やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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引き続きブルーマーメイドフェスタ編です。


113話

群馬県の千葉村で奉仕部が小学校のサマーキャンプのボランティア活動、カナデは北海道でピアノのコンクール、そして神奈川県の横須賀ではブルーマーメイドフェスタが開かれている夏の某日‥‥。

 

横須賀女子の学生たち、そしてシュテルたちドイツからの留学生組は、ブルーマーメイドフェスタの手伝いに来ていた。

 

シュテルたち、ヒンデンブルクのクラスメイトたちは午後から体験航海があるので、ブルーマーメイドフェスタの会場に着くと、通路に案内経路が書かれている紙を貼り付けたり、甲板にはデッキチェアとテーブルを設置する。

 

テアたちシュペー組は、ブルスト、ザワークラウト、シュニッツェル、ノンアルの黒ビールなど、ドイツ料理を販売する出店を開く。

 

しかも、販売員の衣装はドイツの民族衣装であるディアンドルを身に着けての接客を予定している。

 

テアのディアンドル姿は物凄く可愛かった。

 

シュテルは思わず、ディアンドル姿のテアに抱き着く。

 

「うわぁ~テア!!可愛い!!メッチャ可愛い!!お人形さんみたい!!」

 

「あわわわ‥‥しゅ、シュテル‥そ、そんな大胆な‥‥」

 

シュテルに抱き着かれたテアは顔を赤くし、あわあわと混乱している。

 

(こんな事、前の世界の姿じゃあ、絶対に出来ないだろうな‥‥)

 

これが八幡の姿であれば、変態呼ばわりされ、殴られ、終いには警察を呼ばれただろうとテアに抱き着きながらそう思うシュテルであった。

 

「「‥‥」」

 

ただ、シュテルの後ろにはシュテルの事を睨むテア同様ディアンドル姿ミーナ‥‥

 

そして、テアの後ろには単色で死んだ魚のような目をしてテアを見つめるキール校の士官制服(夏服バージョン)を着たユーリの姿があった。

 

個性が強い晴風クラスでは、出し物について様々な意見が出たが、ブルーマーメイドフェスタの主役はブルーマーメイドなので、個性を活かす出し物は九月の遊戯祭へと持ち越された。

 

主計科の杵崎姉妹と伊良子は、喫茶店を出す間宮の手伝いへと向かい、青木は似顔絵のブースの手伝いへと向かった。

 

柳原、黒木ら機関科のクラスメイトは主に機械関係を取り扱うブースを手伝う。

 

西崎と立石は、お笑いライブ・落語のブースにて、前座ながらも一席やらせてもらえるみたいなので、二人はそのブースへと向かった。

 

その他のクラスメイトたちも主に裏方の手伝いをする事になった。

 

開演前に準備は整い、やがて開幕の時間となる。

 

チケットと言う入場制限を設けているが、会場は大勢の人で溢れかえった。

 

その入場者の中に、総武高校の生徒である戸塚と三浦の姿もあった。

 

二人は入場前にあらかじめどこを回るかを決めていたので、その予定通りのブースを見て回った。

 

三浦は職場見学で、ブルーマーメイドの庁舎に来たが、その時と今回のフェスタでは同じ場所なのだが、今は違って見える。

 

戸塚は職場体験の際、違う場所へ行ったので、三浦は戸塚の為に解放されているブルーマーメイドの庁舎の展示物も一緒に見た。

 

写真撮影コーナーではブルーマーメイドの制服とホワイトドルフィンの制服がレンタルできたので、二人はそのレンタル衣装を着て記念写真も撮った。

 

ただ、戸塚の容姿を見て、写真撮影コーナーに居る広報担当のブルーマーメイド隊員は、

 

「えっと‥‥そちらのお客様は本当にホワイトドルフィンの制服で良いんですか?」

 

と、男子用に用意されたホワイトドルフィンの制服で良いのかと訊ねる。

 

まぁ、男装趣味なのかと思ったのだが、次の戸塚の発言で広報担当のブルーマーメイド隊員は絶句することになる。

 

「は、はい。僕‥男の子なので‥‥」

 

「えっ?」

 

(嘘でしょう!?あの容姿と仕草で男の人!?)

