KBSF   作:月見荘

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遅くなりました!ごめんなさい!





迷子と観覧車、あとプレゼント

「初めて食べたけど、美味いなこれ」

 

 お化け屋敷を無事(?)に抜け出した自分達はお昼ご飯を取るためにお化け屋敷から程近い所にあるお店からケバブサンドをテイクアウトして、その辺に設置されていたベンチに腰かけて食べていた。

 ちなみに自分はケバブという物の存在自体知らなかったのでお店に行った際に櫛に刺された何かがクルクルと回っているのを見て新手のハチの巣料理かと一瞬本気で思ってしまったけど、そんな自分の様子に気が付いたのか輿水さんはあれはお肉ですよと得意気に説明をしてくれた。

 

 ただ、その後お店にケバブサンドを注文した時に店員さんが輿水さんの事をハチの巣の嬢ちゃんと笑いながら呼んでいたので、どうやら輿水さんも初見時は自分と同じ間違いをしていたみたいだ。輿水さんはアワアワしながら否定してたけど。それにしても輿水さんって一回ここに来たことにあるんだな。

 そんな短時間で高低差の激しい表情を見せてくれる輿水さんは今現在平常運転といった感じだ。だけど、自分がケバブサンドに美味しいと感想を漏らすとまたもや得意気な顔を見せてきた。

 

「なにせこのボクが奢ってあげたんですからね。美味しく感じるのは当然です!」

 

「あ~、うん、そうかもね」

 

「何ですか、その微妙な返事は。まさかとは思いますが、ボクの言う事を信じて無いんですか?」

 

 要するにあれだろうか、同じお握りでも家で一人で食べるのとクラスの皆で遠足で山に登って食べるのとでは感じ方が違うとか言うあれみたいな気の持ちようみたいな感じか。いや、まぁ自分は友達が居なかったから先生と食べてたけどさ。

 だとしたら自分でも分かるような、分からないような気がしたので曖昧な感じで返事をしておいた。ただ、輿水さん的にはその返事は不満だったみたいで、座った体勢のまま距離を詰めてきた。

 

 と、思ったら自分の持っていたケバブサンドに横からカブリと噛みつかれた。

 

「ちょっ!何やってんの!?」

 

 奢ってもらったものなので無断で奪われるのは別に構わないんだけど、まさか輿水さんがそんな行動に出るとは露程も思っていなかったので面喰ってしまった。そうこうしている内に輿水さんが自分から奪った物を飲み込んだらしく、やけに良い顔をこっちの方へ向けてきた。

 

「やっぱりボクの奢ってあげた方のは格別ですねぇ」

 

「奢った本人が食べても変わらないんじゃないの?」

 

「全く、分かってませんねぇ神直くんは。そんなに疑うなら今度自分で試してみたらどうですか?」

 

 そう言って何かを催促するかのようにこっちをチラチラと見る輿水さん。これは遠回しにまた今度自分に何か奢れって言ってるんだろうか?

 だとしたら自分としてもやぶさかではないし、何より奢ってあげた物を美味しいって言って食べてもらえたら普通に嬉しいだろうなとは思ったので自分は笑って答えた。ちなみに今回輿水さんが奢るハメになったのは自業自得だよねって言うツッコミは飲み込んでおいた。

 

「じゃあ、また今度機会があれば試させてもらうよ」

 

「フフーン。約束ですからね」

 

 未定とは言え次の予定を取り付けられたことに自分は内心嬉しく思いながら食事を再開しようとした。が、ふと目の前の歯型が付いたケバブサンドを見て自分の動きが止まった。よく考えてみたら今自分がこれに口を付けてしまっても良いんだろうか?

 自分が大丈夫かと確認の意味を込めて輿水さんの方に視線を飛ばしてみたけど、特に気にする様子も無ければ自分の視線にも気付いていないみたいだった。

 

 じゃあ大丈夫か。ちょっとした恥ずかしさはあるにはあるけど、向こうが気にしてないならこっちが意識するのも何だか馬鹿らしいしね。

 

「それで、お昼からはどこ回ろうか?」

 

 そういう訳で自分は特に気にせず食事を再開し始めた。あ、いや、すいません、嘘付きました。少し気にしてます。今後の予定を聞いたのも照れ隠しついでだ。

 

「そうですねぇ・・・あ、そう言えばここってジェットコースター・・・とお化け屋敷意外に何かありましたっけ?」

 

「・・・?」

 

 はて、輿水さんはここに一回来たことあるみたいだからここのアトラクションの内容を知ってるのかと思ったんだけどそうじゃなかったみたいだ。でも基本的にここって絶叫系がメインみたいな所もあるし、他のアトラクションは記憶に無くても無理は無いか。

