やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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引き続き後世千葉村編です。


110話

 

 

前世同様、夏休みに群馬県にある千葉村へと小学校のサマーキャンプのボランティア活動に参加している総武高校奉仕部のメンバー。

 

そのサマーキャンプにて、これまた前世同様、クラスメイトから孤立していた鶴見留美の姿もその中にあった。

 

このボランティア活動に参加する前、雪ノ下も由比ヶ浜も千葉村では鶴見留美のいじめ問題は発生するかと思っていたが、これまで奉仕部が行ってきた戸塚と川崎の前世と異なる依頼の経緯と今回のボランティア活動に参加したメンバーが前世と異なる事から、由比ヶ浜は雪ノ下にこの千葉村でも前世と同じ様に留美のいじめ問題は起きるのかと疑問視していることを告げる。

 

雪ノ下も由比ヶ浜の言う事は最もだと納得した。

 

そこで二人はこの千葉村での主要人物である留美もよくよく観察してみると前世では同じ班のメンバーから無視されていた留美であるが、この世界では同じ班のメンバーから普通に声をかけられていた。

 

雪ノ下と由比ヶ浜がこの世界で留美のいじめ問題が起きるのだろうかと疑問視したのはこの光景を見たことも理由の一つだった。

 

雪ノ下は当然、同じ奉仕部のメンバーである葉山にもこの事を伝え、この後世世界では留美のいじめ問題は起きないかもしれないことを伝えるが、葉山は逆に雪ノ下からの忠告に対して疑問視していた。

 

葉山としては前世同様、留美のいじめ問題は起きるモノだと信じていた。

 

夕食後のミーティングで、葉山は留美の事をボランティア活動に参加した総武高校のメンバーに伝える。

 

だが、雪ノ下と由比ヶ浜はそれでも留美のいじめ問題に関しては懐疑的な姿勢を貫いた。

 

「ゆきのん、大丈夫かな?」

 

ミーティングが終わり解散となると総武高校のメンバーは各々のコテージに戻る。

 

その最中、由比ヶ浜は雪ノ下に声をかける。

 

由比ヶ浜としては葉山が留美のいじめ問題を疑問視している事から何かやらかすのではないかと不安だった。

 

先程のミーティングにて、雪ノ下は奉仕部の合宿という事で同じ奉仕部の部員である葉山に対して、「勝手に行動するな」 と釘を刺した。

 

だが、葉山はどうも諦めは悪いというか変な所で頑固な一面がある。

 

雪ノ下が釘を刺したからと言って、すんなりと諦めるだろうか?

 

とは言え、前世同様、留美がいじめられているならば、変な言い方になるが、『良し』 とするが、もし留美が前世と違いいじめられていなければ、前世で八幡が立案し、留美の為に実行したあの手段を取るのはいささか危ないかもしれない。

 

なにせ、無害な小学生を高校生が恫喝する訳なのだから‥‥

 

雪ノ下と由比ヶ浜が今回の千葉村のボランティア活動に一抹の不安を感じながらも一日目は何事もなく無事に終わった。

 

 

翌朝‥‥

 

前世では八幡が寝坊して戸塚が起こしに行ったがこの世界では、その両者が今回のボランティア活動に参加していないので寝坊者を出すこともなく、朝食を摂るため全員食堂に集まった。

 

そして食事が終わると今日の予定の確認から入る。

 

「さて、今日の予定を説明するぞ。小学生たちは、昼間の間は自由行動で夜は肝試しとキャンプファイヤーだ。君たちはキャンプファイヤーの準備と肝試しの手伝いをしてもらう」

 

「せんせー、肝試しの手伝いって、私たちがお化け役をやるってことですか?」

 

相模が平塚先生に肝試しについて質問する。

 

「そうだ。まぁ、仮装セットも用意されているから、肝試しの準備は直前でも構わない。キャンプファイヤーの設置について説明をするから男性陣はついてきたまえ。女性陣は昼食まで自由時間で構わない」

 

前世同様、自分たち高校生は肝試しのお化け役で、昼間の内に男性陣はキャンプファイヤーの準備となった。

 

とは言え、キャンプファイヤーに使用する焚き木は事前に用意されていたので、その焚き木をキャンプファイヤーの場所まで持っていき櫓を組む作業となる。

 