 

戸塚が自分の性別を伝えると広報担当のブルーマーメイドの人は大変驚いていた。

 

「じゃーん!!彩加、どう?似合う?」

 

更衣室でブルーマーメイドの制服に着替えた三浦が戸塚に声をかける。

 

「うん、とっても似合っているよ!!」

 

「ほんと、現役の隊員みたいによく似合っているわ。身体も引き締まっているし」

 

戸塚同様、広報担当のブルーマーメイドの人も三浦を褒めた。

 

この世界の三浦はテニス部のマネージャーを務めているが、一年生相手にラリーをしながら指導もしているので、身体も女性ながらも引き締まっている。

 

恐らく、前世の三浦よりもこの後世世界の三浦の方が運動神経、肉体の引き締まり具合は勝っているだろう。

 

「それじゃあ、撮りますね。はい、チーズ!!」

 

互いに着替えが終わり、戸塚と三浦は記念写真を撮る。

 

流石に制服姿で会場を歩くと現役の隊員と間違われるので、このレンタル衣装を着ることが出来るのはこの写真撮影をするこのブースだけだった。

 

三浦はちょっと残念だと思いつつ着替えた。

 

着替えが終わると、写真はプリントアウトされており、二人は記念写真を受け取り、写真コーナーを後にした。

 

「さっそく、良い思い出が出来たね」

 

「そうだね」

 

受け取った記念写真を見ながらお互いに笑みを浮かべる戸塚と三浦。

 

その後、二人はお笑いライブが行われているブースへと足を運ぶ。

 

「ブルーマーメイドの人も落語やお笑いとかやるんだ‥‥」

 

このライブは、お笑い芸人の他にブルーマーメイドの人もお笑いライブをやるみたいだ。

 

ブルーマーメイドと落語、お笑いとが結びつけにくい事から、意外性を感じる戸塚。

 

「まぁ、趣味は人それぞれだし、ブルーマーって言っても人だしね‥‥」

 

三浦はブルーマーメイドの隊員も人間なのだから、趣味や特技も様々だし、ブルーマーメイドフェスタなのだから、羽目を外したいところもあるのだろう。

 

二人は席に着き、お笑いライブが始まるのを待つ。

 

やがて、ライブが始まると、新人のお笑い芸人がコントをした。

 

そして、そのライブの中には、

 

「どーも、メイタマでーす!!」

 

「‥‥す」

 

晴風クラスの西崎と立石の姿もあった。

 

勿論衣装は赤道祭で着ていた奇抜な衣装ではなく横須賀女子のセーラー服だった。

 

本職のお笑い芸人はもとより、素人であるブルーマーメイド隊員たちのお笑いライブも観客たちには受けていた。

 

「面白かったね、彩加」

 

「うん、お笑いライブも落語も初めて見たけど面白かった」

 

「そう言えば、ライブをしている人の中に横須賀女子の学生が居たね」

 

「そうだね、あのセーラー服の二人‥‥横須賀女子にはお笑い研究会みたいな部活があるのかな?」

 

ブルーマーメイドにお笑い・落語と言う意外な組み合わせであり、戸塚に関してはお笑いライブ・落語を今回初めて見たが満足できた。

 

そして、西崎と立石の姿を見て、戸塚は横須賀女子にお笑い研究会があるのかと思った。

 

実際には西崎と立石の共通の趣味であるが‥‥

 

 

ブルーマーメイドフェスタは、チケットと言う入場制限をしているが、それでも大勢の来場者が来ている。

 

その中には当然、家族連れで来ている人もいる。

 

去年のブルーマーメイドフェスタで黒木や真白の様に中学生は兎も角、小学生、幼稚園児の子を連れている家族もいる。

 

家族としてはそうした小さい子の動きには注意していてもふとした隙や油断で、子供を見失ってしまう事がある。

 

戸塚と三浦が会場内を歩いていると、前方に迷子らしき幼子が居り、その子は涙目で周囲をきょろきょろしながら、「お父さん、お母さん」 と口にしている。

 

「あの子、迷子かな?」

 

「‥‥」

 

