やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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今回はストライクウィッチーズシリーズより、ハンナ・ルーデルがゲスト出演いたします。


106話

此処で視点は神奈川県の横須賀から、千葉へと移る。

 

 

総武高校の海洋学科も横須賀女子のRat事件の影響を受けてカリキュラムが遅れ、普通科、国際教養科よりも夏休みの開始が遅くなった。

 

夏休み中の総武高校の校舎は、一学期の成績が悪かった者の補習と海洋学科の生徒の補習が行われ、校庭では部活動に勤しむ生徒たちの声が響いている。

 

そして、総武高校の海洋学科の補習もようやく今日で終わった中、雪ノ下と由比ヶ浜、葉山の後世奉仕部のメンバーは、奉仕部の部室に集まっていた。

 

「はぁ~やっと、夏休みだぁ~」

 

由比ヶ浜は奉仕部の部室の椅子に座り、伸び伸びと両手を上げて背伸びをしながら、明日から待ちに待った夏休みに入ることを体一杯に表現して喜ぶ。

 

「そうね‥‥」

 

雪ノ下もこの炎天下の中にもかかわらず、紅茶が入ったカップに口をつける。

 

「まったく、横須賀の海洋学校のせいで、他の人よりも夏休みが遅れて、チョーサイアク。ねぇ、葉山君、横須賀の海洋学校に迷惑料か慰謝料ってもらえないの?」

 

「い、いや、流石にそれは難しいんじゃないかな?」

 

由比ヶ浜は夏休みの日数が減ったので、横須賀女子に慰謝料を請求できないかと、問うが葉山は、それは難しいと言葉を濁した。

 

「むぅ~‥‥そうなんだ‥‥あっ、夏休みと言えば、ゆきのん」

 

「何かしら?」

 

「前の世界だと、千葉村の‥留美ちゃんの件があったけど‥‥」

 

「そうね‥‥でも、私はもしかしたら、今年の夏は日本に居ないかもしれないの」

 

「えっ?日本に居ないって、ゆきのん、どこかに行くの?」

 

雪ノ下は今年の夏は、日本に居ないかもしれないと由比ヶ浜に伝える。

 

「ええ、まだ決まった訳じゃないけど」

 

「えぇーそうなの?」

 

由比ヶ浜は雪ノ下が千葉村に行けないかもしれないことに残念がる。

 

雪ノ下は去年、行けなかったイギリスのダートマス校の体験入学に今年は参加しようとしていたのだ。

 

「でも、大丈夫かな‥‥?」

 

由比ヶ浜は雪ノ下が千葉村に来ないのであれば、前世での千葉村の一件‥‥鶴見留美のいじめ問題の解決が不安な様子だった。

 

「大丈夫よ。葉山君も居るし、解決案も彼は熟知している筈よ。そうでしょう?」

 

「あ、ああ‥‥もう、前の世界と同じ過ちはしないさ」

 

「でも‥‥」

 

「それに川崎さんの件で、鶴見さんが千葉村に来ない可能性だってあるでしょう?」

 

「そ、そうだね」

 

これまでの依頼を振り返ってみると、確かに登場人物は、前の世界と同じなのだが、その行動は、前世とは全く違う。

 

その違和感にようやく気づき始めた奉仕部メンバー。

 

先の川崎の一件から、この世界の千葉村には、もしかしたら、留美は不参加かもしれないと言う可能性も出てきた。

 

それに留美が千葉村に参加していても、前世で彼女のいじめ問題の解決に当たった経験があるメンバーが居るので、大丈夫だろうと言う思いもある。

 

「彩ちゃんと優美子‥‥は、来るのかな?」

 

由比ヶ浜は、前世では奉仕部メンバーの他に葉山たちのグループメンバーも来たので、彼らがこの後世でも来る可能性がある事を示唆する。

 

「どうだろう‥‥戸塚君と優美子は、部活がこの世界では随分と忙しそうだからな‥‥」

 

葉山はこの世界では、戸塚と三浦は来ないかもしれないと言う。

 

「まぁ、あんな粗暴な猿が来ても大して役に立たないからいいけど‥‥」

 

雪ノ下は別に戸塚と三浦がこなくても千葉村の‥‥留美の件には影響がないと判断する。

 