作業自体は葉山たちが体育会系の男子であることから、そんなに時間はかからず、キャンプファイヤーの準備はすぐに終わり男性陣たちも女性陣たちが待つ川辺へと向かった。

 

川辺では先に来ていた女性陣たちが水着姿で遊んでいた。

 

(雪乃ちゃんの水着姿‥‥)

 

葉山は当然、雪ノ下の水着姿に目を奪われていた。

 

「うぉ!!やっぱ、結衣の胸は迫力あるっしょ!!」

 

「まぁ、服を着ていてもあれだけの大きさだからな」

 

一方、戸部と大岡は由比ヶ浜の水着姿に興奮していた。

 

「相模さんもそれなりにあるけど‥‥」

 

「ああ、相模さんはあの性格だからな‥‥」

 

葉山グループ内では前世と異なり、既にこの頃から僅かな亀裂が生じ始めていた。

 

それは、やはり相模が原因となっていた。

 

三浦の場合、確かに口が悪く取っ付きにくい性格の様に思えたが、この世界でテニス部のマネージャーをやっているように三浦は世話好きなオカン気質も備えており、そう言った一面が意外と葉山グループの輪を保つ一因となっていた。

 

しかし相模の場合、オカン気質を抜いた三浦‥まさに絵に描いたような我儘女王であり、葉山の彼女気取りな所が葉山グループからのメンバーからも煙たがられる存在となっていた。

 

ただし、葉山は相模の事を前世の三浦同様、女避けとして使用しており、その効果は前世の三浦以上の女避けとして機能していたので我慢していた。

 

また他のメンバーも葉山が相模を重宝している様に見えたので、葉山に対して相模をグループから追放する進言を怖くて出来なかった。

 

「あっ、は~や~ま~くぅ~ん!!」

 

相模が葉山の事を見つけると、相模が近づき、

 

「ねぇ、ねぇ、この水着似合う?今日の為に新しく買ったんだ~」

 

葉山の腕に絡みつき、自身の胸を当てる。

 

いわゆる、『当ててんのよ』 ってやつだ。

 

戸部も大岡も由比ヶ浜ほどではないが、それなりにある相模に水着越しとは言え、胸を押し当てられている葉山の事をちょっと羨ましがる。

 

葉山は雪ノ下がこの光景を見て、焼きもちを焼くのではないかと思ったが、意外にも雪ノ下の反応は無反応であり、焼きもちを焼くことはなかった。

 

しばらくの間、総武高校のメンバーは川辺で遊んでいたが、葉山はチラチラと雪ノ下以外にも周囲の木陰をまるで何かを探すかのような仕草をしていた。

 

それは、留美の事を探していたのだ。

 

前世では二日目の朝、留美が起きた時、他の班のメンバーはまだ眠っている留美を起こす事無く、彼女一人を置いて行ってしまい自由時間を留美は一人で過ごすこととなった。

 

そんな留美は総武高校のメンバーが遊んでいる川辺の近くの木陰に居たのを八幡が見つけ声をかけていた。

 

しかし、この後世ではその留美の姿が見つからなかった。

 

すると、川辺からはいつの間にか葉山の姿は消えていた。

 

「あれ?葉山君は?」

 

相模のほんの僅かな隙を見て、葉山は川辺から留美を探しに行ったのだ。

 

その葉山の目的である留美本人はと言うと‥‥

 

彼女は雪ノ下や由比ヶ浜が考えた様に前世の鶴見留美とは異なり、いじめられてはおらず、二日目の朝も同じ班のメンバーから起こされ、そのメンバーたちと思い思いの時間を過ごしていた。

 

ただ、留美は同じ班のメンバーよりも体力がなかったのか、一人木の陰で休憩していた。

 

「ふぅ~‥‥疲れた‥‥あの二人、羽目を外し過ぎ‥‥」

 

木の陰で、一息つきながら同い年ながら自分と班のメンバーの体力差について愚痴る。

 

普段の学校の環境とことなるサマーキャンプの環境に留美の班のメンバーは、同級生たちと共に大はしゃぎな様子‥‥

 

しかし、留美は班のメンバーや同級生についていくほどの体力はなかったので、こうして木の陰で休んでいるのだ。

 

留美が木の陰で休んでいると‥‥

 

「やあ、鶴見さん」

 

葉山が留美を見つけて彼女に声をかけてきた。

 

(またこの人‥‥?)