その迷子を戸塚が気づくが、周囲の人は、近くに親が居るだろう、誰かが声をかけるだろう、ブルーマーメイドの隊員が何とかするだろう と言う傍観者効果で、誰もその迷子の子に話しかける様子はなかった。

 

巡回中のブルーマーメイド隊員も近くには居ないみたいだ。

 

すると、三浦はその迷子の下へと向かい、

 

「どうしたん?」

 

その迷子に話しかけた。

 

「うぅ~‥‥ママ‥‥どこかいっちゃったの‥‥」

 

泣きながら迷子は自分が置かれた状況を三浦に話す。

 

まぁ、その子の様子を見れば、その子が迷子だと一目瞭然だった。

 

「よし、それなら、あーしが、アンタのママを探してあげるよ」

 

テニス部のマネージャーで、オカン気質、姉御肌な三浦はここでもそのオカン気質を発揮して迷子の両親を探すことにした。

 

当然、戸塚も三浦を手伝った。

 

戸塚と三浦は迷子の手を片方ずつ握りながら、フェスタの会場内を歩き、迷子の両親を探す。

 

すると、迷子の子が、

 

「お姉ちゃんたちはお友達なの?」

 

戸塚と三浦の関係を聞いてきた。

 

「えっと‥‥」

 

戸塚は三浦をチラッと見る。

 

「違うよ、戸塚は、あーしの彼氏なの」

 

すると、三浦が迷子に自分と戸塚の関係を話す。

 

「かれし?」

 

迷子にはまだ彼氏、彼女の仲が分からない様子で首を傾げる。

 

結構、無垢な子の様だ‥‥

 

「えっと‥‥簡単に言うと、パパとママになる少し前みたいなものよ」

 

「えっ?パパとママ?」

 

迷子は戸塚の顔を見て、頭の上に?マークを浮かべているみたいだ。

 

まぁ、戸塚の顔を見ればそのリアクションも無理はない。

 

「ズボンを穿いているお姉ちゃんじゃないの?」

 

そこで、迷子は戸塚に女性ではないのかと訊ねる。

 

「えっと‥‥僕、男の人なの‥‥」

 

「ほえ?」

 

戸塚が迷子に自身の性別を教えるが、迷子は信じられないと言う顔をする。

 

迷子と戸塚のやり取りを見て、三浦は思わず苦笑した。

 

その後、会場を回りながら迷子の子の親を探す。

 

(この構図‥‥なんか親子みたい‥‥なのかな?)

 

先程の会話から、三浦は今の構図‥‥子供の手を繋ぎながら、お祭りの会場を歩いている‥‥

 

もう少し、年を取っていれば第三者から見た光景は子連れの親子に見えたかもしれない。

 

(戸塚と‥‥夫婦‥親子か‥‥)

 

(あっ、親子ってことは子供が居て、子供が居るってことは、あーしが戸塚と‥‥)

 

三浦は思わず、自分と戸塚との子供、戸塚との新婚生活を想像する。

 

更に子供がいるという事でその過程を想像する。

 

あの戸塚が自分にがっつく姿は想像しにくいが、それでも夫婦になればそんな機会はいつか来るはずだ。

 

「ん?お姉ちゃんどうしたの?」

 

「ふぇっ!?」

 

迷子からの声でハッと三浦は我に返る。

 

「あっ、いや、何でもないよ。あははは‥‥」

 

三浦は笑ってごまかすが、彼女の顔は赤かった。

 

「でも、本当に大丈夫?顔、赤いみたいだけど‥‥」

 

戸塚も心配になって三浦の顔を覗き込む。

 

「ほ、ほんとうに大丈夫だから!!顔が赤いのは、ちょっと暑いせいだし!!」

 

三浦は戸塚と迷子を誤魔化すのに必死だった。

 

 

やがて、三人はスキッパーショーの会場近くにやってくる。

 

「間もなく、ブルーマーメイド、スキッパー隊によるショーの開幕です!!ご観戦の方はお急ぎください!!」

 

スキッパーショーの開幕を知らせる放送があたりに流れる。

 

すると、迷子の子はショーが見たいのか、ちょっとソワソワし始める。

 

三浦はその様子に気づき、

 