「彩ちゃんと優美子は来ないかもしれないけど、その代わりにサガミンと戸部っちたちは来るのかな?」

 

由比ヶ浜は戸塚と三浦が来ない代わりにこの世界の葉山グループのメンバーは、前世同様来る可能性はある。

 

「雪ノ下さんが相模さんと馬が合わないのは知っているけど、留美ちゃんの依頼に関しては人数が必要だからね」

 

葉山は留美の虐め問題の解決には、小学生を脅す人数が必要な為、今の葉山グループのメンバーに声をかけなければ、ならなかった。

 

戸部、大岡、相模あたりは、葉山が提案すれば、すんなりと協力するはずだからだ。

 

こうして、夏休みの千葉村でのボランティア活動に関しては、留美が来れば、前世と同じ方法で彼女のいじめ問題を解決し、彼女が千葉村に来なければ、何もせずにスルーと言う事にする方針で決まった。

 

奉仕部メンバーが夏休み中に行われるであろう千葉村の件で話し合っていると、

 

「邪魔するぞ」

 

平塚先生が、奉仕部の部室に入ってきた。

 

「先生、何度も言っているように、入る前にはノックして下さい」

 

「まぁ、いいじゃないか。それに君はいつもノックをしても返事をしないではないか」

 

雪ノ下は、平塚先生に入室前にノックをするように注意を促す。

 

平塚先生と雪ノ下のこの様なやり取りは、この後世でもこれまで何度も見ている光景だった。

 

(学習能力が皆無な独神だな、結衣と同レベルの無能教師め‥‥だから、お前はいつまで経っても独神なんだよ)

 

雪ノ下と平塚先生のやり取りを見て、葉山は内心で平塚先生を見下していた。

 

(まぁ、無能でプライドだけは高いから、御しやすいんだけどな。ちょっと、教師と言うプライドを褒めるだけで、簡単にこちらの都合のいいように動いてくれる)

 

葉山は目を細めながら見て、平塚先生を小馬鹿にしたように僅かに口を歪めた。

 

「それで、先生。今日は何の用ですか?依頼ですか?」

 

雪ノ下は、平塚先生に今日、部室に来た要件を訊ねる。

 

用もなしに平塚先生がこの奉仕部の部室に来るはずがないからだ。

 

最も、雪ノ下は平塚先生が何の用出来たのかは概ね見当がついていた。

 

「ああ、その事なんだが、実は夏休み中に千葉の小学校のサマーキャンプがあり、高校生のボランティアを募集している。場所は群馬県の千葉村だ」

 

ここまでの平塚先生の話で、前世と同じ千葉村で行われるサマーキャンプだと奉仕部メンバーは、そう直感した。

 

「そこで、奉仕部の合宿と言う形で、このボランティアに参加してもらいたいと思う」

 

前世では、八幡は、サマーキャンプ当日までこのボランティア活動の件を知らされていなかったことから、前世では雪ノ下と由比ヶ浜、そして八幡の妹の小町には、平塚先生が電話かメールを送ったのだろう。

 

しかし、この後世ではこうして平塚先生がわざわざ奉仕部の部室を訪れて千葉村のボランティアの件を伝えに来たのは、Rat事件の影響で海洋学科だけが、夏休み期間が他の学科とズレたことで、こうして奉仕部の部室を訪れ、ボランティアの件を伝えに来たのだ。

 

葉山たちには恐らく終業式の時にでも話したのだろう。

 

「それで、どうだろうか?」

 

「分かりました。そのボランティアの日はいつなんですか?」

 

「うむ、ボランティアの期日は‥‥」

 

と、平塚先生は奉仕部メンバーに千葉村でのボランティア活動の日時を伝える。

 

「あっ、先生」

 

「ん?なんだ?雪ノ下」

 

「私はもしかしたら、千葉村でのボランティア活動には参加できないかもしれません」

 

「ん?何故だ?」

 

雪ノ下は平塚先生に千葉村でのボランティアには参加できないかもしれない事を伝える。

 

「実は、イギリスのダートマス校の体験入学に申し込みをしていまして‥‥」

 

「ほぉ~イギリスのダートマス校か‥‥」

 

海洋学校、海洋学科の関係者であるならば、イギリスのダートマス校の名前とその学校のレベルは知っている。

 