 

(と言うか、なんでこの人、私の苗字を知っているの?)

 

留美は、昨日の昼食の時もいきなり声をかけてきたこの男子高校生に段々と不審感を募らせてきた。

 

何しろ、この高校生は自分の名字を知っていたのだ。

 

自分はこの高校生にフルネームを教えた覚えはない。

 

「なに?」

 

留美は警戒する様な感じで葉山に返答する。

 

「こんなところでどうしたの?他の班の人は?」

 

「‥‥別にいいでしょう?どうして他人の貴方に言わないといけない訳?」

 

「あっ、いや、それはそうだけど‥‥ねぇ、何か悩んでいる事はないかい?」

 

葉山は笑みを絶やさず、優しめな口調で留美に訊ねる。

 

総武高校に通う女子高生にとっては、今の留美の状況はまさにお金を払ってでも変わってほしいポジションなのだろう。

 

「特にない」

 

しかし、留美にとっては不審者が声を掛けているのと変わらない感覚だった。

 

「えっ?いや、そんな筈は‥‥本当に悩みは無いのかい?例えば、いじめに遭っているとか?」

 

「はぁ?貴方、何言ってんの?」

 

葉山は絡め手ではなく、直接留美に学校でいじめに遭っているのではないかと問う。

 

すると、葉山の問いに留美は呆れたようか顔で返答する。

 

彼女として見れば、どうして自分がいじめに遭っていると言う結論に達しているのか理解できなかった。

 

しかし葉山は、

 

(しまった、いじめ問題はデリケートな問題だった‥‥彼女の場合、雪乃ちゃんと同じように意固地な部分があるから、自分がいじめられているなんてそう簡単に認める訳ないか‥‥)

 

葉山は留美と雪ノ下は容姿もさることながら、性格も意固地と言うかプライドが高い部分があり、前世でも留美は簡単に自身がいじめられていると言うことを認めなかった。

 

そして、精神的に追い詰められ八幡に自分が虐められている事を認め、彼に助けを求めて来た。

 

留美からの助けを聞き、八幡が前世であの作戦を肝試しの時に実行した。

 

葉山はここにきて、まだ留美は精神的に追い詰められておらず、自分たちに助けを求めて来ていないため、あまりにも直接過ぎたと思った。

 

しかし、留美本人からしてみれば葉山の言っている事が全然理解できない。

 

「もういい?」

 

留美は荒れた様子で葉山との会話を打ち切り、立ち上がるとその場から去る。

 

「おっ、おーい!!ルミルミ!!」

 

すると留美と同じ班のメンバーが彼女の姿を見つけ、声をかける。

 

「だから、ルミルミ言うな」

 

「ん?あの人‥‥」

 

班のメンバーは遠目に葉山の存在に気づく。

 

彼の容姿と髪は否が応でも目立つ。

 

「ルミルミ、あの人って‥‥」

 

「確か昨日のお昼ご飯の時にも留美ちゃんに話しかけていたよね?」

 

「うん‥‥」

 

「あの高校生の人、やっぱりルミルミの知り合いじゃないの?」

 

「ううん、全然知らない人」

 

「知らない人なのにどうして、あの人は留美ちゃんに構うんだろう?」

 

サマーキャンプに来た同級生は沢山いる。

 

それなのに、あの金髪の高校生(葉山)は、何故か留美一人に固執する。

 

「まさか、あの人はロリコンの変態でルミルミのことを狙っているんじゃない!?」

 

「えっ?」

 

班のメンバーの一人は葉山が留美を狙っているのではないかと推測する。

 

留美本人はキョトンとし、もう一人のメンバーは信じられないと言う表情をする。

 

「いやいや、いくら何でもそれはないんじゃあ‥‥」

 

「そ、そうだよ。私たちまだ小学生だし‥‥」

 

そして、留美本人ともう一人の班のメンバーはそれを否定するが、

 

「でも、ルミルミはあの人を知らないのにあの人はルミルミの事を構っているじゃん」

 

「た、確かに‥‥」

 

「でしょう?だから、あの人、絶対ルミルミに気があるって‥‥」

 

「そ、そうかな?」

 

「そうだよ。でもルミルミ、気をつけた方が良いよ」

 

