やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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101話

七月‥‥

 

学生にとっては楽しみにしている夏休み目前となっているが、その夏休みを迎えるにあたって、学生は一つの試練を乗り越えなければならない。

 

そう、期末試験と言う名の試練を!!

 

とは言え、今年の四月に発生したRat事件の影響で夏休みが多少削られてしまうことになったが、それでも、期末試験を無事にクリアして過ごす夏休みと、攻略不可となり、補習だけの夏休みとでは、休める日数も違ってくる。

 

ドイツの留学生艦、ヒンデンブルクと共にRat事件を解決に導いた横須賀女子所属の航洋艦晴風のクラスメイトたちは、入学試験の成績が一概に優秀とは言えない生徒たちであったが、たった一度のテストだけで人の全てを図ることは出来ない。

 

事実、Rat事件の時、彼女たちは十分な活躍をした。

 

だが、テストや勉強が好き‥‥なんて学生は少なく、それは晴風のクラスメイトたちも例外ではない。

 

横須賀女子の学生寮の食堂で、晴風の水雷科のクラスメイトたち + 立石が集まっており、夏休みについての話題で盛り上がっていた。

 

 

「そう言えば、そろそろ、夏休みだね~みんなは夏休みの予定はもう、決まっているの?」

 

晴風水雷長の西崎が同じ水雷科の松永と姫路、そして立石に夏休みの予定を訊ねる。

 

「いや特に何も~」

 

「もう少し先だしねぇ~」

 

姫路も松永もまだ夏休みの予定は決まっていないみたいだった。

 

高校一年生‥ピチピチな女子高校生であるが、彼女らは異性との付き合いもない様子‥‥

 

「タマもまだ決まってない?」

 

「うぃ‥‥」

 

「それに夏休み前に期末テストが‥‥」

 

「ひぃ――――!!聞きたくない!!聞きたくないっ!!」

 

姫路が夏休み前に期末試験があることを西崎に指摘すると、彼女は現実逃避するかのように叫び出す。

 

「その話題を避ける為に夏休みまでジャンプしたのにぃ~」

 

期末試験を忘れる為、敢えて試験の後に控えている夏休みの話題をしたのだと叫ぶ西崎。

 

「水雷長なりの現実逃避だったんだねぇ~」

 

やはり、西崎は期末試験が嫌で現実逃避していたみたいだ。

 

「まぁ、まだ予定とか何もないけど、とりあえず実家に帰るんじゃないかな~?みんなも同じだと思うけど~」

 

松永は空気を読んだのか、とりあえず夏休みの予定らしきものを口にする。

 

それによれば松永は、夏休み中は実家に帰省すると言う。

 

「りっちゃんの実家って温泉旅館だっけ?」

 

「そだよ~」

 

「温泉!?」

 

松永の実家は温泉旅館を営んでいるみたいで、『温泉』 と言う単語に立石が反応する。

 

「温泉かぁ~みんなで温泉旅行もいいよねぇ~」

 

「うぃ~」

 

銭湯に通うぐらい、西崎と立石も風呂好きなので、温泉と聞き折角の夏休みなので、温泉旅行に行くのも悪くないと思う。

 

「でも、夏に温泉ってどうなの?」

 

「温泉って冬のイメージがあるけど、夏も結構いいんだよぉ~」

 

松永の言う通り、温泉と聞くと大抵は冬のイメージがある。

雪を見ながらの露天風呂‥‥

 

外は寒いが、温かい温泉に入っていると、冬の寒さも感じず、日本の冬と言う季節感を感じる。

 

しかし、真夏の炎天下の中で、入る温泉‥‥

 

西崎の言う通り、確かにイメージしにくい。

 

だが、実家が温泉旅館な松永が言うには真夏の温泉もアリだと言う。

 

「夏バテにも効果が期待できたり、冬の乾燥とは違う肌荒れにもよかったり、冬に比べたら湯冷めもしにくいから、ゆっくり温泉の余韻に浸れて心も身体もリフレッシュ~みたいな感じ~?」

 

「なるほど~」

 

松永は真夏の温泉の利点を西崎に説明する。

 

「あとやっぱり、お風呂上がりの牛乳なんかは夏の方がオススメだよねぇ~」

 

「そっか~!!」

 

お風呂、温泉上がりの牛乳は冬よりも夏の方が最高だと松永は勧める。

 

温泉で熱くなった身体に冷やした牛乳‥‥しかも外の気候は夏なので、冷たい牛乳は普段より、美味しく感じる。

 