「ん?もしかして、スキッパーのショーが見たいの?」

 

「う、うん‥‥」

 

自分は迷子であり、早く親を探さないといけないのだが、スキッパーのショーも見たい。

 

元々、このスキッパーショーを見る予定があったのかもしれない。

 

ならば、この子の親もこのスキッパーショーの会場に居るかもしれない。

 

そう思い三浦は、

 

「じゃあ、見に行こうか?」

 

「えっ?」

 

「どうせ、見るにしてもタダだし、もしかしたら、この子の親もショーの会場に来ているかもしれないし」

 

「そうだね」

 

飲食品の購入以外はショーなどの観覧にお金は必要ない。

 

故にスキッパーショーもタダで見ることが出来る。

 

三人はスキッパーショーの会場に入り、観客席に座るとショーを見る。

 

スキッパーショーに出ているブルーマーメイドの隊員たちは、まさにスキッパーと一体となった動きで会場の観客たちを湧かせた。

 

「おぉぉぉぉ~‥‥」

 

迷子の子も今、自分が迷子になっていることを忘れるぐらい、興奮して拍手していた。

 

「はぁ~‥‥凄かったね~」

 

「うん!!ブルーマーメイドの人がスキッパーに乗って、ビューンってジャンプして凄かった!!」

 

ショーを見た後も迷子は興奮していた。

 

その時、

 

「由美子!!」

 

「「えっ?」」

 

名前を呼ばれ、三浦は思わず振り返る。

 

すると、自分たちに慌てた様子で近づいてくる一人の女性が居た。

 

「由美子!!」

 

「あっ、ママ!!」

 

女性の顔を見て、迷子の子‥由美子はその女性の下に走っていく。

 

どうやら、この女性が母親みたいだ。

 

そして、この迷子の子の名前も三浦と同じ 『ゆみこ』 だった。

 

「もう、心配したんだからね」

 

「ごめんなさい‥‥あっ、三浦お姉ちゃんと戸塚さん‥ママを探すのを手伝ってくれたの!!」

 

由美子が自身の母親に三浦と戸塚の事を紹介する。

 

「娘がどうも、お世話になりました」

 

母親は二人に深々と頭を下げる。

 

「あっ、いえ‥‥」

 

「そんな‥‥」

 

大人に深々と頭を下げられ恐縮する戸塚と三浦。

 

「どうも、お世話になりました」

 

「バイバーイ!!」

 

親が見つかり、迷子こと由美子とは別れの時となる。

 

由美子は手を振りながら、母親と共に会場の人混みの中に消えていく。

 

三浦はなんかその様子を悲しそうな顔で見ていた。

 

「三浦さん?」

 

「大丈夫‥‥あの子も無事にお母さんが見つかって、これで子守りから解放された訳だし‥‥」

 

戸塚はそれが三浦の強がりだと思い、彼は思わず三浦の肩に手を回す。

 

「‥‥ありがとう‥彩加」

 

三浦は気を取り直して、戸塚とのブルーマーメイドフェスタを楽しむことにした。

 

 

お昼少し前、午前の体験航海が始まる合図として、ブルーマーメイドの音楽隊によるパレードが始まる。

 

戸塚と三浦は音楽隊のパレードは見たが、体験航海には参加しなかった。

 

「三浦さんはよかったの?」

 

「ん?何が?」

 

「体験航海‥横須賀女子の中でも優秀な人が乗る艦みたいなのに‥‥」

 

「でも、今から海に出ると、戻ってくる時はちょうど昼時で飲食店が込みそうじゃない?それに午後からも艦は違うけど、体験航海はやるみたいだし、艦に乗るとしたらそっちでいいでしょう?しかも、ドイツから来た艦みたいだし、そっちのほうがレア度は高いんじゃない?」

 

「わかった」

 

三浦は日本の学生艦よりもドイツからの留学生艦の方に興味があったみたいだ。

 

それに時間の問題から、午前の体験航海が終わる頃には、昼時となり昼食を食べるのに苦労しそうだったので、午前の体験航海を見合わせたのも理由の一つであった。

 

音楽隊が 『軍艦行進曲』 を港湾区画にて奏でると、横須賀女子の学生艦、駿河は汽笛を長音一声の後、駿河はゆっくりと動き出す。

 

