やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
学生にとって夏休み前の試練である期末試験が終わり、結果によって泣く者も居れば、悠々と夏休みを迎える者も居た。
ただし、今年の四月に起きたRat事件に関係した晴風とヒンデンブルクのクラスメイトたちは、その影響で、夏休みの頭‥七月下旬は授業の遅れを取り戻す為、補習となった。
座学の補習が終わった日、晴風機関科の四人娘たちと偶然買い物先で出会った伊良子は学生寮の駿河の部屋でお好み焼きパーティーを開いた。
ただ、晴風クラスの補習はこの座学だけではなかった。
後日、晴風クラスはとある小島に集められた。
蝉の声がやかましく鳴り響く中、晴風クラスのクラスメイトたちは開けた場所に整列する。
「晴風クラス、全員傾注!!」
古庄教官が、晴風クラスのクラスメイトたちの前に出て、今回の補習内容を説明する。
「では、これより晴風クラスの特別実習を開始する!!」
古庄教官が晴風クラスの実習による補習を宣言すると、
「えっ?」
西崎は一瞬、ポカーンとしたが、古庄教官が発した言葉の意味を理解すると、
「ええぇぇぇーっ!!今日って遊びに来たんじゃないの!?」
自分が思っていた事と現実が異なることに思わず声をあげた。
なぜ西崎は今日の実習を遊びに行くと間違えたのか?
それは、少し時間を過去に巻き戻す‥‥
座学の補習が終わった日、
「岬さん」
明乃が学校の通路を歩いていると、古庄教官に声をかけられた。
「あっ、古庄教官」
「ちょっといいかしら?」
「えっ?あっ、はい。なんでしょう?」
「連絡事項のようなものだけど、晴風クラスは今日で座学の補習が終わったけど、もう一つ、夏休み中に特別実習を予定しているの」
「特別実習?」
古庄教官の話では座学以外にも今度は実習でも補習があるみたいだ。
「ええ、詳しい内容は後で伝達するけど、先に日にちと集合時間を伝えておこうと思ってね」
古庄教官は実習内容については、語らなかったが、その実習が行われる日にちと時間を明乃に伝えた。
「あっ、はい。わかりました‥‥えっと‥‥お話はそれだけでしょうか?」
明乃は恐る恐る古庄教官に訊ねる。
古庄教官は教育者として、教育熱心な教官であるのだが、明乃にとってはあの海洋実習でいきなり実弾で砲撃されるし、その後も一時的とは言え反逆者の汚名を着せられたので無意識の内に苦手意識があった。
古庄教官自身も事件後はその事をかなり気にしており、一度、真霜にそれを相談した時に
真霜から、
「誤解が解けるまで可愛さをアピールしたらどうですか?」
と、言われたので、その言葉と福内を参考に古庄教官は福内みたいに猫耳のカチューシャを着けて、語尾に『ニャア』をつけた猫語で授業をした事があったが、猫耳カチューシャを着けた古庄教官の姿を見た晴風クラスの生徒たちは唖然としていた。
教育熱心なのはいいのだがどうも着眼点がズレてしまった古庄教官だった。
「ん?何か悪いことでもして、身構えていたのかしら?」
「い、いえ!!そのような事は!?」
古庄教官の問いにビクッと身体を強ばらせる明乃。
「ふふ、冗談よ。じゃあ、さっきの話、クラスメイトたちにも伝えておいてね」
「はい」
明乃は古庄教官からの連絡事項をまずは近場に居た真白と鈴に実習の事を伝えると、二人は他のクラスメイトにも実習の事を伝えた。
しかし、それが伝言ゲームのようにどこかで、『クラスで特別実習をやる』 が 『クラスメイトたちと遊びに行く』 へ変わってしまった様だった。
