KBSF   作:月見荘

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書きたいことを詰め込んだらいつもより長く、唐突な場面展開が多く・・・ぐぬぬ。
そんな3話です。






自分とアイドル、あと修繕

 教科書の文字をいじったことによって輿水さんがまた芸人並みのオーバーリアクションをしてくれた以外はいつも通りに時間が進み現在は放課後。

 いつもなら自分は授業が終わればすぐにでも帰るけど今日はそういうわけにもいかない。さっきからこっちを恨めしそうに見ている輿水さんに諸々の説明をしなければならない。

 ちなみに教科書はちゃんと元に戻しました。

 

「あー、輿水さん。自分の都合で残ってもらってごめんね」

 

「かまいません。今日はオフですし、事務所に行く予定も無いですからね」

 

 オフ?事務所?あれ、もしかして輿水さんって本当に芸人なのかな。

 

「そうなんだ、それはちょうど良かった。じゃあこの後何か予定とかはある?」

 

「ありませんけど、どうしてですか?」

 

「いや、意外と教室に人残ってるからさ、ここじゃ説明するどころかばれちゃうから場所を変えようと思って」

 

 授業が終わったにも関わらず教室には生徒がまだ数人残っている。どうやら友人同士でおしゃべりしてるみたいだけど、わざわざ教室に残らなくても一度帰ってお昼食べてからまた集合でいいじゃん。

 

「そういえば輿水さんってお昼どうするの?それによってはご飯食べてから集合にするけど」

 

「特に予定はありませんね。今日は両親が忙しくてお昼が無いので、どこかで食べようかと思っていた所です」

 

 なるほど、そうなると都合はいいけど外食となると制服のままじゃちょっとよろしくないな。となると一旦帰ってから着替えてどこかでまた集合するっていのが一番いいか?

 あ、そうだ、自分の力を説明するなら家に来てもらうのがいいんじゃないか?仕事もあるし。

 

「じゃあ悪いけど自分の家まで来てもらっていいかな。お昼は途中でコンビニで買う、とかになるけど」

 

「別にいいですよ。それにしても意外と大胆ですね神直君は。今をときめくアイドル輿水幸子を家に誘うなんて!」

 

「え゛?輿水さんってアイドルなの?ごめん、芸人と思ってた」

 

「誰が芸人ですか!ボクを良く見てください、こんなにカワイイ子がアイドル以外何をやるっていうんですか?あ、いや、まぁボクにかかれば何でも出来ますけどね!」

 

 フフーンと言わんばかりに左手を立て親指を頬に当てて、右手でロングスカートをつまみちょっとだけたくし上げる輿水さん。非常に様になるポーズだけどめちゃくちゃ目立っているので今はやめて欲しい。

 

「でも、言われてみれば確かに輿水さんならアイドルやっててもおかしくないかもね」

 

「そうでしょう、そうでしょう。というか、ボクがアイドルだっていうことを知らなかったんですか?これでもテレビにだって出たことあるんですよ」

 

「まじで?それはすごいね!でも自分は歌番組とか見ないから輿水さんを見かけたことは無いや」

 

「うぇ!?そ・・・それはそのー・・・」

 

 突然なぜか俯いてしどろもどろになる輿水さん。自分が何か間違ったことでも言ってしまったのだろうか。もしかして歌番組じゃなかったとか?

 なんて考えて間違ったことを謝ろうと思っていると輿水さんが顔を上げた。

 

「しか・・・ないんです・・・」

 

「え?」

 

「ボクはバラエティしか出たことが無いんです!!」

 

「そうなんだ。バラエティもあんまり見ないっていうか、そもそも自分はテレビ自体あんまり見ないからなー」

 

 あはは、と申し訳なく笑うと意外そうにこちらに顔を向けてきた。自分の方が背が高いので輿水さんが上目遣いっぽくなってしまったのが若干かわいく思えたのでちょっと顔が赤くなってしまった。ちくしょう。

 

「えっと、馬鹿にしないんですか?」

 

「馬鹿にって、馬鹿にする要素が無いと思うんだけど」

 

 いくら歌って踊るのがアイドルだって言ってもバラエティくらい出るだろう。テレビをあんまり見ない自分にだってそれくらい分かる。あ、もしかして自分がさっき芸人と思ってたって言ったのが悪かったのか。