西崎も銭湯通いしているので、風呂上がりの牛乳の良さは分かるようだ。

 

「夏って言うと海とかプールばっかり浮かぶけど、夏の温泉もいいものだねぇ~夏休み楽しみだなぁ~」

 

松永の話を聞いて、真夏の温泉も色々と楽しめそうなので、夏休みには温泉旅行にでも行こうかと思い、夏休みに思いを寄せる西崎。

 

「そうだねぇ~‥‥でも、その前にテストが‥‥」

 

「ギャ―――!!」

 

夏休みに思いを寄せる西崎を松永が、テストと言う言葉を使い、現実へと引き戻す。

そして、その現実に思わず悲鳴を上げる。

 

「せっかく、忘れかけていたのにぃ~!?」

 

「いや、でも忘れちゃあマズいことだしぃ~」

 

テストを忘れ現実逃避をして、本番の期末試験で赤点を取れば、それこそ、夏休みがパァーになり、温泉旅行なんて夢で終わる。

 

「忘れてもテストは無くならない‥‥」

 

立石は西崎に現実を見ろと期末試験が控えている現実を突きつける。

 

「砲術長の言う通り~」

 

「むしろちゃんと向き合わないと夏休み補習で潰れちゃうよぉ~」

 

姫路も松永も立石同様、ここで現実逃避してもテストからは逃げられないと現実を突きつける。

 

「むむむ~‥‥」

 

西崎は渋い顔をする。

 

彼女たちの正論に反論できないからだ。

 

「っていうか、かよちゃんはアレ?実は結構勉強しているタイプ?なんか余裕があるみたいだし‥‥」

 

西崎は姫路に実は影で猛勉強をしているのかと訊ねる。

 

実際に期末試験が迫っている中、逼迫している様子も慌てている様子もなく、逆に余裕に見えるからだ。

 

「そんなことはないけど‥‥たまーに、しゅうちゃん(山下秀子)に数学教えて~って、お願いされているから、その時は一緒にしたりしているよ」

 

「私も一緒にしているよぉ~」

 

姫路は数学が苦手な山下によく数学を教えており、松永もその時、彼女たちと一緒に勉強していると言う。

 

「そうなんだ‥‥しゅうちゃん真面目だもんねぇ~」

 

何故、姫路が期末試験に余裕がありそうな態度なのか分かった西崎。

 

姫路の話を聞く限り、ついでに山下と松永も期末試験でなんとか赤点回避ぐらいには持ち込めるのではないだろうか?

 

「タマは勉強している?」

 

西崎は次に立石に期末試験にむけて、勉強しているかを訊ねる。

 

「うぃ‥‥」

 

西崎の問いに立石は親指をグッと立て、ゴソゴソと鞄から一冊の本を取り出し、西崎に見せる。

 

その本の表紙には、『強くなる将棋』 と書かれていた。

 

「将棋の勉強しちゃっている!?」

 

てっきり、期末試験の為の試験勉強をしているのかと思いきや、勉強そっちのけで将棋の腕を磨いていた。

 

立石は期末試験の方は大丈夫だろうか?

 

「次は負けない‥‥」

 

立石はあの時、銭湯で西崎とやった将棋を未だに根に持っていたようだ。

 

「タマも負けず嫌いだからなぁ~‥‥」

 

「そう言えば、中間テストの時、ミカンちゃんたちは、みなみさんに勉強教わったって聞いたよ」

 

姫路が中間テストの際、伊良子たちが中間テストのテスト勉強で美波から教わっていたと言う情報を西崎たちに教える。

 

「なるほど、主計科にはみなみさんと言う最終兵器が‥‥あれ?そう言えば、みなみさんって中間テストの時、居なかったよね?」

 

中間テストの時、教室に美波の姿はなかった。

 

「あっ、それは‥‥」

 

姫路は何故、中間テストの時、教室に美波が居なかったのか、その理由を知っているみたいで、それを西崎に伝えようとした時、

 

「私がどうかしたか?」

 

美波本人がその場に来た。

 

「あっ、みなみさん。こんにちは~今、期末テストの話をしていて~‥‥」

 

「テストか‥‥」

 

「みなみさん、中間テストの時、主計科のみんなと勉強会したんでしょう?」

 

西崎は姫路の情報があっているのかを確認する。

 

「ああ‥‥等松さんたちに頼まれたからな」

 

どうやら、姫路の情報は間違っておらず、中間テストの時、美波が主計科のクラスメイトたちに試験勉強を教えたみたいだ。

 