 自分は少し疑問に思いながらも、気を取り直して空いていた方の手を使ってカバンから地図を引っ張り出してそれを輿水さんに渡した。その際にチラリと地図がほんの僅かに破れてしまっている部分が目に入ったのでついでに力を使って直しておいた。

 

 確認はしていないけど自分達の前を横切る人がわざわざこっちに目を向けるとも思えないし、万が一こっちを見ていたとしても今の自分の動作だけで紙をいじくったなんて誰にも分からないだろう。

 と、自分がそう思っていると地図を受け取った輿水さんが今日一番と言っていいほどのドヤ顔をこっちに向けてきた。

 

「フフーン。おそろしく早い修繕、ボクでなきゃ見逃してしまいますね」

 

 ・・・。

 

「じゃあ、うん、自分はちょっと水買ってくるから、輿水さんはここで地図見て待ってて」

 

「ねぇ、ちょっと、そんな露骨にボクを避けようとしなくてもいいんじゃないですか!?」

 

 こんな事ならお店の近くにあった自販機で買っとくべきだったな。いや、失敗失敗。自分は手に持っていたケバブサンドをベンチの上に置いて近くの自販機に向かって行った。

 そうして往復2分かけて(ちょっと遠かった)輿水さんの分を含めて2本のペットボトルの水を買って戻ってきてみると、何故だか泣いている小学校低学年くらいの女の子とそれを必死であやそうとしている輿水さんが自分の目に入った。

 

 何でこの子ちょっと目を離した隙に面倒事に巻き込まれてるんだろう。というか片手に持ったケバブサンドが邪魔ならベンチに置けばいいのに。専用の紙に包まれてるんだから汚れるってことは無いだろうし。自分は鼻から抜けるような溜息を吐いて二人に近づいた。

 

「ただいま。輿水さん、その子どうしたの?」

 

「それが、ついさっきこの子が泣きながらボクの目の前を通り過ぎようとしていたので、つい気になって引き留めたんです」

 

「なるほど。親御さんが見当たらないし、多分迷子だったのかもね」

 

「そうなんです。それで迷子センターに連れて行こうと思ったんですが、こう泣かれてしまっては何だか連れて行き辛くて・・・」

 

 そう言って輿水さんは女の子をチラリと見た。どうやら面倒事に巻き込まれた、というよりかは自ら背負いこんでしまったみたいだ。でもまぁどうあれ輿水さんが困っているなら自分が力になってあげるべきだろう、それがこの子の優しさから出た結果って言うんなら尚更だ。

 

「・・・それじゃ自分が何とかするよ」

 

「え?大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫、任せといて」

 

 少し心配そうな輿水さんに自分はそう言いつつサムズアップで答えた。って言っても子供を泣き止ませた経験何て一度も無いんですけどね!ただ幸いにして自分には子供が喜びそうな力を持っている。これを使えばまぁ何とかなるだろう。ならなかったら知らん。

 自分は両手に持っていたペットボトルをベンチに置いて女の子が背負っていたリュックに目を向けた。全体的に緑色で占められているけど、赤いリボンに喧嘩でも売ってそうな目と猫みたいな髭と口が描かれている所を見るにキャラクター物のリュックみたいだ。しかも自分も知ってるやつ。何回か気の弱そうな人とポッチャリ目な人が町を散策する番組で見かけたことがある。

 

 それじゃあこれをダシにしましょうか。自分は人知れず覚悟を決めて女の子の前に立って目線が合うように膝を曲げた。

 

「おは・・・こんにちは。お父さんとお母さんとはぐれちゃったの?」

 

「ひく・・・えぐ・・・」

 

 自分の質問に女の子は泣くばかりだったけど、受け答えはしようと思ったのか小さく頷いてくれた。話も聞けないくらい大泣きされてたら無理だったかもだけど、これならいけそうだ。

 

「そっか。じゃあ自分と、このお姉ちゃんが一緒にお父さんとお母さんを探してあげる」

 

 実際には迷子センターまで同行してそっから呼び出してもらうだけだけど、泣いてる子に細かいこと説明しても理解されなさそうなのでシンプルにしておきました。それでこれが功を奏したって訳じゃないだろうけど、女の子はほんの少しだけ泣き止んで自分に向けて、本当に?と訴えるような視線を向けた。

 よし、しっかりとこっちに目を向けている今がチャンスだ。自分はカバンの中に手を突っ込んで中に入っていたメモ帳から紙を2枚破り取って女の子の目の前に差し出した。

 