 とにかく、先代から女の子を悲しませるなと口すっぱく言われてるしとりあえずフォローしなければ。

 

「輿水さんがバラエティが嫌っていうなら何も言わないけどさ、一般人の自分からしたらテレビに出てるってこと自体がすごいと思えるよ。内容なんて関係無しにさ」

 

「え、あ・・・そうです!ボクはすごいんです!それにバラエティが嫌なんてとんでもないです。何事にも一生懸命に取り組むのがボクなんです。褒めてくれたっていいんですよ?」

 

「あ、うん、すごいよ、輿水さん。何がすごいって言うと、輿水さんがすごいってことがすごいよ」

 

「フフーン!そうです、もっとボクを褒めてください。褒めれば褒めるほどボクは伸びるんです。ちょっと褒め方が雑な気がしますけど!」

 

 そんなこと言われてもまさかちょっとフォローしただけでこんなに天狗になるとはだれも思わないだろう。今後輿水さんを褒める時はもうちょっと気をつけよう。今みたいに話が脱線しかねないし、なにより自分も含めてさっきより目立ってしまっている。

 

「じゃあ輿水さんがすごいって分かったとこで、そろそろ行こっか。お腹も空いてきたし」

 

「露骨に話題を変えてきましたね・・・まぁ、言われてみればもうこんな時間ですか」

 

 お互いに時計をちらりと見て机に掛けてあるカバンを自分は肩にかけ、輿水さんは手に持った。

 

「じゃあ先にコンビニに行こうか」

 

 そうしていつも一人で歩いている通学路を二人で逆戻りする。コンビニはその途中にあるのでお互いにお昼ご飯を購入。自分は適当にミートソースのパスタに梅のお握り一個で、輿水さんはどうやらパンを数個買うみたいだ。

 

「こっちの都合で付き合わせてるし、ここは自分が出すよ」

 

「いやいや、そんな悪いですよ。ボクは別に気にしてませんし」

 

「そう?ならいいけど」

 

「・・・神直君って意外と紳士なんですね」

 

「オヤノキョウイクガネ、ヨカッタンデスヨ」

 

 先代に女の子には余裕があれば奢れなんて言われていたので提案してみたけどどうやら違ったようだ。ここでグイグイいくのもどうかと思うので大人しく引いておく。

 そんなやり取りがあった後にいよいよ自分の家に向かったのはいいけど、我が家に到着した早々に輿水さんに驚かれた。

 

「神直君の実家ってこの神社だったんですか!?」

 

「そうだよ。お賽銭入れてく?」

 

「入れませんよ!同級生にお金を落とさせようとしないでください!」

 

「じゃあおみくじは引いていく?」

 

「引きませんよ!まぁボクならカワイイ以外あり得ませんけどね!」

 

「ごめんね、輿水さん、自分の家のおみくじに"カワイイ"は無いや。ちなみに母屋はこっち」

 

 何というか打てば響くというか、輿水さんは自分の話に何かしらのリアクションを必ず返してくれるので非常に話しやすい。きっと他の人ならこうはいかなかっただろう。妙な所で輿水さん感謝しつつ母屋へと回る。

 あとごめん神様、今日だけは帰りの挨拶を免除してやってください。

 

「ただいまー」

 

「お邪魔します」

 

 玄関で靴を脱ぎ輿水さんを居間へと案内し、居間のテーブルにお互い対面になるように座る。さてお互いに持っていたご飯を広げいざお昼となるわけだけど、とりあえずお昼と平行して力の説明をざっくらばんに説明しておくことにしよう。多少行儀が悪いのは目をつむってもらおう。

 

「輿水さん、食べながらでもいいから聞いてね」

 

「ふえ?ふぁい」

 

 自分はコンビニで買った時についてきたレシートを右手の人差し指と中指に挟んで輿水さんに見えるように自分の顔の前まで持ち上げた。

 パンを食べながらこちらを見る輿水さんが微妙に小動物に見えるのは気のせいだろうか。

 

「もうわかってると思うけど、自分・・・っていうか神直の性を拝命した人には特別な力が与えられる。こんな感じで」

 

 指で挟んだレシートに自分の力をかける。するとくたっと(こうべ)を垂れていたレシートがピンと何かに上からつままれているように姿勢を良くした。

 

「紙に書かれた文字を変化させたり動かしたり、逆に消したり。これは今日学校で見せたね」

 

