でも幸子の一人称視点は難しすぎると判断したので地の文は三人称視点。
5話、以後精進します。
この日自称・超新星アイドル輿水幸子は非常に上機嫌であった。というのも、自身を担当するプロデューサーに来週の日曜日に事務所に来てくれと連絡を受けたのが先週のことで、当初彼女はバラエティ番組の打ち合わせかな?程度の認識でしかなかった。
それが覆ったのは本日の午前の事、いつものように特急電車に乗り込み山梨から東京までおおよそ3時間半かけ事務所へと向かい併設されているプロデューサーの部屋に到着した時だった。いつもであればデスクワークに勤しんでいるプロデューサーが一人居るばかりだが今日は何故かこの場に居ないはずの人物が二人居た。
一人目は姫川友紀。ロングの茶髪で既に成人を迎えた女性ではあるのだがどこか幼い雰囲気を持った女性だ。好きなものは野球観戦で、とりわけキャッツというプロの球団のファンであるためかよくオレンジ色のキャップや服を多用する。今日もその例に漏れずオレンジ色の服にキャッツのマスコットキャラであるねこっぴーの缶バッチが輝いている。
二人目は小早川紗枝。こちらもロングの髪型で黒く艶のある黒髪に着物姿も相まって大和撫子と呼ぶにふさわしい女性である。こちらは逆に本来の年齢よりやや大人に見られてしまう傾向があるが彼女はれっきとした高校1年生で、おっとりとした雰囲気とは裏腹に気が強い側面を持っていたりする。
そんな二人とは非常に仲が良くプライベートでも度々遊ぶ程であるが、それがこの場に居ることとは特に関係ない。他の共通点と言えば以前にゲスト出演したバラエティ番組で一緒になったくらいなのだが、もしかしてそれ関係だろうかと思い立つ。
それならば納得するところであるのだがそれにしては友紀も紗枝も妙にニヤニヤニコニコしていて更には後ろ手に何か隠している。とにかく考えていても仕方ない、疑問があるならば聞いてしまえばいいのだ。
「紗枝さん、友紀さん、プロデューサーさんもおはようございます。ところで、お二人ともどうしてここに?」
「おはよー。いや~それはねー・・・」
「おはようさんどす。うふふ」
「な、なんですか二人共ニヤニヤして・・・。ちょっとだけボク怖くなってきたんですが、まさかドッキリとかじゃないでしょうね?」
二人して意味深に笑うだけで幸子の疑問には答えないものだから幸子は辺りを見渡してカメラを探し出し始めた。以前に心霊系のドッキリを仕掛けられて以来やや警戒心が増えた幸子であったが、今に関してはドッキリでも無ければカメラも仕込まれていないため、その警戒心は意味をなしていない。
ちなみに次にドッキリを仕掛けられている頃にはそんな警戒心なんてすっかり無くなっており、いつも通りの反応を示すことになるがそれはまた未来のお話。
「おはようございます。幸子さん、ドッキリじゃなくて次の仕事の話ですよ」
いつまでも無意味な行為を続ける幸子にプロデューサーは苦笑いながら席を立ち紙束を手渡した。やや訝しく思いながらも手渡された紙束を見るとどうやらそれは企画書のようだ。タイトルは"輿水幸子CDデビュー&ミニLIVEについて"とある。
その瞬間幸子の目がこれでもかと見開かれ、次いで視線をプロデューサーの顔と企画書をもの凄い勢いで往復させた。それを見て友紀と紗枝は更に笑みを深くしプロデューサーもにっこりと笑った。
「こ・・・これ本当ですか!?まさかやっぱりドッキリじゃないですよね!?」
「だからドッキリじゃないですよ、本当のことです。立派なライブの仕事ですよ」
どうやらいきなり降って湧いた幸運に目の前の現実を認識していないが、プロデューサーの言葉でようやく信じたようで再び企画書に視線を落とす。
"輿水幸子CDデビュー&ミニLIVEについて"・・・なんていい響きだろう、これだけでご飯三杯、いや3日間は断食できる。と、実際に幸子が思っていたかどうかは定かではないがそれ程の歓喜が幸子の胸中に渦巻いたのは確かだ。というか嬉しすぎて胸中から溢れだした。
「来ました・・・ついに来ましたよ!ついにこのボクがデビューする日が来たんですね!世間にボクの可愛さを認識してもらう時が!」
「はい!今回のCDデビューは幸子さん、友紀さん、紗枝さんの三人同時となります。ミニライブの方も同様です」
「え?友紀さんも紗枝さんも一緒にですか?」
「そうそう、そうなんだよ。いや~あたしもそれ聞いたときはビックリしてさー、幸子ちゃんと同じでしばらく信じれなかったよ」
「せやなー、うちも一緒でしーでぃーでびゅーやみにらいぶー言われてしばらくキョトンとしてもうたわ」
二人は後ろ手に隠していた企画書を自身の前に出し恥ずかしそうに告げた。どうやら二人ともこの場に居るのは同じ理由からなようで企画書を隠していたのは幸子にも驚いてもらおうという魂胆だったのだろう。
「では、もう少し詳しく説明いたしますので座りましょうか」
その言葉で三人はプロデューサー部屋から退室し隣の部屋のソファーにプロデューサーと対面となるように腰を落とし、各々の持っている企画書をテーブルの上に展開した。
「では、まずCDデビューの方からですが・・・」
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「―――――と、こんなところでしょうか」
