やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
~エリスside~
八幡さんを異世界へ転生させた後、私はアクア様の後任として此処へやって来た死者の方々に選択をさせ、現世に転生させたり、天国へと案内したり、特典を一つ持たせて異世界へと誘った。
そんなある日の事‥‥
「ふぅ~今日の分の仕事はこれで終わり‥っと‥‥」
今日予定された死者の案件を全部片付けたと思ったら、また新たに三人の死者がやって来た。
「あれ?今日はもう終わりだと思ったのに‥‥?」
私は予定帳を開くとそこには『イレギュラーにより、三人追加』と書かれていた。
「うそっ!?」
今日のお仕事が終わったから、後はお風呂に入って食事でもしてゆっくりしようと思っていたのにまさかのイレギュラーで死者が三人追加された。
私はこのイレギュラーの原因を調べてみると、イレギュラーの原因は先日異世界へと転生させた八幡さんが原因と書かれていた。
八幡さんが自殺してしまった事により、本来のその世界の歴史が狂い、その反動による修正力としてリセットされるような形で今回の三人は死亡したみたいだ。
さらに調べてみると、この三人は八幡さんの自殺の原因の一因でもある人達だった。
女神の私が言うのもなんであるが、天罰でも下ったんじゃないかと思った。
そして、私は女神の仕事として三人と対面した。
三人は当初、自分達が死んだ事を理解せずに、私が誘拐してきたのだと思っていた。
誰が貴方達の様な人間を誘拐するか。
女神としてちょっと心外な気分だった。
私はその三人のプロフィールを確認する。
まず、最初の死者、雪ノ下雪乃さん。
小学校時代の虐めと姉の雪ノ下陽乃と言う存在から、この人も八幡さんとは別の意味で性格が捻くれて、友達が居ない。
その癖、実家が金持ちである事、女性として容姿が整っている事(ただし胸が無い)、そしてそれなりに学力が優秀なせいで、プライドだけが高く、選民意識が強い。
彼女のこれまでの経歴を見ると、自分の才能を示すのに実績ではなく弁舌をもってし、しかも他者をおとしめて自分を偉く見せようとする。
でも、自分で思っているほど才能などないし、ついでに体力もない。
彼女が学問以外で、無能であると理解出来るのは、文化祭、修学旅行やクリスマスイベントを始めとした、奉仕部のこれまでの依頼を見れば火を見るよりも明らかだった。
そんな人が世界を変える?
人を助ける?
馬鹿馬鹿しい妄想だ。
外見は高校生になっても精神は小学生で止まっているのではないだろうか?
それに逃げる事が悪い様に言っているが、貴女自身、小学校時代に虐めを苦にアメリカへと逃げている。
嘘や欺瞞を嫌っているくせに、貴女は最初、八幡さんの事を知らないと言う嘘を彼の前で平然とついている。
それも自身が関係した事故を隠す為にだ。
その行為だって貴女の嫌う『逃げ』ではないだろうか?
次に由比ヶ浜結衣さん。
こちらも雪ノ下さんと同じ八幡さんが被害者となった事故の関係者‥‥
愛犬を助けてもらったのにお礼や謝罪を一年間も言わず、彼の言動に対して一々『キモい』などと罵倒する。
そして部活動での行動‥依頼への向き合い方に関しても彼女はあまりにも雑で常に他人まかせになっている。
自分自身の依頼に関しても、一度でも自分で作ろうとせずいきなり作り方を教えて下さいってちょっと図々しいし、雪ノ下さんも彼女の依頼は本来の奉仕部の方針ではない事に気づいていない。
しかも家庭科室を借りてクッキーを作った後、その後片付けをしないで帰っている。
文化祭、そして修学旅行を見ても、
『あたしは依頼を引き受けるけど、解決するのは無理だから何もしない。だから、あたしは何もしないでヒッキー(八幡さん)に全部任せる。ただし、失敗したらヒッキー(八幡さん)の責任、成功したら依頼を引き受けたあたしの手柄』
を体現した様なモノだ。
それなのに、「もっと人の気持ちを考えてよ」‥‥ふざけているのか?
じゃあ、貴女は毎回罵倒されている八幡さんの気持ちを考えたんですか?
告白される海老名さんの気持ちを考えたんですか?
貴女こそ、もっと人の気持ちを考えるべきなんじゃないんですか?
八幡さんに好意を抱いているみたいだけど、それは違う。
貴女は愛犬を助けてもらった八幡さんに好意を抱いた自分自身に好意を抱き、それに酔っていたにすぎない。
でなければ常日頃から彼を罵倒なんてしない。
仮に世間で言うツンデレだと言うのであれば、修学旅行の時、何故彼の事を信じてやれずに拒絶した?