デッキには体験航海の参加者たちが港湾区画に居る人たちに手を振っている。

 

学生艦とはいえ、元は軍艦であること、短時間の航海のため、紙テープを使用しての別れテープは行われていない。

 

そして港湾区画にて、駿河を見送る人たちも駿河に向かって手を振っていた。

 

 

そして、昼時少し前‥‥

 

戸塚と三浦は飲食するお客で込む前に昼食を食べる為に間宮へとやって来た。

 

「この間宮は学生艦の中でも美味しい料理を出してくれるみたい」

 

ブルーマーメイドフェスタのパンフレットには今回フェスタに参加する学生艦の紹介欄があり、その中には当然、間宮の紹介文もあった。

 

クラスの世代によって、料理の味は変わっていくが、それを差し引いても間宮クラスの学生たちの料理は上手く、先日、真白の姉である真冬と平賀、福内が母校を訪ねた際、食堂ではなく、間宮で食事を摂ったぐらいだ。

 

三浦自身も戸塚の為の弁当を作ったりしているので、同じ学生が作る料理に関しては興味があった。

 

なお、彼女は総武高校での学生艦の所属は主計科であり、海洋実習中でも料理を作っている。

 

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

 

「二人です」

 

「お二人様ですね」

 

間宮では、メイド服に身を包んだ間宮のクラスメイトが二人を出迎える。

 

「はい」

 

「では、こちらのお席にどうぞ‥‥」

 

メイドさんに案内された席に着く二人。

 

「どうぞ、メニューです」

 

メイドさんは二人に今日、間宮で取り扱っているメニュー表を手渡す。

 

「ご注文がお決まりになりましたら、お声がけください」

 

メイドさんはメニュー表を手渡し二人に一礼すると、その場を後にする。

 

「‥‥」

 

三浦はメイド服を着た間宮のクラスメイトを見た後、戸塚をチラッと見る。

 

(彩加‥メイド服も似合いそう‥‥)

 

自分の彼氏ながらも、執事服よりもメイド服の方が似合いそうだと思う三浦だった。

 

「ん?どうしたの?」

 

三浦の視線に気づいた戸塚が声をかけてくる。

 

「あっ、いや、なんでもないし‥‥」

 

三浦は慌てて戸塚からメニュー表に視線を移した。

 

やがて、二人は食べたいものが決まり、メイドさんを呼んで注文する。

 

「すみません!!」

 

「はい、お決まりでしょうか?」

 

「ハンバーグ定食とカルボナーラ‥‥食後にアイスクリームと紅茶をください」

 

戸塚はハンバーグの定食を注文し、三浦はカルボナーラを注文した。

 

「紅茶はホットとアイスを選べますがどちらになさいますか?」

 

「アイスでお願いします」

 

「かしこまりました。ハンバーグの方はソースにデミグラスとおろしポン酢の二種類がございますが、どちらになさいますか?」

 

「おろしポン酢でお願いします」

 

「はい、かしこまりました。では少々お待ちください」

 

ハンバーグはデミグラスソースとおろしポン酢の二種類用意され、戸塚はあっさり味のおろしポン酢を頼んだ。

 

メイドさんは二人の注文内容をメモし、一礼すると厨房へと向かった。

 

それからしばらくして‥‥

 

「お待たせしました、ご注文のハンバーグ定食、おろしポン酢ソースとカルボナーラでございます」

 

やがて、注文した品が来ると、二人は少し早めの昼食を食べる。

 

皿の上にはじゅうじゅうと音を立てている肉の塊‥‥ハンバーグがデーンと鎮座している。

 

戸塚は器用にナイフとフォークでハンバーグを切り、口へと運ぶ。

 

(あっ、結構柔らかい‥‥)

 

ハンバーグは一口噛むと、口中にジュワッと肉汁が広がる。

 

そしてその肉汁が上から掛けられたおろしポン酢と交じり合う。

 

(こ、これは……ご飯が欲しくなる!)