体験入学であるが、総武高校からダートマス校へと行くのは、なによりの宣伝となる。

 

「分かった。雪ノ下はそのダートマス校の体験入学の件が判明したら、改めて連絡をくれ」

 

「はい」

 

「あっ、先生」

 

次に葉山が平塚先生に声をかける。

 

「なんだ?」

 

「ボランティアの人数ですが、足りていますか?」

 

「む?雪ノ下は来るか分からなく、由比ヶ浜と葉山の二人だけか‥‥」

 

平塚先生は考え込む。

 

ボランティアなのだから、バイト代を支払う必要はないし、小学生とはいえ、沢山来れば、由比ヶ浜と葉山の二人では、手が回らない可能性が高い。

 

「当てはあるのかね?」

 

「ええ」

 

「ならば、頼めるか?」

 

「はい」

 

葉山は早速、自らのグループメンバーに連絡を入れる。

 

すると、葉山からのお誘いと言うことで、グループのメンバーは即答で千葉村でのボランティア活動に参加すると言ってきた。

 

「先生、戸部、大岡、相模さんもボランティアに参加します」

 

「そうか」

 

「ええ、ただ、ボランティアに参加するわけですから、内申点の方もよろしくお願いします」

 

「ああ、いいだろう」

 

葉山は、グループのメンバーの内申点も上げてくれと頼んだ。

 

勿論、それはグループメンバーに恩を売り、自分の信頼を勝ち取るための策であった。

 

 

 

 

その日の夜、雪ノ下は両親に今年のダートマス校の体験入学の件を訊ねる為、一人暮らしをしているマンションから、実家に連絡を入れた。

 

「今年のダートマス校の体験入学の件はどうなりました?」

 

「雪乃‥‥それが‥‥」

 

受話器の向こうからはすまなそうな父親の声がした。

 

それによると、雪ノ下のダートマス校の体験入学の件は無理だと言う。

 

それを聞いて、雪ノ下は、

 

「なんで!?どうしてなの!?」

 

と、発狂するかのように怒声を上げ、何故自分がダートマス校の体験入学に参加出来ないのか、その理由を訊ねる。

 

父親が言うには、総武高校自体が特にダートマス校との交流が無い事、

 

そして、雪ノ下自体が成績は良いが、ただそれだけで、ダートマス校ではそんな生徒は珍しくもなく、社会的貢献も実績がない事だった。

 

シュテルの場合、中等部の頃、イタリアで臓器密売をしていたイタリアマフィアの摘発とヴィルヘルムスハーフェン校との親善試合にて、ブリジット率いるダートマス校メンバーの艦隊を撃破し、その試合でMVPを獲得した事が体験入学の査定で合格したのだ。

 

「本家の‥西住家にも頼んでくれたの!?」

 

例え、ダートマス校と交流が無い総武高校でも、交流があるはずの横須賀女子に子供が通っている西住家の尽力があれば、自分もダートマス校の体験入学くらいはできる筈だと思っていた。

 

「もちろん、頼んだ。し、しかし‥‥」

 

当然、雪ノ下家も本家である西住家に雪ノ下を推薦してくれと頼んだが、西住家当主の 西住しほ は、

 

「それぐらい、自分の実力で勝ち取りなさい」

 

と、言われ更に‥‥

 

「それに、雪ノ下さんの娘さん‥‥雪乃さんでしたっけ?‥‥その娘さんに関しても怪しい噂を聞きましたけど?‥‥まぁ、他所様の家の事なので、深くは言及しませんが、我が家に迷惑がかかることがあれば、容赦は致しませんから‥‥よろしいですね?」

 

と、まで言われてしまった。

 

西住家では、雪ノ下たちが関与したエンジェルラダーでの一件を何処から聞きつけており、当然その解決策も知っていたようだった‥‥

 

エンジェルラダーの件をしほから言われ、雪ノ下の親はすぐに西住家からの援助を早々に諦めたのだった。

 

エンジェルラダーでの解決策を雪ノ下本人は知らず、本家である西住家が知っている事も雪ノ下本人は知らなかった。

 

雪ノ下の親は、娘である雪ノ下本人に余計な心配事を抱かせないためにこの件を黙っていた。

 

よって、西住家から援助を受けられない事については、しほの 「自分の実力でなんとかしろ」 と言われたことだけを伝えた。

 

