KBSF   作:月見荘

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今回は特に京言葉を使ったセリフが多いのですが、その際に言い回し等のミスがあっても

(こいつここ間違えてやがる、プッw)

と温かい目で見守って下されば幸いです。難産の末、14話。



京女とお土産、あと頼み事

 自分は人付き合いの経験が同い年の人に比べて圧倒的に少ないと断言できる。今まで同級生とは基本的に一言二言程度のやり取りしかしたことが無いし、まともに会話したことのある人と言えば先代を除いたら輿水さんと小、中学校の担任の先生、そして辛うじて美城さんくらいだ。

 改めて自分の交友関係の狭さにビックリだけど、今の所は広げようとは思っていないのでそれは良い。ただ交友関係というのは自身で広げることは無くても広がることはあるらしい。自分は今現在隣を歩きながら朗らかな笑顔で世間話を振ってくれる小早川紗枝さんをチラリと見てそう思った。

 

 どうしてこんなことになったのかと簡単に説明すると、少し前に輿水さんから、先日のお祝いの飾り付けのお礼をしたいので今度の日曜日に紗枝さんが神直家にお邪魔してもいいか?と言う感じの内容がL〇NEで送られて来たのが発端でそれに対して自分は、ここまで来てもらうのも手間だし別にお礼何ていいよと返した。というか飾り付けをした事なんて既に記憶の彼方にあったのでその時は、あったねそんな事、程度にしか思ってなかった。

 それからしばらく間があって、輿水さんから別に手間では無いがそちらの都合が悪ければまた今度にするという風な返答を貰ったので、まぁ別に良いかと、お礼をしてくれると言うならせっかくだし受けとこうかと思った自分は、じゃあ来てくれても大丈夫ですと返事をした。

 

 そうして当日のお昼にやってきた小早川さんは京都名物の八つ橋と、今日来れなかった姫川さんの分のお土産(猫のキャラが焼印されたまんじゅう)を自分へと渡してくれた。

 

「お礼を言うのが遅なって、えらいすんまへんなぁ」

 

「輿水さんからライブに向けてのレッスンとかお仕事やらで忙しいと聞いていましたから、気にしないでください」

 

「そう言うてくれはるとありがたいなぁ」

 

 そう言って申し訳無さそうにする小早川さんだったけど、自分としてはあれは輿水さんにお願いされたからやったことであって、お礼をされる事なんて全く考えていなかったので、むしろわざわざ遠いところまでありがとうございますと逆に感謝したいくらいだった。

 ただ一つ疑問なのがさっき自分も言った通り小早川さんだって今日は忙しいはずなのに、なんでこのタイミングで遠いところまで足を伸ばしてまでお礼をしに来たのかが謎だった。

 

 お礼を渡されて、はいさようならと言うのもなんだか素っ気ない対応だなと思った自分は世間話のついでにとその疑問を口にしてみることにした。

 

「そういえばライブまでもう日も近いですけど、今日は小早川さんはお休みだったんですか?」

 

「そうどす。ちょっと無理言うてお休みをもろうて、ここに来させてもらいました」

 

「?」

 

 小早川さんから返ってきた答えに自分は首を傾げた。わざわざ今無理を言ってまでお礼に来なくても、ライブが終わった後にでも時間は取れなかったんだろうか。

 そんなことを思っていたらそれを察したのか、そもそも元々そう言うつもりだったのか小早川さんが少し真剣な表情になって口を開いた。

 

「神直はん、この後ちょっと時間を取れますやろか?」

 

 小早川さんの言葉に自分は面食らってしまった。その言い方だとまるで初めから自分に用があって来たみたいに聞こえたからだ。そもそも小早川さんと自分は前に346プロで会って軽いやり取りをした程度なので、無理言って休むほどの用事を作る仲でもない。まさか前に輪っかの飾り付けを披露した時に力がバレたとか、何かやらかしてしまったんだろうか?

 疑問は尽きないけどとにかく返答は早めにしないと、と思った自分は今日の予定を頭の中で素早く思い浮かべた。

 

 ゲームしてご飯食べて風呂入って寝る。以上。要するに暇人だった自分は快くゲームをするという予定を切り崩すことにした。

 

「はい、今日は他に予定も無いので大丈夫ですよ」

 

「えらいおおきになぁ。ほなちょっとその辺歩きましょうか」

 

 あ、外で話すのね。でもまぁさすがに自分の家の玄関先で立ち話っていうのも何だし、ましてやあまり知らない男の家に上がってもらうのもちょっとどうかと思うし、それなら歩きながら話した方がまだいいか。そう納得した自分はとりあえず貰ったお土産を一旦居間に置いて、また玄関へと戻って来た。

 

「じゃあ行きましょうか」

 