彼を拒絶し、周囲から悪意に晒されている彼を助けなかった時点で、貴女は最初から八幡さんに対して好意なんて抱いていなかったのは明白だ。
そして最後、葉山隼人さん。
雪乃さんが捻くれる原因となった切っ掛けの一人であり、八幡さんの自殺の元凶とも言える人物。
普段は『みんな仲良く』と口では言っているが、実際の彼の行動は『長い物には巻かれろ』 『小の虫を殺して大の虫を助ける』であり、口で言っている事と行動が正反対だ。
雪ノ下さん同様、他者を利用し、自分を偉く見せようとするが彼自身は人としての魅力は全て張りぼてで、自分で思っているほど才能なんてほとんどない。
それは、八幡さんはもとより雪ノ下さん以下だ。
だからこそ、自分のグループ内の揉め事を解決できずに、奉仕部を‥いえ、八幡さんを利用することにして責任も何もかも全てを丸投げした。
それなのに彼を助けるどころか彼を貶める側に回った。
こんな人が弁護士になったところで成功しただろうか?
ましてや人の名前を毎回わざと間違えて呼んでいる様な失礼な人だ。
彼のこれまでの奉仕部への依頼や学校生活を見ても、弁護士となった彼自身、依頼を受けてもその依頼が、解決困難、もしくは解決不能と悟った途端、依頼を一方的に放棄するか他所の弁護士に何もかも丸投げして依頼から逃げそうだ。
弁護士は信頼が一番な職業なのに‥‥
彼がこうして弁護士にならずにイレギュラーで死んだのはある意味、あの世界にとって良かったのかもしれない。
女神ゆえに、個人的感情で人を裁くことは許されない。
私は怒りをグッと抑え、三人に普段通り三つの選択肢を選ばせた。
一つ目の選択肢‥記憶を失い、もう一度前の世界と同じ世界に転生する。
この選択肢については、前の家、日本人で転生できる保証がないことから三人は却下した。
二つ目の選択肢‥天国へ行く。
八幡さんと違い、自殺ではなくイレギュラーな出来事で命を落とした三人には賽の河原でのお勤めは無しで、希望すれば天国へと行ける。
しかし、天国の実態を知ると三人は二つ目の選択肢も却下した。
残る選択肢‥特典を一つ持って異世界へと転生する。
三つの選択肢を聞いて一番マシなのがコレだと言う事で三人は三つの選択肢を選んだ。
まずは転生する異世界を選んでもらう。
アクア様なら、あの異世界へ問答無用で転生させていただろう。
雪ノ下さんはリアリストで魔法が存在する世界に対しては苦手意識を抱いていた。
葉山さんと由比ヶ浜さんは雪ノ下さんが行く世界ならと言って同じ世界を選択するつもりだった。
全く、自分の意志と言うモノは無いのだろうか?
雪ノ下さんはなるべく前の世界に近い世界を選択肢に入れていた。
そして、何の因果か因縁か雪ノ下さんが選んだ異世界は先日、八幡さんが転生した世界であった。
公平中立の為、三人が選んだ世界を拒否する事も八幡さんの事も教える事が出来ない。
私にはその世界へ三人を転生者として送る事しか出来ない。
そして、転生特典について、まず由比ヶ浜さんは次に転生する世界では前の世界よりも頭を良くしてくれと言う。
確かに由比ヶ浜さんの知能の数値を見ると、同年代の高校生と比べると平均以下の数値だ。
これでよく進学校である総武高校に入れたのか不思議であるが、実際彼女はギリギリで補欠合格枠で合格し、運よく入学辞退者が居た事で総武高校に入れた。
一年の時も留年ギリギリの成績であったが、補習によって何とか進学する事が出来た。
そんな経験をしているのであれば、次の世界では前の世界よりも頭を良くしてくれと言うのも頷ける。
しかし頭を良くしてくれとは言ってもそれはあまりにも漠然とした内容だ。
せめてどのくらいのレベルなのかぐらいは教えてもらいたい。
なので、私は次の世界では由比ヶ浜さんの知能を平均値まで引き上げておいた。
今後、どうなるのかは由比ヶ浜さんの努力次第だ。
何もしなければまた前世の様に知能は下がるし、努力すれば上がる。
次に雪ノ下さんの特典は、特典と言うよりも願いだった。
それは次に転生する世界で姉である雪ノ下陽乃さんの存在を無かった事にしてくれという。
前の世界では雪ノ下さんは姉である陽乃さんに対してかなりの対抗心やコンプレックスを抱いていた。