「私、ちゃんと特別実習って連絡したのに‥‥」
八木は確かに、『特別実習がある』 と、他のクラスメイトに伝えたと言う。
「遊びに行くって考えが念頭にあったせいで、実習の部分が抜けていたのだろう」
真白が呆れながら、どうしてこうなったのかを言う。
夏休み、補習が終わった後で、晴風クラスのみんなでどこかに行く=遊び と言う認識があったのかもしれない。
「遊びに行くにしては上手く全員揃ったし、艦まで動かすし、おかしいなぁ~って思っていたんだよねぇ」
「うぃ」
西崎と立石は今になって、今回の実習の集まりで不自然なことがあったと思い返す。
「いや、気づけよ!!」
真白が思わず、西崎にツッコミを入れた。
「あ、あの‥‥」
そこで、ある女生徒が恐る恐る声をあげる。
「私、遊びに行くからって誘われて来ちゃったんですけど‥‥?」
「ジェニーもいるヨ~!!」
この二人は、晴風クラスの生徒ではなく、別クラスの生徒‥‥時津風の水雷長、大谷由美子(通称:ゆみちゃん)で、もう一人、ダートマス校のカレンと同じ様に片言の日本語なのは、天津風機関長の加藤小百合(通称:ジェニー)だった。
「遊びに行くって聞いたから‥‥」
「旅は道連れってな!!」
大谷を誘ったのは西崎で、加藤を誘ったのは柳原だった。
艦は違っても役職が同じと言うことで、互いに交流があったようで、『今回晴風のクラスのみんなで遊びに行くから、一緒に来ないか?』と誘いをかけたみたいだ。
「どうするんだ?これ‥‥?」
真白はこの事態に頭を抱える。
自分たちは遊びに来たわけではないのに、他艦の水雷長と機関長を連れて来てしまった。
本来ならば、彼女たちは補習もなく、普通に夏休みに入っている筈だった。
今更、帰そうとしても、晴風でこの小島まで来たので、彼女たちを横須賀へ帰すに帰せない。
「まぁ、来ちゃったものはしょうがないんじゃないんですか?」
「あっ、ブルーマーメイドの‥‥」
「平賀さんと福内さんですね」
そこへ、平賀と福内が来た。
「二人には今回の実習の手伝いに来てもらいました」
古庄教官が、何故ここに平賀と福内の二人が来たのかを晴風のクラスメイトたちに説明する。
「よろしく~!!」
平賀が晴風クラスの生徒たちにピースサインをしながら、挨拶をする。
「さて、情報が上手く共有されていないようなので、改めて今回の実習について説明します」
今日の実習を遊びだと思っているクラスメイトも居るので、古庄教官は今日の実習がどんなものなのかを晴風のクラスメイトに説明する。
「Rat事件で、晴風は行方不明になった学生艦の捜索の為、四月の一ヵ月を実習に使用して、本来のカリキュラムをこなしておらず、特別実習と言う形で穴埋めをすることになりました」
「事件解決に協力したのにぃ~」
「世知辛いっス‥‥」
クラスメイトの中には今回の特別実習に対して不満を零す者も居た。
「確かに晴風クラスだけ、折角の夏休みを補習で潰すのはかわいそうと言うことで‥‥実習を終えたら、明日一日は自由時間とします」
『やったー!!』
小島ながらも、今日の実習を終えれば、明日は森林浴、海水浴、川での水遊びが出来ると言うことで、晴風のクラスメイトたちは喜んだ。
「ただし!!実習自体は気を引き締めて取り組むように!!返事は!?」
『はいっ!!』
「よろしい!では、これより実習の内容を伝える!!実習内容はこの山野を利用した‥‥横須賀女子海洋学校オリジナルオリエンテーリング!」
(オリエンテーリング‥‥!?)