 レシートに印刷されている文字の色を黒から赤や青に変化させ、くるくるとその場で回転させて見せる。そのまま文字を回転させながらフェードアウトさせると輿水さんの目が見開いた。

 こうやって驚かれるのは素直に嬉しい。

 

「で、これが紙の状態を元に戻すやつ。昨日見せたのがこの(たぐい)だね」

 

 今度はレシートをビリビリに破り右手を下に、左手を上からかぶせて両手で包みぎゅっと握る。その後覆っていた左手をどけると破る以前のレシートが顔を見せた。

 

「後は・・・形を変えるくらいかな。これは気に入ってるんだけど、あんまり役に立たないね」

 

 もう一度レシートを右手のみでぎゅっと握り開くと、キレイに折られた鶴が現れた。

 

「す・・・すごいですね」

 

 どうやら今のが輿水さん的には一番驚いたようで今日一番の目の開き具合だ。ついでに口も開いてる。自分もこれが力のなかで一番の自慢なのでその反応には非常に満足です。

 

「こんな感じかな。触れてなきゃだめって制限があるけど、逆に触れてさえいれば大体のことは出来るよ」

 

 レシートの形と文字を元に戻しお握りの包装と一緒にコンビニの袋に投げ込みお握りにかぶりつく。逆に輿水さんはパンから口を離している。

 

「そういえば今更ですけど、そんな重要そうなことをボクに教えて良かったんですか?」

 

「うん、このことは誰も知らない!って訳じゃないし、これで神直の人間は食ってるからね」

 

「食ってる・・・?お仕事をしてるってことですか?」

 

「そう。ちょっと待っててね」

 

 首を捻る輿水さんの疑問に答えるためにお握りをテーブルに置き席を立ち先代の部屋に向かい、部屋の隅にあるダンボールから今日修繕する予定だった手紙を取り出し居間に戻った自分はその手紙をテーブルの空いているスペースに広げた。

 

「なんだかずいぶん古い紙ですね。何ですか、これ」

 

「これはどこぞの武将が妻に送った手紙らしいよ。で、こことここ。文字が滲んだり破れたりしてるでしょ?それを直すのが神直の仕事」

 

「はぁ、なるほど。確かにそれなら神直君にふさわしい仕事といえますね。でもこれをいつもお一人でやるんですか?」

 

「ううん、いつもは先代・・・あー、自分のお母さんがやるけど今はちょっと居ないからね、自分がやることになってる。ちょっと面倒だけどね」

 

 こういった古い手紙は修繕の際に完全に新品にしちゃだめなのが面倒くさい。修繕箇所とその周りの劣化具合を見てそれに合わせるように修繕しなくちゃならないからだ。

 この後に待っている仕事にちょっと気分が下がりつつ、自分は手紙を丁寧に折りたたんで近場の棚に置いた。

 

「これで大体神直家のことは分かってもらえたと思うけど、実はこの力に関して重要なことが二つほどあるんだよね」

 

「まだあるんですか?」

 

「うん。まず一つは・・・これはお願いって感じかな。このことは誰にも話さないでねってこと。こっちからばらしといて悪いけどね」

 

「フフーン。こう見えてボクは約束事に関しては口が堅いですからね、それくらいなら楽勝ですよ」

 

 こう見えてって言っちゃうあたり自分が多少軽い性格ってことを自覚してるんだろうか。

 

「で、もう一つ。もし何か紙関係で困ったことがあったら力になるってこと」

 

「え?それってどういう・・・?」

 

「実は重要でもなんでもないんだけどね。ただアイドルとコネを持っていた方がいいかと思って」

 

 まぁそれは嘘で、ただ輿水さんと居るのが楽しかっただけだ。人との縁は持っておけ、それが特別に思えたなら猶更だ。とは先代の言である。

 

「それなら神直君はすごくいい人に目を付けましたね!ボクはアイドルの頂点にいずれ立つので、アイドル同士の繋がりなんてきっと縦横無尽に違いありません!なんなら最初にボクからサインをあげてもいいんですよ?」

 

「あ、うん、ありがとう、色紙が今無いからまた今度お願いするね」

 

 別にアイドルのサインが欲しくて縁を持ちたい訳じゃないんだけどね。

 明後日の方向に勘違いしてしまった輿水さんをよそに自分は今後のこの子との関係をちょっとだけワクワクするのだった。

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