雪ノ下さんにとって陽乃さんの存在が無ければ恐らく自分にとって都合が良いと思ったのでしょう。
今回のこの機会は彼女にとって合法的に邪魔な存在である陽乃さんを消す事の出来る絶好の機会ですからね。
でも、陽乃さんの存在を消しただけで、はたして次の世界は貴女の都合のいい世界になるとは言い切れませんよ。
私は雪ノ下さんの願いを叶え、次の世界では雪ノ下陽乃と言う人物は存在せず、雪ノ下さんは次の世界では雪ノ下家の長女として生を受けるように設定を変更した。
雪ノ下さん、由比ヶ浜さんがそれぞれ特典を述べ、ソレを叶えると、後は葉山さんだけとなった。
しかし、葉山さんは先に雪ノ下さんと由比ヶ浜さんに転生する様に伝える。
そして二人が転生したのを確認すると私に自分達が死んだ後の事を教えてくれと言ってきた。
雪ノ下さんは知りたくもないと言っていたが彼はどうも気になる様だ。
そして私は彼のお望み通り、彼らが死んだ後の世界の光景を見せてあげた。
彼にとって自分の死も美化されている事を期待でもしたのだろうが、結果は180度異なっていた。
三人の死が知らされてから数日後、葉山さんの元グループメンバーの告発からあの修学旅行の真相が広まり、葉山さんの評判は地に落ちた。
その映像を彼は苦虫を嚙み潰したように顔を歪めて見ている。
でもこれは全て貴方の身から出た錆ではないだろうか?
八幡さんを利用せずに自分の力で何とかすれば、死ぬこともなかったのだから‥‥
そして、彼は特典として八幡さんの存在の消失を希望してきた。
彼のその願いは、結果的に八幡さんへ負けを認めた現れだろう。
もっとも本人は絶対にそれを認めないだろうけど‥‥
でも、あの世界には八幡さんは比企谷八幡として存在はしていない。
よってあの世界には比企谷八幡なる人物は、存在していない。
しかし、比企谷夫妻は存在している事になっている。
あの夫妻が存在していては今後、あの世界にはあの世界の八幡さんが存在する可能性もある。
映像越しであるが、あの夫妻や妹はこれまで八幡さんをないがしろにして来た。
転生した八幡さんが何らかのきっかけで日本へと行き、比企谷夫妻やあの世界に生まれた八幡さん自身、妹の小町さんと出会ったら前世の辛い出来事を思い出してしまうかもしれない。
彼の願いを叶えるのは正直に言って癪にさわるが、八幡さんの事を思うのであれば、やはり彼の願いを実行した方が良いのかもしれない。
私は彼の願いを叶えて、あの世界における比企谷夫妻の存在を消した。
比企谷夫妻が消えればあの世界では比企谷八幡と言う人物は存在せず、また妹の比企谷小町と言う人物も存在しない。
彼の願いを叶えた後、私は彼をあの世界へと送った。
なるほど、八幡さんがあの世界の比企谷夫妻ではなく、ドイツのラングレー・碇夫妻の間に生まれたのはコレが原因だったわけか‥‥
でも、八幡さんは日本ではなくドイツに生まれたのだが、私の不安は拭いきれなかった。
あの世界は海運の世界。
そして転生者は必ずその世界の主流に関係する事になっている。
つまり、あの世界に転生した八幡さんも先程の三人も海運に関わる運命‥‥
そうなれば、八幡さんはあの三人に出会い、また傷つくかもしれない。
例え性別、容姿が変わっても八幡さんの心に刻まれたあの三人から受けた仕打ちはきっと忘れなれないだろう。
それなら‥‥
私は八幡さんを影ながらサポートすることにした。
アクア様が連れて行かれたあの世界における持ち主がいなくなってしまった神器の回収という役割があるが、それはそれで何とかなるだろう。
そして、私は八幡さんが転生した世界へと赴き、彼‥いや、彼女の友となり、八幡さんを支えることにした‥‥
中等教育における海洋学校の受験を無事に終えたシュテル、ユーリ、クリスは合否の結果が出るまでの短い休みの期間、三人でキャンプへと出かけた。
足は当然、シュテルのケッテンクラートだ。
ケッテンクラートの最高速度は70km/hに設計されていたが、騒音が酷いこともあり実用上の速度域は50km/hとなっていた。
ドイツの公道をそのケッテンクラートで実用上の最大速度域である50km/hで走らせているシュテル。