時間は飛んで現在昼をほんの少し過ぎて午後12時半。一通り説明を終えたところでプロデューサーは多少散乱した企画書を纏め一息着いた。三人も同じように企画書に落としていた視線を上げ時計をちらりと見た。
「あ、もうこんな時間か」
「もうお昼過ぎとったんやなぁ。集中してて全然気づかんかったわ」
「そう言われるとちょっとお腹が空いてきましたね。そろそろお昼にしませんか?」
「いいね、そうしよう!どうせなら下のちょっとお高いカフェでお昼にしよっか。プロデューサーの奢りで!」
幸子の提案に思いついたとばかりに友紀がたかるも彼は嫌な顔をせず財布を取り出した。
「では、前祝いということで。私は少し仕事があるから行けないので、皆さんで行ってきて下さい」
「プロデューサーはん、太っ腹やわぁ」
「まぁそのくらいでなければボクのプロデューサーは務まりませんからね」
いくらかのお金を代表して友紀が受け取り、三人は広場にあるカフェへと向かうため事務所を退室しエレベーターに乗り込んだ。未だに興奮冷めやらぬ三人の話題と言えば先ほどの仕事の話となるわけで、和気藹々として語り合った。
「いやー、それにしてもまさかこの三人で一緒にデビューなんて夢にも思わなかったよ」
「せやなぁ、うちら一緒にばらえてぃのお仕事はさせてもらうことはあっても歌のお仕事なんて無かったさかいなぁ」
「ま、ボクはいつか来るとは思ってましたけど。むしろ遅いくらいですね!ようやくボクのカワイさが広がり始めましたか、といった感じですよ」
いつも通り大げさな幸子節が炸裂するが友紀も紗枝もただ笑みを柔らかくして幸子の頭に手を乗せて撫でるだけだ。きっとこの中で一番喜んでいるのはこの子なのだと二人の心遣いが見て取れる。
実際に以前から一番強くプロデューサーに歌の仕事を熱望していたのは幸子で、友紀や紗枝以外の事務所の面々にもたびたび目撃されている。
当然ながら、今までの仕事に文句も無ければこれからもバラエティでも何でも一生懸命にやる所存ではあるが、やはりアイドルの本分を果たせる歌って踊れる仕事というのはまた格別なのだろう。
その証拠にエレベーターを降り建物の外に出た幸子の笑みはそれはもう太陽のようであった。むしろこの世はボクが照らしているんですと言わんばかりである。
「フフーン、友紀さん、紗枝さん、どうしてこの世が明るいが知ってますか?それはこの世で一番カワイイボクがそのカワイさで照らしているからですよ!」
「それは無いと思うなぁ」
「それはありまへんなー」
実際に言った。ついでにお二人からツッコミを頂戴してしまった。
「そんなこと言って、今から夜になってもボクは知りませんよ!」
「この世を照らしてなくても幸子ちゃんはカワイイよ」
「幸子はんがカワイイから、うちらの心も晴れ模様・・・あら?」
「ちょっと紗枝さん、最後までボクを褒めて下さい!」
幸子が突然言葉を切った紗枝の方へ向くと彼女は自分のほうではなく別の場所を見ていた。具体的に言うと今向かっているカフェのテラス席の隅の方だ。
はて、そこには何があるのだろうと疑問に思った幸子と友紀がそちらへ視線を遣るとそこには椅子に座っている、というかもはや腰で乗ってるだろレベルでだらんと背もたれに背を預け、更に顔の上に店から出してもらったと思われるおしぼりを乗っけている男の人(推定)が居た。
「なんか変な人が居るね」
「お仕事でお疲れのさらりーまんの方やろか?」
「それにしては何て言うか私服だし、背も小さい気がするけどね。それになんていうか・・・」
「髪、綺麗な子やなぁ」
友紀が言いよどむがその理由を紗枝は察する。そう、この不審者風の男の人はなんか髪がめっちゃキレイだった。
三人の立ち位置でも分かる程の髪のツヤは太陽の光を存分に反射し天使の輪にふさわしい輝きを生み出し、重力によって垂れ下がる髪の毛の一本一本が非常に真っ直ぐで髪同士の絡まりなんて一切無いように見える。もし本当に世界が嫉妬する髪があるとすればきっとあの髪のことを差すのだろう。
一瞬微妙な空気が二人の間に流れるが気にする程のことではないと(正直気になるが)カフェの店内へと歩き出したが、何故か幸子は立ち止ったままだった。
どうしたんだろう、もしかして本当にあの髪に嫉妬したの?と困惑していると、あろうことか幸子はその男の人の方へ歩いて行った。すわ!ケンカか!?と勘違いした友紀は幸子の方へ駆け出したが、呆然としすぎて反応がかなり遅くなってしまったために幸子の方が一歩早く男の人にたどり着いてしまった。
ヤバイと思い友紀と紗枝はハラハラしたがそんな二人の思いとは裏腹に幸子はその男の人の肩をポンポンと優しく叩いた。
「あの、もしかして神直君ですか?」
「へ?」
「あら?」
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ちょっと真面目な後書きでも(多少長いので興味が無い方はすっ飛ばしてください)。
地の文が長くなるようなら分割した方が見やすいかなと思い、今回ある程度の文字数で改行しております。今後もこのスタイルで行く予定ですが、これ以前の話の地の文の改行に関しては申し訳ありませんが後回しにいたします。
以後は記載のスタイルは意見が無い限り変えないようにいたします。自分が読みやすいかなと思ったものでも読者にとってはそうでなかったら意味無しなので。
ちなみに「それ前書きに書くもんじゃないの?」と思った方、その通りです。はい。