 そういった経緯があって小早川さんと自分は今現在隣に並んで外を歩いている訳だけど、その後特に何かある訳でもなくただ世間話が続いてるだけだった。輿水さんもかなり話しやすかったけど小早川さんも小早川さんで基本的に笑顔で自分の話に相槌を打ってくれるのでかなり話しやすかった。

 とは言えこのままだと何の進展も無い上に、結局お礼以外の目的が謎のままなので、仕方がないと思い自分から切り出すことにした。

 

「あの、小早川さんは自分に何か用があったんじゃないんですか?」

 

 話の流れをぶった切って自分はそう尋ねてみた。これで自分に用が無かったとなれば恥ずかしさで死ねるところだったけど、何か思うところがあったのか小早川さんはちょっとだけ困ったような表情を浮かべた。

 

「神直はんは、最近の幸子はんに何か変な事聞かれた覚えはないどすやろか?」

 

「変な事?」

 

「ぼくはかわいいやろか~とか、そんな感じのことなんやけど・・・」

 

「あー、ありますね」

 

「・・・やっぱりそうどすか」

 

「それがどうかしたんですか?」

 

 ちょっとニュアンスが違うけど、輿水さんのことを一度もカワイイと言った事が無いことを追求されたことならつい先日あった。特に隠すことでも無いだろうと素直に答えると、小早川さんは苦笑して困ったような表情を更に深くした。

 それにしても話が見えない。確かに輿水さんが自身がカワイイかどうか自分に聞いてきたのは初めてだったとは言え、それ自体そう珍しいことのように思えないんだけども。

 

「幸子はんはかわいいと言ってもらうことはあっても、かわいいかって聞くことは実はあんまりあらへんのよ」

 

「・・・そう言われてみればそうですね」

 

 なるほど、確かに基本的に輿水さんの中で"自分はカワイイ"ということが前提としてあるからそれを疑問に思うようなことは言わないはず。あの時は実質一択な聞き方だったとは言え、いつもの輿水さんならそんな回りくどい言い方じゃなくてもっとストレートに自分のことをカワイイと言うように迫ってきているはずだ。

 そう考えると小早川さんの言う通り"変な事"に当たる。だけど、輿水さんがどういう思いでそう尋ねたのかまでは分からなかった。ただ聞き方がいつもと違うね、くらいの感覚しか自分にはないけど、きっと小早川さんは輿水さんの心情を理解しているんだろう。

 

 小早川さんは表情を元に戻して、今度は思い出すように少しだけ視線を上へと向けて口を開いた。

 

「幸子はんが自分がかわいいか周りに聞き始めたんは、ほんのちょっと前からのことでなぁ。うちも友紀はんも驚いたんよ?あの幸子はんがそんなこと聞かはるなんて~って」

 

「そうなんですか」

 

 相槌を打ちながら自分はちょっとだけ小早川さんを羨ましく思った。改めてそう言われればその違和感に自分も気付くことが出来たけど、言われた当時は何も思うことが出来なかったから。小早川さんも姫川さんも輿水さんとの付き合いが長いっていうか、きっとよく見ているんだろう。

 まぁ輿水さんと自分なんてせいぜい三ヶ月程度の付き合いだから仕方ないと言えば仕方ない事なんだろうけど、何というかほんのちょっと負けた気分になる。

 

「それで友紀はんと幸子はんのことよう見とったら、なんや普段せんような顔でれっすんを受けてたんどす」

 

 自分的には逆にいつもどんな顔でレッスンを受けているのか気になるけど、ここは茶化す所じゃ無いから黙っておこう。

 

「多分やけど、不安やったんやろうなぁ」

 

「不安、ですか?」

 

 自分は思わず小早川さんに聞き返してしまった。不安なんて輿水さんとはまるで縁遠い言葉なんじゃないだろうか。なんて失礼な事を考えていると、小早川さんはくすくすと笑った。

 

「意外やった?」

 

「あ、いや!そんなことないですけど・・・!」

 

「構わへんよ。幸子はんはちょーっと気が強いところがあるさかい、そう思うても無理はあらしまへん」

 

ちょっと所じゃないと思うのは自分の気のせいだろうか。

 

「で、その不安っていうのは・・・」

 

「らいぶ、どすな」

 

「ですよね」

 

 途中から薄々そうなんじゃないかと思っていたけど、やっぱりそうだった。そもそも輿水さんが不安に感じるだろう要素が直近ではライブぐらいしか思いつかないから当たり前と言えば当たり前なんだけど。

 不安に思うってことはそれはつまりライブで失敗するかもしれないと思ってる訳で、あれだけ自身満々だった輿水さんでもやっぱり自分の晴れ舞台となるとやっぱり特別な物なんだろうな。

 