「でもその前に、今まで頑張ってお父さんとお母さんを探してた君にご褒美をあげよう」

 

 自分は差し出した手をもう片方の手で包んで、しばらくしてからカパリと開いた。するとあら不思議自分の手のひらの上にはぴ・・・ぴ・・・ぴーなコラッタが出来上がっていた。

 

「・・・!わ!わ!ぴにゃこら太が出てきた!」

 

 そうそう、確かそんな感じの名前でしたね。しかしまぁ改めて見るとこのキャラってそんなにカワイくないように思えるんだけど、この女の子にとってはそうでは無いらしい。よく考えたら好きでも無いキャラクターのリュックなんか背負わないわな。

 

「これもらってもいいの!?」

 

「そのために作ったからね。でも紙だから優しく触ってあげてね」

 

 表情を大雨から快晴へと音速で切り替えた女の子はキラキラした目をしてしゃぎつつも丁寧にぴにゃこら太を受け取った。

 

「ありがとうお兄ちゃん!でも、今のどうやったの?」

 

「ただの手品だよ。でもタネは教えられないんだ、ごめんね」

 

「お兄ちゃんってマジシャンなの?」

 

「うん」

 

「へー、そうなんだ!」

 

 この子の純粋さを利用しているようで気が引けたけど、だからと言って力の事は教えられないので手品ということにしておいた。一応見た目のインパクトを出すためにわざと目の前でぴにゃこら太を作って見せたけど、この子の喜び具合から察するに別に必要無かったっぽいな。ちょっと無駄なことをしたかもね。

 まぁ、何はともあれこの子の泣き止ませるっていう目的は達成したし、後の相手は輿水さんに任せるとしましょう。

 

「ちなみにこっちのお姉はアイドルだよ」

 

「え!ほんと!?」

 

「フフーン。本当です」

 

「わー!お姉ちゃん凄い!」

 

 自分が輿水さんの方を指差してそう言うと女の子はかなり嬉しそうに駆け寄っていった。輿水さんも輿水さんでアイドルと紹介されたのが満更でも無かったのか、自分の急なフリにも嫌な顔をせず、それどころか得意気な顔で女の子の対応を始めていた。

 しかしまぁこういう小さい女の子はアイドルとかにはやっぱり憧れるもんなんだろうか?自分のイメージでは女の子向けアニメとかにしか関心無いもんだと思ってたわ。

 

 楽しそうにお喋りする輿水さんと女の子を見ながら自分がそう考えていると、何故だか分からないけど二人の会話の流れに不穏な物を感じ取った。

 

「それにしても、本当にぴにゃこら太が好きなんですね」

 

「うん!だって世界一カワイイもん!」

 

 うおぅ・・・。世界一カワイイって、輿水さんにそれ言うとまずいんじゃ・・・。

 

「・・・た、確かにそうですね、ぴにゃこら太は、せ、世界一カワイイデスカラネ!」

 

 輿水さんすごい!大人の対応!よく耐えた!ちょっと体プルプルしてるけど!

 

「じゃあ、お父さんとお母さんを探しに行こうか」

 

「あ!そうだった!探しに行かなきゃ!」

 

「ちょっ・・・そんなに引っ張らなくても。って、お水とお昼!」

 

 輿水さんがちょっと不便だったのと話を本筋に戻すために自分がそう言うと、女の子は自分と輿水さんの手を引っ張って駆け出してしまった。

 ベンチに置いていたお水とお昼はかろうじて回収できました。

 

 

 

―――――――――――

 

 

―――――――

 

 

――――

 

 

 

 その後は女の子に翻弄されつつも迷子センターに送り届けて係りの人に両親を呼び出してもらい無事に引き取ってもらった。聞けばここから少し離れた場所にある子ども向けのエリアではぐれちゃったらしい。確かによく考えたら小学校低学年の子だったらこのエリアのアトラクションだと身長制限に引っかかっちゃうか。

 ちなみに何で両親が来るまで自分達が迷子センターに居たかと言うと、女の子が輿水さんと自分に一緒に居て欲しいと頼まれたからだ。おかげでいい時間になってしまったけど、女の子とその両親からお礼を貰ったから良しとする。ただ気になった点があるとすればそのお礼が観覧車の優待券だったことか。他にも何個か持ってたみたいなんだけどね。

 

 そんな訳で女の子と別れてから、アトラクションの順番待ちしている時間も無いしせっかくだからと現在観覧車に乗ってお互いに向かい合って座っていた。

 

「今日は色々あったけど、楽しかったね」

 

「何を当たり前の事を言ってるんですか。ボクと一緒に居れば何だって楽しくなりますよ!」

 