「おかげで私はクッキーを焼けるようになった!!」

 

「どんな勉強?」

 

美波はドヤ顔で中間テストの時、伊良子たち主計科のクラスメイトにテスト勉強を見る代わりにクッキーの焼き方を教わったみたいだ。

 

まさしく、等価交換な条件だった。

 

「でさ、みなみさんは中間テストを受けていないんだよね?」

 

「至極当然」

 

西崎は中間テストの時、教室に美波が居らず、中間テストを受けていなかったことを訊ねる。

 

すると、美波は当たり前だと答える。

 

「私が必要なのは海洋実習の単位だけだからな、それ以外の授業も試験も受ける必要はない」

 

「あっ、そっか‥‥」

 

美波は中間テストを受けていない理由を話すと、西崎は納得した。

 

(ハッ!?待てよ‥‥みなみさんは、テスト中は教室にいる必要がない‥‥身長も私とだいたい同じくらい‥‥)

 

西崎の身長は146㎝、美波の身長は143㎝‥‥3㎝の差があるが、パッと見では分からない。

 

そして、美波は飛び級で大学に行くほどの秀才‥‥

 

これらの要素から西崎はあることを考えた。

 

「みなみさん、ちょっといい?」

 

「ん?」

 

西崎は自分の後ろ髪を束ねていたリボンを解き、そのリボンを使い美波の髪型を普段自分がしている髪型に変える。

 

「「「「「‥‥」」」」」

 

西崎の髪型となった美波を見て、西崎、立石、姫路、松永は沈黙。

 

「替え玉作戦は失敗か‥‥」

 

「軽慮浅謀‥‥」

 

西崎は美波を替え玉にして、期末試験を受けてもらおうとしていたのだが、身長と髪型は似ていたが、やはり髪の色、顔の容姿部分は異なる為、西崎の替え玉作戦は実行前から失敗していた。

 

そんな西崎に対して、美波は、あさはかで軽々しい考えや計略を意味する軽慮浅謀と返答した。

 

 

 

 

 

期末試験が迫っている中、週末のとある夜の公園にて‥‥

 

 

「いくよ、真冬姉さん」

 

「おう!!バッチコーイ!!」

 

「ほっ!」

 

真白はグローブ片手に野球ボールを真冬に投げる。

 

その様子から、真白と真冬が仲良くキャッチボールをしているかのように見えるが、

 

「ふん!!」

 

ガンっ!!

 

「うわっ!?‥‥ちょっと!!フルスイングしないでよ!!ってか、なんで?ゴルフクラブで打ち返せるの!?」

 

「あん?それはアタシが宗谷真冬だからだ!!」

 

真冬は真白の問いにドヤ顔で返すが、

 

「意味が分からないよ!!」

 

真冬が手に持っていたのはグローブでもバットでもなく、ゴルフクラブで、彼女は真白が投げたボールをゴルフクラブのヘッド部分に上手く当てて打ち返したのだ。

 

「もう、ボールがどっか行っちゃったじゃない!!‥‥ねぇ、真冬姉さん普通にキャチボールしようよ!!」

 

「まぁ。いいじゃねぇか。もう少しやろうや、ゴルフをよ‥‥」

 

「えっ?ゴルフなの?これ‥‥?」

 

真冬が言うゴルフは明らかに世間一般に知られているゴルフとは違う。

 

「‥‥こう見えて、姉ちゃんはなぁ、子供の頃は看護婦さんになりたかったんだ‥‥」

 

いきなり、真冬が子供の頃、なりたかった夢を語りだす。

 

「ゴルフも野球も関係ないじゃない!!って言うか、看護婦になりたかったら、どうして横須賀女子に行ったの!?普通に看護学校に行けばよかったじゃない!?」

 

いくら、ブルーマーメイドの家系だからと言って宗谷家の人間だから、絶対にブルーマーメイドにならなければいけないなんて家訓はない。

 

真雪ならば、自分の子供のなりたい職業に就かせてくれるはずだ。

 

それなのに、真冬は真霜や自分同様、横須賀女子に入学し、その後はブルーマーメイドのエリート士官として活躍していることから、きっと嘘に違いない。

 

それとも、ドラマか映画、アニメ・漫画を見て、一時に影響されただけだったのだろうか?