しかし、皆でキャンプへ行くと言うのにシュテルの顔はやや不機嫌そうだった。
その訳は‥‥
「あぁーどっかのバカがねぇ。先に飯を食おうなんてことを言うからだよぉ。そうだろぉ?」
「あぁ~うん」
「そうだねぇ~」
荷台の上のユーリとクリスは苦笑しながら答える。
「どっかのバカひとりとは言わないよ。バカふたりがメシだ、メシだ、メシだ、と騒ぎ立ててもう夕方だよ」
「いやー、これはどうだろうなぁ、運転手のシュテルンの落ち度じゃないのかなぁ~?」
クリスがからかうように言う。
「なんだとぉ!?」
ハンドルを握りながら思わず声を荒げるシュテル。
「いくらキャンプと言ってもそこら辺の道端でテントを張る野宿だけは勘弁だよ、シュテルン」
ユーリがいくらキャンプでも流石に道端での野宿は勘弁だと言う。
「何言ってんだよ、こっちはキャンプ場に着いてから昼飯を食べようと言ったのに『先に飯を食わせろ』っつったのはどこのバカだよぉ」
「それはどこかの貴族様でしょう」
「私は別に道端でもいいよぉ~」
「シュテルン、私はねぇ、この休みが少しでも盛り上がればと思って、『先に食事をしよう』と‥‥」
「ソレ、どういう盛り上がり方だよ!?」
「でも、結果的に盛り上がっているでしょう?」
「だからお前らがこういう結果を招くようなことを仕出かしているだろうがぁ!?クリスも普段はしっかりしているのになんでこういう時に限ってポンコツになるんだよ!?」
「なにぃ?」
「あやまれ」
「なんだとぉ?」
「あぁ~、もう日が沈むまでにキャンプ場に着くかな?これならゲッティンゲンなんていうねぇ、デカイ町に行ったほうがねぇ良かったかもしれない」
シュテルはアクセルを踏み、スロットルを全開近くまで回して速度を上げる。
この際、騒音なんて問題視してられない。
そして、行き先にゲッティンゲンのキャンプ場の方が良かったかもしれないと零す。
「ゲッティンゲン?なんでゲッティンゲン行かなかったのさ」
ユーリは何故ゲッティンゲンに行かなかったのかとシュテルに問うと、
「クリスが『行かない』って言ったんだよ」
ゲッティンゲンに行かなかった理由を話す。
「クリスぅ~」
ユーリは呆れる様な視線でクリスを見る。
「なによ、今度はこっちに矛先?」
「私もねぇ、シュテルンの言う通り、ゲッティンゲンだと思ったんだよぉ」
「ハハハハハ‥‥」
そんなやりとりをしつつも一行は何とか日が出ている間に目的のキャンプ場へと到着した。
そして事務所で受付をしてキャンプの開始である。
「では、こちらにご利用者様の指名を書いてください。それと、ど、動物には気を付けてください」
「「「えっ?」」」
受付の人からこの辺で動物が出没するので気を付けるように言われる。
「最近、水辺に出没するので‥‥猟銃を持った方、二人で捜索を‥‥」
「出まくるんじゃねぇかよ!?」
受付の人の説明に思わずツッコミを入れるシュテル。
「ですが、そちらのセキュリティ面は我々の方でビシッと」
「我々がビシッとじゃないよ、お前になにが出来るっつってんだよぉ?」
「シュテルン、ちょっと変だよ」
「ストレスでどうかしちゃったのかな?」
珍しく毒を吐くシュテルの態度にちょっと引き気味のユーリとクリスだった。
受付を終えて、キャンプスペースへと行き、適当な所でケッテンクラートを止める。
「よし、到着」
「いやぁ~やっと着いたねぇ~」
ケッテンクラートの荷台から降り、身体のコリをほぐすかのように背伸びをするユーリとクリス。
「それじゃあ‥‥ここをキャンプ地とする!!」
シュテルもケッテンクラートの運転席から降りて、この場をキャンプ地である事を宣言する。
そして三人はケッテンクラートの荷台からテントなどの荷物を降ろしてキャンプの設営をする。
ムーンライト型のテントと荷物集積用のドーム型テントの二つを設営し、夕食の準備となる。
クーラーボックスから食材を取り出し、ガスコンロの上に鍋やコッヘルを置く。
今日の夕飯のメニューは、スープパスタとボイルソーセージ、ザワークラウトとパン。
ボイルソーセージは鍋のお湯に持って来たソーセージを投入するだけ‥‥