「えっ?」

 

「どういう事?」

 

「このサマーキャンプを利用して、ルミルミに手を付ける気かも‥‥」

 

「「手を付ける?」」

 

班のメンバーが言う 『葉山が留美に手を付ける』 と言う単語に首を傾げる留美ともう一人のメンバー。

 

「このサマーキャンプで、ルミルミにイヤらしいことをして、キープするってことだよ。『君はもう、俺の女なんだから、言う事を聞け!!』 『君の初めては俺のモノだ!!』 って、感じでルミルミを束縛して、エッチな事を強要するかも‥‥」

 

「‥‥」

 

「世の中には私ら小学生みたいな子供じゃないと欲情できない奴も居るって聞いたことがあるし」

 

「ど、どうしよう‥‥留美ちゃんが危ない!?」

 

小学生ながら、納沙の様な一人芝居をして、『手を付ける』 の単語の意味を留美ともう一人のメンバーに伝えると、留美は顔を青くし、もう一人のメンバーも震えている。

 

「こうなれば、私たちでルミルミをあのロリコンから守らないと!!」

 

「そ、そうだね‥‥」

 

「いい、ルミルミ。このサマーキャンプ中は私たちから離れないで!!絶対に一人になっちゃダメだからね!!」

 

「う、うん‥‥」

 

サマーキャンプの環境に盛り上がっていた留美の班は一気に緊張したムードになった。

 

「っ!?」

 

その時、留美は背後から冷たい視線を感じた。

 

「どうしたの?」

 

「今、何か視線を感じた‥‥」

 

「視線?」

 

「あのロリコン?」

 

「ううん、違う‥‥と思う‥‥」

 

留美は背後から感じた視線‥‥

 

その正体とは‥‥

 

 

葉山と留美のやり取りを見ていたのは留美と同じ班のメンバーだけではなかった‥‥

 

葉山が留美を見つけ、声をかける少し前‥‥

 

「もう、葉山君ったら、どこに行ったんだろう?」

 

川辺で一緒に遊んでいた筈の葉山が突然消え、葉山の行方を探している相模。

 

最初は溺れたのかと思ったが、溺れるほど遊んでいた川の水深は深くない。

 

そこで、一緒に遊んでいた他の高校生メンバーに訊ねると戸部が、葉山を見たと言う。

 

目的は分からないが、「向こうの方へと行った」 と、ある方向を指さす。

 

トイレがある方向ではなかったので、葉山はトイレに行った訳でもないみたいだ。

 

相模は水着の上からパーカーを羽織り、葉山を探しに行く。

 

そして、やっと探し人である葉山を見つける。

 

「あっ、居た。葉山君‥‥えっ?」

 

すると、葉山は一人ではなく、ある小学生の女子に話しかけていた。

 

その光景を見た相模はとっさに物陰に隠れて様子を窺う。

 

葉山は笑みを浮かべながら、小学生の女子に話しかけているが相手の女子は何だか葉山の事を冷たくあしらっているようにも見える。

 

「何!?あの子!?葉山君にあの態度を取るなんて!?」

 

相模は、葉山の事を冷たくあしらっている小学生女子の態度にムカッときた。

 

葉山があんなに一生懸命話しかけているのにあの小学生の女子はつまらなそうな態度ばかり‥‥

 

そんなに葉山と話すことが詰まらないのであればそのポジションを代われと思う相模。

 

「大体、葉山君もなんでそんな小学生なんかを相手にしているのよ!?」

 

そもそも、このボランティア活動の目的は小学生の面倒を看る事なのだが、すっかりその目的を忘れている相模。

 

小学生の女子は相変わらず、葉山に対して冷たいと言うか呆れている様子でその場から去って行く。

 

葉山も目的が無くなったのか、その場から去って行くが小学生の女子が同じ班のメンバーらしき、他の女子と合流すると彼女たちは葉山の事をロリコン 変態 エッチな事をするつもりだ なんて事を言っている。

 

葉山の事を想っている相模としては、まさか葉山が自分に対して消極的な態度を取り続けるのは、彼女たちが言うように本当に葉山はロリコン‥‥年下の女子が好みなのだろうか?

 

(ううん、そんな筈がない!?葉山君が‥ウチの葉山君がロリコンな訳がない‥‥葉山君はあの小悪魔に騙されているんだ!!)