 でも、ちょっと待てよ?じゃあ輿水さんが自分にカワイイかどうかを聞いてきたのは自信が無かったから?その日朝から様子が変だったのもそのことで悩んでいたから?その時から避けられ始めたのはカワイイと言わなかったから?だとしたら自分が馬鹿すぎる。その事に気付けなかったのは百歩譲ってしょうがないにしても、せめて恥ずかしがらずにカワイイくらい言っとけば良かったのに・・・

 

「急に顔色悪なったけど、どないかしたん?」

 

「いえ、何でもないです・・・」

 

 突然の自分の落ち込み様に小早川さんは心配そうに声をかけてくれたけど、自分としてはそれどころじゃない。正直今からでも輿水さんに謝りに行きたい気分だ。あぁ、でもこの場合はカワイイと言いに行った方がいいのかな?いや、それはダメか。家まで押しかけていきなりカワイイって言い出すとかどんな不審者だよ・・・

 

 そうしてうんうんと悩み始めた自分に対して、小早川さんは歩みを少しだけ速めて自分の前に回り込んだ。

 

「悩んでる所悪いけど、ちょっとええやろか?」

 

「うお・・・!」

 

 意識を他に遣っていたせいで突然自分の前に出て止まった小早川さんに対して反応するのがちょっとだけ遅れてしまったけど、ギリギリ気付いて立ち止ったおかげで衝突だけは避けることが出来た。

 それでちょっとだけ責めるような視線を送ると、小早川さんは逆にニコリと笑って自分の視線を受け流してしまった。この人見た目によらず意外と強い。

 

「神直はんに頼みたい事があるんやけど、ええどすやろか?」

 

「頼みこと?」

 

「幸子はんを、応援してあげて欲しいんどす」

 

「え?あぁ、はい、まぁそれくらいなら」

 

 何かある意味今更な頼まれ事をされてしまった。というか、もしかして小早川さんはそれを言うためだけのためにわざわざここまで来たんだろうか?だとしたら凄いな、主に輿水さんが愛されてるな的な意味で。

 ただ気になったのが、輿水さんには自分の他にも友達が居る訳で、当然その中には自分よりも親しい人も居るはずなのに何で自分?飾り付けのお礼ついでなら分かるけど、何となくその線は薄い気がする。

 

「何でそれを頼もうと思ったんですか?」

 

 せっかくだから聞いとこうかと軽い感じで自分がそう尋ねると、小早川さんは良くぞ聞いてくれましたみたいな、ちょっと意地悪そうな表情をさっきから浮かべている笑顔に含ませてきた。

 

「実は幸子はん、事務所でよう神直はんのこと話してくれるんよ」

 

「うぇ!?」

 

「神直はんがらいぶのお祝いについて悩んではる顔がおもろい~とか、何時まで立っても女の子のえすこーとが上手くならへんから、仕方なく帰ってあげてる~とか」

 

「それってもしかして自分貶されてます?」

 

「神直はんもいけずな人やなぁ。ちゃーんと分かってはるくせに」

 

 そう言って左手を口元にあてて小早川さんは本当に楽しそうに笑った。ええ、分かってますとも。輿水さんがただ陰口を叩くような性格の持ち主でないことくらい。でもなんか自分の事を話されていたと知ってむず痒いやら恥ずかしいやらで誤魔化したくなっただけだ。

 

 それにしても応援かー。ただ言葉にするだけでもいいんだろうけど、ここは挽回するって意味でも何か特別なことをやりたいな。そう言えば輿水さんのために考えていたお祝いの第二候補があったな、それを使って・・・

 

「ふふ。その様子なら、なんも心配あらへんなぁ」

 

 また自分が深く考えこもうとしたところで小早川さんの声が聞こえてハッとなった。危ない、また他人の前で意識を別の所に移してしまうところだった。

 

「ほな、神直はんにも頼み事聞いてもろたし、うちはこの辺でお暇させてもらいまひょかー」

 

「何かすいません、気を使わせちゃったみたいで。帰りの道は分かりますか?何なら案内しますけど」

 

「構わへんよ。この道から駅に行けるさかい、気にせんでええよ」

 

「そうですか、分かりました。では、今日はありがとうございました。お土産、美味しくいただきますね」

 

「こちらこそおおきに。幸子はんのこと、お頼み申し上げます」

 

「はい!」

 

 自分の返事に満足してくれたのか、小早川さんはもう一度ニコリと笑って自分に対して軽くお辞儀をしてから、踵を返した。自分は小早川さんの背中が道の角を曲がるまで見送ると、同じ様に自分の家に向けて踵を返した。

 

 さて、これから色々と準備しないと。まず折り紙とパッチンを買って、あとあれの全体像が見える画像も探さないといけないな。

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