「うん、楽しくはあったね、楽しくは」

 

「な、何ですか、その含みのある言い方は」

 

「あはは、何でもないよ」

 

 それと同じくらい疲れたってことなんだけどね。主に肉体的な意味で。とは言えそんなことを言う訳にもいかないから自分は微妙な目を向けてくる輿水さんに乾いた笑いを持って返答しておいた。

 それで、えー、何か忘れてるような気がするんだけど、何だっけ?あ、そうか櫛だ。そう言えばまだ渡せてなかったんだ。せっかく今周りの目とかも気にしないでいいんだから今渡してしまおうか。

 

「あ、そうそう輿水さん」

 

「あ、あー、そう言えば神直君」

 

「ん?」

 

「え?」

 

 輿水さんに櫛を渡そうと自分が口を開くと、輿水さんの方も何か言いたいことがあったみたいでお互いにタイミングが被ってしまった。何て言うか自分にはほんの少しだけ間の悪い部分があるな。とりあえずここは輿水さんに先手を・・・

 

「あ~、そちらから先に話してください」

 

 譲ろうと思ってたら譲られた。まぁいいや後でも先でもあんまり変わらないし。

 

「そう?って言っても大したことじゃ・・・大したことだったわ」

 

「一体どっちなんですか?」

 

 ハードルを下げようと思ったけど大したこと無い呼ばわりだと輿水さんに失礼になってしまうから大したことに訂正した。一応これって輿水さんのデビューのお祝いだからね。自分はカバンの中からラッピングしてある櫛を取り出してそれを輿水さんへと手渡した。あ、そう言えばサプライズ演出とか考えて無かったけど、まぁいいや。

 

「はい、どうぞ」

 

「何ですか?これ?」

 

「ちょっと遅くなったけど、前に言ってたCDデビューのお祝い」

 

「え!?それってこのパッチン留めじゃ無かったんですか!?」

 

「それは何ていうか・・・応援の品?」

 

 あ~、何か催促されないなーって思ってたけど、輿水さんは自分がライブの日にあげたパッチン留めがお祝いの品だと勘違いしていたみたいだ。ってことはこれはこれでサプライズにはなってるのか。じゃあ結果オーライ!

 

「そうだったんですか。では、開けてみてもいいですか?」

 

「どうぞ」

 

 自分の許可を貰った輿水さんは包装に使っていたリボンを丁寧に外して中から櫛を取り出して自身の目の前まで持ち上げた。

 

「これって、櫛ですよね?でも、これってどこかで見たことある気が・・・」

 

「あー!実は神直家が贔屓にしてる櫛屋があるんだけどね!それはその店の櫛なんだ!」

 

「は、はぁ、なるほど」

 

 その櫛に関して余計な事を思い出されても非常に困るので、自分は聞かれてもいないことをベラベラと話して輿水さんの思考をカットしにかかった。輿水さんも自分のそんな思いを汲んで、というよりかは何故か必死な自分に気圧されたという感じで一旦櫛を包装紙の中に戻した。

 

「と、とにかくありがとうございます。早速今日から使わせていただきますね」

 

「うん。そうしてあげて」

 

 贈ったのはいいけど引き出しの中に眠らせられるっていうのはこっちとしても悲しいしね。是非とも使って欲しい。

 

「それで、輿水さんはさっきは何を言いかけたの?」

 

「ボクですか?それはですね・・・」

 

 じゃあ次はそっちの番だと自分がそう問いかけると、輿水さんは自身の言葉を切って急に真面目な表情になったかと思うとすくりと立ち上がった。一体急にどうしたんだと首をかしげていると、輿水さんはそのままの表情で前に出ると180度向きを変えて自分のすぐ真横に座った。

 な、何か近くないですか?昼間ベンチに座ってた時よりも近いんですけど。

 

「神直君に説教しようと思いまして」

 

「せ、説教!?」

 

 どうしよう、されるような事をした覚えが全くないぞ!え、何?自分何かしたっけ?って言うか説教するためにわざわざ自分の隣に?

 

「その顔・・・どうやら心当たりが無いみたいですね」

 

「えっと、その・・・あ!櫛を渡すときにサプライズ演出が無かったことか!」

 

「全然違います」

 

「えぇ~・・・じゃあなんだろう・・・」

 

 記憶を必死に辿どると唯一それっぽいのが見つかったのでそれを言ってみたんだけど、どうやら違ったらしい。そうして自分が改めて記憶を辿ろうと腕を組んだら輿水さんはわざとらしく溜息を吐いて、もういいですと言うと手で自分の顔を掴んで輿水さんの方へと強制的に向けさせられた。

 

「いいですか?さっき女の子と会った時に神直君が至らなかった部分が2点あります」

 

「は、はぁ」

 

 自分の顔から手を離した輿水さんは左手の指を2本立てて自分の目の前に差し出した。あれ?女の子と会った時って、自分何かやらかしたっけ?