 

(大体、ウチの葉山君にロリコンだの変態だの暴言ばかり‥‥あいつら、絶対に許さない!!)

 

どうしたら、昨日会ったばかりの小学生の女子にそんな結論になるのか分からないが、留美たちを逆恨みする相模だった。

 

留美と会話と言うか、探りをいれた葉山は川辺に居る雪ノ下と由比ヶ浜と合流する。

 

「雪乃ちゃ‥‥雪ノ下さん」

 

葉山は思わず雪ノ下の名前を言いそうなるが、それを訂正して名字で呼ぶ。

 

「なにかしら?」

 

「さっき、鶴見さんの様子を見てきたんだけど‥‥」

 

「‥‥本当に様子を見るだけにしたの?声をかけたり、変な事をしなかったかしら?」

 

「本当に様子を見ているだけだったよ」

 

葉山は声をかけて、留美にいじめの有無を確認した事を敢えて雪ノ下に隠す。

 

「それで、彼女の様子はどうだったの?」

 

「‥‥やっぱり、彼女はいじめられているんじゃないかな?」

 

「まだ、そんなことを言っているの?」

 

「いや、現に彼女は一人ぼっちだった‥‥これは前の世界と同じはずだ」

 

「一人ぼっちだったのは前の世界と同じでも、前の世界では私たちの傍に居たはずよ。だからこそ、私たちに助けを求めてきた。でも、この世界ではそれがなかったから、彼女はいじめられていないんじゃない?」

 

「それは、前の世界とこの世界の誤差で俺たちの傍にいなかったから助けを求めてくるタイミングを見逃したんじゃないかな?」

 

「‥‥それでも、私と由比ヶ浜さんは彼女から直接助けを求めてこなければ、今回は動くつもりはないわ」

 

葉山がこの世界でも留美はいじめられていると言う主張を言い張るように、雪ノ下も留美が自分たちに助けを求めてこない限り、留美の問題には関与しない姿勢を貫いた。

 

(雪乃ちゃん、どうして分かってくれないんだ!?こうなれば、俺自身が動いて、留美ちゃんを助けて俺の正しさを雪乃ちゃんに証明して見せる!!)

 

葉山も奉仕部の部員である以上、留美からのSOSが無い限り、動くなと言う雪ノ下の指示を破ってでも、葉山は留美のいじめ問題を解決してやると、独自で動くことにした。

 

 

夕食後、総武高校のメンバーは肝試しの準備となる。

 

しかし、その前に葉山は自身のグループメンバーを集める。

 

「どうしたの?葉山君?肝試し前に?」

 

相模は相変わらず葉山の前ではぶりっ子を演じている。

 

「だべ~」

 

「だな」

 

「みんなに聞いてもらいたいことがあるんだ‥‥」

 

葉山はグループメンバーに留美の事を伝える。

 

「‥‥って事で、やっぱり彼女はいじめを受けているみたいなんだ」

 

「それで、葉山君はどうするの?」

 

相模は葉山に留美のいじめ問題について質問する。

 

しかし、心の中では‥‥

 

(あの小生意気な小娘か‥‥)

 

留美に対して毒づいていた。

 

「もちろん、このままじゃあダメだ‥‥俺は彼女を救いたい‥‥それで、みんなに協力して欲しい事があるんだ」

 

「なに?」

 

「なんだべ?」

 

「だな」

 

葉山は留美のいじめ問題を解決するために前世で八幡がいじめ問題を解消するために実行した作戦をグループメンバーに伝える。

 

「作戦は分かったしょ。でも、隼人君それで本当に解決するん?」

 

戸部が葉山の提案した作戦が上手くいくのか質問する。

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

前世でも同じことをして問題にはならず、留美のいじめ問題は解決したので、この世界でも同じことをしても問題ないと判断した葉山。

 

「分かったしょ、俺は葉山君を信じるしょ」

 

「だな」

 

こうして、葉山グループは留美のいじめ問題を解決するために独自で動くための準備を始めた。

 

 

総武高校のメンバーは、肝試しの準備ため、お化けの仮装をする。

 

しかし、用意されていた衣装は前世と同じような衣装で、

 

「確か肝試しのお化け役って筈しょ‥‥?」

 