晴風のクラスメイトたちが古庄教官の説明を聞いて戸惑う者、唖然とする者など、リアクションは様々であった。
一方で、晴風クラスではない大谷と加藤は、完全にアウェイで、
「えっと‥‥私たちはどうすればいいんだろう‥‥?」
大谷は、自分も晴風クラスが行うオリエンテーリングに参加するべきなのだろうかと加藤に訊ねる。
すると、加藤は、
「I do not know」
と、英語で『私は知らない』と答えた。
片言の日本語と発音が良い英語を口にすることから、加藤は帰国子女なのだろう。
「それで、オリエンテーリングってなに?」
西崎はオリエンテーリングの意味を知らず、クラスメイトたちにオリエンテーリングの意味を訊ねる。
「えっと‥‥オリエンテーリングとは‥‥地図とコンパスを使って、各地に設置されたポイントを通過しながら、ゴールを目指す野外スポーツの一種だそうです」
納沙がタブレットで、オリエンテーリングの意味を調べ、西崎に教える。
「魚雷は!?魚雷を撃つチャンスはあるの!?それが問題だよ!!」
西崎は納沙にそのオリエンテーリングで魚雷を撃つチャンスはあるのかと、期待の眼差しを向ける。
「あるわけないだろう」
真白はオリエンテーリングで魚雷を撃つチャンス何てあるわけないと、きっぱりツッコム。
そりゃあ、オリエンテーリングは自らの足で山野を歩き、チェックポイントを探しながらゴールを目指すのだから、艦に搭載されている魚雷を撃つチャンスなんてある筈がない。
「わ、私、小学校の頃、キャンプでやったこともあるかも‥‥」
「あっ、やった、やった」
鈴と内田は、小学生時代にオリエンテーリングの経験があるらしい。
「なんか文字とかが描いてある看板を探して森の中を歩き回ったやつだよね。あの時、リンちゃん、道に迷って泣いちゃって‥‥」
「ううう‥‥そうだっけ‥‥?」
内田と鈴は同じ小学校出身で、学校のイベント‥林間学校の中で行われたオリエンテーリングの経験の中で、鈴は迷子になりやはり、泣いていたみたいだ。
「幼馴染みだからこそ、知るエピソードですね」
オリエンテーリングの話でクラスメイト同士の会話が進むと、
「はいはい、そこまで!!」
古庄教官がまだ、解散しておらず、説明も終わっていない事を言うと、クラスメイトはまた静まる。
「オリエンテーリングは元々訓練として始められたものなの」
「競技として順位を競うモノなんだけど、グループで行う登山ってイメージが広く浸透しているかもね」
横須賀女子のOGである平賀と福内が、横須賀女子で行われているオリエンテーリングの歴史と実情を語る。
「今回行う実習もグループ行動をしてもらいます。まず、四つのグループを作ってちょうだい」
オリエンテーリングは基本、グループ行動なので、まずはそのためのグループを作るように古庄教官は指示を出す。
「あの‥‥私たちはどうすればいいんでしょう?」
大谷は晴風クラスではない自分と加藤はどう行動すればいいのかを古庄教官に訊ねる。
「そうね‥‥せっかくだから参加で!」
「やっぱり!?」
「しかたないネ!!」
折角来たのだから、大谷も加藤もこのオリエンテーリングに参加する事になった。
「組み合わせはどうすればいいんですか?」
明乃がグループを決めるにあたってどうすればいいのかを古庄教官に訊ねる。
すると、古庄教官は、
「方法とグループメンバーはそちらに任せます。三分以内に四つのグループに分かれて整列するように」
グループを決める方法とメンバーは明乃たち、生徒に任せると言う。
「組み合わせは自由か‥‥どうします?」
「科で分けますか?ちょうど四つありますし‥‥」
真白がどうやってグループを決めるのかを訊ね、納沙は科が四つあるので、科ごとに分かれるかと言うと、
「でも、それだとグループごとに得意、不得意なことが偏っちゃうかも‥‥」
明乃は科で分けると、確かに四つのグループを作るのは早いが、それだとそれぞれ個人の得意、不得意によってグループのバランスが崩れる可能性があると指摘する。
「確かに、能力は均等に分けた方がいいかもしれませんね」
納沙も明乃同様、競技である以上、グループのバランスは均等にすべきだと言う。
「じゃあ、科ごとにグー・チョキ・パーで分かれてみよう!」
「いいのか?そんな決め方で‥‥」
明乃は科ごとのグループのではなく、科ごとにグー・チョキ・パーをして、それぞれグループを決めようと言うが、真白はなんか不安な様子‥‥
「四つに分かれるなら、グー・チョキ・パーじゃ、一つ足りないんじゃない?」
確かに姫路の言う通り、四つのグループを決めるのに、グー・チョキ・パーでは三つしか出来ない。
「あっ、そうか」
「なら、もう一つはコレぞな!!」