 

または真冬の冗談かもしれない。

 

「姉妹でキャッチボールなんかしたらおしまいだと思うけどねぇ~‥‥」

 

「いや、普通はあまり姉妹同士でキャッチボールはやらないんじゃない?」

 

野球一家や兄弟、息子と父親ならば、キャッチボールなんて珍しくはないかもしれないが、普通の家庭で、姉妹仲良くキャッチボールなんて言うのは珍しい部類に入るのではないだろうか?

 

とは言え、西崎と立石の二人は休日に公園でキャッチボールをしている。

 

「じゃあこの上着を丸めてボールにするか」

 

真冬が着ていたジャケットの上着を脱ぐと、その上着を丸める。

 

「なんで!?‥‥もう、ボール取ってくるからちょっと待っていて!!」

 

真白は真冬がゴルフクラブで、かっ飛ばしたボールを拾いに行く。

 

 

それから、真白がボールを拾ってくると、真白と真冬は普通にキャッチボールをする。

 

「いくよ!!」

 

「おう!!」

 

しばらくは互いに無言のまま、キャッチボールをしていたが、不意に真冬が、

 

「で?シロ、学校生活はどんなだ?」

 

「えっ?」

 

真冬は真白に高校生活について聞いてくる。

 

「まぁ、Rat事件以降は特に問題なく、過ごせていると思う。中間テストの成績も上位だったし‥‥」

 

入学試験では大ポカした真白であったが、先の中間テストではケアレスミスをすることなく、上位の成績を叩き出した。

 

本来の真白の実力ならば、入学試験でも十分に上位の成績だったことはこの前の中間テストや普段の課題の内容を見れば、一目瞭然だった。

 

「艦長になれなくて、捻くれているかと思ったけど、何とかやっているみたいだな?」

 

自分や長女の真霜は横須賀女子で首席、しかも艦長職に就いていたので、艦長職に就けなかった真白が高校では自棄になっていないか姉としては心配だったのだが、真白は問題なく、高校生活を送っているみたいだ。

 

「べ、別に捻くれてなんか‥‥っ!?」

 

(いそろく~)

 

(なんで、あんな人が艦長に‥‥?)

 

 

(なくもなかったか‥‥)

 

初航海初期の頃は、真白は明乃を艦長として認めていない部分もあった。

 

しかし、今は違う。

 

「ま、まぁ、艦長じゃなくても、それぞれに大切な役割が有る訳だし、今は別に気にしていないよ」

 

「なにぃ!?」

 

真白の殊勝な態度に驚愕する真冬。

 

「そんなことでどうする!?もっと野心を持て!!野心を!!」

 

「どっちなんだ!?一体!?捻くれた方がいいの!?」

 

真冬の態度に思わず声を荒げる真白。

 

「そう言えば、母さんに聞いたけど、シロ」

 

「ん?」

 

唐突に話題を変える真冬。

 

「シロ、お前スキッパーの免許を取ろうとしているんだって?」

 

「えっ?ああ、うん‥‥出来ることが多い方がいいと思って‥‥学生の内に取れるなら、取っておこうと思って‥‥」

 

「そうかい!まぁ、できないよりは出来る方が良い!!何だってそうだ!!」

 

真白の向上心を聞き、上機嫌な真冬。

 

そこへ‥‥

 

「あぁ、こんなところに居た」

 

真霜がやってきて、二人に声をかける。

 

「真霜姉さん‥‥」

 

「真霜姉‥‥」

 

「‥鍵が閉まっていて家に入れないの。鍵貸して」

 

真霜は今日、家を出る時、うっかり家の鍵を持って行くのを忘れて、家に入れないから、真冬か真白のどちらかに家の鍵を貸してくれと頼む。

 

「「‥‥」」

 

真霜の頼みを聞いて、しばしの間無言になる二人‥‥

 

すると、真白が、

 

「鍵持っていたら、こんなところで真冬姉さんとキャッチボールなんてしてないよ」

 

「母さん、出張だからあと三日戻ってこないって‥‥」

 

真霜だけではなく、真冬、真白の二人も家の鍵を持っていないみたいで、ここでキャッチボールしながら、真霜を待っていたみたいだ。

 

しかし、その待ち人である真霜も鍵を持っていなかった。

 

「「「‥‥」」」

 

三人はしばしの間、無言となった‥‥

 

その後、この日三人は、ホテルに泊まり、真白は実家への帰省を諦め学生寮に戻り、二人は後日、鍵の業者を呼んで家を空けてもらった。

 

 

 

 

ここで視点を神奈川県の横須賀から千葉県の千葉市へと移る。

 

 