ついでに、今年のダートマス校の体験入学も諦めるように言われた。

 

ダートマス校の体験入学がダメだったことから、雪ノ下は、泣く泣く平塚先生に千葉村でのボランティア活動に参加する旨を伝えた。

 

通常ならば、見栄を張って、行きもしないダートマス校の体験入学に参加すると嘘をつく様なモノだが、プライドが高いと言うか、彼女自身公言していた、

 

「暴言も失言も吐くけれど、虚言だけは吐かない」

 

を体現した。

 

平塚先生は雪ノ下が千葉村でのボランティア活動に参加する事を喜んでいたが、連絡を入れていた彼女自身は、屈辱感を感じていた。

 

そして、自分のダートマス校の体験入学に援助をしてくれなかったみほの実家、西住家を益々恨んだ。

 

 

 

 

此処で、視点を千葉から、神奈川県の横須賀に移る。

 

 

明乃たち、晴風クラスの生徒たちが、小島で特別実習をしている頃、シュテルは、Rat事件の影響で遅れた講義の補習が終わった後、シュテルたち、留学組にも特別実習のような内容のカリキュラムがあった。

 

ボォォォォォ~!!

 

その日、横須賀女子の港湾区画に一隻の大きな軍艦が入港してきた。

 

その艦は、艦上に艦橋以外ほとんどの構造物が無く、艦自体の構造も通常の軍艦と異なる形状をしていた。

 

艦橋も通常の艦橋と煙突が一体となっている。

 

船体の上部構造物は、広大な道路と船体が一体となっている。

 

そう、この日入港してきた軍艦は前世では、航空母艦‥‥空母と呼ばれる艦種の軍艦だった。

 

しかし、この後世では、飛行機というモノが存在しないので、空母と言う艦種は存在しておらず、形状は空母であるが、艦種は飛行船支援艦と呼ばれている。

 

今日入港してきた飛行船支援艦は、前世のアメリカ海軍の原子力空母ニミッツ級の船体にドイツの飛行船支援艦、グラーフ・ツェッペリン級の艦橋を取り付けた形状をしている、ドイツ海軍のフォン・リヒトフォーヘン級飛行船支援艦であり、ドイツ本国から、新型の連絡用自走気球の輸送を行い、横須賀女子に留学組が居ることから、その新型連絡用自走気球を留学組の艦と横須賀女子に納品するために来たのだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

そして、留学組は、その新型連絡用自走気球の操縦講習があったのだ。

 

留学組の他に、横須賀女子には二隻の飛行船支援教育艦が配備されており、その艦のクラスメイトたちも参加しており、後は受講希望者が参加している。

 

講習は、いきなり自走気球の操縦‥‥と言うわけではなく、まずはその自走気球の構造の理解とビデオによる操縦仕方を視聴した。

 

なお、この時、講師をしたドイツの軍人は‥‥

 

「私が今回の講習を担当する、ハンナ・ルーデルだ」

 

ジェリコのラッパを吹き鳴らすような家名の軍人で、顔には横一文字の傷があった。

 

その顔のインパクトに、初めて見た時には、受講者全員が唖然としていた。

 

そして、座学が終わり、いよいよ実戦‥‥

 

実際に新型の自走式気球の操縦となる。

 

それにあたって、講習生たちには、飛行服が配られた。

 

ツナギの様な飛行服に首に巻く白いスカーフ、飛行帽に飛行ゴーグル。

 

そして、その上からは実習地が海上と言うことで、救命胴衣も身に着ける。

 

(真夏にこの服装は暑いな‥‥)

 

実際に空の上を飛べば、地上よりも気温が下がるだろうが、空に上がる前はやはり暑い。

 

「‥‥」

 

「ん?シュテルンどうしたの?」

 

飛行服に着替え、自走式気球があるフォン・リヒトフォーヘンに向かう中、シュテルはチラチラと後ろを気にしている。

 

その様子にユーリが気づき、声をかける。

 

「あっ、いや、何か背後から視線を感じて‥‥」

 

「視線?」

 

ユーリが後ろを振り向くが、特に不審な人物は見当たらない。

 

真白の誘拐事件以降、真白本人がシュテルの事を見つめて、その姿を見た黒木がシュテルの事を睨む光景はあるが、今はその真白も黒木も小島に特別実習に向かっており、ここには居ない。