勝田がある提案をする。
「なにそれ?」
「フレミングだYO!!」
勝田は理科の教科書に載っているフレミングの法則を示す手の型をして、グループを決めようと言う。
そうこうしているうちに、
「あと一分!!」
グループを決める残り時間があと一分となり、
「と、とりあえず、みんな、それで分かれよう!!」
時間が無いので、急ぎ科で分かれ、グー・チョキ・パー・フレミングでグループを決める。
その結果、出来たグループは‥‥
グー・チームは、明乃をリーダーに、明乃、和住、加藤、美波、柳原、内田、姫路、日置
チョキ・チームは、真白をリーダーに、真白、小笠原、万里小路、黒木、若狭、伊良子、勝田、山下
パー・チームは納沙をリーダーに、納沙、杵崎ほまれ、松永、武田、等松、野間、伊勢、鈴、広田
フレミング・チームは、西崎をリーダーに、西崎、杵崎あかね、宇田、八木、立石、大谷、青木、駿河
四つのグループが決まり、
「よし、では、各グループに地図を配る」
古庄教官が、各グループにこの島の地図を配る。
「‥‥これが地図?」
明乃は配られた地図を見るが、地図は小島の形をしているが、島の中身は真っ白な妙な地図であった。
ただ、現在位置から四つのスタート地点までの道のりは書かれてある。
そして、ゴールに関しては現在位置ではなく、当然別の場所になる。
「ほとんど何も描いてないけど‥‥?」
「見て分かる通り、その地図は不完全です。各グループにはその地図をもってそれぞれ別の位置からスタートしてもらいます」
福内が各グループに渡された地図が真っ白な理由を話す。
「進む道にはチェックポイントが設置されていて、地図にはそのポイントのいくつかだけが表記されているので、道中、ポイントを見つけながら進み、地図と照らし合わせて、現在位置や方角を割り出し、最終地点に辿り着くこと!制限時間は三時間!内容は以上!では、解散!!」
古庄教官がオリエンテーリングの内容を説明し、各グループは指定されたスタート地点へと移動し、やがて開始時間になると、晴風クラスのオリエンテーリングが始まった。
明乃がリーダーのグー・チームが山野を歩いていると、美波が歩き辛そうだった。
「お、重い‥‥」
同じ晴風クラス所属であるが、美波はまだ十二歳‥世間では小学生である。
例え頭脳は大学生並みでも、肉体は年齢と同じ小学生女子並み‥‥
美波が他のクラスメイトより体力がないのも仕方がない。
今回、オリエンテーリングに参加した晴風クラスには、一人一個ずつ、荷物が入ったリュックが配られている。
当然、美波にもそのリュックが配られているが、彼女にはそのリュックが文字通り、重荷になっていた。
すると、美波のリュックを加藤が背負った。
晴風クラスではない加藤はそのリュックを配られていなかったので、丁度良かった。
「ジェニーが持つヨ!!」
「あ、ありがとう‥‥」
「you're welcome」
「しかし、これ、何が入っているんだ?」
柳原が重荷になっているこのリュックの中には何が入っているのか、背中に背負っているリュックをチラッと見る。
「あれ?見なかったの?」
内田は柳原にリュックを見なかったのかを訊ねる。
どうやら、柳原はリュックの中身を見ていない様だ。
「水とか食料、あとは発煙筒とかだね。非常時の準備だけど、今回はトレーニング用の重り代わりじゃないかな?」
明乃は事前にリュックの中を見ており、中に何が入っているのか?
そして、このリュックの役目を柳原に教える。
万が一、事故や遭難の際にはリュックの中に入っている発煙筒を焚き、古庄教官たちに事故が起きたことを知らせる。
水はこの夏の季節、山野を行軍するのだから、熱中症や脱水症状の対策の為に用意されていた。
しかもペットボトルが複数本‥‥
「悪かったな、ジェニー。こんなつもりで誘ったんじゃ、なかったんだが‥‥」
柳原が加藤に謝る。
彼女に今回のオリエンテーリングの話が来た時、既に 「晴風クラスのみんなで実習する」 が 「晴風クラスのみんなで遊びに行く」 に変換されていたのかもしれない。
「No problem!!山登りも楽しいネ!!」
しかし、加藤は気にしている様子はなく、むしろ山登りを楽しんでいた。
「虫よけスプレー持って来ればよかった。木が影になって、日焼けの心配はなさそうだけど‥‥」
日焼けを晴風クラスの中で一番と言っていいくらい気にしている内田は山の中で木々が影になってくれ、直射日光が当たらないので、日焼けの心配はなかったが、山の中なので、当然虫が居るので、やぶ蚊に刺されないか気にしていた。
「それにしても変わった実習だよね」
日置が海と関わりのないこの実習の意味に疑問を感じている。