ららぽーとにて、偶然カナデを見つけ、由比ヶ浜本人にとってはまさに運命的再会だと思ったが、カナデの連れであるシュテルに絡み、ギャーギャー騒ぎ、警備員につまみ出される事態になり、シュテルを完全に敵視した。

 

翌週、由比ヶ浜の機嫌は最悪で、それは放課後まで続いていた。

 

放課後、奉仕部の部室にてふくれっ面をしている由比ヶ浜に雪ノ下は声をかける。

 

「由比ヶ浜さん、どうしたの?随分と機嫌が悪そうだけど‥‥?」

 

「ゆきのん!!」

 

由比ヶ浜は大声と共に雪ノ下に詰め寄る。

 

「な、なにかしら?」

 

由比ヶ浜の勢いにタジタジな雪ノ下。

 

すると、由比ヶ浜は雪ノ下にとんでもない事を頼んできた。

 

「あの泥棒猫を始末したいの!!お願い!!やってくれない!?」

 

「はぁ?」

 

由比ヶ浜の発した言葉に唖然とする雪ノ下。

 

「えっと‥‥由比ヶ浜さん、それはどういう意味かしら?」

 

「だから、私とカナカナの仲を引き裂く泥棒猫を始末して欲しいの!!」

 

由比ヶ浜は雪ノ下にシュテルの抹殺を頼んできた。

 

「‥‥由比ヶ浜さん、貴女は私の事を何だと思っているの?」

 

雪ノ下は人一人を平然と始末してくれと頼み込んでくる由比ヶ浜にやや引いている。

 

「えぇ~ゆきのんでも出来ないことがあるの?」

 

由比ヶ浜は雪ノ下を挑発するかのようなセリフを言うが、

 

「私は殺し屋でもなければ、なんでも屋でもないのよ」

 

負けず嫌いな雪ノ下でも流石に、『人一人も始末出来ないの?』 と言われて、『やってやろうじゃない』 とは言えない。

 

いくら、雪ノ下の家がこの後世世界では、大きな権力を持っているとしても、人を殺しては法を犯すことになるので、それだけは出来ない。

 

仮に隠蔽したとしてもいつ、どこで、誰に? どこから? バレるか分からない。

 

もし、それがバレたら、雪ノ下家はスキャンダルでマスコミから叩かれ、会社は倒産し、父は議員の座も失うことになる。

 

それにいくら友人の頼みだからと言って、雪ノ下家が人を殺めることに手を貸すとは思えない。

 

「一体何があったの?」

 

雪ノ下は由比ヶ浜に、彼女が不機嫌な理由、そして何故、自分に人を殺してくれと頼み込んできたのか、その事情を訊ねる。

 

「実はこの前の休みの日に‥‥」

 

由比ヶ浜は雪ノ下に事情を話す。

 

「それで、その人は何処の誰なの?」

 

「えっ?」

 

雪ノ下は由比ヶ浜から話を聞いて、彼女の言う『泥棒猫』が何処の誰なのかを聞いてくる。

 

それを聞いて、由比ヶ浜は唖然とする。

 

考えてみれば、由比ヶ浜はシュテルが何処の誰なのか知らず、カナデとシュテルとの関係も、ただ一緒に居ただけと言う理由で絡んだ。

 

「もしかして、その女の人は、カナデさんの妹さんとか考えられない?」

 

雪ノ下は由比ヶ浜にカナデとシュテルとの関係性で、シュテルがカナデの妹ではないかと指摘するが、

 

「違うと思う。カナカナのプロフィールで、カナカナのお家は一人っ子だって書いてあったし」

 

由比ヶ浜は当然、カナデのプロフィールを知っており、彼の家に女児が居ない事は確認済みであり、シュテルがカナデの妹である雪ノ下の仮説を否定する。

 

「じゃあ、クラスメイトで、彼女の彼氏か友人のプレゼントを選びに来たとか?」

 

前世で由比ヶ浜の誕生日プレゼントを選ぶ為、八幡と共にららぽーとへ出かけたことがある。

 

シュテルもそれと同じ理由ではないかと聞く。

 

「うーん‥‥それも違うような気もする‥‥だって、あの泥棒猫のミ二スカ姿にカナカナ、凄く喜んでいたし‥‥」

 

「‥‥」

 

そこまで言われると、実際にその現場を見ていない雪ノ下でも、カナデとシュテルが彼氏彼女の仲ではないかと思い始める。

 