 

傍らに置かれた飯を手に取り、フォークでかっ込む。

 

すると、口の中ではライスの淡い風味が、肉汁と汁の風味と出会うことで、すばらしい味になる。

 

ハンバーグだけでも十分、美味しいが、ライスと一緒に食べるはんばぁぐはまた別格であった。

 

戸塚がハンバーグを食べている中、三浦もカルボナーラを食べた。

 

皿からは温かな湯気からはチーズの香りが漂ってくる。

 

トロ~リと溶け切った、卵が混ぜ込まれた淡い黄色のチーズがたっぷりと絡められたパスタの麺にちらりと覗く、ピンク色のベーコンとその上に散らされた黒い胡椒の粒。

 

まさに、ザ・カルボナーラな姿をしたカルボナーラであった。

 

三浦はフォークとスプーンを器用に使ってパスタを巻き取る。

 

銀色のフォークに一口サイズで巻き取られた、麺を口元に寄せ、チーズの香りを一つ吸い込んでから、口に入れる。

 

出来たての熱さを持つパスタがチーズをとろりと溶かし、その溶けたチーズが口の中に広がっていく感覚に三浦は思わず笑みを浮かべる。

 

(あーしらと同じ学生が作ったにしてはなかなかの味じゃん!!)

 

濃厚なチーズの風味と、それに負けぬ程に濃厚な卵の味‥‥その二つを彩るのは適度な塩気に燻製肉から溶け出した脂と、ピリッと味を引き締めている黒胡椒の辛さ‥‥それらがチーズの中に溶け込み、そのチーズをまとった麺のしっかりとした食感と共に美味さを伝えてくる。

 

パスタもやや太い麺を使うことでチーズの味に負けていない。

 

たっぷりとチーズを纏いつつも、麺の小麦の味がしっかりと残っていた。

 

次に三浦はベーコン単体をフォークに刺して口へと運ぶ。

 

肉厚の角切りにされたベーコンの程よく脂が抜けて肉の風味をしっかりと感じさせる味は、濃厚なチーズの風味に慣れた舌にまた違う旨味を感じさせ、更にカルボナーラを楽しませる味となっていた。

 

パスタを食べ、ベーコンを食べ、そしてまたパスタを食べる。

 

それを繰り返していくと、あっという間にひと皿のカルボナーラは瞬く間に空となった。

 

戸塚の方もハンバーグが美味しかったのか、あっという間に完食していた。

 

「食後のデザートとアイスティーでございます」

 

食事が終わり、食後のデザートに頼んだアイスクリームとアイスティーが運ばれる。

 

ガラス製の器に盛られた白く半丸の山‥‥バニラアイス。

 

そして、同じくガラス製のグラスに氷と共に入ったアイスティー‥‥

 

両者は共に外の真夏の暑さを一時だけでも忘れさせてくれるひんやり感が伝わってくる。

 

二人はピカピカに磨かれた銀の匙を手に取り、その丸い塊に突き立てる。

 

きっちりひと匙分取れたアイスクリーム‥‥それをそっと口元に寄せて、口の中へと放り込む。

 

(ああ、冷たくて美味しい……)

 

アイスクリームのひんやりとした冷気と甘みが口の中に広がっていく。

 

まるで冬の雪のように冷たいアイスクリームは文字通りの意味で人肌の熱さを持つ舌の熱で溶けて行き、冷たい甘みを伝えてくる。

 

その冷たさが心地よい。

 

夏の暑さを感じている今の時期だからこそ、アイスクリームも余計に美味しく感じる。

 

アイスクリームを完食し、最後に口直しにアイスティーをストローで飲む。

 

ガムシロップを入れたが、紅茶本来の苦みと渋みが残るアイスティー。

 

その味が口の中に清々しさを与える様だった。

 

「美味しかったね」

 

「そうだね、同じ高校生が作ったにしてもレベルは高かった‥‥」

 

戸塚も三浦も間宮で提供された料理には満足できた。

 

「さてと、次は‥‥」

 

戸塚は、午後に回る予定を確認した。

 

「午後は、ドイツ艦の体験航海だね」

 

迷子の親探しで多少、予定は変更したが、予め決めた午後の予定で二人はドイツからの留学生艦、ヒンデンブルクの体験航海に参加することにしていた‥‥

 

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