慰めの一つぐらいだなぁ」
顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。精巧な表情の設定には思わずかのダ・ヴィンチもニッコリだろうが、作ったやつは本当に何を考えてるのだろう。人間らしさ、を追求したその真意は気にならなくもない。
ところで退いてくれたのまでは助かったのだが、無視して整理に戻った俺が面白くないのか。さながら気の向いた猫のごとくしきりに妨害が入るようになる。面倒な奴め。
俺の手を引っ張ったり体を揺すってきたり、耳元に息を吹きかけてきたり。子供かよお前は。
「辞めんかこの箱入り娘」
「べーっ!」
品性を疑う。なんて冗談は置いておいても、やはりこの娘が子供っぽいのは事実だろう。まあそれに同じことして返しちゃう俺も十分ガキなのかね?
視界を塞ぐ手やら何やらを払いつつガヤガヤ騒いで掃除に勤しんでいたが、そろそろKarの妨害にイライラとしてきたと言うか視界がグラグラしていて疲れてきた。
「マジで辞めて、酔う。吐く」
「手を止めれば議論の余地を与えましょう!」
ほーん、随分上からくるじゃねえかよテメエ…………。
「ほらほら、さっさと面倒なことはやめてしまいなさいな。偶には高い珈琲でも飲んでゆっくりしましょう?」
「――――ッ!? 『高い珈琲』だとッ!?」
俺は珈琲に眼が無いんだ、それはちょっと聞き逃がせない情報だ!
思わずガバリと振り向くとKarの不敵または勝ち誇ったような顔。コイツ俺が狂信者じみた珈琲野郎なのを知っててその話題を引き合いに出してきたってわけかよ!?
その笑顔がいつもの柔らかい、されど何処か陰りの濃い不穏なものに変わる。
「ええ。最近は嗜好品も高くなってしまったご時世ですが、私そういうものへの投資は疎かにしない事が信条ですのよ? 勿論、味は保証致しましょう」
な、何~~~ッ!?
Kar98kと言えば今でこそ要介護の合法ロリみたいな肩書をひっつけては見たが、確かに審美眼や舌の肥え具合には定評があるッ!
どんな料理にでも的確な評をし、しかも良い所と悪い所までシートで綺麗に渡すマメさ! 料理好きの人形からは太鼓判を押される人形界最大の美食家!
そのKar98kが『味を保証した』だと!?
「そ、掃除を諦めてしまえば…………掃除を放り投げれば……ほ…………ほんとに………その『珈琲』……を……飲ませてくれるのか?」
Karの口元は一層愉悦に釣り上がる。これではまるで悪魔の契約だ。
ゆっくりと、その細く白い指が俺の止まってしまった手を絡め取る。
「えぇ、約束致しますわ~。下らない『掃除』と、引き換えのギブアンドテイクです」
「ハリー…………ハリーッ!」
「――――――何ですってッ!」
ははは…………それは魅力的だ、大層魅力的な提案じゃあないか。
うんうん、俺もその珈琲とやらには勿論大いに興味関心を持っている。持っていますとも! 何ならそれに元値以上の金を懸けても良かった、なにせそれを見つけたお前の眼と舌にも俺は確かに報酬を支払うべきであるからだ。
だが、一つだけお前は見誤ったんだよ。Kar98k。
その手を払い、ガバリと振り向く。そう、その顔だよ! お前の『不意を突かれた表情』はそれを上回る価値を持った!
「この小野
「自分で強いと思ってるやつに」
「『NO』と断ってやる事なんだよォ……」
さて。締まらないのだが此処でニュースだ。
今思いっきり振り向いて手を握ったから、バランスを崩した。腰がグッキリ行っちゃいましてね? 痛い痛い痛い痛い!?
「あ腰がぁ!?」
「えぇ!? 締まりませんね、指揮官さんは!?」
しゃあねえよだってこれそういう作品だから!?
そのまま後ろに倒れ込むのにKarを巻き込んでしまう。俺達が倒れ込むのと同時に明細もしれぬ書類が舞い上がる、それはまるで紙吹雪だ。
――ご都合主義極まり、俺は見事押し倒される形になった。さっきも言ったが俺は大したことないのだがKarがぱちくりと俺を見て固まってしまう。これは…………面倒なやつだ。
「ええっと、退いてくれないか? Karちゃんの髪食っちゃうぞ俺」
「――――――えっ!? あ、その――――――」
あたふたあたふたと面白いぐらいにまごついている、真面目に髪食べちゃうよ俺。これは事故、俺は髪を嗅ぐ以外に変態チックな趣味はないはずだ。
終わらない逆サービスシーンに歯がゆい思いをしながら待機していると、Karの太ももの間から扉がノック、殆どノータイムで開かれ始めるのが目に映る。
あ、駄目だこれ終わった。Karがフリーズしてる、サヨナラ! 指揮官はしめやかに爆散した!
「あの…………Karさん? 大きな物音がしましたが――――――――」
どうやら隣の部屋のライフルの――――――声を聞くにはスプリングフィールド。誰が呼んだか春田ママ、皆頼りにしてる落ち着いた雰囲気のお姉さんのライフルだ。このモコモコドイツライフルみたいな似非じゃなくてマジのお姉さんな。
俺は声からしか状況を計り知れなかったのだが、しばらくスプリングフィールドのブーツが固まっていたのは確認できた。
「ええっと………………お、お邪魔でしたね? 失礼致しますッ!?」
「「誤解なんです!? これにはちゃんとした事情がぁッ!?」」
Karちゃんは馬鹿強いが私生活がどうしようもなくダメダメな感じ。
とはいえ能ある鷹はうんたらという奴で常に頭は回ってる。教養も有るが、無闇矢鱈に振りかざさない。然るべき場所に立てば遺憾なく披露するのだろう。
指揮官に関しては「大好き」、意味は想像にお任せします。
ちなみに俺の部屋は汚いです。Karちゃんには賛同します。母親が勝手に位置を移動してると逆に分からないのよな。
中盤滅茶苦茶にフザケました。小野也人は昔から使いまわしてる指揮官の名前です、アズレン二次とかでも出てきてますね。
最近BLEACHを一気観しようとしてるからオサレも取り入れたい。何というか、足りてないよね。
後どうでも良いんだけどアズレンのジャン・バールが井上麻里奈さんだそうなので実質グローザ姉貴。
という訳でこれ終わったらグローザ姐さんを書こうな!!!!!!!!!!!