スープパスタは、予め刻んでおいた食材‥‥ベーコン、アスパラ、シメジ、玉ねぎ、ジャガイモをコッヘルに入れ、すりおろしたニンニクとオリーブオイルで炒める。
食材がしんなりしてきたら、水を入れ、固形状のコンソメを入れて溶かし、溶かし終えたら半分に折ったパスタを入れる。
「それ、イタリア人が見たら怒りそうだよね」
パスタを真っ二つに折り、コッヘルに入れたシュテルの行動にユーリは思った事を口にする。
「このコッヘルじゃ、パスタは折らないと茹で上がらないんだよ。それとも硬い芯のあるパスタが食べたいの?」
「まぁ、私達はイタリア人じゃなくてドイツ人だから関係ないし‥‥」
硬くマズイパスタを食べるより、邪道でも美味いパスタの方がマシだと思い、ユーリは、自分達はイタリア人ではなくドイツ人なのだから関係ないと掌を返す。
パスタが水を吸い、しんなりとし、コッヘルの中の水がなくなってきたら牛乳とチーズを入れもう少し煮込む。
最後に黒コショウとパセリを入れて完成。
テーブルの上に揃った夕食を前にして、
「「「いただきます」」」
手を合わせた後、夕食を食べる三人。
(キャンプと言えば普通はカレーなんだけど、此処は日本じゃなくてドイツだからな‥‥それに俺、前世じゃキャンプなんてルミルミと知り合ったあの千葉村のキャンプぐらいしか、思い出がねぇや‥‥)
スープパスタを啜りながらシュテルは前世でのキャンプの思い出を振り返る。
小町しか旅行に連れていかなった前の世界の両親は当然キャンプなんて連れて行ってくれなかったが、こちらの世界ではこの世界の両親、ユーリやクリス達とよくキャンプや旅行へと行くので、アウトドア知識はそれなりについてきた。
食後は焚火を前にマシュマロを焼いてココアの中に入れ、それを飲みながら話に花を咲かせ、シュテルがハーモニカを吹いてユーリとクリスが歌をうたう。
そんなやり取りをして夜のひと時を楽しんだ三人は午後十時には就寝したが、
「テント狭っ!!」
ムーンライト型のテントで三人は寝袋を敷いて川の字で寝たのだが、思いの他テントは狭かった。
「ねぇ、シュテルン、クリス、どっちかもっと下がれない?」
「なにが?」
「ちっちゃいんだからさぁ」
「はぁ!? もうギリギリだって!」
「クリス、もうちょっと向こう‥‥」
「こっちだってもう一杯一杯なんだよ」
「これ寝返り打てねぇよ」
「寝返りなんて打ったらキミ大変だよ。寝返り打つ時はシュテルンから順番だよ」
「ははははは‥‥難易度高いな‥‥」
「まだ端の方がいいよ、これ」
「何言ってんの?シュテルンの隣はテントだからいいよ、私の隣なんかデブだよ」
「はっはっはっはっはっは‥‥」
クリスの発言で思わず爆笑するシュテル。
「隣はデブで金髪だよ」
「ちょっと、クリス、自分の胸がないからってデブ呼ばわりは酷いよぉ~それに金髪なのは仕方ないじゃん!!これは地毛なんだし!!」
デブ呼ばわりされたユーリはジト目でクリスを睨みながら言う。
「胸なんてただの脂肪の塊じゃない」
シュテル、クリス、ユーリの三人の内、胸の大きさはユーリ>シュテル>クリスの順となっている。
故にクリスがユーリの胸に嫉妬するのも分かる。
「巨乳をデブ呼ばわりする貧乳の嫉妬だな」
クリスとユーリのやり取り見たシュテルがボソッと零す。
「シュテルン、何か言った?」
すると、シュテルの声が聞こえていたのか良い笑みを浮かべ、額に蟀谷の部分に青筋をたてたクリスがシュテルの方へと振り向く。
「いや、何も‥‥(怖っ‥‥)」
「こうなったら仕方がない、此処は公平に‥‥」
「「「じゃんけん‥‥」」」
三人では狭いので、一人は隣の荷物集積用のテントで眠る事になった。
そしてじゃんけんの結果‥‥
「くすん‥‥こんな時でも私はボッチかよ‥‥」
シュテルが負けて一人で荷物集積用のテントで寝る事になった。
「あっ、そうだ‥‥折角キャンプに来たんだから‥‥」
シュテルは寝袋から這い出てカメラとカンテラを持って山頂をめざす。
そして山頂に着くとそこから見下ろす夜景を写真に収めた。
日本とは違う光景‥‥新たな故郷の姿‥‥
「ルミルミじゃないが、いい記念写真が撮れたな」
シュテルはデジカメに撮られた夜景の画像を見ながらポツリと呟いた。