「もし、由比ヶ浜さんの言う通り、カナデさんとその女性が恋仲であるならば、もう諦めた方が‥‥」

 

「なんでそんなこと言うの!?」

 

由比ヶ浜はどうしてもカナデの事は諦めきれなかった。

 

「そりゃあ、私はゆきのんみたいなお金持ちでもなければ、頭もよくない‥‥でも、やっと出会えた運命の人とこのまま別れるなんて嫌だよ!!」

 

「‥‥」

 

「カナカナはヒッキーなんかと違って、イケメンだし、サブレの事を助けてくれたんだもん!!カナカナ以外の男の人なんて考えられない!!」

 

由比ヶ浜はまるで癇癪を起こした子供のように声を荒げる。

 

「ゆきのん!!じゃあ、泥棒猫を始末出来ないなら、カナカナとの仲を引き裂いて!!」

 

「えっ?」

 

「世の中にはリャクダツアイってあるんでしょう?それなら、それをして、カナカナの目を覚まして、あの泥棒猫からカナカナを解放しないと!!」

 

「‥‥略奪愛をするとして、どんな風にするの?」

 

「隼人君に頼んで、あの泥棒猫がカナカナと隼人君と二股しているビッチだと知れば、きっとカナカナはあの泥棒猫と別れてくれる筈だよ!!」

 

由比ヶ浜は葉山をシュテルにぶつけて、カナデにシュテルがカナデの他に葉山とも二股をかけていると思い込ませ、シュテルがビッチであるとカナデに知らせ、別れさせる。

 

そして、傷心したカナデを自分が慰めて、めでたく彼の彼女になると言うプランを立てた。

 

「‥‥由比ヶ浜さん、そんな発想一体どこで?」

 

雪ノ下の中ではアホの子の由比ヶ浜が腹黒い提案をしてきたことにびっくりしつつもその内容にドン引きする。

 

「昼ドラや、動画サイトにあったの!!」

 

「そ、そう‥‥」

 

由比ヶ浜一人でここまでの計画を立てられないと思っていた雪ノ下であったが、その見解は当たっており、由比ヶ浜の入れ知恵は、テレビやネット世界が元になっていた。

 

「でも、由比ヶ浜さん」

 

「なに?ゆきのん」

 

「貴女の計画を実行する前に、そのターゲットとなるその女性が何処の誰なのか?それを突き止めないといけないんじゃない?」

 

「それは、カナカナを見張っていれば‥‥」

 

「それともう一つ!!」

 

「ん?」

 

「‥‥もうすぐ、期末試験だけど、勉強は大丈夫なの?」

 

「‥‥」

 

横須賀女子で期末試験が迫っているのと同じ様に、総武高校でも期末試験が迫っている。

 

そして、由比ヶ浜は雪ノ下に海洋学の宿題をよく聞いてくる。

 

雪ノ下の指摘に対して、気まずそうに視線を逸らす由比ヶ浜。

どうやら、ヤバいみたいだ。

 

「はぁ~期末試験で赤点を取って、補習なんてことになれば、調べる時間も満足に得られないわよ」

 

「うぅ~‥‥」

 

「それに夏休み中には‥‥」

 

「わ、分かっている‥‥留美ちゃんの件でしょう?」

 

「ええ‥‥鶴見さんの件もあるし、二学期になれば、文化祭、修学旅行、生徒会選挙、クリスマス会があるから、時間は貴重なの?分かるかしら?」

 

「う、うん‥‥」

 

「じゃあ、依頼人が来るまで、期末試験に備えて勉強をしましょう」

 

雪ノ下は由比ヶ浜にテスト勉強を促した。

 

夏休みは千葉村で鶴見の虐め問題、二学期には文化祭と修学旅行、生徒会選挙、そして雪ノ下にとっては黒歴史である海浜とのクリスマス会が控えているので、雪ノ下にとっては、同じ奉仕部の部員である由比ヶ浜の恋路よりも、周囲に認めてもらうこれらの事項の事が大事だった‥‥。

 

だいたい、人を始末してくれなんて頼みは聞けるわけがない。

 

由比ヶ浜が忘れるように雪ノ下は話題をそらしたのだ。

 

雪ノ下としては、どうせ由比ヶ浜のことだ‥あと数日の間、テスト勉強漬けにすれば忘れるだろうと思っていたのだった‥‥

 




流石のゆきのんも、友人と言えど、人一人を殺人または社会的抹殺を頼まれても、それは飲めませんでした。

転生者組がそれぞれ転生者だと気づく 気づかない

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