「まぁ、特別実習だからねぇ~」
だが、姫路は特別実習なのだから、こういう変わった実習内容もあるのだと言う。
「みんな、足元に気をつけてね」
先頭を歩いている明乃はグループメンバーに足元に気をつけて歩くように注意喚起する。
「艦長は場慣れしていますね」
明乃が疲れている様子も道に迷っている様子もなく、スイスイと山道を歩くのを見た和住が声をかける。
「そんなことないけど‥‥昔、もかちゃんと色んな所を探検したのを思い出したら、ちょっと楽しくなっちゃって」
呉の養護施設時代、明乃はもえかと共に休日はよく野山や海を駆け回っていた。
今回のオリエンテーリングでその頃を思い出し、明乃自身も無意識のままテンションが上がっていた様だ。
「相変わらずだなぁ~艦長は」
柳原は海でも山でも変わらない明乃の姿に思わず笑みが零れる。
「ポジティブなのはよいことダネ」
加藤も柳原と同じ様子。
「ところで、ポイントってどこにあるんだろうねぇ~?」
姫路が辺りを見回してチェックするポイントとやらを探す。
「簡単には見つからないように隠されている可能性もあるよぉ~」
松永は、チェックポイントはそう簡単には見つからない可能性も示唆する。
「テキトーに進んでもいずれはたどり着けそうだけどな」
柳原は、ここは島なのだから、歩いていればいずれはチェックポイント、またはゴールに辿り着けそうだと言うが、
「うん‥‥だけど、制限時間もあるし、早いうちから位置を把握して最善の道を選ぶ必要があるから‥‥」
確かに今から三時間以内と言う制限時間がなければ、柳原の言う通り、歩き回っていれば、いずれはゴールに辿り着けるだろうが、こうして制限時間が設けられている以上、無駄な距離を歩いては体力と時間のロスになる。
「ポイントは出来るだけ、見つけて地図に記入するって、ルールもあるしね」
制限時間の他にもこの島の彼方此方に設置されているチェックポイントを地図に記入しなければならないと言うルールもあるので、ただやみくもに歩きながらゴールを目指すと言うモノでもないみたいだ。
そう言う意味では、このオリエンテーリングも航海に似ている。
「もしかして、少し道を外れないと見つけられないかも‥‥」
チェックポイントはおそらく立て札や板に書かれているだろう。
そして、その立て札や板は木々の葉の中、茂みに隠されている可能性が高い。
「この辺りで一度探してみる?」
「そうだね」
ひとまず、次の行き先を決める為、明乃たちはこの辺にチェックポイントがないか、周辺を捜索することにした。
(思い出すなぁ~あの頃の事を‥‥)
(そう言えば、シューちゃんと出会ったのもちょうど、この時期だったなぁ~)
明乃はチェックポイントを探しながら、シュテルと出会った頃を思い出した。
明乃ともえかの二人がシュテルと出会ったのも、夏休みの頃だった‥‥
小学生の夏休みは早朝のラジオ体操から始まり、十時までは家で勉強、十時を過ぎてからお出かけすることが出来る。
この日、明乃ともえかも、朝早くに起きて、同じ施設に入所している子供らと共にラジオ体操をして、朝食を食べた後、夏休みの宿題のドリルを夏休み前に決めた計画どおりのページまで終わらせてから、外に出かける。
施設生活を送っているので、パソコンやゲーム機を個人で持っているわけではなく、ロビーに共有のゲーム機やパソコンがあったが、明乃も、もえかもどちらかと言うとアウトドアな性格なので、基本的に二人は野山や海を駆け回っていた。
そして今日は近所の山に行くことになっていた。
施設の職員から、お小遣いをもらい、山に行く前に、お菓子と飲み物を買おうと普段、通い慣れている駄菓子屋へと行く。
すると、駄菓子屋の前に置いてある自販機の前に麦わら帽子をかぶり、Tシャツにハーフパンツを履いた子が居り、自販機の商品を見てなんかがっかりしているように見えた。
「あれ?誰かいる」
「ん?見たことのない子だね」
この駄菓子屋は明乃ともえかがお世話になっている施設に近い為、主に施設に居る子供らが常連客となっている。
勿論、施設に居る子供以外にも近所の子供たちもこの駄菓子屋は利用している。
しかし、今、自分たちの目の前で自販機の商品と睨めっこしている子は施設に居る子供ではないし、近所でも見たことのない子だった。
「はぁ~‥‥やっぱり、広島だからマッ缶は置いてないかぁ~‥‥ん?」
自販機の商品と睨めっこしていた子が自分たちの存在に気づき、顔を向けてきた。
その子の目は海のように蒼い目をしていた。
これが、明乃ともえか、そしてシュテルの初めての出会いだった。
転生者組がそれぞれ転生者だと気づく 気づかない
-
気づく
-
気づかない