 

よって、シュテルが感じた視線は二人のモノではない。

 

しかし、シュテルが感じた視線は特に殺気や憎しみがこもった視線ではないので、害はないだろうと思い、シュテルはそのまま放置していたが、

 

「だ~る~ま~さん~が‥‥ころんだ!!」

 

「っ!?」

 

シュテルが後ろを振り返ると、ワンテンポ遅れて、自分たちと同じく飛行服を着た横須賀女子の生徒が物影に隠れた。

 

飛行帽を被っていなかったので、髪はモジャモジャと特徴的な髪をした女子生徒だった。

 

(さっきから感じていた視線はあの子か‥‥でも、知り合いではないな‥‥)

 

此処に居ることから、あの女子生徒は横須賀女子の生徒なのだろうが、シュテルは面識がなかった。

 

もし、自分に何か用があるのであれば、向こうから声をかけてくるだろうと思い、シュテルはひとまず、あの女子生徒の事は置いておいた。

 

飛行船支援艦、フォン・リヒトフォーヘンが停泊している横須賀女子の港湾区画には、フォン・リヒトフォーヘンの他に横須賀女子に所属する飛行船支援艦も停泊していた。

 

日本の主だった海洋学校には平均で二隻の飛行船支援艦が所属しており、横須賀女子には、飛龍 と 龍驤 の飛行船支援艦が所属していた。

 

海洋学校に所属する学生艦は主に、旧海軍からの払い下げした軍艦が採用されている。

 

シュテルが八幡だった頃、彼はミリオタではなかった。

 

理系よりも文系が得意であっても近代史に関しては教科書に載っているレベル以上の事を個人的に調べることはなかった。

 

また、彼はアプリゲームで、美少女に擬人化した第二次世界大戦時の軍艦のゲームをプレイすることもなかったので、有名な大和級戦艦以外は特に知らず、故に飛龍と龍驤を見ても特に興味を示すことはなかったのだ。

 

しかし、今、シュテルの目の前に停泊している飛龍も龍驤も実際は有名な艦でもあった。

 

 

飛龍‥‥この世界では、空母ではなく、飛行船支援艦と言う艦種となっているが、八幡だった前世の世界では、日本が建造した航空母艦の一隻で、太平洋戦争開戦当初から、蒼龍と共に第二航空戦隊として、南雲機動部隊の一隻に所属し、活躍した艦だった。

 

真珠湾攻撃の帰りの際には、蒼龍と共にウェーク島攻略にも参加した。

 

ミッドウェー海戦では、赤城、加賀、蒼龍がアメリカ軍の急降下爆撃で炎上する中、幸運にも攻撃を免れ、アメリカ軍に一矢報いる奮戦をし、最終的にアメリカの空母、ヨークタウンを撃沈させる結果を引き出すも、他の日本空母同様、ミッドウェーの海に沈み、艦長の加来止男、第二航空戦隊司令官、山口多聞も沈みゆく飛龍に残り、運命を共にした。

 

このミッドウェー海戦は太平洋戦争における日本とアメリカのまさに転換点となり、この海戦以降、日本の敗退が始まった‥‥

 

艦の形状に関して、当初は先に建造された蒼龍と同型にする計画であったが、構造上の問題の解消として、建造計画を変更して、改・蒼龍型空母‥飛龍型空母として建造された。

 

当初は、蒼龍の問題点を改良したと思われたが、実際に問題もあった。

 

蒼龍の舵は一枚舵で、飛龍は二枚舵を採用した。

 

これは、一枚舵装備の駆逐艦の旋回能力が劣っていたと言う理由から、飛龍は二枚舵となったのだが、実際に航行してみると、逆に旋回半径が大きくなってしまった。

 

改良の筈が改悪になってしまったのだ。

 

また、艦橋の設置位置に関して、飛龍は前世(史実)の日本が建造した空母の中で、赤城と共に左側の中央に設置されていた。

 

だが、この配置は搭乗員には評判が悪かった。

 

着艦を行う際、飛行機は左回りにアプローチするようになっている。

 

艦首から左旋回して艦尾に向かう場合、左舷中央部にある艦橋が近くに見える為、突っ込みそうな感じを受けたからだ。

 

また、排煙による視覚悪化も悪評を呼んだ。

 