「なに?この安っぽいコスプレ」

 

戸部も相模も貸衣装を見てドン引き‥‥と言うか、困惑している。

 

雪ノ下は前世と同じ白い着物に身を包んでいる。

 

「あれ?雪ノ下さんの衣装ってもしかして雪女?」

 

「‥‥そうね‥用意されていた衣装の中ではこれが一番真面だったから」

 

「ふぅ~ん‥‥」

 

相模は雪女衣装の雪ノ下を小馬鹿にしたような目つきで見る。

 

なお、相模は前世で由比ヶ浜が着ていた悪魔‥と言うかサキュバスの衣装を着ていた。

 

この衣装は露出の部分が多いので相模はもちろん葉山を悩殺する目的で敢えてこの恥ずかしい衣装を選んだのだ。

 

「なにかしら?相模さん」

 

当然、雪ノ下本人もその視線に気づいており、相模に何か言いたいことがあるのかを問う。

 

「べっつにぃ~‥でも、一つ言えるなら、その衣装は雪ノ下さんにはぴったりだね」

 

「どういう事かしら?」

 

珍しく相模は雪ノ下を褒めてきた‥‥かと、思いきや、

 

「名前の通り、雪ノ下さんって、冷たい女だし」

 

「は?」

 

雪ノ下は相模が言う『冷たい女』の部分が理解できなかったが、彼女の言葉は決して雪ノ下の事を褒めた訳ではなさそうだった。

 

(あの女、余計な事を言うなよ!?)

 

雪ノ下と相模のやり取りは葉山も聞いており、彼は相模が自分たちがこれから独自で行おうとしている留美の救出作戦のことを喋るのではないかとヒヤヒヤしつつ、彼女に対して余計なこと言うなと心の中で毒づく。

 

「ねぇ、ねぇ、ゆきのん。見て、見て」

 

そんなやり取りを由比ヶ浜が雪ノ下に声をかけて逸らす。

 

しかし、これは全くの偶然と言うか、相模と雪ノ下のやり取りを見て、一触即発の状態を防ぐために行ったもので、決して葉山たちを救ったわけではないが、葉山としては今回の由比ヶ浜の行動はまさに天祐だった。

 

そして、本来は相模の衣装を着る筈だった由比ヶ浜は、前世で海老名が着ていた巫女装束を着ていた。

 

それを雪ノ下に見せていた。

 

「どう?ゆきのん、似合うかな?」

 

「ええ、よく似合っているわ」

 

雪ノ下は巫女装束の由比ヶ浜を褒めた。

 

衣装を身に着けた総武高校のメンバーは次に配置を決める。

 

地図にはあらかじめ、小学生たちが肝試しで歩くコースが書かれていた。

 

更に肝試しに回る小学生たちの順番も事前に知らされていた。

 

「じゃあ、私と由比ヶ浜さんはこの位置で待機するわ」

 

雪ノ下と由比ヶ浜は二人でペアを組み、コースの前半部分で小学生たちを脅かすことになった。

 

相模としては雪ノ下も由比ヶ浜も葉山と一緒ではないことにホッとし、葉山としては、雪ノ下が一緒ではないことに残念だと思いつつ、二人が一緒に居ては留美のいじめ問題を解決するために絶対に何か言ってきて、阻止するに違いない。

 

葉山としては二人には知られずに事を運び、解決した後で報告し、自分の実績として雪ノ下に認められたかったのだ。

 

「じゃあ、俺と‥‥」

 

「ウチはここ、残りはここね」

 

葉山が相棒の名を告げる前に相模が自分と葉山がペアを組むと言う。

 

まぁ、彼女としては葉山、戸部、大岡の三人の男子で選ぶとしたら、葉山一択だろう。

 

葉山と相模はほぼ中間の地点で待機し、残る戸部、大岡のペアも葉山・相模ペアと比較的に近い場所で待機する。

 

あまり距離が離れていると、時間がかかるからだ。

 

こうして、肝試しの準備が整った。

 

しかしそれは、雪ノ下、由比ヶ浜の二人が知らぬ間に留美のいじめ問題を解決しようとする葉山の作戦の準備も整い、いよいよ肝試しが始まろうとしていた‥‥

 

転生者組がそれぞれ転生者だと気づく 気づかない

  • 気づく
  • 気づかない

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