 

「まず一つ目ですが、どうして女の子にわざわざ力を見せたんです?もしも女の子が両親に話していたらバレていた可能性もあるんですよ!」

 

「あ、はい、すいません」

 

 あ~、それね。言われてみれば確かにちょっと迂闊だったかも知れない。自分的にはあれくらいの年齢の子は力を見せてもマジシャンとか言ってれば納得するだろうって決めつけもあったし、結果的には力を見せなくてもぴにゃこら太だけを作ってあげてれば泣き止んでただろうしね。いや、でも意外にちゃんと自分の事を考えてくれてたんだな、輿水さんって。

 

「・・・ボク以外の人に力を見せないでくださいよ」

 

「そう言われてもせんだ・・・親にはしょっちゅう見せてるし、たまに入る仕事とかでも他人に見せてるしなぁ」

 

「って、な、何でボクの独り言を勝手に聞いてるんですか!?今の無し!今の無しです!」

 

 いや、そりゃあこんだけ近く居るなら仮に聞きたくなくても耳に入ってくるのは当たり前でしょう。自分が少しだけ呆れ気味に輿水さんを見ると、場を仕切り直すようにコホンと咳を吐いた。

 

「次に!女の子を泣き止ませた後、直ぐにボクに突然振りましたよね?」

 

「振ったね」

 

 あれ不満だったのか。輿水さんが受け入れ態勢万全で女の子を迎えてたから、てっきり大丈夫かと思ってた。もしかして女の子に見せないように我慢してたのか?だとしたらちょっと悪いことしたかな・・・。

 

「せっかく神直君の希少な頼りがいがあってカッコイイ場面だったのに、あれでは減点せざるを得ません」

 

 んん?

 

「・・・・輿水さん、もしかして自分の事褒めてくれてる?」

 

 ちょっと言い方的に判断に迷うところもあるけども!

 

「な、何を言ってるんですか。ボクは最初に説教をするって言ったでしょう?」

 

「あぁ、うん、そうだった。そうだったね」

 

「まったく、勘違いしないでもらいたいですね」

 

 本当に説教だとしたら自意識過剰で恥ずか死ぬ所だけど、これがもし輿水さん流に褒めてるんだったら何というか普通に嬉しい。当然自分自身褒められた経験はあるんだけど、友達に褒められると、何かこうこそばゆくて良いもんだね。思わずニヤついてしまいそうになる。実際に顔に出ると困るから我慢したけど。

 

「そういう訳で、次は減点されないように頑張って下さいね」

 

「はい、努力させていただきます」

 

 あくまでツンとした態度でいる輿水さんに自分は努めて真剣な顔でそう返した。そんな傍から見れば男の子が女の子に情けない姿を見せている捉えられかねないやり取りをしている内にどうやら観覧車が一周したらしく、ゴンドラの扉が開いた。

 

「ほら、神直君。早速カッコイイ所を見せる場面ですよ」

 

 さて、それじゃあ時間も時間だし後は帰るだけかと自分が下りようとしたところで輿水さんが試すようにそう言ってきた。でもこの場面でカッコイイ事って言っても何があるっけ?

 あ~、もしかしてあれか。何かかなり前にたまたま先代の持ってた少女漫画見た時にこういう場面あったけど、つまりはそう言う事なのかな?

 

 自分は多分そうだろうと予想して輿水さんよりもゴンドラから先に降りると、くるりと振り返って右手を差し出した。輿水さんは表情で正解、と語ると自分の手を(多分輿水さん的には)優雅に取って自身もゴンドラから降りた。

 いや、これカッコイイか!?ただただ恥ずかしいんだけど!

 

「フフーン。ま、及第点ですね」

 

 輿水さんもこんな事言ってるし!あ、でもこういう言い方の場合はそこそこいい線行ってたってことになるのかな?多分だけど。

 

「まぁ、なんにせよ合格は出来て良かったよ」

 

「この程度で満足されても困りますが、まぁ今日の所は許してあげましょう。ボクも色々とお世話になった部分もありますからね」

 

 あ、自覚はちゃんとあったんだ・・・。まぁいいや。

 

「それじゃあ、帰りろうか」

 

「そうですね。これ以上遅くなると両親が心配してしまいますしね」

 

 そうして自分達は片手だけを上げて伸びをして、家路に就いた。多分明日は筋肉痛だろうな・・・。

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