赤城も似た理由で艦橋の設置位置に関しては評判が悪く、飛龍以降の空母はすべて、右側に艦橋が設置されるようになっている。

 

飛行機がないこの世界では、着艦のアプローチ問題はないが二枚舵と言う事で旋回性能に関しては、前世の飛龍同様、蒼龍と比べると劣っている問題は解消されていなかった。

 

 

龍驤‥‥空母としては鳳翔、赤城、加賀に次いで日本が建造した四隻目の空母で、鳳翔に次いで、日本が建造した小型空母。

 

当初の計画では格納庫一段で航空機約二十四機を搭載する予定を建造中に格納庫を二段にして搭載機を三十六機に増し、復原性確保のために小型のバルジを装着した。

 

その為、排水量が増えた。

 

さらに公試中の転舵の際には船体が大きく傾き、救命艇が波に叩かれて破損し、安定性が問題にされたが直ちに改装されることはなく、重油の使用制限をするなどして一応就役した。

 

龍驤の外観における最大の特徴は、艦橋構造物は飛行甲板上にはなく、外洋航海に支障をきたさない飛行甲板最前部直下に設置されていた。

 

その他に、比較的小型の船体に収まりきらないほどの大型の上部構造物を持つことである。

 

正面から見た際には、細身の船体の両脇に取り付けられた高角砲と二段の格納庫などから逆三角形の奇観を呈している。

 

艦首と艦尾の乾舷が低く、特に艦尾の乾舷は著しく低い。

 

第四艦隊事件と呼ばれる演習中に台風に巻き込まれる遭難事件の際には、波浪により格納庫後端の扉を破壊され、一時は危機に瀕した。

 

事件後は改装されるもその影響で速力が事件前よりも大幅に減じた。

 

このような問題点があるためなのか、龍驤には同型艦は存在していない。

 

前世(史実)では、日中戦争における航空支援を行い、太平洋戦争開戦時ではアリューシャン作戦に参加、その後は主に南方戦線に参加し、第二次ソロモン海戦で撃沈された。

 

この世界では、航空機が存在せず、空を飛ぶ乗り物は飛行船、気球しか存在しないはずなのに、なぜか形状は第四艦隊事件後の形状をしていた。

 

実際に、学生艦となる前、この世界でも第四艦隊事件が起きており、改装された理由は分かるが、その他の形状もほぼ同じ形という事は、例え前世とすべて同じではないながらも、共通する一つの点と言うことなのだろう。

 

 

 

 

フォン・リヒトフォーヘンの甲板に上がったシュテルたち。

 

そこには、今回の実習目的である自走式気球が置かれていた。

 

「これが、今回諸君らが搭乗する自走式気球の 『メーヴェ』 だ!!」

 

多くの生徒が物珍しそうに見ているが、前世の記憶を引き継いでいるシュテルは、

 

(あれは、どう見ても気球じゃないよな‥‥ゴンドラの部分だけでも空が飛べるんじゃないか?)

 

そう思えるような形状をしていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

その後、実習参加者たちは、当初、自走式気球の組み立て方を学び、次に教官が最初に操縦し、実習参加者は後部座席に搭乗し、実際に空を体験する。

 

そして、いよいよ実習参加者が自走式気球を操縦する番となる。

 

「では、これより実際に諸君らには機体に乗り、操縦してもらう」

 

ハンナが実際に機体に乗る実習訓練に入ると宣言する。

 

その言葉を聞き、飛行船支援艦クラス以外の生徒は緊張した面持ちとなる。

 

「飛行船乗り以外の生徒諸君にとっては、初めての空の経験になるかもしれないが、上がってしまえばどうって事無い!!自転車だってそうだろう?一度乗ったらコツは一生忘れないものだ!!」

 

緊張を和らげるためなのだろう、そう宣言した。

 

(本当に大丈夫なのか?)

 

しかし、シュテルとしては、やはり不安はどうも拭えなかった‥‥

 

だが、このまま乗らずに見ているだけでは、この実習の単位も免許ももらえないので、乗るしかなかった。

 




今回シュテルたちが講習を受けている自走気球のメーヴェですが、メーヴェはドイツ語で、日本語に直すとカモメと言う意味です。

転生者組がそれぞれ転生者だと気づく 気づかない

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